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らき☆すた SEXCHANGE ~柊鏡・『親友』編~

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だれでも歓迎! 編集
 柊鏡には好きな相手がいる。
 泉こなたという少女だ。
 弟のつかさの友達という繋がりで紹介されたチビでオタクな女の子。
 なんだこいつは?
 最初の感想はそれだった。
 やる気もなく、だらしない。素材として良いかもしれないが、おしゃれや美容に興味はないらしく、メイクも最低限。
 上に二人の姉を見てきた身としては、信じられない存在だった。
 性格も悪い。何かにつけて人をからかってきて、その反応を楽しむ。
 いつも余裕たっぷりで、宿題を見せてくれと悪びれもせずに言ってくる。
 全くなんて奴だ。そんな奴に……惚れてしまった。
 理由は分からない。
 けれどそんなものなのかもしれない。
 恋は病気だ。原因が存在しない、本態性の疾患。
 自覚したのはいつだったか分からない。
 けれども彼が恋に落ちたのは本当で、けれど焦りはしなかった。
 まだ時間はあるさ。あんな奴を好きになるような馬鹿は自分しかいない。
 そんな確信があった。だから焦らなかった。
 親友の一人と言う位置で、ゆっくりとチャンスを待つつもりだった。
 けれど…そんな計画の根底である確信が、慢心に過ぎないことに気づかされた。
 彼女のいいところを知る者が二人いたのだ。
 そして…それに気付いた時は遅かった。



 妙なことになった。
 かがみは顔をしかめていた。
 理由は自分の弟と、頼りになる眼鏡の親友の間に流れる空気だ。
「つかさ君…それは?」
「うん、こなちゃんにクッキー焼いたんだ。…ちょっとお詫びにね」
「お詫び?何かこなたさんとあったんですか?」
「ちょっとね」
 駅前のバス停で、珍しく二日連続で会えたみゆきが、つかさが持っていた紙袋を指摘したのが始まりだった。
 何気ない会話、だったとかがみは思う。
 けれどその会話が引き金になったようで、二人の間に妙な空気が流れ始めている。
 気まずい、といより、何かこう……威嚇しあっているような雰囲気だ。
 もちろんそろって歯をむいて胸ぐらをつかみあっているわけでも、声を荒げてメンチ切ってるわけでもない。
 双方とも笑顔さえ浮かんでいる、穏やかな雰囲気だ。
 けれど……なんだろう?この雰囲気は?なにか互いに牽制し合っているような空気は?
 かがみはどうしたのかと聞きたかったが、何がと返されても言葉に詰まる。
 ああ、どうしよう。
 そう悩んでいる所に、
「やふー、みんなおはよー」
 こなたの間延びした感じの声が、この時ばかりは天の救いに聞こえた。
 かがみはこなたに声をかけようとしたが…
「こなちゃん」
「こなたさん」
 先を争うように、つかさとみゆきが言う。
 もちろん、ただ被ったという可能性もあるが、かがみにはなぜか互いに先を争っているように聞こえた。
 さらに先を行ったのはつかさだった。
「こなちゃん、これ」
 クッキーの詰まった紙袋を差し出す。
「えっと……」
「昨日のお詫び。ごめんね、怖い思いさせて…」
 昨日、という単語にこなたがわずかに反応した。
 なんのことだろう?そう言えば昨日、こなたが神社に傘を借りにきたと父さんが言っていたが、その時のことか?
 かがみが首をかしげていると、こなたが答えた。いつも通りの余裕たっぷりの表情で。
「ううん、こっちこそごめんね。変な風にからかって…。『今まで通り』これからもよろしくね、つかさ」
 なぜか、こなたが『今まで通り』の所を強調したようにかがみには聞こえた。
「うん。けど…今まで通りは無理、かな?」
 つかさの言葉で、かがみはさらに不審を覚える。
 今まで通りでいられない何かが、昨日あった?
 こなたが何か言いたそうにしている。かがみは気になって問いただそうとしたが、そのタイミングをみゆきが奪った。
「こなたさん、おはようございます」
「あ、おはよう、みゆき君」
「ふふふ……みゆき『クン』ですか。そう言えば、僕だけ君付ですね」
「え、だ、駄目かな?」
「いえ、特別扱いされてるみたいで嬉しいですよ」
 何か珍しく追い詰められたような雰囲気のこなたと、そしてさらに珍しいみゆきの軽口。
 何か変だと、かがみの疑問はいよいよ深まっていく。
「……昨日のは、冗談とかじゃありませんから」
 それだけ言って、いつもの冬ソナスマイルを浮かべるみゆき。
 それを聞いてなぜかこなたは顔をそむけるような感じで道を見て
「あ、ば、バスきたよ!」
 昨日俺がしたように話題の転換を試みる。
 けれど、こなたにそんな態度をとらせた2人は、こなたではなく互いを見ていた。
 笑顔ではなくなっていた。
 つかさは優しい―――歯に衣着せて言うとなよなよしい雰囲気がなりを潜め、まるで挑むような表情でみゆきを見ていた。
 そしてみゆきは、礼儀正しい彼には珍しい、あからさまな挑発の笑顔を作っていた。
 本当に、何があったのか?
 だが少なからず分かったことがある。
 彼ら三人の変調の中心はこなたであることと、そして自分が蚊帳の外にいること。


 それがなぜか妙にざらつく感じがして、かがみには酷く面白くなかった。


「いや、なぜかなんて今さらだな」
 放課後、俺は一人で校舎を歩いていた。
 目的地はこなたの教室。手にはメール。
《放課後、ちょっとうちの教室に来て、一人で。内緒で》
 内緒で、とはおそらくみゆきとつかさに対してのことだろうとかがみは予想した。
 だがらつかさには、適当に用事をぼかして言って先に帰ってもらった。こなた自身は今日は用事で早く帰る早々に学校を飛び出したが、
おそらく近くのコンビニででも時間を潰してから戻ってきていることだろう。
 かがみは今日のことを思い出す。かがみとつかさ。今日の二人は何か変だった。
 四六時中と言うわけではない。いつもどおりにみゆきは知恵袋だったし、つかさは景気よく呆けていた。
 けれど時々、まるで発作でも起こるかのように、時々空気が妙になる。
 そして、その時は必ずこなたが中心にいる。
「はぐらかすようなら、あのアホ毛引っこ抜いてやる」
 このまま不発弾の上でタップダンスをするような、いつ爆発するか分からない雰囲気を過ごしたくはない。
 それに…
「俺だけ知らないってのは、納得いかないよな」
 自分はこなたを好きな男だ。一番近くにいたいと思い続け、そして現にそれなりにいい位置にいるはずだ。
 その自分が知らないのは気に入らない。
 そうこう考えているうちに教室に着いた。
「じゃあ、死んで――とか言わないよな」
 最近ハマったラノベのシーンを思い出して、苦笑する。どうやらこなたがうつったようだ。
 気分を軽くしてから扉を開く。
「こなた、いるか?」
 声を掛けて教室に入って…言葉を失った。
 こなたは、かがみの入ってきた方に背を向けて座っていた。
 見ている先は夕日だった。
 外からの夕日で影になったこなたの小さな背中。
 かがみには、それが不安で儚そうに見えた。それこそ、そのままどこかに消えてしまいそうなほどに。
「あ、かがみ。いらっしゃ~い」
 幻想は砕かれる。
 砕いたのはこなたのいつもの間延びした口調だ。
 けれど、かがみが感じた幻想の欠片はかがみの意識に残り、今日一日で溜まっていた疑問を刺激する。
「どうしたんだよ?」
「何が?」
「呼び出しといてそりゃないだろ?
 ―――つかさとみゆきのことだな。お前も、何か変だったし」
 答えは無言の肯定だった。
 かがみはこなたの隣に座り、無言で待つ。
 急かしはしない。
 もし彼女がすぐに言わないなら言うまで待つ。
 もし彼女が何も言わないというなら―――それでもいい。
 それでこなたの気持ちが少しでも軽くなるなら、それでもいい。
 かがみは待つ。
 ビルの合間から覗く夕陽の欠片がゆっくりと消えていく。
 教室が暗くなる。
 こなたが言葉を漏らしたのは、かがみが教室に電気をつけようとしたその時だった。
「私さ―――みゆき君とつかさに告白されちゃったみたいなんだ」
「――はぁっ!?」
 どういうことだ!?
 叫び出したい気持ちをギリギリで抑える。
 けれどその気持が伝わったのか、こなたは続ける。
「あ、いやさ。好きだとか愛してるとか、直接言われた訳じゃないんだけど…」
 せきを切ったように語られ始めたのは、昨日こなたが体験した、日常の終わりだった。



「―――それでさ、今朝バス停であんな感じで……」
「そう、か…」
 全てを聞き終えた時、かがみの頭の中は真っ白だった。
 こなたに――自分の好きな相手が告白されたことによる焦り。
 告白したのが、自分が最も近いと思っていた二人だったことによる驚き。
 こなたがどう思っているかという不安。
 混乱した頭は、逆に一番聞きたいことを口に出させた。
「どう……するつもり?」
 口に出して、恐怖する。
 もしもどちらかと付き合うと言ったらどうしようか?
 もしもどちらも降ると言ったらどうしようか?
 どちらにしてもその答えは、恋と友情の一方、あるいは両方が崩壊する。
 けれども、こなたが口にしたのは別の答え。
「―――わからないよ」
「わかんないってどういうことだよ!」
 声を荒げてしまう。
 ああ、カッコ悪い。
 そうは思ったが、かがみは止まらなかった。
 突き動かすのはそのいい加減な答えに対する、告白した二人への共感による怒りと、
 そしてこなたを自分以外の誰か、それも親友二人が好いていたことに対する苛立ちへの八当り。
 けれど、その怒りはすぐ鎮火された。
 怒りの火を消したのは―――こなたの涙だった。
「だって…本当に分からないんだよ…っ!」
 泣いていた。いつもは猫のようにしている口元を噛みしめながら、大きく深い瞳からポタポタと涙をこぼして…。
「こなた…」
 何と言葉を掛けていいか分からず、かがみはそれを見つめることしかできない。
 こなたは子供がするように、袖口で涙を拭いながら言う。
「中学の頃さ―――仲がいい…友達が、いたんだよ。男の子でさ。
 将来の夢に…魔法使いって書く面白い奴でさ……!
 そいつも親友だと思ってたのに…告白されて…!けど、友達としか見れないから断って…!
 そしたらなんか気まずくなって…、話さなくなって…!
 高校になってから連絡取ったけど…ひっく…やっぱり気まずくて…!
 ぁ!やだよ…!つかさも!ひっ、みゆ、き君も……!
 やだぁ!もういなくなるの…!やだぁぁっ…!」
 しゃくりあげながら、やだやだと繰り返すこなた。
 そこにいたのは、いつものやたらと余裕があって、こちらをからかってくるチビオタ女じゃなかった。
 友達を傷つけたくなくて、失いたくなくて、助けを求めているちっちゃな女の子だった。
 かがみは思った。こなたを助けたいと。
 助けたい。慰めてやりたい。抱きしめて―――やりたい。
 衝動のままに、かがみはこなたの肩に手をやって…


「大丈夫だ」
 抱きよせはしなかった。肩に手をやったまま、こなたの泣き顔を覗き込む。
「かがみ……」
 鼻をすすりながら、こなたがかがみを見る。
 抱きしめたい。その衝動が再びかがみの中に膨れ上がる。けれどかがみはそれを抑えつける。
 自重しろ!我慢しろ!なぜならこなたが―――
「なんとかなるから。俺も相談に乗るし協力もするだって俺―――」
 俺に求めているのは―――!
「―――親友、だろ?」
 そうだ。
 かがみは妙に冷めた気持で理解する。
 こなたが自分達に―――自分に求めていたのは、異性じゃない。信頼できる親友だ。
 初めから、勝ち目のない戦いだった――いや、ひょっとしたら勝ち目はあったのかもしれない。
 つかさとみゆき。二人が想いを伝えたのが同時でなければ、こなたは告げてきた方と付き合っていたろう。
 ―――親友の輪を、今の関係を保つために。
 それを利用すればこなたに最初に―――つかさやみゆきよりずっと早く惹かれていた自分は、彼女を得ることができた。
 卑怯な、けれどあったかもしれない未来。
 だがチャンスの神様には前髪しかない。
 情報統合思念体のインターフェイスをしている知り合いも、TPDDを持ってる先輩もいない自分に出来ることはない。
 できることがあるとすれば――
「俺は、お前の親友でいるから、だから泣くなよ」
 あるとすれば、それはこの想いを封じて、親友として彼女の隣に立って、その笑顔を守ることだけだ。
「――ありがとう、かがみ」
 こなたが笑う。涙の跡は残っているが、それでも笑顔だ。
 自分の言葉でこなたが笑った。
 その事実がたまらなく嬉しくて、けれどその対価として封じ込めた心が、


 痛かった。


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コメント:
  • かがみんカコイイ -- 名無しさん (2009-03-31 19:44:38)
  • イケメンすぎてワロタwww
    -- 名無しさん (2008-06-09 03:35:31)
  • ヤバイ、マジ感動 -- 秋 (2007-12-31 15:40:09)

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