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揺れ始め

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だれでも歓迎! 編集
前話:そうあって、欲しいが為
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「今日未明、埼玉県春日部市で父・娘の二人が意識不明の重体で発見されました。
娘の泉こなたさん18歳は手首の動脈を切り、出血多量で極めて危険な状態で、父の泉そうじろうさんは何らかの薬を多量に服用し、意識不明の重体です。
発見者であり従姉妹の少女が救急車を呼び、現在に至った模様です。この一家は父と娘と従姉妹の少女の二人暮しで、警察は父が一家心中を図ったと見て捜査を進めています」
「え……」
朝食をつかさと食べている私は、持っていた牛乳の入ったコップを床に落としてしまった。白い透き通った牛乳が、コップからゆっくりと流れていく。
テレビに映っている、レポーターの後ろに映る家は間違いなく泉家の家だった。そこから父と娘が発見されたということは、それは泉そうじろうと泉こなたに他ならない。
傍目にいるつかさも言葉の発し方を忘れたようにただ呆然としていた。頭がドクンと脈打つような感覚を覚え、思考はめまぐるしいスピードで回転する。
そんな……なんで……。私たちが何かしたのは事実だけど、まさかこんな事態につながるなんて……。
「お、お姉ちゃん……、どうしよう」
必死に振り絞ったような声で言いながら、私の肩を掴み揺らす。
今、昼食をとるこの部屋にいるのは私とつかさとお母さんだけ。お父さんは仕事だし、二人の姉は大学と仕事でもういない。
お母さんが台所で洗い物を済ませ、こちらに振り返るすんでの所で、私は危なげな手つきでチャンネルを変えた。
朝にいつもやっているアニメが流れ、先ほどの緊張など関係なしというように流れている。
「あっ、かがみ! 牛乳溢したんだったら早く拭きなさい!」
「えっ!? あ、うん。ごめんなさい、今拭くわ……」
一瞬、事件のことがお母さんに知られてしまったのかと冷や汗が出たが、平静を必死に取り戻しながら答える。しかし、どうしても尻下がりな口調になってしまう。
恐怖、驚愕から固まってしまっているつかさに声をかけ、我に返らせると急いで準備を整え、つかさを引っ張って家を出た。
こなたの家に私たちが行ってから、ちょうど十日経った朝の出来事だった。


「朝のニュース見た!?」
「見た見た!あれはヤバくないか?同じクラスの奴ら、クラスぐるみでいじめてたんだろ?」
「警察とか来るかもな……」
「それはやばいな、俺たちまで何か聞かれるかも」
かがみとつかさが二人で登校している間、凌桜の生徒たちの話題は専ら今朝のニュースのことだった。
こなたがいじめられていたという事実は、学年の中で広まってからもはや学校全体に広まっているらしい。
近隣の住民たちにも半紙に墨汁を垂らしたように広まっていった事実は、こなたの同じクラスの人たちを冷ややかな目で見るようになった。
特に主犯格であった私とつかさはさっきから後ろから追い抜かれる生徒たちの痛いぐらいの視線に耐えられなかった。
私とつかさがこの状態なのだから、みゆきは一人で登校している分、相当辛いものがあるだろう。
痛いくらいの視線を受けながら、私はやっとのことで自分の教室へと辿りついた。いつもよりずっしりと腕に重みがかかる、重い引き戸を開ける。
こなたも教室に入るときは、こんな心持だったのだろうかと考えると、初めて胸が痛んだ。戸が開く音に気付いたクラスの皆の視線が、一斉に私に集中する。
その視線を一つ一つ見る勇気も無い私は、入ることを拒み続ける足を無理矢理動かし、席に着いた。
周りで話しているのを聞く限り、みゆきはまだ登校していないようだった。優等生のみゆきに限って遅刻は有り得ない。
まさか、逃げたのだろうか。混濁した頭では全てが悪い方へと向いていってしまう。結局、心ここに在らず状態のまま、その日を過ごしきった。
正直、朝のショックが大きすぎて授業やら何やらをどうして過ごしたのか覚えていない、と言ったほうが正しい。私は昼休み、一人で弁当をつついていた。
いつも一緒に弁当を食べていた四人は、二人欠けているし、日下部も峰岸も朝から逃げるようにして目を合わせてくれない。けど、それでいい。
今の私と関わったら、日下部たちは怪しまれるし、蔑まれるのだから。みゆきは結局、今日は学校を休んだらしい。
みゆきのことについて先生が触れなかったところを見ると、学校に連絡も入れてないらしい。自責の念からなのか、それとも単に怖くなって逃げているのか。
そう考えてみると、在り得ない話ではない。計算高いみゆきのことだ、あのときの事件以来暗くなってしまったみゆきはこなたのいじめに率先して取り掛かっていた。
私とつかさが恐くなる程に。先日のこなたの家に行くという計画も、思いついたのはみゆきだった。
入念に計画立てていたみゆきには、おぞましささえ感じた。そして放課後、帰る支度をしているときに黒井先生に肩を叩かれた。
ついに来たか、と自分でも無意識に背筋が伸びるのが分かる。
「……何ですか?」
「今日の放課後、つかさと一緒に行きたいところがある。着いてきてくれへんか?」
先生の口調は怒りや蔑みのようなものではなく、ただ力無かった。
「はい、呼んできます……」
つかさのクラスに行き、先生が呼んだ旨を簡単に伝え着いてきてもらった。先生に呼ばれたことに驚く様子も見せず、つかさは着いてきてくれた。
黒井先生は私とつかさを乗せて、車である病院へと連れてきてくれた。朝、テレビで報道されたときに映っていた病院だった。県立病院なのでそれなりの大きさだった。
車から降りると先生は着いて来いと言わんばかりに、無言で歩き始めた。私もつかさも黙ってついていく。先生に着いていくままに辿りついた場所は、精神科の病棟だった。
想像はついていた。あの事件で奇跡的に一命を取り留めたこなたの父親は、精神的に病んでしまったらしく精神科にいるのだと。
黒井先生が連れてきた理由は、こなたの父親が話があると言って、私たち二人を呼ぶように言ったからだった。
みゆきさんとはもう話を済ませたらしく、私たちだけを呼んだのだ。
「ここや」
黒井先生が止まったところは、長い狭い廊下にいくつもあるドアのうちの一つだった。病院に入ってから全ての空間が白かった。
廊下も、人が着ている服も、外も、何もかもが。そのせいもあって、今いる空間に現実味を見出せなくなっていた。
そして、いつのまにか黒井先生がどこかに行ってしまった事にも違和感を覚えない。妙に落ち着いたつかさを後ろに、私はドアノブを回した。
キィと軋む音がしたあと、入ってきた世界はさっきと同じ世界。ただそこには、淡い紺の髪をした、こなたの父親が白いテーブルを前に座っていた。
「やあ、取り合えずそこにかけてくれ」
やわらかい口調でそう言われたので、二人で素直に従った。
「あの、お話というのは……?」
中々切り出そうとしないので、失礼承知で私から切り出した。
「ああ。長くなるが、いいかい?」
息をするように話す話し方に、表情は感じ取れなかった。
「構いません」
「私も」
私に遅れて了解したつかさを確認して、こなたの父親は話し出した。
「話している間、どうか何も言わないで聞いて欲しい。
ニュースで見たと思うが、こなたは……俺の娘は今集中治療室にいる。ゆーちゃんが救急車を呼んでくれるのが早かったから、俺もこなたもまだ生の状態にある。
しかし情けないな、父親である俺が何もできなかったのに、ゆーちゃんが俺たちを助けてくれるなんて。こなたは、うつを苦に自殺を図った。
俺がこなたの部屋に入ったときは、もう意識は切れ切れだった。その中でこなたに聞いた話と、自己満足みたいだけれどその後から今に至るまでの話をしたいと思う。
あの報道の仕方ではこなたは昨日逝ったように取れるが、俺の意識だとこなたが逝ったのは十日くらい前なんだ。
君たちが帰ったあと、こなたの部屋に入ったら真っ赤な血を先が細いホースで巻き散らしたみたいに、部屋は血で濡れていた。君たちが殺したとは考えなかった。
そのときこそ君たちを信じていたから、君たちのことなんて片鱗にも浮かばなかった。
俺がこなたを上半身だけ抱き起こして話しかけると、それこそあの夜の小雨の音でさえかき消されそうなくらいの声でこなたは俺を見ながら言ったんだ。
『私、死んじゃうよ……。我慢できなかった、お父さん……。最後まで普通の生活がしたいってお願い、叶わなかったな……』そこで、こなたは咳き込んだ。
こなたの細い手首からは、まだ血が流れていたよ。『けどね、最後の最後のお願いは、叶ったんだ……。最後は、お父さんの側でいきたかったんだ……。
ありがとう、お父さん……』って言ってさ。そこから先、夜が明けるまでの俺の記憶は殆ど無い。ただ、朝に居間で鏡を見たときに漫画みたいに目が赤く腫れていた。
多分、泣きに泣きまくったんだろうな。声がかすれていて、喉が痛んだ。俺は前日の出来事が信じられなくて、もう一度こなたの部屋に行ったんだ。
何の感情も沸いてこなかった。あまりに変わりすぎた日常を、俺は受け止める事ができなかった。こなたの部屋に入ると、開いている窓にかかったカーテンが揺れていた。
鮮血で染まっていたはずの部屋は、誰かが片付けたように綺麗に、むしろ以前のこなたの部屋よりも綺麗に片付いていた。
前日にこなたが横たわっていた場所には、白いワンピースを着たこなたが同じ体制で寝ていた。そしたら、かなたが伸びをして立ち上がったんだ。
不思議な光景だった。こなたの部屋に、いるはずのこなたがいなくて、かなたが立っていたからね。
ああ、かなたっていうのは、こなたの母さん、つまり俺の妻だった人だ。
家に泊まりに来たときに、アルバム見たらしいから分かると思うんだけれど、こなたとかなたはとても似ているんだよ。
だから、かなたの姿にこなたを重ねてしまった俺は、そこで大人げもなく泣いてしまったんだ。
愛した人を、二人も失ってしまったんだという実感が、そのときありありと沸きあがってきてね。
そしたら、かなたが腕を広げて母親のみたいに俺を迎えようとするんだ。昔と全く変わってない、あの笑顔で。俺は恐る恐る近づいて、そっとかなたの肩に両手を置いた。
温かい、かなたの温もりが感じられたよ。触れることが出来る、すぐそこにかなたがいる。俺は娘のことなんか忘れてしまって、かなたと抱き合って俺は泣き続けた。
声を押し殺して泣き続けると、涙が止まるのは早かった。」
こなたの父親の話は、前に置いたように長く続いた。けれど、私たちはずっとその話を聞いていた。それで、今後の身の振り方を決めようと思ったのが大きい。
頭の中では、二つの思考がめまぐるしく回転している。一つはこなたが万が一助からなくても、その罪は私たちに降りかかるのではないかということ。
もう一つはこなたの容態が良くなった場合、私たちはどう接すれば良いのか、だった。前者は明らかな自己保身に走る考えだった。
そうは言っても、誰だって先ずわが身が惜しいのだ。開き直るわけではないが私は子供を持ったことは無いので、親が自分よりも子供を優先させるという感情が理解できないけれど、それでも私は先ずは我が身なのだと気が付く。
こなたをいじめたことによる、こなたの自殺。こういうケースの事件の加害者は、大抵捕まってしまうのが落ちだった。
それは当たり前のことで、しょうがないことで、受け入れなければならない罰で。後者への対処は決まっている。
謝るのだ。誠心誠意を込めて、土下座でもして、しろというなら足の裏だって舐める覚悟で。みゆきは分からないが、少なくともつかさも私と同じ心境だと思う。
いけないことだと分かっていながらの行動なだけに、その思いは今になって強くなってくる。
どうしようもなく申し訳ない気持ちになり、過去の自分がどうしようもなく憎らしく、恥ずかしい。
今さらになって取り替えしの付かないことをしたんだという自覚が沸いてくる。
一人の人間を虐げただけのつもりが、今はそのせいで私は病院に居て、しかも警察沙汰になっているのだ。そして何より、そのせいで自分は大きく苛まれている。
こなたを弾き者にし、そして歯止めがつかなくなってしまった私たちは、自分たちをも陥れていることすら気付かず、エスカレートさせていく。
かつての友人だったこなたは、今集中治療室の白い部屋の中で、何本もの管が繋がれた状態で眠っているという。意識がいつ戻るのか分からない。
こなたの父親がこんなに早く意識を取り戻せたこと自体、奇跡に等しいのだ。話をしている最中、時間が来たのか、私たちの背から看護士さんの声が聞こえた。
長く話していた気がした、それこそ何時間も。こなたのお父さんが部屋を出るまで、私とつかさはその場にただじっと座って、見えない未来を見据えようとしていた。

病院を出ると先生がによりかかりながら、ずっと遠くを見つめているのが目に入った。私たちに先生が気付くと先生は黙って車に乗り込んだ。
先生が運転席、私たちは後部座席に座った。窓から差し込む赤い夕日にさえ、私は悲しみを抱くようになっていた。
ふと、ポケットの中で震える携帯に気がつき、その画面を開くとメールが来ていることを告げる便箋のアイコンが表示されていた。
中を見て背を駆ける閃光のような感覚に、自分でも少し驚く。

今から話せませんか。こなたお姉ちゃんのことで聞きたいことがあるんです。

差出人欄には、小早川ゆたかとあった。



















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  • 少し前に、自殺スレで同じような話があったよwww
    こなたを自殺に追い込んだかがみ達が、逆に追いつめられる話w -- 名無しさん (2009-06-27 21:15:03)
  • 話の展開幅が広くなって面白くなってきたなww続き期待してまっす!! -- 名無しさん (2009-06-25 00:52:01)
  • これは・・反撃開始かな? -- 名無しさん (2009-06-24 16:11:04)

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