「お~、今日は見事に晴れてるねぇ」
こなたは、ベッドから体を起こし、カーテンを開けて青い空を見た。
すがすがしい朝だった。
いつもは明日が休みとなると、徹夜でネトゲをするのだが、前日はこなたも疲れていたため、
すぐ横になった。
「早起きは三文の得、かぁ……」
いつもは気だるい朝だが、すがすがしく目覚められると、たまには早起きも悪くないな、と思ってしまう。
こなたはタンスを開けて私服に着替えると、朝食を食べようと居間に向かった。
こなたは、ベッドから体を起こし、カーテンを開けて青い空を見た。
すがすがしい朝だった。
いつもは明日が休みとなると、徹夜でネトゲをするのだが、前日はこなたも疲れていたため、
すぐ横になった。
「早起きは三文の得、かぁ……」
いつもは気だるい朝だが、すがすがしく目覚められると、たまには早起きも悪くないな、と思ってしまう。
こなたはタンスを開けて私服に着替えると、朝食を食べようと居間に向かった。
「おはよ~」
「おはよう、こなた。珍しいな、いつもだったら、昼に起きるっていうのに」
居間では、そうじろうがテーブルの椅子に座って、新聞を読んでいる。
「私だって、休日でも早起きすることぐらいあるんだよ」
こなたは、ハチミツをたっぷり塗った食パンと、目玉焼きとコーヒーを作りテーブルに座った。
「いただきます」
食パンをかじるとたっぷりハチミツを塗っているせいか、噛みしめるたびにハチミツがパンから絞り出され、
春の甘みを彷彿させた。
「そうそう、こなた」
そうじろうは、新聞からこなたに視線を移した。
「きょうはゆーちゃんが来るって知ってるよな」
「あれ?今日だっけ」
こなたは、カレンダーに目をやった。
2月○日に、赤い丸で「ゆーちゃんの来る日」と書いてある。
「あー、そうだったね」
「ゆいちゃんから連絡があったんだが、1時頃にはこっちにくるって」
「1時か……」
こなたは、時計を見ると、8時を指していた。
「まだ時間に余裕があるな……」
アニメのDVDを見ようにも、持っているものは全て見てしまったし、
かといって外に行こうにも特に用事もない。
「しょーがない。ネトゲでもしますか……」
こなたは、食器を台所に持っていくと、自分の部屋に戻り、パソコンの電源をつけた。
「さぁ~て、更新はあるかな……」
いつものようにお気に入りサイトに登録してあるホームページのチェックをしたが、
特にめぼしい更新はなく、こなたは、デスクトップにあるネトゲのショートカットをクリックした。
「……あれ?」
こなたは、腕を組んだ。
「結局早起きしても、やることはおんなじじゃん……」
「おはよう、こなた。珍しいな、いつもだったら、昼に起きるっていうのに」
居間では、そうじろうがテーブルの椅子に座って、新聞を読んでいる。
「私だって、休日でも早起きすることぐらいあるんだよ」
こなたは、ハチミツをたっぷり塗った食パンと、目玉焼きとコーヒーを作りテーブルに座った。
「いただきます」
食パンをかじるとたっぷりハチミツを塗っているせいか、噛みしめるたびにハチミツがパンから絞り出され、
春の甘みを彷彿させた。
「そうそう、こなた」
そうじろうは、新聞からこなたに視線を移した。
「きょうはゆーちゃんが来るって知ってるよな」
「あれ?今日だっけ」
こなたは、カレンダーに目をやった。
2月○日に、赤い丸で「ゆーちゃんの来る日」と書いてある。
「あー、そうだったね」
「ゆいちゃんから連絡があったんだが、1時頃にはこっちにくるって」
「1時か……」
こなたは、時計を見ると、8時を指していた。
「まだ時間に余裕があるな……」
アニメのDVDを見ようにも、持っているものは全て見てしまったし、
かといって外に行こうにも特に用事もない。
「しょーがない。ネトゲでもしますか……」
こなたは、食器を台所に持っていくと、自分の部屋に戻り、パソコンの電源をつけた。
「さぁ~て、更新はあるかな……」
いつものようにお気に入りサイトに登録してあるホームページのチェックをしたが、
特にめぼしい更新はなく、こなたは、デスクトップにあるネトゲのショートカットをクリックした。
「……あれ?」
こなたは、腕を組んだ。
「結局早起きしても、やることはおんなじじゃん……」
それからネトゲに没頭していると、玄関のチャイムの音がした。
「お、姉さん来たかな?」
こなたは、ネトゲのキャラの状態を退席中にさせると、玄関に向かった。
「やっほ~、こなたにおじさん。これ、おみやげのケーキ」
玄関には、既に二人とも入ってきていた。
成実ゆいと、小早川ゆたかだ。
「お、ありがとう。さぁ上がって上がって」
そうじろうは二人に居間に来るよう、促した。
「そんじゃ、おじゃましまーす。ゆたか、だいじょうぶ?」
「うん、もうあんまり痛くはないから……」
「ん?どしたのゆーちゃん」
「まぁ、詳しい話は居間でするよ」
「お、姉さん来たかな?」
こなたは、ネトゲのキャラの状態を退席中にさせると、玄関に向かった。
「やっほ~、こなたにおじさん。これ、おみやげのケーキ」
玄関には、既に二人とも入ってきていた。
成実ゆいと、小早川ゆたかだ。
「お、ありがとう。さぁ上がって上がって」
そうじろうは二人に居間に来るよう、促した。
「そんじゃ、おじゃましまーす。ゆたか、だいじょうぶ?」
「うん、もうあんまり痛くはないから……」
「ん?どしたのゆーちゃん」
「まぁ、詳しい話は居間でするよ」
「んで、どうしたの?」
こなたはゆいにはコーヒー――ビール持ってきてと言われたが、車を運転しているからダメと言った――、
ゆたかにはあったかいココアを用意した。
おみやげに持ってきたというケーキは、甘くておいしそうで、
あまり飾り付けをしていないシンプルなイチゴのショートケーキだった。
「うん、実はね、ゆたかが陵桜の試験を受けに行ったとき、不良たちにおなか殴られたらしいのよ」
「うそ!?」
不良たちに殴られた?
こなたは、この手の事件は大嫌いだった。
人にちょっかいを出す不良たちを見ると、いやな気分になる。
以前ネトゲしているときに聞いた話だが、一人の男性が秋葉原でうろついていると、オタク狩りにあったそうだ。
何度も暴行を加えられた挙句、持っていた金の大半を盗まれてしまったらしい。
自分もよく利用する秋葉原でこんな事件が起こると、黙っていられなくなる。
とはいっても、今回の状況は、従姉妹が陵桜に試験を受けにいった話しだが、それでも怒りを覚えることには
変わりはない。
「それで、どこ殴られたの?」
こなたは、心配そうにゆたかに尋ねた。
「うん、ここなんだけど……」
ゆたかが、服をめくろうとした。
「ストップ、ゆーちゃん!……ちょっと、お父さん」
「ん、な、なんだ?」
「こっから先は男子禁制です」
「いや、こなた、その、ほら、俺もどうなっているか気になるんだよ……」
こなたは、そうじろうを指した。
「ゆい姉さん!連行してください!」
「ラジャー!」
ゆいは、懐からどうやって持ちこんだかは分からないが、手錠を取り出して、そうじろうの腕にかけた。
「さ、おじさんはしばらく向こうに行っててくださいな」
「な!?ちょ、ちょっとゆいちゃん!?どうしてそんな手錠なんか持ってきて……」
ゆいはそうじろうをひきずって、どこかの部屋にそうじろうを置いてきた。
「お待たせー」
「ゆい姉さん……そのうち拳銃とか持ちだすんじゃ……」
「やだなぁ~拳銃なんか持ちだしたら、始末書どころじゃすまないよ」
「手錠ならいいんだ……まぁ、それはともかくゆーちゃん、男子がいるところで不用意に
服をめくっちゃだめだよ」
こなたは、一息おいて呟いた。
「こういうところは、みゆきさんと同じ天然、かな……」
「天然?」
ゆたかは、首をかしげた。
「まぁいいや、ところで、ケガのほうは?」
「あ、うん、ここなんだけど……」
ゆたかは服をめくって、腹を出した。
パッと見では、特に外傷は無いようだ。
「ここのへその上あたりが痛いんだ……」
「ここ?」
こなたは、ゆたかの痛い部分に触れてしまったためか、ゆたかは「いたっ」と声を上げた。
「あ、ごめんゆーちゃん……」
「ううん、平気。ちょっと痛かっただけだし、痛みも大分おさまってるし」
ゆたかは、服を下ろした。
「それにしても、許せないね……」
こなたは、怒りこもった声で言った。
「ゆーちゃん相手に暴力を振るうだなんて」
「まったくだよ」
ゆいも同じく、妹に手を出されたことに腹を立てているようだった。
「ゆーちゃん、今度その不良たちを見かけたら、お姉さんに言ってね。私が退治してきてあげるから!」
「ゆたか、お姉ちゃんも、署から拳銃持ちだして、戦ってあげるからね!」
「ちょ!ゆい姉さん、さっき始末書じゃすまないって……」
「冗談だよ、冗談」
「あ、あの」
ゆたかが、二人のやりとりに口を挟んだ。
「実は、私を助けてくれた人がいるんだけど……」
ゆいは、思い出したかのように、指をパチンと鳴らした。
「そうそう、たしかゆたかから聞いた話によると、不良たちをボコボコにしただけでなく、
ゆたかを保健室まで連れてってくれた親切な人がいたんだよ」
こなたは、感心したように言った。
「へぇー、そんな人がいたんだ。どんな人?」
「えっとね……」
こなたはゆいにはコーヒー――ビール持ってきてと言われたが、車を運転しているからダメと言った――、
ゆたかにはあったかいココアを用意した。
おみやげに持ってきたというケーキは、甘くておいしそうで、
あまり飾り付けをしていないシンプルなイチゴのショートケーキだった。
「うん、実はね、ゆたかが陵桜の試験を受けに行ったとき、不良たちにおなか殴られたらしいのよ」
「うそ!?」
不良たちに殴られた?
こなたは、この手の事件は大嫌いだった。
人にちょっかいを出す不良たちを見ると、いやな気分になる。
以前ネトゲしているときに聞いた話だが、一人の男性が秋葉原でうろついていると、オタク狩りにあったそうだ。
何度も暴行を加えられた挙句、持っていた金の大半を盗まれてしまったらしい。
自分もよく利用する秋葉原でこんな事件が起こると、黙っていられなくなる。
とはいっても、今回の状況は、従姉妹が陵桜に試験を受けにいった話しだが、それでも怒りを覚えることには
変わりはない。
「それで、どこ殴られたの?」
こなたは、心配そうにゆたかに尋ねた。
「うん、ここなんだけど……」
ゆたかが、服をめくろうとした。
「ストップ、ゆーちゃん!……ちょっと、お父さん」
「ん、な、なんだ?」
「こっから先は男子禁制です」
「いや、こなた、その、ほら、俺もどうなっているか気になるんだよ……」
こなたは、そうじろうを指した。
「ゆい姉さん!連行してください!」
「ラジャー!」
ゆいは、懐からどうやって持ちこんだかは分からないが、手錠を取り出して、そうじろうの腕にかけた。
「さ、おじさんはしばらく向こうに行っててくださいな」
「な!?ちょ、ちょっとゆいちゃん!?どうしてそんな手錠なんか持ってきて……」
ゆいはそうじろうをひきずって、どこかの部屋にそうじろうを置いてきた。
「お待たせー」
「ゆい姉さん……そのうち拳銃とか持ちだすんじゃ……」
「やだなぁ~拳銃なんか持ちだしたら、始末書どころじゃすまないよ」
「手錠ならいいんだ……まぁ、それはともかくゆーちゃん、男子がいるところで不用意に
服をめくっちゃだめだよ」
こなたは、一息おいて呟いた。
「こういうところは、みゆきさんと同じ天然、かな……」
「天然?」
ゆたかは、首をかしげた。
「まぁいいや、ところで、ケガのほうは?」
「あ、うん、ここなんだけど……」
ゆたかは服をめくって、腹を出した。
パッと見では、特に外傷は無いようだ。
「ここのへその上あたりが痛いんだ……」
「ここ?」
こなたは、ゆたかの痛い部分に触れてしまったためか、ゆたかは「いたっ」と声を上げた。
「あ、ごめんゆーちゃん……」
「ううん、平気。ちょっと痛かっただけだし、痛みも大分おさまってるし」
ゆたかは、服を下ろした。
「それにしても、許せないね……」
こなたは、怒りこもった声で言った。
「ゆーちゃん相手に暴力を振るうだなんて」
「まったくだよ」
ゆいも同じく、妹に手を出されたことに腹を立てているようだった。
「ゆーちゃん、今度その不良たちを見かけたら、お姉さんに言ってね。私が退治してきてあげるから!」
「ゆたか、お姉ちゃんも、署から拳銃持ちだして、戦ってあげるからね!」
「ちょ!ゆい姉さん、さっき始末書じゃすまないって……」
「冗談だよ、冗談」
「あ、あの」
ゆたかが、二人のやりとりに口を挟んだ。
「実は、私を助けてくれた人がいるんだけど……」
ゆいは、思い出したかのように、指をパチンと鳴らした。
「そうそう、たしかゆたかから聞いた話によると、不良たちをボコボコにしただけでなく、
ゆたかを保健室まで連れてってくれた親切な人がいたんだよ」
こなたは、感心したように言った。
「へぇー、そんな人がいたんだ。どんな人?」
「えっとね……」
「はぅぅぅ~~~、緊張したぁ……」
入学試験という人生の別れ道を切り抜けたゆたかは、今まで張りつめた緊張の糸がきれたのか、
まるで糸が切れた凧みたいに、フラフラしている。
ゆたかは、持ってきた教科書を読んで答えを確認しようと、ベンチに座った。
「うんうん、ここの問題は大丈夫だったね……。うん、間違いない」
自分のベストは尽くした。
あとは結果を待つだけだ。
「よし」
ゆいが来るにはまだ時間があった。
ゆたかは、試験会場に向かう前に、学校近辺にケーキ店があるのを見逃さなかった。
これから泉家に向かうのであれば、おみやげも持っていくべきだろう。
それに、ちょうど自分も食べたかったりもした。
ゆたかは立ち上がって、ケーキ店に向かった。
入学試験という人生の別れ道を切り抜けたゆたかは、今まで張りつめた緊張の糸がきれたのか、
まるで糸が切れた凧みたいに、フラフラしている。
ゆたかは、持ってきた教科書を読んで答えを確認しようと、ベンチに座った。
「うんうん、ここの問題は大丈夫だったね……。うん、間違いない」
自分のベストは尽くした。
あとは結果を待つだけだ。
「よし」
ゆいが来るにはまだ時間があった。
ゆたかは、試験会場に向かう前に、学校近辺にケーキ店があるのを見逃さなかった。
これから泉家に向かうのであれば、おみやげも持っていくべきだろう。
それに、ちょうど自分も食べたかったりもした。
ゆたかは立ち上がって、ケーキ店に向かった。
校門を抜け、車で来た道筋を思い出しながら足早にケーキ店に向かった。
「なに買おうかな……。やっぱりイチゴが基本だよね。でも、チョコレートも捨てがたいなぁ……」
ゆたかは、今までの受験に対するプレッシャーが解き放たれたため、気分が軽かった。
少なくとも、この時までは。
そして、この後に、彼女にとって、運命的な出会いを果たすことになった。
「ねぇそこのきみ、ちょっといい?」
ゆたかは振り向くと、そこに三人の女学生がいた。
一人は茶色のショートカットで、後の二人は金色のロングヘアー。制服から察すると、
陵桜の生徒ではなさそうだ。
三人ともバッグに大量のキーホルダーを付け、やたら厚い化粧をしている。
なにか悪いことでも企んでいるかのようなにやけに、ゆたかは、直観的に『不良グループ』と感じ取った。
「な、なんですか?」
ここで無視すると、なにをされるか分からなかったので、とりあえず返事をした。
「ねぇちょっといい?あたしらと話しがあるんだけどさぁ」
「あ、あの!」
不良グループは、ゆたかの腕をいきなり握りしめると、人通りの少ない裏道に連れて行かれた。
「なに買おうかな……。やっぱりイチゴが基本だよね。でも、チョコレートも捨てがたいなぁ……」
ゆたかは、今までの受験に対するプレッシャーが解き放たれたため、気分が軽かった。
少なくとも、この時までは。
そして、この後に、彼女にとって、運命的な出会いを果たすことになった。
「ねぇそこのきみ、ちょっといい?」
ゆたかは振り向くと、そこに三人の女学生がいた。
一人は茶色のショートカットで、後の二人は金色のロングヘアー。制服から察すると、
陵桜の生徒ではなさそうだ。
三人ともバッグに大量のキーホルダーを付け、やたら厚い化粧をしている。
なにか悪いことでも企んでいるかのようなにやけに、ゆたかは、直観的に『不良グループ』と感じ取った。
「な、なんですか?」
ここで無視すると、なにをされるか分からなかったので、とりあえず返事をした。
「ねぇちょっといい?あたしらと話しがあるんだけどさぁ」
「あ、あの!」
不良グループは、ゆたかの腕をいきなり握りしめると、人通りの少ない裏道に連れて行かれた。
裏道は、猫一匹もおらず、そこらへんに紙屑やらアルミ缶が転がっていた。
薄汚れたポリバケツからは、嫌な匂いが漂っており、昼だというのに、
まるで曇っているかのような雰囲気だった。
ゆたかの周りに、不良グループが囲んでおり、背後にはブロック塀があるため逃げることができなかった。
ゆたかは、本能的に危険を感じ、震えていた。
「あのさぁ」
不良グループの内のショートヘアーが口を開いた。
「金、貸してほしいんだけどさ」
ゆたかは、自分の見てきたテレビ番組の経験上、これは弱い者に対して行うたかり行為だった。
『金を貸してほしい』とはいうが、実際には金なんて返ってこない。
もともとたかるつもりだからだ。
「だ、だめですよ……」
ゆたかは、水気のないぞうきんを絞るように、言った。
「このお金は大切なお金なんです……見ず知らずの人に貸すわけにはいきません」
金髪のロングヘアーが、面倒くさそうに言った。
「私たちねぇ、今お金に困ってんのよ。それでさぁ、すぐに返すから、ね、ね?」
――その笑みは、ぜったい嘘だ。
ゆたかは、手に持っていたバッグを、胸に持っていき、誰にも盗られないように強く抱きしめた。
「か、返すったって……あなたたちは、絶対、返す、人のようには、見えません……」
しどろもどろにゆたかは、反論した。
茶髪のショートヘアーが、少し強気で言った。
「……ねぇ、痛い目見るのと、少しだけお金貸すの、どっちがいい?」
ゆたかは、息を飲んだ。
まるで、蛇に睨まれた蛙のように、ゆたかの体が動かなかった。
(怖い、怖い……お姉ちゃん、助けて……!)
ゆたかは、必死に姉が助けに来てくれるよう、祈った。
しかし、その祈りもむなしく、金髪のロングヘアー二人は、ゆたかの両腕を強引に広げた。
バッグは、ゆたかの右手にしっかりと握られている。
「ほら、少しでいいって、言ってるじゃん!」
「いやぁ……!離してぇ……!」
助けを呼ぼうにも、ゆたかは恐怖のあまり、声が出なかった。
茶髪のショートヘアーの女学生は、ゆたかの腹めがけて、右の拳を放った。
「っ!!」
ゆたかはうずくまって、右手から、バッグが落ちた。
不良グループは、まるで金魚が餌に集まるように、バッグを漁って、財布を取り出した。
ゆたかは、当たり所が悪かったのか、息ができずに苦しんだ。
「じゃ~ね~♪お金出来たら返しにいくからね~♪」
まるで子供みたいにはしゃぎながら、不良グループは一目散に走った。
「お願い……!返してぇぇ…………」
追いかけようにも、腹部の痛みが激しく、立ち上がることができなかった。
ゆたかは、悔しさのあまり、泣き出しそうになった。
ゆい、泉家の人たちにケーキを送って喜ばせようと思ったのに、痛い目にあって、お金まで盗られて……。
その時だった。
不良グループの前に、一人の男が立ちふさがった。
大きな男で、身長が185センチもあり、肩には大きなバッグをかけ、黒い学生服を着ている。
恐らく、体重は70~80キロはあるだろう。
学ランは前を開けており、たおやかな黒いマントのように風でなびいている。
緑色の髪をしており、一流の職人が削り上げた一点の曇りもないサファイアのような蒼色の瞳からは、
冷たい水に濡れた日本刀で突き刺すような視線で、相手を見つめている。
まるで体中がマグマで構成されているようなスマートな肉の付き方であることが、服の上からでも分かった。
拳は、格闘技でもやっているのだろうか、まるで所々デコボコがついている黒く熱を持った
巨大な岩石のようだった。
全体の雰囲気からして、世界の終りを表す血のように赤い空に、地獄の土のような黒い雲が
広がっている中、一匹の獣がいる。
その獣は、少しでも逆鱗に触れようものなら、全てを完膚なきまでに叩きのめし、
大量の原型が留まっていない――中には、割れた骨が皮膚を貫き、苦痛の表情を浮かべた――
人間達の死骸の上に君臨している黒く鈍い光を放つ毛並みをした巨大な狼のような雰囲気が漂っている。
「……お前ら」
男が、口を開いた。
「こんなところでなにをやっているんだ?」
男の声に、ゆたかは、聞き覚えがあった。
以前泉家に遊びに行った時、こなたが見ていた「ヘルシング」というアニメで、
主人公アーカードの声がゆたかは気に入った。
名前を覚えておこうと思い、アニメのスタッフロールで確認した。
確かその声優の名前は……
中田 譲治。
その人にそっくりの声だった。
「どうも穏やかな雰囲気じゃねぇな……」
男は、首の骨をコキリと鳴らした。
「お願いします……!財布を、取り返してください!」
ゆたかは、精一杯の力を振り絞って、言った。
男は、ゆたかと不良グループを交互に見た。
不良グループは、なんとかこの状況を打開しようと、子供のような声で言った。
「いやさ、この子とあたしらは、友達なんだよ。少しばかりお金借りちゃってさ、
すぐ返すって言ってんのにしつこいんだよ」
男は、小さい声ではあるが、力強く言った。
「友人から金を借りるのに、腹を殴る必要があるのか?」
「いや、あの子突然お腹壊しちゃってさ。うずくまってるわけ」
不良グループは、いやらしい笑みを浮かべた。
「嘘をつくな」
男は、不良グループに一歩近づいた。
「返しな……。それとも、痛い目見るか?」
「……あんた、なんだよ、借りたって言ったじゃん!すぐに返すからさ、そこどいてくんない?」
男は、一歩もゆずらず、言った。
「三回は言わない……。返すか、痛い目を見るか……」
ショートカットの女学生は、うざそうに男を睨んだ。
「あんたもしつこいねぇ。それに、痛い目合わすということは、あんたは、
女に暴力振るうって言うのか――」
その時、男は右足の太股をあげて膝を曲げた。
瞬間、一気に膝をまっすぐに伸ばし、つま先部分をショートカットの女学生のみぞおちに自分の全体重をかけ、
躊躇なくぶちのめした。
前蹴りだ。
生々しい音と共に、女学生は一気に吹っ飛ばされた。
前蹴りは、向かってくる敵に対して間合いをとるためだけでなく、直線的な技ゆえに体重をかけやすく、
正確なコースで体重をかけ、急所を狙えばかなりの破壊力を生む。
女学生は、うずくまって口からよだれを垂らしている。
突然の不意打ちでみぞおちに食らってしまったため、女学生は息がつまり体内の空気を全て排出するように
咳き込んだ。
「殴る気はねぇ……」
男は、呟いた。
「最初から蹴るつもりだった」
二人のロングヘアーの女学生は、まるで殺人鬼が起こした殺人現場に居合わせた民間人のように、凍りついた。
「あ、あんた……女に向かって、暴力を振るうなんて……」
「あ?」
男は、脅すように言った。
「人の物を盗ろうとするやつが、いざ痛い目見た時には、女を強調するのかよ……」
そこで、一息ついた。
「ふざけんじゃねぇ」
男は、静かに、しかし、叫んでいるかのように言った。
「女だったら、痛い目見ずに済むとでも思ってんのかお前らは?
自分より弱いやつから物をたかろうとするやつなんざ、男でも女でもどいつもゲス野郎だ。
ましてや、あそこの女を殴ったお前らに、女を強調する資格はねぇ」
二人は、心底怯えきった様子で、無理やりショートカットの女学生を起こさせ、退散することにした。
「お、覚えとけよ!」
二人は、いかにも悪役らしいセリフを吐いた。
「あぁ、覚えておくさ……」
男は、ゆっくりと、呟いた。
「次にてめぇらのツラを見かけた時は――」
そして、野獣のような瞳で睨んだ。
「千発ぶちこんでやる」
不良グループは、息を飲み、そそくさと退散した。
男は、舌打ちすると、いつのまにか地面に落ちていた財布を拾い上げ、土を払い落とし、
無言でゆたかに差し出した。
ゆたかは、しばらく衝撃的な光景に混乱していたが、差し出されたサイフを見て反射的に受け取った。
お礼の言葉を言おうにも、頭の回転が付いていかず、黙ってうつむいてしまった。
男は、ゆたかがサイフを取るのと同時に、ゆたかに一瞥もしないで足早にその場を立ち去ろうとした。
「あ、あの!……うっ……」
ゆたかは、まだ痛みが治まっていないため、またうずくまった。
男は振り返って、ゆたかの様子を見た。
「……痛むのか?」
男は、灰色で端に「Led Zeppelin」と書かれたハンカチを取り出し、ゆたかの口の端から垂れている
よだれを拭いた。
「近くに学校がある。一緒に保健室に行くか?」
「いえ、だ、大丈夫です……」
男は、ため息をついて、いきなりゆたかをお姫様ダッコした。
「あ、あの!」
ゆたかは、いきなりのことで驚きを隠せなかった。
「顔色が悪いぞ。……無理はするな」
「悪いですよ……。サイフを取り戻しただけじゃなく、ここまでやってもらうなんて……」
ゆたかは、遠慮がちに言った。
「どうせ乗りかかった船だ。気にするな」
「……すみません」
男は、馬のように高校まで走って行った。
裏道を出た瞬間、通行人はまるで檻から放たれた野獣を見るように男を見たが、男は全く気にしなかった。
薄汚れたポリバケツからは、嫌な匂いが漂っており、昼だというのに、
まるで曇っているかのような雰囲気だった。
ゆたかの周りに、不良グループが囲んでおり、背後にはブロック塀があるため逃げることができなかった。
ゆたかは、本能的に危険を感じ、震えていた。
「あのさぁ」
不良グループの内のショートヘアーが口を開いた。
「金、貸してほしいんだけどさ」
ゆたかは、自分の見てきたテレビ番組の経験上、これは弱い者に対して行うたかり行為だった。
『金を貸してほしい』とはいうが、実際には金なんて返ってこない。
もともとたかるつもりだからだ。
「だ、だめですよ……」
ゆたかは、水気のないぞうきんを絞るように、言った。
「このお金は大切なお金なんです……見ず知らずの人に貸すわけにはいきません」
金髪のロングヘアーが、面倒くさそうに言った。
「私たちねぇ、今お金に困ってんのよ。それでさぁ、すぐに返すから、ね、ね?」
――その笑みは、ぜったい嘘だ。
ゆたかは、手に持っていたバッグを、胸に持っていき、誰にも盗られないように強く抱きしめた。
「か、返すったって……あなたたちは、絶対、返す、人のようには、見えません……」
しどろもどろにゆたかは、反論した。
茶髪のショートヘアーが、少し強気で言った。
「……ねぇ、痛い目見るのと、少しだけお金貸すの、どっちがいい?」
ゆたかは、息を飲んだ。
まるで、蛇に睨まれた蛙のように、ゆたかの体が動かなかった。
(怖い、怖い……お姉ちゃん、助けて……!)
ゆたかは、必死に姉が助けに来てくれるよう、祈った。
しかし、その祈りもむなしく、金髪のロングヘアー二人は、ゆたかの両腕を強引に広げた。
バッグは、ゆたかの右手にしっかりと握られている。
「ほら、少しでいいって、言ってるじゃん!」
「いやぁ……!離してぇ……!」
助けを呼ぼうにも、ゆたかは恐怖のあまり、声が出なかった。
茶髪のショートヘアーの女学生は、ゆたかの腹めがけて、右の拳を放った。
「っ!!」
ゆたかはうずくまって、右手から、バッグが落ちた。
不良グループは、まるで金魚が餌に集まるように、バッグを漁って、財布を取り出した。
ゆたかは、当たり所が悪かったのか、息ができずに苦しんだ。
「じゃ~ね~♪お金出来たら返しにいくからね~♪」
まるで子供みたいにはしゃぎながら、不良グループは一目散に走った。
「お願い……!返してぇぇ…………」
追いかけようにも、腹部の痛みが激しく、立ち上がることができなかった。
ゆたかは、悔しさのあまり、泣き出しそうになった。
ゆい、泉家の人たちにケーキを送って喜ばせようと思ったのに、痛い目にあって、お金まで盗られて……。
その時だった。
不良グループの前に、一人の男が立ちふさがった。
大きな男で、身長が185センチもあり、肩には大きなバッグをかけ、黒い学生服を着ている。
恐らく、体重は70~80キロはあるだろう。
学ランは前を開けており、たおやかな黒いマントのように風でなびいている。
緑色の髪をしており、一流の職人が削り上げた一点の曇りもないサファイアのような蒼色の瞳からは、
冷たい水に濡れた日本刀で突き刺すような視線で、相手を見つめている。
まるで体中がマグマで構成されているようなスマートな肉の付き方であることが、服の上からでも分かった。
拳は、格闘技でもやっているのだろうか、まるで所々デコボコがついている黒く熱を持った
巨大な岩石のようだった。
全体の雰囲気からして、世界の終りを表す血のように赤い空に、地獄の土のような黒い雲が
広がっている中、一匹の獣がいる。
その獣は、少しでも逆鱗に触れようものなら、全てを完膚なきまでに叩きのめし、
大量の原型が留まっていない――中には、割れた骨が皮膚を貫き、苦痛の表情を浮かべた――
人間達の死骸の上に君臨している黒く鈍い光を放つ毛並みをした巨大な狼のような雰囲気が漂っている。
「……お前ら」
男が、口を開いた。
「こんなところでなにをやっているんだ?」
男の声に、ゆたかは、聞き覚えがあった。
以前泉家に遊びに行った時、こなたが見ていた「ヘルシング」というアニメで、
主人公アーカードの声がゆたかは気に入った。
名前を覚えておこうと思い、アニメのスタッフロールで確認した。
確かその声優の名前は……
中田 譲治。
その人にそっくりの声だった。
「どうも穏やかな雰囲気じゃねぇな……」
男は、首の骨をコキリと鳴らした。
「お願いします……!財布を、取り返してください!」
ゆたかは、精一杯の力を振り絞って、言った。
男は、ゆたかと不良グループを交互に見た。
不良グループは、なんとかこの状況を打開しようと、子供のような声で言った。
「いやさ、この子とあたしらは、友達なんだよ。少しばかりお金借りちゃってさ、
すぐ返すって言ってんのにしつこいんだよ」
男は、小さい声ではあるが、力強く言った。
「友人から金を借りるのに、腹を殴る必要があるのか?」
「いや、あの子突然お腹壊しちゃってさ。うずくまってるわけ」
不良グループは、いやらしい笑みを浮かべた。
「嘘をつくな」
男は、不良グループに一歩近づいた。
「返しな……。それとも、痛い目見るか?」
「……あんた、なんだよ、借りたって言ったじゃん!すぐに返すからさ、そこどいてくんない?」
男は、一歩もゆずらず、言った。
「三回は言わない……。返すか、痛い目を見るか……」
ショートカットの女学生は、うざそうに男を睨んだ。
「あんたもしつこいねぇ。それに、痛い目合わすということは、あんたは、
女に暴力振るうって言うのか――」
その時、男は右足の太股をあげて膝を曲げた。
瞬間、一気に膝をまっすぐに伸ばし、つま先部分をショートカットの女学生のみぞおちに自分の全体重をかけ、
躊躇なくぶちのめした。
前蹴りだ。
生々しい音と共に、女学生は一気に吹っ飛ばされた。
前蹴りは、向かってくる敵に対して間合いをとるためだけでなく、直線的な技ゆえに体重をかけやすく、
正確なコースで体重をかけ、急所を狙えばかなりの破壊力を生む。
女学生は、うずくまって口からよだれを垂らしている。
突然の不意打ちでみぞおちに食らってしまったため、女学生は息がつまり体内の空気を全て排出するように
咳き込んだ。
「殴る気はねぇ……」
男は、呟いた。
「最初から蹴るつもりだった」
二人のロングヘアーの女学生は、まるで殺人鬼が起こした殺人現場に居合わせた民間人のように、凍りついた。
「あ、あんた……女に向かって、暴力を振るうなんて……」
「あ?」
男は、脅すように言った。
「人の物を盗ろうとするやつが、いざ痛い目見た時には、女を強調するのかよ……」
そこで、一息ついた。
「ふざけんじゃねぇ」
男は、静かに、しかし、叫んでいるかのように言った。
「女だったら、痛い目見ずに済むとでも思ってんのかお前らは?
自分より弱いやつから物をたかろうとするやつなんざ、男でも女でもどいつもゲス野郎だ。
ましてや、あそこの女を殴ったお前らに、女を強調する資格はねぇ」
二人は、心底怯えきった様子で、無理やりショートカットの女学生を起こさせ、退散することにした。
「お、覚えとけよ!」
二人は、いかにも悪役らしいセリフを吐いた。
「あぁ、覚えておくさ……」
男は、ゆっくりと、呟いた。
「次にてめぇらのツラを見かけた時は――」
そして、野獣のような瞳で睨んだ。
「千発ぶちこんでやる」
不良グループは、息を飲み、そそくさと退散した。
男は、舌打ちすると、いつのまにか地面に落ちていた財布を拾い上げ、土を払い落とし、
無言でゆたかに差し出した。
ゆたかは、しばらく衝撃的な光景に混乱していたが、差し出されたサイフを見て反射的に受け取った。
お礼の言葉を言おうにも、頭の回転が付いていかず、黙ってうつむいてしまった。
男は、ゆたかがサイフを取るのと同時に、ゆたかに一瞥もしないで足早にその場を立ち去ろうとした。
「あ、あの!……うっ……」
ゆたかは、まだ痛みが治まっていないため、またうずくまった。
男は振り返って、ゆたかの様子を見た。
「……痛むのか?」
男は、灰色で端に「Led Zeppelin」と書かれたハンカチを取り出し、ゆたかの口の端から垂れている
よだれを拭いた。
「近くに学校がある。一緒に保健室に行くか?」
「いえ、だ、大丈夫です……」
男は、ため息をついて、いきなりゆたかをお姫様ダッコした。
「あ、あの!」
ゆたかは、いきなりのことで驚きを隠せなかった。
「顔色が悪いぞ。……無理はするな」
「悪いですよ……。サイフを取り戻しただけじゃなく、ここまでやってもらうなんて……」
ゆたかは、遠慮がちに言った。
「どうせ乗りかかった船だ。気にするな」
「……すみません」
男は、馬のように高校まで走って行った。
裏道を出た瞬間、通行人はまるで檻から放たれた野獣を見るように男を見たが、男は全く気にしなかった。
「……失礼します」
男は足で、保健室のドアを開けた。
保健室には、三つのベッドがあり、奥には洗面台がある。
幸い、誰も保健室を利用していないようだ。
「あら、どうしたのですか?」
物陰から、黒くて長い髪をした女性が出てきた。
おっとりしていて、まるで優しい母親のように、母性的な雰囲気をしている。
白衣の胸ポケットの名札には、『天原』と書かれている。
「不良が、こいつの腹を殴った」
男は、ゆたかをベッドに下ろした。
「え、それは大変ですね!大丈夫ですか?」
ゆたかは、しどろもどろに答えた。
「……はい、大丈夫です」
天原は、言った。
「じゃぁ、ちょっと殴られたところ、見せてくださいね。……あぁ、それと」
「俺は後ろを向いていればいいんだな……」
男は窓のところに向かい、グラウンドを見つめた。
天原は、ゆたかの制服をめくり、腹を見た。
「……赤くなっている以外、特に目立った外傷はないようですね。痛むようであれば、
ここのベッドで横になっていて下さい」
「ありがとうございます」
天原は、男の方に向かって言った。
「一体どうしたんですか?」
男は天原のほうを向いた。
「ケーキ屋の近くで、変な声がしていたから覗きにいったら、女の不良達がこいつを絡んでいた……」
「それで、どうしたんです?」
「……痛い目に合わせて脅しておいた」
天原は、驚いたように手で口を覆った。
「つまり、暴力で解決したんですね?」
「言っても聞かねぇからな……」
天原は、渋い顔をした。
「でも、すぐに暴力をふるうのもどうかと思いますが……。
ましてや、相手が女の子だったら、なおさら……」
「話が通じる相手であれば、俺も最初から腹を蹴ってはいない……」
「腹を蹴って……」
「あ、あの、天原先生!」
ゆたかが、二人の会話に口を挟んだ。
「その人は悪くないです!絡まれた私が悪いんです……」
「違うな、お前は何も悪くない。悪いのは、騒ぎを大きくした俺とあいつらだけだ」
男は、ゆたかに言った。
「……まぁ、ともかくあなたも、あまりこういう暴力沙汰は起こさないほうが身のためですよ?」
天原は、観念したように言った。
「……努力はする」
男は、ベッドの隣にあるイスに座り、ゆたかを見た。
「ところで――」
「兄貴ぃぃぃぃ~~~~!!!!」
男の会話を遮るような声が保健室に響いた。
ゆたかはドアを覗きみると、黒い髪をして、メガネをかけた身長が175センチある男子学生が入ってきた。
「兄貴、こんなところにいたんスね!?いや~捜したっスよ~」
この男の声は、声優の難波圭一という人にそっくりだった。
「お前なぁ……先に帰ってろと言っただろ」
「そんな釣れないこと言わないでさ~一緒に帰りましょうよ~……っと、そっちの女の子は?」
「えぇ」
天原が、説明した。
「どうやらこの子が、不良達に絡まれているところを、そっちの男の子が助けたそうです」
「あぁ、あれやっぱり兄貴だったんだ」
「あれ?」
ゆたかは、首を傾けた。
「兄貴って、人が困っているところ見ると、放っておけない性格なんスよ。
途中、通行人が「女の子をお姫様抱っこした大きな男の子が、学校に向かって走って行った」って、
聞いたから」
「あら」
天原は、笑いながら男を見た。
「女の子を運ぶ時、お姫様抱っこしちゃったの?」
「……」
「お~、兄貴照れてる照れてる」
男は、無表情でゆたかのほうに向きなおった。
「……話を戻すが、何しに行ってたんだ?」
「あ、私は、普段お世話になっている人と、これからお世話になる人がいるので、
その人たちにケーキを贈りたいと思って……」
「………………」
男は、しばらく考え込むと、男のバッグを開けた。
「あ、兄貴!それはゆかり姉貴の……」
「………………」
「……分かったよ。兄貴のそれは、今に始まったことじゃないし」
男はバッグの中から、白い箱を取り出した。
「さっきのケーキ店で俺が買ったケーキだ、持っていけ。……まぁ、中身はさっき走ったから、
ぐちゃぐちゃになっているかもしれんが」
「えぇ!?」
ゆたかは、驚いた。
無理もない。知り合って間もないというのに、保健室に連れて行ってもらえただけでなく、
ケーキまであげるというのだ。
「そんな、悪いですよ!」
「いいから取っておけ……。今のお前の体で行って、倒れたりでもしたら、もう庇いきれねぇからな」
「でも……」
「……かまわん。たかがケーキだ」
ゆたかは、しばらく考えて、メガネをかけた男子生徒を見た。
「もらっちまいなよ」
メガネをかけた男子生徒が、言った。
「兄貴のいつもの癖だよ。困ってる人を見かけたら、君みたいに助けたがるんだよ」
そして、ゆたかは意を決し、ケーキを受け取った。
「……それじゃぁ、いただきます」
ゆたかがケーキを受け取ると、男はゆたかの頭に手を置いて、かすかに微笑んで、すぐに元の表情に戻った。
「もう行くぞ」
男はイスから立ち上がり、保健室のドアを開けた。
「あ、待ってくれよ兄貴!」
「あの!」
ゆたかが、慌てて呼び止めた。
「……いろいろと、ありがとうございました」
「…………ああ」
男は少し立ち止まったが、すぐに保健室から出て行った。
「……口よりも手のほうが早いって感じだけど、いい人ですね」
天原は、言った。
「……私もそう思います」
ゆたかは、自分が何かを握っていることに気がついた。
それは、先ほど自分のよだれを拭いた男の灰色のハンカチだった。
「……名前、聞いておけばよかったなぁ」
男は足で、保健室のドアを開けた。
保健室には、三つのベッドがあり、奥には洗面台がある。
幸い、誰も保健室を利用していないようだ。
「あら、どうしたのですか?」
物陰から、黒くて長い髪をした女性が出てきた。
おっとりしていて、まるで優しい母親のように、母性的な雰囲気をしている。
白衣の胸ポケットの名札には、『天原』と書かれている。
「不良が、こいつの腹を殴った」
男は、ゆたかをベッドに下ろした。
「え、それは大変ですね!大丈夫ですか?」
ゆたかは、しどろもどろに答えた。
「……はい、大丈夫です」
天原は、言った。
「じゃぁ、ちょっと殴られたところ、見せてくださいね。……あぁ、それと」
「俺は後ろを向いていればいいんだな……」
男は窓のところに向かい、グラウンドを見つめた。
天原は、ゆたかの制服をめくり、腹を見た。
「……赤くなっている以外、特に目立った外傷はないようですね。痛むようであれば、
ここのベッドで横になっていて下さい」
「ありがとうございます」
天原は、男の方に向かって言った。
「一体どうしたんですか?」
男は天原のほうを向いた。
「ケーキ屋の近くで、変な声がしていたから覗きにいったら、女の不良達がこいつを絡んでいた……」
「それで、どうしたんです?」
「……痛い目に合わせて脅しておいた」
天原は、驚いたように手で口を覆った。
「つまり、暴力で解決したんですね?」
「言っても聞かねぇからな……」
天原は、渋い顔をした。
「でも、すぐに暴力をふるうのもどうかと思いますが……。
ましてや、相手が女の子だったら、なおさら……」
「話が通じる相手であれば、俺も最初から腹を蹴ってはいない……」
「腹を蹴って……」
「あ、あの、天原先生!」
ゆたかが、二人の会話に口を挟んだ。
「その人は悪くないです!絡まれた私が悪いんです……」
「違うな、お前は何も悪くない。悪いのは、騒ぎを大きくした俺とあいつらだけだ」
男は、ゆたかに言った。
「……まぁ、ともかくあなたも、あまりこういう暴力沙汰は起こさないほうが身のためですよ?」
天原は、観念したように言った。
「……努力はする」
男は、ベッドの隣にあるイスに座り、ゆたかを見た。
「ところで――」
「兄貴ぃぃぃぃ~~~~!!!!」
男の会話を遮るような声が保健室に響いた。
ゆたかはドアを覗きみると、黒い髪をして、メガネをかけた身長が175センチある男子学生が入ってきた。
「兄貴、こんなところにいたんスね!?いや~捜したっスよ~」
この男の声は、声優の難波圭一という人にそっくりだった。
「お前なぁ……先に帰ってろと言っただろ」
「そんな釣れないこと言わないでさ~一緒に帰りましょうよ~……っと、そっちの女の子は?」
「えぇ」
天原が、説明した。
「どうやらこの子が、不良達に絡まれているところを、そっちの男の子が助けたそうです」
「あぁ、あれやっぱり兄貴だったんだ」
「あれ?」
ゆたかは、首を傾けた。
「兄貴って、人が困っているところ見ると、放っておけない性格なんスよ。
途中、通行人が「女の子をお姫様抱っこした大きな男の子が、学校に向かって走って行った」って、
聞いたから」
「あら」
天原は、笑いながら男を見た。
「女の子を運ぶ時、お姫様抱っこしちゃったの?」
「……」
「お~、兄貴照れてる照れてる」
男は、無表情でゆたかのほうに向きなおった。
「……話を戻すが、何しに行ってたんだ?」
「あ、私は、普段お世話になっている人と、これからお世話になる人がいるので、
その人たちにケーキを贈りたいと思って……」
「………………」
男は、しばらく考え込むと、男のバッグを開けた。
「あ、兄貴!それはゆかり姉貴の……」
「………………」
「……分かったよ。兄貴のそれは、今に始まったことじゃないし」
男はバッグの中から、白い箱を取り出した。
「さっきのケーキ店で俺が買ったケーキだ、持っていけ。……まぁ、中身はさっき走ったから、
ぐちゃぐちゃになっているかもしれんが」
「えぇ!?」
ゆたかは、驚いた。
無理もない。知り合って間もないというのに、保健室に連れて行ってもらえただけでなく、
ケーキまであげるというのだ。
「そんな、悪いですよ!」
「いいから取っておけ……。今のお前の体で行って、倒れたりでもしたら、もう庇いきれねぇからな」
「でも……」
「……かまわん。たかがケーキだ」
ゆたかは、しばらく考えて、メガネをかけた男子生徒を見た。
「もらっちまいなよ」
メガネをかけた男子生徒が、言った。
「兄貴のいつもの癖だよ。困ってる人を見かけたら、君みたいに助けたがるんだよ」
そして、ゆたかは意を決し、ケーキを受け取った。
「……それじゃぁ、いただきます」
ゆたかがケーキを受け取ると、男はゆたかの頭に手を置いて、かすかに微笑んで、すぐに元の表情に戻った。
「もう行くぞ」
男はイスから立ち上がり、保健室のドアを開けた。
「あ、待ってくれよ兄貴!」
「あの!」
ゆたかが、慌てて呼び止めた。
「……いろいろと、ありがとうございました」
「…………ああ」
男は少し立ち止まったが、すぐに保健室から出て行った。
「……口よりも手のほうが早いって感じだけど、いい人ですね」
天原は、言った。
「……私もそう思います」
ゆたかは、自分が何かを握っていることに気がついた。
それは、先ほど自分のよだれを拭いた男の灰色のハンカチだった。
「……名前、聞いておけばよかったなぁ」
「……っていうことがあったんだ」
ゆたかは、ポケットから灰色のハンカチを取り出し、二人に見せた。
「ふーん……これがゆーちゃんを助けた男の人のハンカチかぁ……」
こなたは、ハンカチをマジマジと見た。
「……よだれ付きなら、高く売れそうだねぇ」
「ふえぇ!?」
「こらこら……」
「まぁそれはともかく、よかったねぇ、助けてもらえた上に、ケーキまでもらえるなんて」
こなたは、ハンカチをゆたかに返した。
「また会えるといいなぁ。その時は、ハンカチ返さないと……ところでお姉ちゃん、
陵桜の近くで会った人なんだけど、確か陵桜って、男子は学ランだよね?」
「うん」
「心当たり、ない?陵桜の近くのケーキ屋辺りで会った人だから、そこの学生じゃないかなって……」
こなたは、自分の覚えている限りの男子生徒を考えた。
白石みのる――いや、違うだろう。
身長が180センチも無いはずだし、仮に不良たちがいたとしたら、尻尾をまいて逃げてしまうだろう。
後は、もう、心当たりはなかった。
13クラスもあるマンモス校だが、今まで学校の中で見てきた限りでは、185センチもある男なんて、
見たことも聞いたこともない。
「うーん……ごめん。わかんないや」
「そっか……」
ゆたかは、残念そうに言った。
「……でも、いつかまた会えると思うな。その時には、このハンカチ返さなきゃ」
ゆたかは、ポケットから灰色のハンカチを取り出し、二人に見せた。
「ふーん……これがゆーちゃんを助けた男の人のハンカチかぁ……」
こなたは、ハンカチをマジマジと見た。
「……よだれ付きなら、高く売れそうだねぇ」
「ふえぇ!?」
「こらこら……」
「まぁそれはともかく、よかったねぇ、助けてもらえた上に、ケーキまでもらえるなんて」
こなたは、ハンカチをゆたかに返した。
「また会えるといいなぁ。その時は、ハンカチ返さないと……ところでお姉ちゃん、
陵桜の近くで会った人なんだけど、確か陵桜って、男子は学ランだよね?」
「うん」
「心当たり、ない?陵桜の近くのケーキ屋辺りで会った人だから、そこの学生じゃないかなって……」
こなたは、自分の覚えている限りの男子生徒を考えた。
白石みのる――いや、違うだろう。
身長が180センチも無いはずだし、仮に不良たちがいたとしたら、尻尾をまいて逃げてしまうだろう。
後は、もう、心当たりはなかった。
13クラスもあるマンモス校だが、今まで学校の中で見てきた限りでは、185センチもある男なんて、
見たことも聞いたこともない。
「うーん……ごめん。わかんないや」
「そっか……」
ゆたかは、残念そうに言った。
「……でも、いつかまた会えると思うな。その時には、このハンカチ返さなきゃ」
高良みゆきは、近所の幼馴染み――岩崎みなみ――の家に遊びにいった。
ここの子が、陵桜を受けにいったからだ。
家の大きさは、みゆきと同じくらい大きく、庭では大きな白い犬、チェリーが日向ぼっこしながら、
昼寝をしている。
みゆきは、チャイムを押した。
「はーい。あ、みゆきちゃん」
玄関から、緑色の髪をした、美人な女性が出てきた。
みなみの母親だ。
「こんにちは、今日は、みなみくんに本を返しにきました」
「あら、そう。みなみは、いつもの部屋でギターを弾いているところよ」
「わかりました」
「……ところで、みゆきちゃんのお母さん、どう?」
「えぇ、楽しみにしていたケーキが食べられず、ちょっと拗ねています」
みゆきは、苦笑いを浮かべた。
みゆきの母のゆかりは、高校生の娘がいるとは思えないほど美人で若々しく、
近所の人もおかしな――いい意味でだが――人として知られている。
以前、みなみが友達の田村ひよりを家に遊びに連れてきた時、ゆかりの目に止まった。
ひよりは、ゆかりを「おばさん」と呼んだら頬を膨らまし
「みなみくんのことを兄貴って呼んでるなら、私のことは姉貴って呼んで」と言った。
「あの子、途中で食べたって言っていたしねぇ」
みなみの母は、言った。
「でも、お友達の田村くんは、『ケーキは、兄貴が困っている人を見かけたからあげた』って言っていたわ」
「……みなみくんらしいですね」
「そうねぇ。あの子ってば、素直じゃないんだから。自分の手柄を自慢する子じゃないのよね」
「そこが、みなみくんのいいところだと思います」
みゆきは、家に上がり、いつもみなみがギターを弾いているところに向かった。
部屋の隅には、立派なグランドピアノが置かれている。
やわらかそうなソファには黒い髪で、メガネをかけている男の子が座って本を読んでいる。
そして、もう一人の男は、父親からもらった愛用のギブソン・レスポール・スタンダートを持ち、
100円玉をピック代わりにして弾いている。
首には、愛用しているHOHNER社のMarine Bandを
銀色のハーモニカホルダーに挟み込み、ギターを弾いている時でも吹けるようになっている。
緑色の髪で、ジーパンにシャツ一枚の姿になっており、鍛え上げられて硬そうな肉体が露わになっていた。
そう、この男こそが、ゆたかを助けた男である。
「こんにちは。みなみくん、それに田村さん」
ここの子が、陵桜を受けにいったからだ。
家の大きさは、みゆきと同じくらい大きく、庭では大きな白い犬、チェリーが日向ぼっこしながら、
昼寝をしている。
みゆきは、チャイムを押した。
「はーい。あ、みゆきちゃん」
玄関から、緑色の髪をした、美人な女性が出てきた。
みなみの母親だ。
「こんにちは、今日は、みなみくんに本を返しにきました」
「あら、そう。みなみは、いつもの部屋でギターを弾いているところよ」
「わかりました」
「……ところで、みゆきちゃんのお母さん、どう?」
「えぇ、楽しみにしていたケーキが食べられず、ちょっと拗ねています」
みゆきは、苦笑いを浮かべた。
みゆきの母のゆかりは、高校生の娘がいるとは思えないほど美人で若々しく、
近所の人もおかしな――いい意味でだが――人として知られている。
以前、みなみが友達の田村ひよりを家に遊びに連れてきた時、ゆかりの目に止まった。
ひよりは、ゆかりを「おばさん」と呼んだら頬を膨らまし
「みなみくんのことを兄貴って呼んでるなら、私のことは姉貴って呼んで」と言った。
「あの子、途中で食べたって言っていたしねぇ」
みなみの母は、言った。
「でも、お友達の田村くんは、『ケーキは、兄貴が困っている人を見かけたからあげた』って言っていたわ」
「……みなみくんらしいですね」
「そうねぇ。あの子ってば、素直じゃないんだから。自分の手柄を自慢する子じゃないのよね」
「そこが、みなみくんのいいところだと思います」
みゆきは、家に上がり、いつもみなみがギターを弾いているところに向かった。
部屋の隅には、立派なグランドピアノが置かれている。
やわらかそうなソファには黒い髪で、メガネをかけている男の子が座って本を読んでいる。
そして、もう一人の男は、父親からもらった愛用のギブソン・レスポール・スタンダートを持ち、
100円玉をピック代わりにして弾いている。
首には、愛用しているHOHNER社のMarine Bandを
銀色のハーモニカホルダーに挟み込み、ギターを弾いている時でも吹けるようになっている。
緑色の髪で、ジーパンにシャツ一枚の姿になっており、鍛え上げられて硬そうな肉体が露わになっていた。
そう、この男こそが、ゆたかを助けた男である。
「こんにちは。みなみくん、それに田村さん」
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- これなんてギャルゲー? -- 名無しさん (2009-06-15 20:08:03)