朝になった。
昨日の夜と違って、気分はすっきりしていた。
たぶん、ネームやイラストに描いたことによって、
心に溜まっていた何かがある程度発散できたのだろう。
これなら、ゆーちゃんとみなみちゃんに普段通り接することができそう。
安心しながら、身支度をして家を出た。
昨日の夜と違って、気分はすっきりしていた。
たぶん、ネームやイラストに描いたことによって、
心に溜まっていた何かがある程度発散できたのだろう。
これなら、ゆーちゃんとみなみちゃんに普段通り接することができそう。
安心しながら、身支度をして家を出た。
でも…。
通学途中で、不意にかすかな不安が胸に浮かんだ。
その不安は、根拠も分からないのに少しずつ大きくなっていった。
通学途中で、不意にかすかな不安が胸に浮かんだ。
その不安は、根拠も分からないのに少しずつ大きくなっていった。
…この不安の正体は、何?
あの出来事をネタにいろいろ描いたのがばれないか、ってこと?
あの出来事をネタにいろいろ描いたのがばれないか、ってこと?
そうじゃない。
あれが他の人、特にゆーちゃんやみなみちゃんにばれたら大変なのは事実だけど、
不安なのはそんなことじゃない。
あれが他の人、特にゆーちゃんやみなみちゃんにばれたら大変なのは事実だけど、
不安なのはそんなことじゃない。
…結局、不安の原因は分からないまま学校に着いた。
教室に入っても、みなみちゃんとゆーちゃんはいなかった。
教室に入っても、みなみちゃんとゆーちゃんはいなかった。
普段だったらそんなの、いちいち心配することじゃない。
私が二人より先に着いたってだけのこと。珍しいことじゃない。
もうすぐ、いつものようにバス停で合流して、二人で一緒に来るはず。
頭ではそう分かっているのに、さっきから抱いてる不安が、大きくなった。
私が二人より先に着いたってだけのこと。珍しいことじゃない。
もうすぐ、いつものようにバス停で合流して、二人で一緒に来るはず。
頭ではそう分かっているのに、さっきから抱いてる不安が、大きくなった。
………
二人が、来ない。
………
がらっ。
HR開始のチャイムが鳴る直前、みなみちゃんが教室に入ってきた。
みなみちゃんは…一人だった。
みなみちゃんは…一人だった。
「おはよう、岩崎さん…」
私は不安を抑えながら声をかけた。
「…おはよう」
みなみちゃんは、無理して笑顔を作って答えた。
「あの…小早川さんは…?」
みなみちゃんが一人で来たこと自体が明白な答えなのに、尋ねずにはいられなかった。
「……来なかった」
みなみちゃんの無理した笑顔はあっさり消え、悲しみと不安がその表情を覆った。
「………」
私も、みなみちゃんも、それっきり何も言えなかった。
さっきから感じていた不安の正体が、分かった。
そして、その不安はもう現実のものになっていた。
そして、その不安はもう現実のものになっていた。
ゆーちゃんは昨日の出来事で、学校に来られないぐらい落ち込んじゃったんだ…。
朝のHRが始まった。
先生から、ゆーちゃんは風邪で休みだと告げられた。
風邪は本当なのかもしれない。濡れたままでしばらく泣いてたし、
帰るまではお風呂で温まることもできなかっただろうから。
でも…
先生から、ゆーちゃんは風邪で休みだと告げられた。
風邪は本当なのかもしれない。濡れたままでしばらく泣いてたし、
帰るまではお風呂で温まることもできなかっただろうから。
でも…
「ほんとは、昨日のあれが原因だろうね…」
教室のどこかから、そんな声が上がった。
それは勝手な想像に過ぎないけど…誰もが同じ事を思っていた。
それは勝手な想像に過ぎないけど…誰もが同じ事を思っていた。
「すっごい泣いてたもんね…」
「立ち直るまでしばらく休んじゃうのかな…」
「立ち直るったって…一日や二日じゃ無理そう…」
「もしかしたら、このままもう学校やめちゃったり…」
出てくる見解はどんどん暗くなる。
みなみちゃんの表情は、それらを聞くたびに深く沈み込んでいった。
自分のせいでこうなったんだって、責任を感じているのに違いなかった…。
自分のせいでこうなったんだって、責任を感じているのに違いなかった…。
「そこまで落ち込まなくてもいいのにな…」
誰かがそう言って、教室が同意の空気に包まれた。
そう。ゆーちゃんは落ち込む必要なんかない。
おもらしなんて萌えイベントの一つにすぎない。
非18禁の作品でも普通にある。泉先輩も某萌えドリルでやっちゃうらしいし…。
もし私がしちゃって5分や10分で立ち直れるかって言われたら困るけど、
とにかく、二度と立ち直れないような失敗じゃない。
おもらしのことでゆーちゃんをいじめるような雰囲気もない。
みんな、ゆーちゃんのことを心配してる。
ゆーちゃんが元気に学校に来たら、それで元通りになる…。
おもらしなんて萌えイベントの一つにすぎない。
非18禁の作品でも普通にある。泉先輩も某萌えドリルでやっちゃうらしいし…。
もし私がしちゃって5分や10分で立ち直れるかって言われたら困るけど、
とにかく、二度と立ち直れないような失敗じゃない。
おもらしのことでゆーちゃんをいじめるような雰囲気もない。
みんな、ゆーちゃんのことを心配してる。
ゆーちゃんが元気に学校に来たら、それで元通りになる…。
それに、みなみちゃんも責任を感じる必要なんかない。
あのとき…結果としては、みなみちゃんが触ったことが
ゆーちゃんにとどめを刺してしまったのかもしれない。
でも、みなみちゃんのしたことはあの状況では当然のこと。
あんな苦しそうなゆーちゃんを放っておけるわけ、絶対にない。
それに、触られただけでもらしちゃうような状態まで行っちゃったら
トイレまで歩くどころか、立つことだって無理だったはず。
みなみちゃんが何もしなかったとしても、結末はきっと同じだった。
あのとき…結果としては、みなみちゃんが触ったことが
ゆーちゃんにとどめを刺してしまったのかもしれない。
でも、みなみちゃんのしたことはあの状況では当然のこと。
あんな苦しそうなゆーちゃんを放っておけるわけ、絶対にない。
それに、触られただけでもらしちゃうような状態まで行っちゃったら
トイレまで歩くどころか、立つことだって無理だったはず。
みなみちゃんが何もしなかったとしても、結末はきっと同じだった。
ゆーちゃんがまだ動けるうちに気付いてあげられなかった、
という意味での責任なら、あるかもしれない。
でも、それはみなみちゃんだけじゃなく私にだって言えることで、
みなみちゃんだけが一人で背負い込むことじゃない…。
という意味での責任なら、あるかもしれない。
でも、それはみなみちゃんだけじゃなく私にだって言えることで、
みなみちゃんだけが一人で背負い込むことじゃない…。
………
1時間目の授業が終わると、みなみちゃんは三年生の教室の方に向かっていった。
泉先輩にゆーちゃんのことを聞きに行くのだろう。
一緒に行きたいと思ったけど、みなみちゃんの雰囲気は何だか近寄りにくくて
そのまま見送ってしまった。
泉先輩にゆーちゃんのことを聞きに行くのだろう。
一緒に行きたいと思ったけど、みなみちゃんの雰囲気は何だか近寄りにくくて
そのまま見送ってしまった。
教室で待っていて…また、一つの不安がよぎった。
ゆーちゃんが、みなみちゃんの手を払いのけたことを思い出したから。
ゆーちゃんが、みなみちゃんの手を払いのけたことを思い出したから。
…あれは、私の目には、恥ずかしくて反射的にやってしまったことに見えた。
でも、絶対にそうだっていう根拠はどこにもない。
もしゆーちゃんが、おもらししたのをみなみちゃんのせいだって考えてて、
それをそのまま泉先輩に伝えていたら…。
泉先輩は、みなみちゃんを責めるかもしれない。
でも、絶対にそうだっていう根拠はどこにもない。
もしゆーちゃんが、おもらししたのをみなみちゃんのせいだって考えてて、
それをそのまま泉先輩に伝えていたら…。
泉先輩は、みなみちゃんを責めるかもしれない。
…ううん、大丈夫。
泉先輩はそこまで単純で短気な人じゃない。
もしゆーちゃんがそんな風に伝えてたとしても、
みなみちゃんの言い分もちゃんと聞こうとするはず…。
泉先輩はそこまで単純で短気な人じゃない。
もしゆーちゃんがそんな風に伝えてたとしても、
みなみちゃんの言い分もちゃんと聞こうとするはず…。
…でも、待って。
そうなったとき、みなみちゃんはまともに弁解できるだろうか?
どう考えても…無理だ。
それどころか、聞かれる前に自分のせいだって言ってしまいそう。
そして、みなみちゃん本人からそう聞けば、泉先輩だってそうだと信じて…。
そうなったとき、みなみちゃんはまともに弁解できるだろうか?
どう考えても…無理だ。
それどころか、聞かれる前に自分のせいだって言ってしまいそう。
そして、みなみちゃん本人からそう聞けば、泉先輩だってそうだと信じて…。
…がたっ。
心配が大きくなって、今からでも行こうと立ち上がった。
…でも、そのとき、当のみなみちゃんが戻ってきた。
…でも、そのとき、当のみなみちゃんが戻ってきた。
私の心配は、ただの取り越し苦労だった。
みなみちゃんは、泉先輩と話したことで胸のつかえが少しだけ取れたように見えた。
…ただ、みなみちゃんが今も自分を責め、思い詰めているのは変わりなかった。
みなみちゃんは、泉先輩と話したことで胸のつかえが少しだけ取れたように見えた。
…ただ、みなみちゃんが今も自分を責め、思い詰めているのは変わりなかった。
私はすぐみなみちゃんに話しかけた。
「泉先輩に聞いてきたんだね。小早川さんのこと」
「…うん」
「やっぱり…あのこと?」
「…うん。今朝も、ベッドから出られないぐらい落ち込んでたって…」
「そう…」
「………」
会話が途切れた。
「あのね…」
今朝から、みなみちゃんに言おうと思っていたこと。
今こそ、言うとき。
今こそ、言うとき。
「…岩崎さんが責任を感じることなんて、ないと思う」
「………」
みなみちゃんは、黙ったまま。
「あのときの小早川さん…本当に苦しそうだったもの。
抱っこしてでもすぐ保健室に連れて行こうって、誰だって思うよ。
あのとき岩崎さんがしたことは、間違ってなんかない。
それに…もし岩崎さんが何もしなくたって、あんな状態になってたんじゃ
トイレに行くの、結局は無理だったと思う。
岩崎さんのせいだなんて、誰も思ってないよ…きっと、小早川さんも」
抱っこしてでもすぐ保健室に連れて行こうって、誰だって思うよ。
あのとき岩崎さんがしたことは、間違ってなんかない。
それに…もし岩崎さんが何もしなくたって、あんな状態になってたんじゃ
トイレに行くの、結局は無理だったと思う。
岩崎さんのせいだなんて、誰も思ってないよ…きっと、小早川さんも」
「……ありがとう」
みなみちゃんは微笑んで見せた。
「何だか、気持ちが楽になったよ」
…みなみちゃんは、気持ちを隠すのは上手なのに、嘘をつくのは下手すぎた。
………
お昼が過ぎて、5時間目の授業の最中。
…ぞくっ。
「う…」
突然、おなかに嫌な感覚が走った。
…おしっこ。
しまった…いろいろ考えっぱなしでトイレに行くの忘れてた。
一瞬、ゆーちゃんと同じ運命を辿る自分のイメージが頭に浮かぶ…。
一瞬、ゆーちゃんと同じ運命を辿る自分のイメージが頭に浮かぶ…。
いかんいかん、危ない危ない。
素数を数えて落ち着こう。
i、2i、3i、4i、5i…。
待て待て、それは虚数だ。
素数を数えて落ち着こう。
i、2i、3i、4i、5i…。
待て待て、それは虚数だ。
頭の中でそんなやりとりをしてるうちに、意識がおしっこから離れて落ち着いた。
あと10年…は無理だけど、10分は戦える。
問題は…授業がまだ20分あること。
あと10年…は無理だけど、10分は戦える。
問題は…授業がまだ20分あること。
おしっこを我慢し続けられる時間をnとする。
私はおしっこを1秒我慢できる。当たり前。つまりn=1が成り立つ。。
そしておしっこをk秒我慢できる、つまりn=kが成り立つと仮定する。
そこからさらに1秒ぐらいは我慢できるはずだから…n=k+1も成り立つ。
したがって、nは全ての自然数で成り立つ。
だから、私はおしっこをいつまでも我慢し続けられる…。
私はおしっこを1秒我慢できる。当たり前。つまりn=1が成り立つ。。
そしておしっこをk秒我慢できる、つまりn=kが成り立つと仮定する。
そこからさらに1秒ぐらいは我慢できるはずだから…n=k+1も成り立つ。
したがって、nは全ての自然数で成り立つ。
だから、私はおしっこをいつまでも我慢し続けられる…。
数学の時間に習った理論の応用で、何とか気分を楽にしようとしていると…。
…ぶるっ。
…ん?今、みなみちゃんの体が震えたような…。
気のせいかな…。
気のせいかな…。
ぎゅっ…。
「!」
みなみちゃん、今度は思いっきり脚を閉じた。
そして…そわそわ落ち着かなくなった。
そして…そわそわ落ち着かなくなった。
もしかして…みなみちゃんも…おしっこ?
そういえば、今日はみなみちゃんがトイレ行ったの、一度も見てない。
私と同じように、ゆーちゃんのことを考えてて忘れてたのかも…。
そういえば、今日はみなみちゃんがトイレ行ったの、一度も見てない。
私と同じように、ゆーちゃんのことを考えてて忘れてたのかも…。
…やがて、みなみちゃんのそわそわは収まった。
落ち着いたみたい…よかった。
落ち着いたみたい…よかった。
それにしても…みなみちゃんがあんなに焦っちゃってるの、初めて見た。
普段のクールさとのギャップがたまらない…。
普段のクールさとのギャップがたまらない…。
…気が付くと、私の左手は既に、さっきのそわそわしてたみなみちゃんを
ラフ画にしてノートに記録していた。
これを見たら…みなみちゃん、さすがに怒るだろうな。
ラフ画にしてノートに記録していた。
これを見たら…みなみちゃん、さすがに怒るだろうな。
おしっこ我慢の仕草には どこか危うくて切なそうで
これから何か始まる? 期待してみたいほど…
これから何か始まる? 期待してみたいほど…
…頭の中に、歌の断片のようなものが浮かんた。
どうしたんだ私。落ち着け。
期待してみたいって、何をよ…。
どうしたんだ私。落ち着け。
期待してみたいって、何をよ…。
………
ずっとどきどきしながら見ていたけど、みなみちゃんはその後
事態が悪化する様子もなく、5時間目の授業は無事に終わった。
事態が悪化する様子もなく、5時間目の授業は無事に終わった。
…休み時間になって、数分経った。
直ちにトイレに行くものと思っていたのに、
みなみちゃんは席から動く気配がまったくない。
直ちにトイレに行くものと思っていたのに、
みなみちゃんは席から動く気配がまったくない。
みなみちゃん、トイレ行きたくないのかな?
さっきの授業中のそわそわは、私の気のせいだった?
思い返してみても、とてもそうは思えないけど…。
さっきの授業中のそわそわは、私の気のせいだった?
思い返してみても、とてもそうは思えないけど…。
私はみなみちゃんに近づき、小声で話しかけた。
「ちょっと失礼なこと聞いても…いいかな?」
みなみちゃんは困った様子で、でも覚悟はしてたというようにうなずいた。
「さっきの授業中から、トイレ行きたそうに見えるんだけど…気のせい?」
「…気のせいじゃない。行きたい…」
やっぱり、そうだった。
「そわそわしてたの…他の人にもばれてたかな?」
「ううん、大丈夫だと思う。そんなに長くはそわそわしてなかったし…。
実は、さっきの授業中に私も行きたくなっちゃって。
たまたま同じ状態だったから気付けたんだと思う」
実は、さっきの授業中に私も行きたくなっちゃって。
たまたま同じ状態だったから気付けたんだと思う」
みなみちゃんは少しだけ安心したようだった。
「そんなわけで、今から行くけど…よかったら一緒にどうかな?」
私がそう言うと、みなみちゃんは首を横に振った。
「行かない。私、このままで次の授業を受ける」
「え…?」
私は思わず当惑を声に出してしまった。
「………」
みなみちゃんは、それ以上言葉を付け加える気がなさそうだった。
どうしてなのか、詳しく聞きたい…。
…と、思ったんだけど…。
どうしてなのか、詳しく聞きたい…。
…と、思ったんだけど…。
ずきゅぅぅん!
「はうっ!?」
おなかの内側から、全身に電撃が走った。
…そうだよ!みなみちゃんに気を取られて忘れてたけど、
私もおしっこ、かなり危険になってたんだった!
…そうだよ!みなみちゃんに気を取られて忘れてたけど、
私もおしっこ、かなり危険になってたんだった!
「分かった…じゃあまた後で」
私は何とかそれだけ言って、反転してトイレにダッシュした。
みなみちゃん、びっくりしたかも。
みなみちゃん、びっくりしたかも。
廊下は無事に駆け抜けたけど、トイレがいっぱいだった。
さらに、二人も並んでいた…。
さらに、二人も並んでいた…。
すぐにおしっこできないというショックで、余計に尿意が煽られる。
頭の中がおしっこでいっぱいになって、時間の感覚がおかしくなる。
1秒が、1分に感じる。
0.5秒が、10分に感じる。
0.1秒が、1時間に感じる。
頭の中がおしっこでいっぱいになって、時間の感覚がおかしくなる。
1秒が、1分に感じる。
0.5秒が、10分に感じる。
0.1秒が、1時間に感じる。
個室が一つ空いて、前の人は一人になった。
でも、そこからがまた長かった。
でも、そこからがまた長かった。
もう、出るところをぎゅーっと押さえてなきゃいけなかった。
おなかから下がしびれて、感覚がない。
力を入れすぎて、押さえた手までしびれてくる。
膝ががくがく震える。
苦しくて、涙が浮かんできた…。
おなかから下がしびれて、感覚がない。
力を入れすぎて、押さえた手までしびれてくる。
膝ががくがく震える。
苦しくて、涙が浮かんできた…。
「ううぅぅ……」
「あ、あの…次が空いたら先に入っていいよ」
前の人が見かねて順番を譲ってくれた。
でも、あと一つがなかなか空かない…。
でも、あと一つがなかなか空かない…。
0.05秒が、10時間に感じる…。
1ミリ秒が、1日に感じる…。
一瞬が、永遠になる…。
1ミリ秒が、1日に感じる…。
一瞬が、永遠になる…。
理性が、吹っ飛びかける。
泣き出して、その辺のドアを乱打して『早く出てよー!』って叫び出しそうだった。
それか、もうパンツ下ろしてその場でしちゃいそうだった。
…幸い、そのどちらかを実行する前に、目の前の個室が空いた。
それか、もうパンツ下ろしてその場でしちゃいそうだった。
…幸い、そのどちらかを実行する前に、目の前の個室が空いた。
………
じゃあああああ……。
済ませて、水を流した。
まさに間一髪のセーフだった。
まさに間一髪のセーフだった。
うぅ…危なかったぁ。
並んでる間の痴態を思い出して、耳まで真っ赤になる。
みなみちゃんが一緒に来てなくて、本当によかった…。
並んでる間の痴態を思い出して、耳まで真っ赤になる。
みなみちゃんが一緒に来てなくて、本当によかった…。
学校でここまでおしっこに追い詰められたのは初めてだった。
昨日のゆーちゃんの苦しみを、私も少しは共有できたのかな…。
昨日のゆーちゃんの苦しみを、私も少しは共有できたのかな…。
少しぐらいもれててもおかしくなかったけど、被害はゼロだった。
スカートの押さえていた部分がもみくちゃになってたけど、
引っ張ったり手でプレスしたりしてみたら、なんとか直った。
スカートの押さえていた部分がもみくちゃになってたけど、
引っ張ったり手でプレスしたりしてみたら、なんとか直った。
スカートのもみくちゃが直った頃には、もう休み時間は残り1分ぐらいだった。
手を洗ってトイレから戻ると、みなみちゃんは変わらず席に座っていた。
トイレに行く気配は全くない。行こうにももう時間はなかったけど…。
手を洗ってトイレから戻ると、みなみちゃんは変わらず席に座っていた。
トイレに行く気配は全くない。行こうにももう時間はなかったけど…。
みなみちゃん…どうしてトイレに行かなかったんだろう。
行きたいって、認めていたのに。
さっきの私ほど差し迫ってないんだとしても、別に我慢する必要なんて…。
行きたいって、認めていたのに。
さっきの私ほど差し迫ってないんだとしても、別に我慢する必要なんて…。
チャイムが鳴った。
次は、6時間目。
昨日の…あの出来事が起きたのと同じ時間。
次は、6時間目。
昨日の…あの出来事が起きたのと同じ時間。
もしかして…同じ時間におしっこを我慢することで、
みなみちゃんも、昨日のゆーちゃんの苦しみを共有しようとしているの?
みなみちゃんも、昨日のゆーちゃんの苦しみを共有しようとしているの?
6時間目の授業が始まった。
………
みなみちゃんから、一瞬も目が離せない。
わずかな動きの一つ一つが、おしっこが辛いからに見える。
動いていないときも、おしっこが辛くてぴくりとも動けないように見える。
わずかな動きの一つ一つが、おしっこが辛いからに見える。
動いていないときも、おしっこが辛くてぴくりとも動けないように見える。
目を開け静かに見つめてた おしっこしたくて苦しそうで
もじもじしたり震えたり 順番こ うれしいな…
もじもじしたり震えたり 順番こ うれしいな…
…また、歌の断片らしきものが浮かんだ。
落ち着け。落ち着けってば、私。
落ち着け。落ち着けってば、私。
ちらっ。
「!」
みなみちゃんが急にこっちを見て、目が合ってしまった。
慌てて目をそらし、板書するふりをする。
黒板には何も書かれてなかったのに。
慌てて目をそらし、板書するふりをする。
黒板には何も書かれてなかったのに。
数秒後、みなみちゃんの視線を感じなくなって、またみなみちゃんに視線を戻す。
しばらくして、またみなみちゃんがこっちを見て目が合う。
また慌てて目をそらす。また数秒後には視線を戻す…。
しばらくして、またみなみちゃんがこっちを見て目が合う。
また慌てて目をそらす。また数秒後には視線を戻す…。
「………」
みなみちゃんの表情には明らかに困惑が浮かんでいた。
でも、私はそのうち目をそらすふりをすることすらやめてしまった。
みなみちゃんも気にするのをやめてしまったようで、こっちを見なくなった。
でも、私はそのうち目をそらすふりをすることすらやめてしまった。
みなみちゃんも気にするのをやめてしまったようで、こっちを見なくなった。
みなみちゃんの仕草を捉えたラフ画が、次々とノートを埋めていく。
帰ったらちゃんとした紙に描き直して、厳重に封印しよう。
こんなの描いてるのをみなみちゃん本人に知られたら、
有機情報連結を解除されても文句は言えない…。
帰ったらちゃんとした紙に描き直して、厳重に封印しよう。
こんなの描いてるのをみなみちゃん本人に知られたら、
有機情報連結を解除されても文句は言えない…。
やけに喉が渇いて、鼓動が耳で聞けそうなほど高まっていた。
映画のクライマックスの目前をずっと見ているような感じだった。
映画のクライマックスの目前をずっと見ているような感じだった。
私は今、『クライマックスの目前』と言った。
私がクライマックスに求めるものは…何なんだろう。
私がクライマックスに求めるものは…何なんだろう。
授業の終わりまで耐えて、トイレに行ってすっきりするみなみちゃん?
耐えられなくて、授業を抜け出してトイレにダッシュしちゃうみなみちゃん?
それとも…。
耐えられなくて、授業を抜け出してトイレにダッシュしちゃうみなみちゃん?
それとも…。
もじもじぎゅ~っとみなみちゃん 魅惑のおしがまエンジェル
見とれるようなもじそわ美 もっと もっと 見せなさい!
我慢しなさい!もらしなさ~い!
見とれるようなもじそわ美 もっと もっと 見せなさい!
我慢しなさい!もらしなさ~い!
「………」
…また歌の断片らしきものが浮かんで、声にならない叫びと共に頭を抱える私。
もう少しで声に出して叫ぶとこだった。
頭の中が何かに冒されてきてる…。
もう少しで声に出して叫ぶとこだった。
頭の中が何かに冒されてきてる…。
今ので、はっきり自覚してしまった。
私がクライマックスとして求めるもの、それは…。
私がクライマックスとして求めるもの、それは…。
みなみちゃんのおもらし。
ちょっとだけ、言い訳させて。
おしっこを我慢してるみなみちゃん、ほんとにかわいすぎるんだよ。
我慢の果てにあるものを、見たくなっちゃうほど。
おしっこを我慢してるみなみちゃん、ほんとにかわいすぎるんだよ。
我慢の果てにあるものを、見たくなっちゃうほど。
それに、そんな事態はまず起きないって分かってるから妄想してみてるだけ。
みなみちゃんの表情にはまだまだ余裕が見えるし、
余裕がなくなったら自分で言ってトイレに行かせてもらうはず。
万一、本当に危険になっても恥ずかしくて言えないようだったら、
具合が悪そうって連れ出すとか、逆に私が具合悪いふりして付き添ってもらうとか、
とにかく何とかして助ける。
おもらしするのを黙って見過ごしなんか、絶対にしない。
みなみちゃんの表情にはまだまだ余裕が見えるし、
余裕がなくなったら自分で言ってトイレに行かせてもらうはず。
万一、本当に危険になっても恥ずかしくて言えないようだったら、
具合が悪そうって連れ出すとか、逆に私が具合悪いふりして付き添ってもらうとか、
とにかく何とかして助ける。
おもらしするのを黙って見過ごしなんか、絶対にしない。
………
気が付くと、授業は残り1分を切っていた。
ついでに、みなみちゃんを記録していたノートも残り1ページまで埋まっていた。
みなみちゃんの様子は、授業が始まったときからほとんど悪化してなかった。
もう1時間授業があったとしても大丈夫そう。
おしっこしたい仕草を見せてから、2時間ぐらい経ってるのに。
おしっこをいっぱい我慢できる『貴婦人の膀胱』とかいうのを何かで読んだけど、
みなみちゃんは貴婦人的なところがあるだけにそれを持ってるのかもしれない。
したいと感じて20分ちょっとでもう出るとこ押さえて涙目だった自分と比較して、
みじめな気分にならずにはいられなかった…。
ついでに、みなみちゃんを記録していたノートも残り1ページまで埋まっていた。
みなみちゃんの様子は、授業が始まったときからほとんど悪化してなかった。
もう1時間授業があったとしても大丈夫そう。
おしっこしたい仕草を見せてから、2時間ぐらい経ってるのに。
おしっこをいっぱい我慢できる『貴婦人の膀胱』とかいうのを何かで読んだけど、
みなみちゃんは貴婦人的なところがあるだけにそれを持ってるのかもしれない。
したいと感じて20分ちょっとでもう出るとこ押さえて涙目だった自分と比較して、
みじめな気分にならずにはいられなかった…。
授業が終わって、みなみちゃんが立ち上がった。
トイレに行くのだろう。
これで一安心…と思ったそのとき。
トイレに行くのだろう。
これで一安心…と思ったそのとき。
ぴょん、ぴょん。
「!?」
みなみちゃんの体が、宙を舞った。
一回じゃなく、何回も。
一回じゃなく、何回も。
スカートが際どいとこまでふわっと!タイツはいてるとはいえ危ない!
それにおしっこ我慢してる状態でその行動は一体…!
それにおしっこ我慢してる状態でその行動は一体…!
ぴょん、だんっ!
最後の1回は、かかとで激しく着地した。
まるで、わざとおなかに衝撃を与えてみたというように。
まるで、わざとおなかに衝撃を与えてみたというように。
「んんっ…」
さすがのみなみちゃんも一瞬内股になって、苦しそうな表情をした。
でも、それもほんの一瞬のことで、すぐに落ち着いた。
でも、それもほんの一瞬のことで、すぐに落ち着いた。
理解を超える行動に私がびっくりしているうちに、
みなみちゃんはため息をついてそのまま急ぐ様子もなくトイレに向かった。
私もすぐに後を追った。
なんとなく追っただけで、途中で何かが起きないかと期待したわけじゃ決してない。
みなみちゃんはため息をついてそのまま急ぐ様子もなくトイレに向かった。
私もすぐに後を追った。
なんとなく追っただけで、途中で何かが起きないかと期待したわけじゃ決してない。
みなみちゃんは無事にトイレに着いて、中に入っていった。
入り口から中を見ると、今は空いていて、みなみちゃんが個室に入ったのが見えた。
これで、一安心。
でも…このまま待っていよう。
出てきたら、みなみちゃんにいろいろ聞きたいことがある。
入り口から中を見ると、今は空いていて、みなみちゃんが個室に入ったのが見えた。
これで、一安心。
でも…このまま待っていよう。
出てきたら、みなみちゃんにいろいろ聞きたいことがある。
個室の前で待ち構えるのはさすがに自重して、トイレの外で待つことにした。
いっぱい出るだろうから、時間がかかるだろうな。
何時間も我慢してやっと解放されるんだから、すごく気持ちいいだろうな。
どんなにすっきりした表情で出てくるのかな…。
何時間も我慢してやっと解放されるんだから、すごく気持ちいいだろうな。
どんなにすっきりした表情で出てくるのかな…。
映像付きでシミュレーションを始めようとする脳をなんとか抑え込んでいると、
実験でフラスコにためた水を捨ててきただけのように
みなみちゃんが何の感情も浮かべずにトイレから出てきた。
実験でフラスコにためた水を捨ててきただけのように
みなみちゃんが何の感情も浮かべずにトイレから出てきた。
「あ、あの…間に合ったんだよね?」
「うん」
よく考えるとものすごくデリカシーに欠ける質問だったけど、
みなみちゃんは冷静に返してくれた。
みなみちゃんは冷静に返してくれた。
「はぁ…今の授業中、ずっとどきどきしっ放しだったよ…」
みなみちゃんははっとした様子で、
「ごめん…そんなに気にしてくれてたなんて…」
そう謝った。
「いや、いいんだけどね…。私が勝手に興ふ…げほごほっ!」
「…?」
いかんいかん危ない危ない危ない…何を言おうとしてる私。
「…し、心配。そう、勝手に心配しただけだから。
それより…さっき、どうしてトイレ行かなかったのか、聞いていいかな?
あんまり聞くことじゃないかもしれないけど、気になっちゃって…」
それより…さっき、どうしてトイレ行かなかったのか、聞いていいかな?
あんまり聞くことじゃないかもしれないけど、気になっちゃって…」
みなみちゃんはその質問を覚悟していたようで、困った様子はなかった。
「まだ、そんなに行きたくなかったから」
「でも、トイレ行く時間はあったし、別に我慢する必要なかったよね。
何か理由があったんじゃないかなって…」
何か理由があったんじゃないかなって…」
「あのときは考え事してて、動くのが面倒だったから…」
「その考え事って…小早川さんのこと?」
「……!」
みなみちゃんの様子が明らかに変わった。
そんなつもりはなかったんだけど、私の言葉はみなみちゃんが
一番触れられたくなかったポイントを突いてしまったらしい…。
そんなつもりはなかったんだけど、私の言葉はみなみちゃんが
一番触れられたくなかったポイントを突いてしまったらしい…。
「やっぱり…小早川さんのことを意識してたんだね。
本当の理由は…昨日の小早川さんと同じように…」
本当の理由は…昨日の小早川さんと同じように…」
ぎゅ。
みなみちゃんが、言葉を遮るように突然私の手を取った。
「え…」
「ひより…」
まっすぐに私の目をみつめてくるみなみちゃん。
「な、何?」
「今日、私がわざとおしっこ我慢してたこと…誰にも言わないで」
「!!」
『おしっこ』。
普段なら何でもない単語。
私自身、昨日から平気で何十回も使ってる。
でも、みなみちゃんの声で再生された『おしっこ』は
それをずっと意識してきた私の精神にとって強烈なスマッシュだった…。
普段なら何でもない単語。
私自身、昨日から平気で何十回も使ってる。
でも、みなみちゃんの声で再生された『おしっこ』は
それをずっと意識してきた私の精神にとって強烈なスマッシュだった…。
「もも、もちろん。言うわけないよ!」
たぶん…今、私の顔、すごい勢いで赤くなってる。
「それと…もう一つお願いがあるの」
「ななな、何?」
「明日、私がまた今日と同じような状態になっても…
…ううん、今日よりもっと危険そうになって…もうだめかもって思っても、
誰かに言ったり、連れ出そうとしたりしないで。
さっきみたいにずっと見てたり、絵に描いたりするのはいいから…、
止めようとだけはしないで。最後まで…放っておいて」
…ううん、今日よりもっと危険そうになって…もうだめかもって思っても、
誰かに言ったり、連れ出そうとしたりしないで。
さっきみたいにずっと見てたり、絵に描いたりするのはいいから…、
止めようとだけはしないで。最後まで…放っておいて」
「ぶ!?」
私の精神にベアクラッシュ。
おしっこ我慢中のみなみちゃんを描いてたのが普通にばれてた…。
…というのもあるけど、もっと衝撃だったフレーズは…。
おしっこ我慢中のみなみちゃんを描いてたのが普通にばれてた…。
…というのもあるけど、もっと衝撃だったフレーズは…。
『最後まで…放っておいて』
その『最後』って…授業の終わりのこと?
明日も同じように我慢するけど大丈夫だから心配しないで、って言いたいだけ?
明日も同じように我慢するけど大丈夫だから心配しないで、って言いたいだけ?
違う。
みなみちゃんの口ぶりは、どう考えても違う。
みなみちゃんが言ってる『最後』とは、
おしっこをいつまでも我慢し続けたら『最後』に訪れるもの…。
みなみちゃんの口ぶりは、どう考えても違う。
みなみちゃんが言ってる『最後』とは、
おしっこをいつまでも我慢し続けたら『最後』に訪れるもの…。
「同じこと…した仲間ができれば…
ゆたかが立ち直るきっかけになるかもしれないから…」
ゆたかが立ち直るきっかけになるかもしれないから…」
「ままままま、待って。それは…それは、いくら…なんでも…」
みなみちゃんの温かい手に、力がこもった。
「お願い…ひより…」
みなみちゃんの目は、いつもの冷静さをほとんど失っていた。
私がこれ以上拒絶したら、泣き出してしまいそうにすら見えた…。
私がこれ以上拒絶したら、泣き出してしまいそうにすら見えた…。
もともと、私の心の奥底にはその頼みを喜んで受け入れたい部分があったわけで。
その上こんなに懸命にお願いされて…抗えるはずがなかった。
その上こんなに懸命にお願いされて…抗えるはずがなかった。
「…う、うん…」
気が付いたら…そう答えてしまっていた。
………
もう、日付は変わっている。
家に帰ってきてから、私はずっと机で考え込んでいた。
頭の中がいっぱい。
今頃はペン入れに励んでるはずだった例のノートも、鞄から出してすらいなかった。
家に帰ってきてから、私はずっと机で考え込んでいた。
頭の中がいっぱい。
今頃はペン入れに励んでるはずだった例のノートも、鞄から出してすらいなかった。
明日、みなみちゃんが授業中におもらししちゃう。
私の中には、それを見たいって欲望がある。今さら否定しない。
私の中には、それを見たいって欲望がある。今さら否定しない。
だけど…みなみちゃんはその後どうなるの?
今までの、クールで大人なイメージはきっと壊れちゃう。
それに『昨日の今日』ならぬ『一昨日の今日』なわけで、
ゆーちゃんのために自分の意志でしたってことは誰の目にも明らか。
不慮の事故だったゆーちゃんの時とは周りの見方だって変わってくる。
元々そういうことをする趣味がある、なんて思われちゃうかもしれない。
最悪の場合…本当にいじめられることにだってなりかねない…。
今までの、クールで大人なイメージはきっと壊れちゃう。
それに『昨日の今日』ならぬ『一昨日の今日』なわけで、
ゆーちゃんのために自分の意志でしたってことは誰の目にも明らか。
不慮の事故だったゆーちゃんの時とは周りの見方だって変わってくる。
元々そういうことをする趣味がある、なんて思われちゃうかもしれない。
最悪の場合…本当にいじめられることにだってなりかねない…。
みなみちゃんはきっと、そうなることも全部覚悟してる。
ゆーちゃんが立ち直ってくれるなら、自分はどうなってもいいって思ってる。
そして、ゆーちゃんに立ち直ってほしいっていう気持ちは私だって同じ…。
ゆーちゃんが立ち直ってくれるなら、自分はどうなってもいいって思ってる。
そして、ゆーちゃんに立ち直ってほしいっていう気持ちは私だって同じ…。
だけど…だけどだよ。
だからって、そのためにみなみちゃんは犠牲になってもいいなんて、
そんな簡単に割り切れないよ。
だからって、そのためにみなみちゃんは犠牲になってもいいなんて、
そんな簡単に割り切れないよ。
そして、もっと単純でもっと個人的な問題がある。
私の精神が、耐えられるのかってこと。
私の精神が、耐えられるのかってこと。
今日の5時間目以降のことを思い出す。
あのときのみなみちゃんはまだまだ余裕が感じられた。
なのに、見ていて私はどれだけみなみってしまったことか。
あのときのみなみちゃんはまだまだ余裕が感じられた。
なのに、見ていて私はどれだけみなみってしまったことか。
…『みなぎって』だ。『みなみって』って何だ。
とにかく…明日はもっと追い詰められたみなみちゃんを見ることになる。
じっとしていられなくなって、もじもじそわそわが止まらなくなるみなみちゃん。
寒気が止まらなくてがたがた震えて、涙まで浮かんでくるみなみちゃん。
頭がぼーっとして、頭の中で『おしっこ…おしっこ…』って繰り返すみなみちゃん…。
もしかしたら、口に出して言っちゃうかもしれない。
そして…とうとう限界が来て…。
寒気が止まらなくてがたがた震えて、涙まで浮かんでくるみなみちゃん。
頭がぼーっとして、頭の中で『おしっこ…おしっこ…』って繰り返すみなみちゃん…。
もしかしたら、口に出して言っちゃうかもしれない。
そして…とうとう限界が来て…。
…ぽたっ。
何かの雫が落ちる音で、我に返った。
机の上に、赤い液体が落ちていた。
いけない。ぼーっとしてて赤インクこぼしちゃった。
机の上に、赤い液体が落ちていた。
いけない。ぼーっとしてて赤インクこぼしちゃった。
いや、待って。机には赤インクなんて置いてないよ。
一体どこからこぼれて…。
一体どこからこぼれて…。
…ぽたっ。
また、机の上に赤い液体が落ちた。
鼻先に何か伝った感触と共に。
鼻先に何か伝った感触と共に。
「え…」
流れ落ちてるのは、赤インクじゃなくて…。
…鼻血。
「……っ!」
ティッシュを数枚取って鼻の下に当てて、止まるのを待った。
鼻血のとき、ティッシュを突っ込むのはよくないって何かで聞いたことがある。
上を向くのも、血が口の方に回ってきたりしてよくないんだとか。
鼻血のとき、ティッシュを突っ込むのはよくないって何かで聞いたことがある。
上を向くのも、血が口の方に回ってきたりしてよくないんだとか。
鼻血は、すぐに止まった。
「……はぁ」
落ち着いて、思わずため息。
脳内で想像しただけでこのありさま。
しかも、今の想像は寸止めできたけど、現実は寸止めできない。
本当にこの目とか耳とかで、みなみちゃんのおもらしを感じることになる。
脳内で想像しただけでこのありさま。
しかも、今の想像は寸止めできたけど、現実は寸止めできない。
本当にこの目とか耳とかで、みなみちゃんのおもらしを感じることになる。
それ以上の可能性だってある。
もし、みなみちゃんがおもらしのショックで何もできなくなっちゃったら。
それで、私がみなみちゃんを保健室に連れて行くことになったら…。
もし、みなみちゃんがおもらしのショックで何もできなくなっちゃったら。
それで、私がみなみちゃんを保健室に連れて行くことになったら…。
昨日の夜の妄想が、配役を私とみなみちゃんにチェンジしてリプレイされる。
びちょびちょのスカートを掴んだまま、
着替えようともしないで泣き続けるみなみちゃん。
このままじゃ風邪をひいちゃうかもしれないから、
優しい脅しのつもりで『私が着替えさせちゃうよ』って言う私。
でも、みなみちゃんはそれを本気で受け入れてしまう。
後に引けなくなった私は、みなみちゃんのスカートの中に手を……。
着替えようともしないで泣き続けるみなみちゃん。
このままじゃ風邪をひいちゃうかもしれないから、
優しい脅しのつもりで『私が着替えさせちゃうよ』って言う私。
でも、みなみちゃんはそれを本気で受け入れてしまう。
後に引けなくなった私は、みなみちゃんのスカートの中に手を……。
ぶばっ。
「んんんっ!」
さっきより強い勢いで鼻血が出てきて、我に返った。
慌てて追加のティッシュを取る…。
慌てて追加のティッシュを取る…。
………
さっきより時間はかかったものの、失血で倒れるのを心配する前に鼻血は止まった。
よかった。私はまだ壊れ切ってはいない。たぶん。
よかった。私はまだ壊れ切ってはいない。たぶん。
だけど…。
私自身×みなみちゃんでこんな妄想をするなんて、今まではなかったこと。
新しい何かに覚醒してしまったのを、はっきり自覚せざるを得なかった。
私自身×みなみちゃんでこんな妄想をするなんて、今まではなかったこと。
新しい何かに覚醒してしまったのを、はっきり自覚せざるを得なかった。
一言で言うなら…。
『みな☆フェチ』。
ほんとに明日、どうなるんだろう、私…。