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うそつきこなた と しかえしかがみ

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「う~ん・・・。やっぱ、これしかないか~・・・」

 日付が変わる頃、私はやっとの思いで1通の手紙を書き終えた。

『泉こなた様。
  2人だけでお話したいことがあります。
        放課後、屋上で待っています。 』

「こなた・・読んでくれるかな・・・」

 『好きです』とか『ずっと見てました』なんてのは書いててなんか恥かしいし、でも、そういうこと書かないとわかんないかな・・・。
 そんなことを考えて書いたり消したりを繰り返していたら、たったこれだけの文章なのに結局2時間以上かかった。

 あれから1年、一日千秋の思いで毎日を過ごしてきたけど、ようやくこの日がやってきたわ・・・。
 明日は早起きして、学校に行って、こなたの机にこれを入れて・・・そして・・・

          去年の仕返しをするのよ!!!!!

 去年の同じ日、私は手紙で屋上に呼び出された。差出人の名前は書いてなくて、内容も簡単なものだったけれど、このシチュエーションだったらきっと告白されるんだろうなと思ってすごく緊張していた。
 なかなか手紙の主は現れず、しばらくボーっと校庭を眺めていると不意に肩を叩かれた。驚いて振り向くとそこには
 ・・・・・いつもの猫口でニマニマ笑っているこなたがいた。

「やぁ、かがみん。こんなところで何をしているのかな?」
「う、うぉっ! ・・・こ、こなた? な、何であんたがここにいるのよ!!」
「いやー、かがみが屋上に上がっていくのが見えたからさ。んで、何してんの?」
「べ、別に何でもないわよ!ちょっと景色が見たくなっただけよ・・・」
「へぇー、そうなんだ。私はてっきり誰かに手紙で呼び出されたのかと思ったんだけど」
「んなっ!?  な、何でそのこと知ってんのよ!!」
「むふふふふ」
「・・・・・あっ!!!も、もしかしてこの手紙、あんたが書いたんじゃ・・」
「はっはっはっ。ようやく気がついたようだね、明智君」
「誰が明智君だ!! ん?と言うことは・・・」(まさか、こなたって私のこと・・・?)
「かがみ・・・。実は・・・」

 こなたは少し照れたような表情でうつむき、言葉を切った。その瞬間、体温が一気に上昇したように感じて、自分でもわかるくらい顔が熱くなった。

「あ、あの・・・・・こ、こなた?」
「・・・・・・・・かがみ」

 こなたは顔をあげ、私を見つめた。その時、一瞬だけ表情が曇ったように見えたけれど、すぐにその表情は消えた。

「こ、こなた!ちょっ、ま、まだ心の準備が・・・」
「・・・・・・・今日は4月1日なのだよ」
「へ?」
「だから、4月1日。今日は何の日かな?」
「え?え?」
「そう!『え』イプリルフール!」
「はぁ?!」
「まったく、かがみは騙されやすいねぇ~。ま、そこがまたかわいいんだけど」
「・・・・・・・・・・」
「ん?どしたの?かがみん?」
「・・・・・・・・・・」
「ねぇ?」
「・・・・・・・・・バカ・・」ボソッ
「え?なんて言ったの?」
「・・・・・・・・・」
「・・・もしかして、かなり怒ってる?」
「・・・・・・やっぱりあんたには拳での調教が必要なようね・・・」
「ちょ、調教って! ・・・あ、あの~、かがみさま?目が怖いんですけど?」
「今日は手加減しないわよ!!」
「ひっ、ひゃああああああああああああ!!!!」

 ま、きっついお仕置きの後、こなたにはイチゴパフェとハーゲン○ッツの大きいやつとケーキ7種を奢らせてチャラにしてあげたんだけど。 あ、一気に食べたわけじゃないからね。
 でもさ~、ちょっとは期待しちゃうじゃない?健全な一女子高校生としては興味がないわけじゃないし・・・。 それにこなたに告白されるんじゃないかなって思ったら・・・・。
 って、待て待て待て!!!!決してこれはこなたに期待して裏切られたことに対する仕返しではないのよ!!!
 そ、そう、これは健全で純粋な思春期の乙女心を弄んだ罰なの!!

「ったく、私ったらなんてことを考えてんのよ!!さ、明日は早いしさっさと寝よ」

 手紙をかばんに入れてベッドにもぐりこみ、目を閉じた。でも、瞼の裏にはなぜかこなたの顔が浮かび、いつまでも寝付けなかった。


翌朝―
 いつもより早く起きた私は、眠い目をこすりながら朝ごはんを食べていた。つかさは言うまでもなく夢の中だろう。

「今日はずいぶん早いのね。まだ春休み中でしょ?」
「今度受験だし、特別授業があるんだ。それにちょっと用事もあってね」
「そうだったの。かがみももうそんな年なのね~」
「あ、そうだ。お母さん。先に学校行くから後でつかさ起こしといて」
「はいはい。でも、あの子寝ながら返事するから、起きてるのかわからないのよね~。こんなんで、受験大丈夫なのかしら・・・」
「は、ははは・・・」

 確かにお母さんの不安もわかる・・・・。けど、これからこなたを騙そうとしている私も大丈夫なのかって感じよね。
 ま、今日だけは勘弁してもらおう。

 学校に着くと、校庭では運動部が朝練をしていた。さすがに7時を少し過ぎたくらいの時間だと教室には誰もいなくて、安心してこなたの机に手紙を入れることができた。

「これでよしと。後はこなたがこれを見つけて・・・ふふふ」

 でも、このまま教室に戻っちゃったら、こなたの驚くところが見れないのよね・・・。そもそもあいつって驚くのか?う~ん、気になるところね。

 ということで、こなたが来るまで掃除用具入れに隠れて様子を伺うことにした。
 しばらくすると他の生徒も登校してきて、少しずつ教室は賑やかになっていった。こなたとつかさはなかなか登校してこなくて、予鈴の少し前になってようやく教室にやってきた。
 こなたのことだから、忘れて来ないんじゃないかとも思ってたけど。まぁ、どうせネトゲで黒井先生に散々言われたんだろうけどね。
 つかさのこともちゃんと起こしてくれたみたいね。うちの家族も大概抜けてるからな~。言わないと忘れるし。やっぱり私が起こさなくちゃだめなのかな・・・。

 っと、そうだ。こんなこと考えてないで、こなたは・・・・・・・。
 ふむ。かばんを置いて・・・机の中から教科書を・・・って何で机から教科書が出てくんのよ!
 やっぱりあいつまだ置き勉してんのね。ったく受験する気あんのかしら・・・?
 お?手紙に気がついたみたいね。よしよし。

 封を開けて手紙を見た瞬間、こなたはそのままの姿勢で、固まったように動かなくなった。
 すると、みるみるうちに顔が赤くなり、あたふたと周りの様子を伺い始めた。

 くふふ。動揺してるわ、あいつ。人には散々あの手のいたずらばっかりしてくるくせに、いざ自分がやられると打たれ弱いのね。
 さ~て、この後はどんな感じになるのかしら?

 こなたは周りを気にしながら手紙を少しだけ開くと、耳まで真っ赤にして、もう一度手紙を読み始めた。
 その顔は真剣そのもので、あんな短い文面から、少しでも相手の想いをくみ取ろうとしているように見えた。

 ひとしきり読み終えたこなたは、最初と同じように手紙を綺麗に折りたたむと、まるで宝物のようにそれを優しく胸に抱き、
 ・・・・・・・とても幸せそうな顔で目を閉じた。

 あいつもあんな顔するんだ・・・・。なんか・・・かわいい・・・・・・・・。
 って、なんで私がこなたにドキドキしてんのよ!!い、 いかん、いかん。ちょっと深呼吸を・・・・・・・・。
 ・・・落ち着け、私。ほら、あれは普段から生意気で、怠け者で、勉強なんてち~っともやらないこなたなのよ。
 ね?そんな気持ちになるなんておかしいことなの。

 ・・・・と、いくら自分に言い聞かせても、鼓動はまったくおさまる様子はなく、むしろ徐々に大きくなっていった。
 そんな自分に戸惑いながら一人で赤くなっていると、いつの間にかこなたがいなくなっているのに気がついた。
 あわてて周囲を見回すと、こなたがつかさと一緒に教室から出ていく姿が見えた。

 トイレにでも行くのかな?そういえば、そろそろ授業が・・・・・・。
 と、その時予鈴が鳴った。
 あっ!!ど、どうしよ!早くここから出ないと・・・・・。うぅぅ・・・先のことを考えてなかったわ・・・・。

 足元を見るとバケツがあったので、それを被り、他の生徒が見ていないのを見計らって、すばやく掃除用具入れから脱出した。
 そのまま人目につかないところまで走り、バケツを置いて教室に戻ろうとしたその時、一番見つかりたくない奴に声をかけられた。

「んぁ? バケツなんか被って何してんだ?」
「く・・・くさ・・か・・べ? い、いや、な、何でもないわよ」
「ははは。春休みで頭に花が咲いたのか?」
「んなっ!! 年中咲いてるあんたと一緒にすんな!!」
「ひっ! ・・・あ、あやの~。柊がひどいこと言うよ~」
「よしよし。大丈夫よ、みさちゃん。きっといつかは出番がやってくるわ」
「うぅぅ・・・。頑張ろうゼ、あやの~」

 日下部がなんか言ってたけど、相手にしてなんかいらんないわ!今日はこなたのことしか考えたくない・・・・・って、だから違うのよ!こなたに仕返しすることだけって意味だからね!・・・・・・はぁ、誰に言い訳してんだろ、私・・・。
 と、とにかく!! こなたは餌に喰いついたから、あとは放課後まで待てば・・・・・
 放課後・・・・長いわね。 あっ!お昼に様子を見に行けば、少しは楽しめるかもしれないわ。うん。そうしよう。


昼休み―
 お昼の時のこなたの様子を考えていると、午前中の授業もあっという間に終わった。
 こなたのクラスに入っても特に変な目では見られなかったし、話題にもなっていなかったから、朝のことは見られなかったのだろう・・・・・と思う。ちょっと視線が痛いような気もするけど、きっと気のせいよね。

 3人はいつものように机を並べ、お弁当を食べていた。
 みゆきとつかさは、おしゃべりをしながら楽しそうにしていたけれど、こなただけは心ここにあらずって感じで、チョココロネをくわえたまま、ボーっとしていた。

「おーっす。一緒にご飯食べよ」
「あ、お姉ちゃん」
「どうぞ。こっち空いてますよ」
「ありがと。 ん?・・・・こなた」
「ん~?」
「チョコが落ちそうよ」
「へ?あ、うわっ!」ペロペロ

 ふふふ。あの手紙がかなり効いてるみたいね。ど~れ、少し揺さぶってみようかな?

「何? 何か考えごと?」
「あ、う、い、いや」
「そういえば、こなちゃん、朝から何か落ち着かないというか、ボーっとしてるよね」
「そ、そうかな・・・」
「どうせ、春休みだからって昼夜逆転の生活してたんでしょ?」
「ま、それもあるけどね~」
「それも?」
「あっ!? い、いや、その・・・」

 途端にこなたは顔を真っ赤にしてうつむき、もじもじとチョココロネをいじりだした。
 くぅ~!!なんてかわ・・・・ じゃなくて!!か、かなり動揺してるわね!!

「なに?なに?気になるじゃない」
「い、いや・・・。えーと・・その・・」
「教えてよ、こなちゃん」
「そうよ。隠してたらためになんないわよ」
「い、いや、ここで言うのはちょっと・・・」
「ふ~ん。なんか怪しいわねぇ~。 男関係じゃないの~?」
「なっ!? ち、違っ!!!!!」

 こなたは突然大きな声で叫ぶと、椅子から立ち上がり、そのまま私を睨んだ。
 突然の大声に他の生徒の視線が集まったけれど、こなたは私から視線をそらそうとせず、じっと私を見続けていた。
 私も突然の出来事に呆気にとられ、こなたを見返したけれど、こなたは相変わらず赤い顔で私を睨み続けていた。
 なぜかその瞳からは、どこか寂しそうな色も感じられた。

「ま、まあまあ。泉さんが言いたくないのであれば、無理に言わなくても良いんですよ。ね?かがみさんも大丈夫ですよね?」

 みゆきが声をかけると、こなたは一瞬だけ哀しそうな顔をし、すぐにいつもの無気力な顔に戻った。

「あ・・・・・あぅ・・・。ごめん・・・・」
「あ、う、うん。私もごめんね、こなた」
「ごめんね、こなちゃん」
「別にいいよ。気にしないで」

 4人とも沈黙し、少しだけ気まずい雰囲気が流れたけれど、それを察したのか、みゆきが口を開いた。

「でも、泉さんは、何かとても良いことがあったみたいですね?」

 にこやかに笑いながらみゆきがそう聞くと、こなたは怒ることもなく、顔を赤くしたまま節目がちにうなずいた。

「・・・うん。 ・・・すごく良いことがあったんだ・・・」

 本当に嬉しそうに笑うこなたの顔は、とても幸せそうで、思わず見惚れてしまうくらい、可愛らしい顔だった。
 その顔を見た瞬間、一気に顔が赤くなり、思いきり胸を締め付けられたような苦しさを感じた。
 その苦しさは今まで経験したことはなかったものだった。けれど、それがどういう気持ちなのかは、自分でもよくわかった。

 ど、どうして・・・? こ、これじゃ、さっきのこなたと一緒じゃない!! 
 私は・・・私はそんなこと・・・思って・・・ない・・・・・のに・・・・・。

 3人を見ると、何事もなかったかのようにお喋りをして笑っていた。
私もそれに合わせてはいたけれど、でも、どうしても私の中の苦しさは消えなかった。

 私は、こなたに仕返ししたかっただけなのに・・・・。でも・・・どうしよう・・・この気持ち・・・・・・・。
 ・・・・・・・私は・・・・・・本当は何がしたいんだろう・・・・・・。

 教室に戻り、午後の授業を受けながらそんなことを考えていると、午前中とは逆に、ひどく鬱々とした気持ちになっていった。
 でも、いくら考えてみても答えは出ないまま、ついに放課後を迎えた。


放課後―
 結局答えは出ず、机に座ったまま考え込んでいると、つかさが一人で教室にやって来た。
 こなたのことを聞くと、「用事があるから」とだけ言って、一人で先に教室を出たらしい。きっと屋上に向かったんだろう。
 つかさには、「私も桜庭先生から頼まれたことがあるから」と言うと、「二人とも用事があるなんて珍しいこともあるんだね~」と言いながらも、少し寂しそうに帰っていった。
 ごめんね、つかさ。明日は一緒に帰るから。

 一人教室に残り、もう一度どうしたら良いのか考えてみたけれど、いくら考えても答えは見つからなかった。
 もし昨日の夜に戻れるのであれば、こんなにも苦しむことはないのに・・・。
 このまま家に帰って、何事もなかったかのように明日から過ごせればいいのに・・・。
 どうしたらこの場から逃げ出せるのか、いつの間にかそんなことばかり考えている自分に気がつき、ひどくみじめな気持ちになった。

 ・・・どうしたら良いのかはわからない・・・・・・でも、ちゃんとこなたと話をしなくちゃ。例え、それでこなたに嫌われたとしても・・・・。

 こういう時に逃げ出せない自分の性格を疎ましく思いながら、私は重い足取りで階段を上っていった。
 屋上に着くと、去年の私と同じように、一人フェンス越しに校庭を見ているこなたの姿が見えた。
 その表情からは、こなたがどんな気持ちでいるのかはわからなかったけれど、昼休みの様子からは、きっとすごく緊張してるんだろうなと思った。

 私も口の中がカラカラに渇いていて、別の意味で緊張していた。
 本当はすぐにでも階段を駆け降りて、ここから逃げ出してしまいたい気持ちだったけれど、こなたのことを考えると、どうしてもそれはできなかった。

「・・・・こなた」
「か、かがみ!?」

 こなたは驚いた顔で私の方を見た。顔が赤くなっているのは、きっと夕焼けのせいだけではないのだろう。

「・・・・こなたはどうしてこんなところにいるの?」
「へ?あ、ああ、いや、ちょっとねー」

 こなたは人差し指で頬を掻きながら、少し照れているような顔をした。
 きっとこの後誰がくるのか楽しみにしているんだろうな・・・。
 そう思うと、自分がしたこと、そしてこれからやろうとしていることが、こなたに拒否されるんじゃないかと不安になった。
 心臓はドクドクと大きな音をたて、私の体温を上昇させる。
 私はその不安を吐き出すかのように大きく息を吐き、覚悟を決めて口を開いた。

「・・・・もしかして・・・手紙をもらったからとか?」
「え・・・・・?  ・・・そ、そう、だけど・・・・」
「・・・・・・それ書いたの・・・・私。・・・・・・・・・ごめん」

 私の言葉を聞いたこなたは、茫然と私を見ていた。
 無理もないよね・・・・。あんなに期待してたんだもん・・・・・。正直に謝るしかないよね・・・・。

 しばらくするとこなたは下を向き、無言で肩を揺らし始めた。
 も、もしかして・・・・泣いてる!?
 驚いて近寄ると、突然こなたが顔をあげた。

「・・・・・ふっふっふっ。全てお見通しなのだよ。かがみ」
「え?」
「今日が4月1日なのは先刻承知!私を騙そうなんて100万年早いのさ!」

 こなたは、笑顔で私に人差し指を突きつけてそう言うと、そのままクルリと後ろを向いた。

「え? ちょ、ちょっと、待って・・・」
「かがみも案外そそっかしいね~。去年の私と同じ手を使うなんてさ~」
「なっ!」
「いたずら好きの私が、そんなこと見破れないとでも思っているのかね?」
「だ、だから!!」
「照れた芝居もなかなか大変だったよ~」
「し、芝居?」
「まったく、そんなのにコロッと騙されちゃうんだから、かがみも修行が足りないねぇ」

 こなたからの思いがけない言葉は私を戸惑わせた。
 すべてが演技だったのだとしたら、私は演技をしているこなたに心を奪われたの?
 でも・・・、でも、私の気持ちは・・・・・・・。

「ホント、かがみは・・・・・騙し・・・・がいの・・・あ・・・・」

 そこで言葉が止まった。不審に思って顔をあげると、こなたは相変わらず背中を見せていた。

「ね、ねぇ。どうしたの?」
「へ?あ、あ・・・・、ゆ、夕焼けが綺麗だなと思って」
「それに何で鼻声なの?」
「き、気のせいだよ?」
「ちょ、ちょっと顔見せなさいよ」
「あ、あわっ!! ちょっ、まっ」

 肩を持って力任せに振り向かせると、そこには・・・・・緑色の瞳から、大粒の涙を流しているこなたの顔があった。

「なっ!? なんで・・・・・、なんで泣いてんのよ!」
「あ・・・・・・、こ、これは、その・・・・、か、花粉症なんだよ」
「そんなこと今まで聞いたことないわよ!!」
「どうも、ついさっきなっちゃったみたいで」
「そ、そんなことあるわけ・・・」

 その時、最悪のシナリオが頭に浮かんだ。

「・・・・・もしかして・・・・・さっきの手紙、本気だった?」
「!?  そ、そんな・・・・こと・・・・・・・ない・・・よ」

 こなたは否定しながらセーラー服の袖で顔をこすった。けれど、それでも涙は拭いきれず、次々に溢れていった。
 そのうちこなたは両手で顔を覆うと、そのままコンクリートの床にしゃがみ込んで泣き始めた。

「・・・ううぅぅぅ・・・・・ひっ・・・・ひぅぅ・・・・・・」

 その瞬間目の前が真っ暗になった。こなたは強がって見せていたけれど、本当はすごく傷ついていたんだ・・・。
 私は取り返しのつかないことをしちゃったんだ・・・・・・・。
 床にへたりこんで泣いているこなたのところに、すぐにでも行きたかった。
 でも、もし拒否されたらという不安が、こなたへ近づくことを躊躇させていた。

 どれくらい時間が経ったのだろう・・・・・。泣き続けていたこなたの声が、次第に小さくなっていき、そのうち完全に聞こえなくなった。
 私は何も言えず、かといってそこから動くこともできず、こなたも何も話さなかった。
 まるで世界が止まってしまったかのような重苦しい沈黙が流れ、何か言葉を発しなければ、私はそれに押し潰されてしまうような気持ちになっていた。

「あ、あの・・・・さ・・・」

 何も考えずに言った言葉はそこで止まり、また同じ沈黙が流れた。
 気まずい思いで立ち尽くしていると、こなたがうつむいたままの姿勢で話し始めた。

「・・・・・・・・・ごめんね。かがみ。・・・・私、ずっとウソついてた」
「え?」

 な、なんであんたが謝んのよ?

「・・・・・ホントはね、去年、かがみに告白しようと思ってたんだ・・・・・・・」
「!?」
「でも、いざその時になったらすごく怖くなっちゃって・・・・・。だからエイプリルフールって嘘ついて誤魔化しちゃったんだ。
 その日にしたのだって、かがみに断られても誤魔化せるって思っていて・・・・。考えてみたら、その時から逃げ腰だったんだよね・・・」

 自嘲気味にこなたは笑った。

「あの後家に帰ってすごく泣いたんだ。私はあまりにも意気地なしだって・・・・。
 でも、結局その後もかがみに告白する勇気がもてなくて、そのままズルズルきちゃった」
「・・・・・・・・・」
「今日手紙を見た時ね、すぐにかがみの字だってわかったよ。それに、きっと去年の仕返しだなって思って・・・・」
「・・・・・・・・・」
「でも、でもね。もう1回かがみに気持ちを伝えるチャンスなんじゃないかって思ったんだ。
 それに、もしかしたら、かがみも私のこと・・・・・って期待しちゃってて・・・・・。都合良すぎだよね」

 そんなことない・・・・。私だって、去年は・・・・・。

「お昼の時はごめんね。ホント、ただの八つ当たりだったんだ。あの手紙もらってから、かがみのことしか考えられなくて・・・・・。
 でも、ああいう風に言われてつい・・・ね」

 こなたはちょっと気まずそうに笑い、立ち上がった。そして顔をあげると、真剣な顔で私を見つめた。

「・・・・・でもさ、かがみが『ごめん』って言ったから、ああ、やっぱり違うんだなって思って・・・・・。
 そしたら、また急に怖くなっちゃって、必死で誤魔化そうとしちゃって・・・・。
 ・・・・でも・・・・・、でもね、かがみ」

そこで言葉を切ると、こなたの双眸からは、みるみるうちに涙がこみ上げてきた。

「・・・・・・・どうしても辛いんだ・・・。かがみのこと・・・・すごく・・・うっ・・・すごく好きなのに・・・・
 ・・・それを誤魔化そうとすると・・・・ひっ・・ひっく・・・・、胸が・・・・ズキズキして・・苦しいんだ・・・・」
「こなた・・・・・・・・・・」

 その気持ちが痛いほどよくわかった。
 こなたも私と同じように苦しんでいたんだ・・・・。私も・・・・・こなたのことが・・・・・。

「私も・・・・。私も苦しかった・・・・」
「え?」
「最初はこなたの言うように、仕返しのつもりだったの。でも、今日、一日あんたのこと見てたら・・・・・。
 あんたがどうしようもなく可愛くて、自分でも何がしたいのかわからなくなっちゃって・・・・・・・。
 今あんたと話してわかったわ・・・・・。去年、屋上に来たのが男子じゃなくて・・・・あんた、・・・・こなたで・・・
 ・・・・本当に嬉しかった」
「かがみ・・・・・」
「でもね、その時ちゃんと気持ちを言ってほしかった・・・・・・・・」
「・・・・・・・・かがみ。 ・・・・・・ごめんね」

 こなたはすまなそうにつぶやくと、また下を向いてしまった。でも、どうしてもこのことだけは言いたかった。

「こなた・・・・。お願い。ちゃんとした言葉で聞きたいの」

 一瞬こなたの身体がビクッと震えた。でも、これだけはこなたに言ってほしい。
 こなたは少しだけ躊躇していたように見えた。でも、すぐに私に向きなおって、目を潤ませながら口を開いた。

「わ、私・・・・・私・・、かがみのことが好き!・・・・大好きなんだっ!!」

 そう叫んで、私の胸に飛び込んできたこなたを受け止め、そのまま思いきり抱きしめた。こなたは私の腕の中で泣いていた。
 私は黙ってこなたの頭を撫でていた。でも、その沈黙は、さっきのような重苦しいものではなくて、幸せを感じられるすごく温かいものだった。
 気が付くと私の頬を温かいものが流れていた。それに気がついたこなたが、ゆっくりと顔をあげた。
 こなたも涙を流していたけれど、でもその顔は笑っていて、それが妙におかしくて、二人で声を出して笑った。

 嬉しそうに笑うこなたは、さっきの比じゃないくらいにかわいくて、もっと近づきたい、もっと体温を感じたいって思った。
 じっとこなたを見つめると、こなたも顔を赤らめると、静かに目をつぶった。
 そして・・・・・・、そのままこなたにキスをした。

「私もあんたに言わないとね」
「え?」
「こなた。大好き・・・・」

        やっと本当のコトが言えた。


帰り道―
 誰もいなくなった校舎を、2人で手をつないで歩きながら、昇降口に向かっている。
 ふとした瞬間に目が合うと、どちらともなく笑ってしまう。ああ、すごく幸せ・・・・。
 でも、一つだけ気になることがあった。

「ところで、こなた。何で私の字だってわかったの?筆跡は変えていたんだけど」
「ん~? ・・・・大好きな人の字はわかってしまうものなんだよ、かがみん」
「!?」

 こなたは私の顔を覗き込むと、そう言って人差し指を立ててウインクをした。あまりの不意打ちに、一気に顔が熱くなる。

「ば、ば、バカッ!!い、いきなり何言うのよ!!」
「やっぱり、かがみはかわいいな~」

 こなたはしてやったりの顔で笑った。

「そ、そ、そ、そんなこ」
「ま、いつも宿題見せてもらってるからね~」
「ってそれかよ!!」

 ったく、こいつって何が本音で、何が冗談なのか、ホントわかんないのよね・・・・。

「ねぇ?ちょっと寂しくなった?」
「そ、そんな・・・そんなことないわよ!!」

 ホントは寂しいはずなのに、つい強がっちゃう・・・・。私もこなたのことは言えないか・・・・。
 がっくりと肩を落としてため息をつくと、そんな気持ちを察したのか、こなたはつないだ手を離し、私に向きなおった。

「ふふ。でもね、かがみ。大好きって言うのはホントだよ?」

 そう言うと、不意にこなたの顔が近づき、唇が重なった。

「こ、こなた!?」

 唇が離れると、こなたは夕日よりも赤い顔をして、照れくさそうに言った。

「かがみ・・・・・。大好きだよ」
「・・・うん。 ・・・・私も好きよ。こなた」

 そう言って私はこなたを抱き寄せ、もう一度キスをした。

                                了













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コメント:
  • GJ -- 名無しさん (2010-01-04 22:23:39)
  • 目からお汁粉が… -- 名無しさん (2009-11-12 05:32:38)
  • これ読み終わってから 画面がよく見えないんだけど
    故障か? そういやキーボードが水で濡れて…水?

    GJ! -- 名無しさん (2009-11-05 23:07:49)
  • 泣けるんだけど -- 名無しさん (2009-07-27 19:11:12)
  • この文才羨ましい。なんて美しい話だ!! -- 名無しさん (2009-05-08 23:42:40)
  • ふつくしい… -- 名無しさん (2009-05-03 12:30:07)
  • 切なくて
    甘くて
    良い作品でした! -- 無垢無垢 (2009-04-15 00:31:42)
  • こなた、カワイすぐる・・・
    かがみ、カワイすぐる・・・
    GJすぐるSSありがとうございます。 -- 名無しさん (2009-04-14 02:41:17)
  • あれ?目から汗が出たぞ? -- 名無しさん (2009-04-13 23:48:11)
  • とても良かったです…! -- 名無しさん (2009-04-13 19:12:55)
  • あれ?目がうるんで画面が見えないw -- 名無しさん (2009-04-13 17:50:19)
  • うっうっ(泣) -- 名無しさん (2009-04-13 02:04:54)
  • これは綺麗な百合 -- 名無しさん (2009-04-13 01:56:11)
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