【ミン・ロディム】
「はい、止まって。ブレーキして下さいね。英語分かりますオーケー?」
「オーケーオーケー」
「オーケーオーケー」
アロハを着たルガーが陽気な笑顔で運転席から降りる。だが、目は真剣そのものだった。
この国境は今迄と違いブラッククロスの工作は実行されていない。顔パスかワイロで通過してきた
これまでの国境と違い、一般人として通過せねばならない。
失敗したら良くてルート変更、最悪作戦はここで終わってしまう。
この国境は今迄と違いブラッククロスの工作は実行されていない。顔パスかワイロで通過してきた
これまでの国境と違い、一般人として通過せねばならない。
失敗したら良くてルート変更、最悪作戦はここで終わってしまう。
「ワシらベトナムからドキュメンタリーの撮影に来た。後ろの荷物は撮影に使うPG」
「へー、一応確認しますよ」
「へー、一応確認しますよ」
輸送車のコンテナを開くと寝かせた数機のPGに見えるデフシリーズと晶烈華・改が姿を見せた。
破防鋼を上から被せただけの偽PGだが遠目にはまず気づかれないし、間近で見ても軍人以外なら
騙せる。この偽装手段を教えてくれたニラーシャは苦笑しながらそうルガー達に説明していた。
効果は絶大だった。今の所、国境警備員が怪しむ様子は無い。今の所は。
破防鋼を上から被せただけの偽PGだが遠目にはまず気づかれないし、間近で見ても軍人以外なら
騙せる。この偽装手段を教えてくれたニラーシャは苦笑しながらそうルガー達に説明していた。
効果は絶大だった。今の所、国境警備員が怪しむ様子は無い。今の所は。
「ニュースでは飛行機や船を使って密輸・密入国するケースばっかり報道されてるけど、
陸路でもそういうケースはいっぱいありますからね。あ、勿論あんたらの事言ってるんじゃないですよ。
でも規則ですから」
陸路でもそういうケースはいっぱいありますからね。あ、勿論あんたらの事言ってるんじゃないですよ。
でも規則ですから」
前から順番に輸送機の扉を開けて確認していく。
国境警備員による検査は、後ろから三番目の車両でピタリと止まった。
中では言い争いをする男女の声が聞こえる。
今入るのは無粋かも知れないがこれも仕事と警備員は扉を開け声を掛けようとした。
国境警備員による検査は、後ろから三番目の車両でピタリと止まった。
中では言い争いをする男女の声が聞こえる。
今入るのは無粋かも知れないがこれも仕事と警備員は扉を開け声を掛けようとした。
「はい、すみませ…」
「ざっけんなコラ!こんなんで勃つと思ってんか?ああ?」
「ざっけんなコラ!こんなんで勃つと思ってんか?ああ?」
警備員の声は女の怒声でかき消された。首から紐付きメガホンをぶらさげた女が褐色の肌の男二名に対し
声を荒げる。何故か女装した男二名は泣きそうな顔で正座している。
奥にはもう一人金髪の男がいて、彼は関わりたくなさそうにタバコをふかしていた。
声を荒げる。何故か女装した男二名は泣きそうな顔で正座している。
奥にはもう一人金髪の男がいて、彼は関わりたくなさそうにタバコをふかしていた。
「わざわざ本物のPGまで購入して、ジジイも私もこのビデオに全て賭けてるんだ。
だが、主演のてめーらがそんな演技じゃ赤字確実だ。なあ、てめーら私に何の恨みがある?」
だが、主演のてめーらがそんな演技じゃ赤字確実だ。なあ、てめーら私に何の恨みがある?」
撮影の監督あるいは助監督と思われる女が年長の男優の顔に足を乗せる。
「う、恨みなんてありましぇん」
「だったらもっと本気で演技しろってんだ!フェミリア・ハーゼンはあんな声で喘がねーんだよ!」
「だったらもっと本気で演技しろってんだ!フェミリア・ハーゼンはあんな声で喘がねーんだよ!」
顔に乗せた足をそのまま振りぬくと男は鼻から血を出して倒れた。
「あんちゃーん!」
若い、まだ少年の様にも見える男優がフェミリアの格好をした男優に駆け寄る。
「いいか!この『偽聖女伝説・男の娘姉妹はローマに散る』は単品で終わらせる作品じゃねえ。
モノホンの聖女達がイタリア訪問するこのチャンス、絶対購入者はタイトル買いしてくれる。
だからこそガッカリな出来にしたら後が続かないんだよ」
「助監督、助監督」
「何?騎士様の出番はまだ先だから座ってていいよ」
「国境、国境警備員さん来てるよ」
「え゛」
モノホンの聖女達がイタリア訪問するこのチャンス、絶対購入者はタイトル買いしてくれる。
だからこそガッカリな出来にしたら後が続かないんだよ」
「助監督、助監督」
「何?騎士様の出番はまだ先だから座ってていいよ」
「国境、国境警備員さん来てるよ」
「え゛」
金髪の男(恐らく二人を抱く神殿騎士役)の言葉でようやく気付いたかの様にミン・ロディムは
そちらを振り返った。
そちらを振り返った。
「あ、ああああ、どどうも。ドキュメンタリー映像のリハーサルしてたんですよ。
気付かずにごめんんさい。うへへへへ」
「ホモビデオ撮影だよね」
「イヤイヤイヤ!」
「まあ、決して褒められたもんじゃないけど違法なアダルトビデオを持ち込んだり
するのとは違ってまだ違法な物品がある訳じゃないから一応通すよ」
「うへへへ、ありがとーございます」
気付かずにごめんんさい。うへへへへ」
「ホモビデオ撮影だよね」
「イヤイヤイヤ!」
「まあ、決して褒められたもんじゃないけど違法なアダルトビデオを持ち込んだり
するのとは違ってまだ違法な物品がある訳じゃないから一応通すよ」
「うへへへ、ありがとーございます」
Q.表社会のシステムを利用する際に隠し事が相手にばれない様にするコツは?
A.嘘に嘘を重ねればいい。ただし、相手がドン引きして追及をやめるレベルのを本気でだ。
ブラックな自分をグレーゾーンに染め上げろ。逮捕されるギリギリを行け。恥を捨てて命を拾え。
『ブラッククロスマニュアル工作員スペシャル編・これさえ読めば生還率二倍』(3680円)より抜粋。
A.嘘に嘘を重ねればいい。ただし、相手がドン引きして追及をやめるレベルのを本気でだ。
ブラックな自分をグレーゾーンに染め上げろ。逮捕されるギリギリを行け。恥を捨てて命を拾え。
『ブラッククロスマニュアル工作員スペシャル編・これさえ読めば生還率二倍』(3680円)より抜粋。
「みんなほんとーにゴメン!熱入りすぎました!特にマシューごめん!」
無事国境を突破した後、ミンは全員に土下座。自称ドキュメンタリー撮影目的の旅行者の正体は
気合いの入ったエロビデオメーカーという設定は規定路線だったが、当初の予定は半裸で待機する
男達とメガホン持って座ってる助監督というものだった。セリフも演技も、全部待ってる間に
ミンが思いついたアドリブだったのだ。
気合いの入ったエロビデオメーカーという設定は規定路線だったが、当初の予定は半裸で待機する
男達とメガホン持って座ってる助監督というものだった。セリフも演技も、全部待ってる間に
ミンが思いついたアドリブだったのだ。
「まぁいいって。警備員さん完全に俺らの事を無害なダメ人間と認識してくれたし」
マシューは鼻にティッシュを詰めながらミンを許す。
「ミンミンネキ女優になりたかったって聞いてたけど、ここまでやるとは思わんかったやで」
「そうね。私自身ここまでのめり込むと思ってなかった。帰りが無いって思ったら、
やりたかった事が急に色々と、ね」
「そうね。私自身ここまでのめり込むと思ってなかった。帰りが無いって思ったら、
やりたかった事が急に色々と、ね」
ミンの目から涙がこぼれその場に膝から崩れ落ちる。国境を越える事で緊張が切れ、
同時に死地に近づいた事への実感が襲い掛かる。
同時に死地に近づいた事への実感が襲い掛かる。
「そうだよ。もう帰りはないんだ。父さんとバヌ兄さんはともかく、わ、私もマシューも
エヌジェイも騎士に喧嘩売って相性がいいからって勝てるわけない、生きて帰るなんて。
ヒグッ、できるわけないっ。やっぱむり…かえりたい」
「ミン!大丈夫か!」
「ご、ごめん。父さんに誓ったのにやっぱ怖いよマシュー」
「すまねえトワイスさん。ちょっと俺ミンと一緒に寝てくるわ。出撃までには落ち着かせる」
エヌジェイも騎士に喧嘩売って相性がいいからって勝てるわけない、生きて帰るなんて。
ヒグッ、できるわけないっ。やっぱむり…かえりたい」
「ミン!大丈夫か!」
「ご、ごめん。父さんに誓ったのにやっぱ怖いよマシュー」
「すまねえトワイスさん。ちょっと俺ミンと一緒に寝てくるわ。出撃までには落ち着かせる」
マシューの肩を借りてミンは引きずられるように奥へと消えていった。
思えば、演技の為の待機中やたら元気に指示出し続けていたのも恐怖を遠ざける為だったのだろう。
マシューにはそうとしか考えられなかった。トワイスはその泣き方に違和感を覚えた。
エヌジェイは「まーたミンミンネキのウソ泣きにキノコニキが騙されとる」と思ったが口に出さなかった。
思えば、演技の為の待機中やたら元気に指示出し続けていたのも恐怖を遠ざける為だったのだろう。
マシューにはそうとしか考えられなかった。トワイスはその泣き方に違和感を覚えた。
エヌジェイは「まーたミンミンネキのウソ泣きにキノコニキが騙されとる」と思ったが口に出さなかった。
「二人きりになってしまったなエルフネキ」
「エルフネキはやめい」
「どないする?この後皆でカードで遊びたかったんやけど」
「私はルガーさんと作戦の確認をしてくる。それとミンさんの状態の報告も一応しておく」
「ん。ほなな」
「エルフネキはやめい」
「どないする?この後皆でカードで遊びたかったんやけど」
「私はルガーさんと作戦の確認をしてくる。それとミンさんの状態の報告も一応しておく」
「ん。ほなな」
ルガーのいる運転席の方へ出て行ったトワイスを見送る。
エヌジェイは一人残されたまま腕を組み考え込む。
エヌジェイは一人残されたまま腕を組み考え込む。
「ミンミンネキ絶対演技やろけどむっちゃ泣いとったなー。キノコニキも強がって支えとったけど震えとった。
プロ武人なエルフネキはともかくとして、あれが普通なんやろな」
プロ武人なエルフネキはともかくとして、あれが普通なんやろな」
組んだ腕をほどき、エヌジェイは自分の体調を確認していく。
「脈拍普通、心拍普通、血圧普通。ちんぽ普通。ワイ自身が引くほどにごっつ普通。
これからの作戦を未だ実感できないアホやからと思いたいねんけど、でもやっぱ自分に嘘はつかれへんな」
これからの作戦を未だ実感できないアホやからと思いたいねんけど、でもやっぱ自分に嘘はつかれへんな」
作戦を脳内でイメージする。騎士達に対峙する自分。彼らを切り刻みあるいは切り刻まれる
命を懸けた勝負。エヌジェイの想像には恐怖が欠落していた。先に待つ戦いにただただ興奮しつつ
いつでも万全の状態で戦える様に調整されていた。
命を懸けた勝負。エヌジェイの想像には恐怖が欠落していた。先に待つ戦いにただただ興奮しつつ
いつでも万全の状態で戦える様に調整されていた。
「あかん、あかん。阿寒湖や。阿寒湖ってどこや?ワイは普通の愛され美少年として
人生終える気やったのに、犬が電柱にションベンするみたいに本能レベルで身体が戦いを求めとるわ。
戦いを思うだけで準備運動も無しにポッカポッカや。やっぱワイは違うんやな、ならやる事は…」
人生終える気やったのに、犬が電柱にションベンするみたいに本能レベルで身体が戦いを求めとるわ。
戦いを思うだけで準備運動も無しにポッカポッカや。やっぱワイは違うんやな、ならやる事は…」
エヌジェイもいずこかへと向かい、エロビデオ撮影に偽装した空間には誰も居なくなった。
◇◇◇
【『獄』】
ルガーにミン達の事を伝え終えたトワイスは晶烈華・改(まだPGに偽装中)が格納されている
輸送車に来ていた。
輸送車に来ていた。
「本番前にもう一度動かしたかったがこれでは無理だな。シミュレーターでもあれば良かったんだが…。
いや、実戦データのまだないこの機体ではシミュレーターでの再現もまだ無理か」
いや、実戦データのまだないこの機体ではシミュレーターでの再現もまだ無理か」
空いた時間を訓練に使おうと考えてみたトワイスだったが、PGへの偽装があったので不可能だった。
「いかんな。いい加減こういううっかりを無くさないと。仕方ない、型稽古でもやるか」
輸送車の中は武術の型稽古をするには十分な程に広い。そして移動中の振動を機体に伝えない程に
クッション効果も高い。トワイスは前後左右に障害物が無い事を確認すると『獄』の型の練習を始めた。
クッション効果も高い。トワイスは前後左右に障害物が無い事を確認すると『獄』の型の練習を始めた。
もしボクサーにコンビネーションについて聞けばジャブとストレートのワンツーと答えるだろう。
もしキックボクサーに聞けばワンツーとローキックを組み合わせたワンツースリーと答えるだろう。
喧嘩屋に聞けば金的ヤクザキックして前かがみになった相手の顔面に膝と答えるだろう。
総合選手に聞けばタックルで倒してマウントとってパウンドと答えるだろう。
柔道家に聞けば崩して足払いから寝技と答えるだろう。
もしキックボクサーに聞けばワンツーとローキックを組み合わせたワンツースリーと答えるだろう。
喧嘩屋に聞けば金的ヤクザキックして前かがみになった相手の顔面に膝と答えるだろう。
総合選手に聞けばタックルで倒してマウントとってパウンドと答えるだろう。
柔道家に聞けば崩して足払いから寝技と答えるだろう。
どの流派が一番強いかという事を言いたいのではない。重要なのは彼らのコンビネーションが有効なのは
彼らの所属するルールの下に限定されるという事だ。そして一つの流派にのみ属する武術家は
他のコンビネーションを学ぶという発想を普通は持たない。ましてや、他の武術のコンビネーションと
自分の知るコンビネーションを組み合わせて使おうなどとは考えもしない。
他種目から総合やプロレスにへ移籍する様なケースを除き無理だし無意味だからだ。
そんな事に労力を割くなら普通の人は一撃の威力を上げるか今あるコンビネーションの精度を上げる事を選ぶし、
複数の流派のコンビネーションを繋げてもそれが上手く繋がる保障はどこにも無く、その迷いが逆に隙になる。
第一、コンビネーションは長ければいいというものでもない。
二撃を4回繰り返すのと八連撃では後者の方が遥かにスタミナの消耗が大きい。
ボクサーのワンツーは最短のコンビネーションだが決して弱くはない。
成功率・ダメージ効率・燃費を考えればワンツーの様な短いコンビネーションに軍配が上がる事が多い。
彼らの所属するルールの下に限定されるという事だ。そして一つの流派にのみ属する武術家は
他のコンビネーションを学ぶという発想を普通は持たない。ましてや、他の武術のコンビネーションと
自分の知るコンビネーションを組み合わせて使おうなどとは考えもしない。
他種目から総合やプロレスにへ移籍する様なケースを除き無理だし無意味だからだ。
そんな事に労力を割くなら普通の人は一撃の威力を上げるか今あるコンビネーションの精度を上げる事を選ぶし、
複数の流派のコンビネーションを繋げてもそれが上手く繋がる保障はどこにも無く、その迷いが逆に隙になる。
第一、コンビネーションは長ければいいというものでもない。
二撃を4回繰り返すのと八連撃では後者の方が遥かにスタミナの消耗が大きい。
ボクサーのワンツーは最短のコンビネーションだが決して弱くはない。
成功率・ダメージ効率・燃費を考えればワンツーの様な短いコンビネーションに軍配が上がる事が多い。
ならば何故『獄』は生まれたのか?何故強力な技足り獲るのか?それは凶骨人の努力の結晶に他ならない。
数十通りの初手から現在知られるあらゆる流派の二撃目へ繋げそれが有効か考察していく。
三撃目に達する時にはその組み合わせは軽く十万を超えた。当然一人の格闘人生で完成する代物ではない。
だから凶骨人は次代へと知識を伝承した。自分が強くなる為ではなく、自分の教え子が、そのまた後継者が
強くなる為に。夢物語と誰もが笑う、あらゆる武術を有効に組み合わせた連撃を現実にする為に。
数十通りの初手から現在知られるあらゆる流派の二撃目へ繋げそれが有効か考察していく。
三撃目に達する時にはその組み合わせは軽く十万を超えた。当然一人の格闘人生で完成する代物ではない。
だから凶骨人は次代へと知識を伝承した。自分が強くなる為ではなく、自分の教え子が、そのまた後継者が
強くなる為に。夢物語と誰もが笑う、あらゆる武術を有効に組み合わせた連撃を現実にする為に。
非効率な格闘バカの挑戦は世代を重ねいつしか学術となり、繋ぎにくい不要な技は切り捨て、
新たな武術が見つかれば教えを乞い、時には数十年かけて生み出した組み合わせを放棄し入れ替える事もあった。
そして操兵による格闘が実戦で有効とされる様になった時代。快皇テッシンという一人の最強を目にした事で
研究は飛躍的に進んだ。あの男を打ち倒せる様になりたい、今迄漠然と無敵の連撃を作るという
目的しかなかった研究に強い動機が加わり、遂に実戦レベルで使用可能になったその技に
『獄』と名付け表世界に解き放ったのだ。
新たな武術が見つかれば教えを乞い、時には数十年かけて生み出した組み合わせを放棄し入れ替える事もあった。
そして操兵による格闘が実戦で有効とされる様になった時代。快皇テッシンという一人の最強を目にした事で
研究は飛躍的に進んだ。あの男を打ち倒せる様になりたい、今迄漠然と無敵の連撃を作るという
目的しかなかった研究に強い動機が加わり、遂に実戦レベルで使用可能になったその技に
『獄』と名付け表世界に解き放ったのだ。
それから十数年が経った今、ケブレ家の現当主トワイスが最新の『獄』を練り上げている。
連撃で疲れぬ呼吸法、相手の体勢を瞬時に把握し最適解を叩きこむ反射的行動。
自分のリーチに合った間合いを維持する足運び。様々な武術を繋ぎ合わせたその動きは
決してぎこちない不格好なものではない。寧ろ、見る者を魅了しこの様に鮮やかに戦いたいと
思わせる美しき舞となっていた。
連撃で疲れぬ呼吸法、相手の体勢を瞬時に把握し最適解を叩きこむ反射的行動。
自分のリーチに合った間合いを維持する足運び。様々な武術を繋ぎ合わせたその動きは
決してぎこちない不格好なものではない。寧ろ、見る者を魅了しこの様に鮮やかに戦いたいと
思わせる美しき舞となっていた。
「よー、相手おらんと寂しないか?」
突然、型稽古をしているトワイスの背に声がかけられた。驚き振り返る。
そう、トワイスは声が聞こえるまで気づけなかった。超聴力と観察眼を持つ彼が気付けなかった。
そう、トワイスは声が聞こえるまで気づけなかった。超聴力と観察眼を持つ彼が気付けなかった。
「お?ひょっとしてエルフネキ不調か?」
それもある。が、今問題とすべきはそこじゃない。目の前の少年が気配を殺して接近してきたという点だ。
初めて会った時も模擬戦の時もそんな事が出来る子にはとても見えなかった。
戦場へと近づいた事での空気が少年を変化させた?否、これはそういうレベルのものではない。
初めて会った時も模擬戦の時もそんな事が出来る子にはとても見えなかった。
戦場へと近づいた事での空気が少年を変化させた?否、これはそういうレベルのものではない。
「こんちゃ!邪魔するで」
いきなり懐に一気に接近し右ストレート。咄嗟に左手で受け止める。飛び込むタイミングといい、
味方に最低限の声掛けだけで襲い掛かる狂気といい、あの少年と同一人物とは思えない。
味方に最低限の声掛けだけで襲い掛かる狂気といい、あの少年と同一人物とは思えない。
「ぐっ!」
体格からは想像も出来ない打撃力が左手に伝わってくる。突きの勢いが常人のそれとは桁が違う。
だが、威力に反して拳の握りが甘い。武術に精通していれば自分の手を保護する握りをするもの
なのにそれがない。鞘も柄も無い焼き上げたばかりの刀身の如き拳。
つまり、このまま普通に受け止めたら自分の拳もエヌジェイの拳も無事では済まないかもしれない。
だが、威力に反して拳の握りが甘い。武術に精通していれば自分の手を保護する握りをするもの
なのにそれがない。鞘も柄も無い焼き上げたばかりの刀身の如き拳。
つまり、このまま普通に受け止めたら自分の拳もエヌジェイの拳も無事では済まないかもしれない。
「ハアァ!」
クッション性の高い足元の床が大きく沈み、振動が部屋の端まで伝わる。右手がビリビリと痺れる。
そして、エヌジェイの肉体がふわりと数十センチ浮いた後、突き出した拳を支点に半回転し
トワイスに抱きかかえられる形になった。
そして、エヌジェイの肉体がふわりと数十センチ浮いた後、突き出した拳を支点に半回転し
トワイスに抱きかかえられる形になった。
「今のをノーダメージかい。ってかなんやこの体勢。あそこからなんでこうなるんや」
「突進と共に打ち出した打撃の衝撃の八割を脱力により右手と両足に散らし、両足が負う衝撃を
さらに床に散らした。左手に残った二割を君に合気の要領で押し返し、右腕を通して背中で衝撃を
発散させた。防御力の高い背中に衝撃を集める事で筋肉繊維や内臓へのダメージを無くして」
「長いし、よーわからん」
「君は自分の突進力2割で宙に舞い、私は残り8割を外へ逃がした。
それと、さっきの右手の握りは相手も自分も壊す間違った握り方だから修正した方がいいよ」
「了解ニキー。よーするにワイ庇ってもらったんかい。すまんなー。で、そろそろ下ろしてほしいやけど」
「突進と共に打ち出した打撃の衝撃の八割を脱力により右手と両足に散らし、両足が負う衝撃を
さらに床に散らした。左手に残った二割を君に合気の要領で押し返し、右腕を通して背中で衝撃を
発散させた。防御力の高い背中に衝撃を集める事で筋肉繊維や内臓へのダメージを無くして」
「長いし、よーわからん」
「君は自分の突進力2割で宙に舞い、私は残り8割を外へ逃がした。
それと、さっきの右手の握りは相手も自分も壊す間違った握り方だから修正した方がいいよ」
「了解ニキー。よーするにワイ庇ってもらったんかい。すまんなー。で、そろそろ下ろしてほしいやけど」
抱きかかえられた状態からゆっくりと下ろされる。エヌジェイの様子はいつも通りに戻っていた。
「エヌジェイ君、さっきは何があった?」
「やっぱ強いなアンタ、パッパやバヌニキなんかとは段違いや。
すまんな、どーも抑えられへんのや、戦いたくて大炎上中なんや。でもアンタが優しく受け止めて
くれたから冷静になってきたわ」
「エヌジェイ君、君は…」
「ゆーたやろ、ワイは本気出せば強いって。正直この作戦は義理でギリギリ付き合とっただけやけど、
ミンミンネキやキノコニキ見てたら生還する努力したくなってなー。あーあ、せっかく普通の男の子で
人生終えたかったのに上手くいかんわ。あんたらアムステラのせいやで。ファッキュー」
「君は一体何者なんだ?」
「N・Jは略称やねん。ナンバーズ・ジュニアがワイの正式な名前。つーか型番とか商品名?
アンタならこれでわかるやろ」
「やっぱ強いなアンタ、パッパやバヌニキなんかとは段違いや。
すまんな、どーも抑えられへんのや、戦いたくて大炎上中なんや。でもアンタが優しく受け止めて
くれたから冷静になってきたわ」
「エヌジェイ君、君は…」
「ゆーたやろ、ワイは本気出せば強いって。正直この作戦は義理でギリギリ付き合とっただけやけど、
ミンミンネキやキノコニキ見てたら生還する努力したくなってなー。あーあ、せっかく普通の男の子で
人生終えたかったのに上手くいかんわ。あんたらアムステラのせいやで。ファッキュー」
「君は一体何者なんだ?」
「N・Jは略称やねん。ナンバーズ・ジュニアがワイの正式な名前。つーか型番とか商品名?
アンタならこれでわかるやろ」
ブラッククロス、ナンバーズ、二つのキーワードからトワイスが連想できる答えは一つしかない。
「Dr劉の操兵対応型ホムンクルス、ブラッククロス内にまだ存在していたのか?」
「せや。ちょっと昔話聞いてくれんか?」
「せや。ちょっと昔話聞いてくれんか?」
エヌジェイはその場に座り込み語り始める。
「むかーしむかし、ジッジとバッバがおってな二人は年とってもラブラブやったけど子供があらんかった」
「ふむふむ」
「ある日バッバが洗濯してると川上から大きな桃がどんぶらこっこどんぶらこー」
「寝てくる」
「まってーな!今のはお茶目なジョークやがな!今度はガチでワイの話するから!」
「分かった」
「むかーしむかし、一人のジッジがおってな」
「おやすみエヌジェイ」
「行かんといてー!これは日本昔話やなくてちゃんとしたエヌジェイ昔話やから!
そのジッジは最強の改造人間を作ってたんや。格闘家に動物パワーを配合したりも
しとったみたいやけど、アムステラが来てからは最強のロボ+それの適正を持つパイロットを
一から作りって感じの研究メインになっとった。それで生まれたんがナンバーズなんやけど、
最初の奴が失敗作として廃棄された頃、劉はんには二つの研究テーマが与えられたんや」
「二つ?」
「一つは一体目の欠点を克服しつつ全スペックの向上を目的とした新型の作成、
もう一つはグレードを下げて安定性を重視した量産試作タイプの作成や。
ところがジッジ、最強の存在を作る以外は興味ナッシン。安定してもパワーダウンしたら意味ないやろと
ナンバーズ方式の量産タイプは組織への義理でテキトーに一体作ったきり放置。
以来、劉はんは新型の開発にかかりっきり、量産タイプは開発者不在のまんまノウハウ知らん奴らに育てられ、
正しい言葉遣いも覚えられん始末や。ファッキュージッジ。せめて完成するまでは面倒みんかい」
「それが君か」
「せや。その後はなんやかんやでニラカスに連れ出されたワイはなんやかんやで訳アリの子として
孤児院に入れられた。ここなら戦いと縁がなさそうやしワイは一人の銀河美少年として生きていく事に
したんやけど結局戦争に来ちゃいました。めでたしめでたし」
「君の素性はここにいる皆は知らないのか?」
「少なくともキノコニキとミンミンネキは知らん。パッパは普通の子やないって事ぐらいは
ニラカスから教えられとる。あ、バヌニキは気づいとったかも」
「ふむふむ」
「ある日バッバが洗濯してると川上から大きな桃がどんぶらこっこどんぶらこー」
「寝てくる」
「まってーな!今のはお茶目なジョークやがな!今度はガチでワイの話するから!」
「分かった」
「むかーしむかし、一人のジッジがおってな」
「おやすみエヌジェイ」
「行かんといてー!これは日本昔話やなくてちゃんとしたエヌジェイ昔話やから!
そのジッジは最強の改造人間を作ってたんや。格闘家に動物パワーを配合したりも
しとったみたいやけど、アムステラが来てからは最強のロボ+それの適正を持つパイロットを
一から作りって感じの研究メインになっとった。それで生まれたんがナンバーズなんやけど、
最初の奴が失敗作として廃棄された頃、劉はんには二つの研究テーマが与えられたんや」
「二つ?」
「一つは一体目の欠点を克服しつつ全スペックの向上を目的とした新型の作成、
もう一つはグレードを下げて安定性を重視した量産試作タイプの作成や。
ところがジッジ、最強の存在を作る以外は興味ナッシン。安定してもパワーダウンしたら意味ないやろと
ナンバーズ方式の量産タイプは組織への義理でテキトーに一体作ったきり放置。
以来、劉はんは新型の開発にかかりっきり、量産タイプは開発者不在のまんまノウハウ知らん奴らに育てられ、
正しい言葉遣いも覚えられん始末や。ファッキュージッジ。せめて完成するまでは面倒みんかい」
「それが君か」
「せや。その後はなんやかんやでニラカスに連れ出されたワイはなんやかんやで訳アリの子として
孤児院に入れられた。ここなら戦いと縁がなさそうやしワイは一人の銀河美少年として生きていく事に
したんやけど結局戦争に来ちゃいました。めでたしめでたし」
「君の素性はここにいる皆は知らないのか?」
「少なくともキノコニキとミンミンネキは知らん。パッパは普通の子やないって事ぐらいは
ニラカスから教えられとる。あ、バヌニキは気づいとったかも」
トワイスはエヌジェイとバヌが最後に交わした言葉を思い出す。
彼は「最後だから迷惑かけるな」「お前いくつだよ」とエヌジェイに語りかけていた。
エヌジェイの本性を知った今思い返すと、その言葉から読み取れる意味も変わってくる。
彼は「最後だから迷惑かけるな」「お前いくつだよ」とエヌジェイに語りかけていた。
エヌジェイの本性を知った今思い返すと、その言葉から読み取れる意味も変わってくる。
「あー、スッキリした。よっしゃ、んじゃ他の皆にも本当のワイを見てもらわな。
超時空シンデレラ・エヌジェイに代わりピンチヒッター世紀末救世主エヌジェイ爆誕!」
「そうだな、ルガーさんの思っている保有戦力と実際のそれとの隔離を修正し作戦を洗い直す必要がある」
「バカチンはアンタに獲らせる。そんでワイは騎士をズンバラリンリンして故郷に錦を飾るんやー!おー!
で、悪いけど頼みあるんやわ」
「何だい?」
「バカチンに着くまでにまたさっきみたくなるかもしれんやわ。熱も脈も普通やのに暴れたくなって
周囲に喧嘩売りたくなって」
「大丈夫だ、何度来ても受け止めてやる。さっきは面食らったが、それでも君より私の方がずっと強い」
「ハハ、かなわんなあ」
超時空シンデレラ・エヌジェイに代わりピンチヒッター世紀末救世主エヌジェイ爆誕!」
「そうだな、ルガーさんの思っている保有戦力と実際のそれとの隔離を修正し作戦を洗い直す必要がある」
「バカチンはアンタに獲らせる。そんでワイは騎士をズンバラリンリンして故郷に錦を飾るんやー!おー!
で、悪いけど頼みあるんやわ」
「何だい?」
「バカチンに着くまでにまたさっきみたくなるかもしれんやわ。熱も脈も普通やのに暴れたくなって
周囲に喧嘩売りたくなって」
「大丈夫だ、何度来ても受け止めてやる。さっきは面食らったが、それでも君より私の方がずっと強い」
「ハハ、かなわんなあ」
三時間後、ミーティングを終えたロディム一家は全員の認識が一変していた。
「ふむ、宝くじが当たった時はこんな気分だろうか」
「やっぱりパッパはワイの事気づいとったんかい」
「そうでなければ連れて来んよ。予想以上だったがな」
「やっぱりパッパはワイの事気づいとったんかい」
「そうでなければ連れて来んよ。予想以上だったがな」
ルガーは計画通りという感じに不敵に笑った。
一方、状況に困惑してるのがマシューだ。
一方、状況に困惑してるのがマシューだ。
「あ、ありのままに起こった事を話すぜ。俺は弟と妹を守る気でいたのに実は俺が一番弱かった」
「キノコニキ、ドンマイやで」
「つーか俺がミンを落ち着かせてる間に何やってるんだてめえ!
トワイスさんが話のわかるアムステラ人じゃなかったら今この場でお前が死んでるか、
お前残して俺らが死んでてもおかしくなかったじゃねえか」
「それについては本当に反省してるンゴ…」
「キノコニキ、ドンマイやで」
「つーか俺がミンを落ち着かせてる間に何やってるんだてめえ!
トワイスさんが話のわかるアムステラ人じゃなかったら今この場でお前が死んでるか、
お前残して俺らが死んでてもおかしくなかったじゃねえか」
「それについては本当に反省してるンゴ…」
◇◇◇
【ねーねー、そもそも何で騎士団の陣形が読めるのー?】
ここはイタリアのバチカン。(決してバカチンではない!)
バチカン大聖堂前では式典の為のリハーサルが行われていた。
バチカン大聖堂前では式典の為のリハーサルが行われていた。
「皆、行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
「「「「おう!」」」」
リーダーの騎士の言葉に仲間の騎士が応え彼らはそれぞれの機体に走って行く。と同時にBGMスタート。
(おっwおっwおっおっおwおっおっおw おっwおっwおっおっwおっおっおw)
「熱閃の聖堂騎士、サントスパーダ!」
(俺達は無敵の騎士団 熱い長剣 低燃費 いくらでもいけるぜ)
「抜刀の聖堂騎士、サントトゥオーノ!」
(騎士ロボを乗りこなせ ダイナマイツ 異教徒を見逃すな いつもパニッシャー)
「刺突の聖堂騎士、サントネビア!」
(ホントの強さは きっと 心にあるのだろう 敵に屈するよりも 信心であらがえ 殺っちゃおーぜ!)
「重撃の聖堂騎士、サントネーヴェ!」
(ズッバリンチョ バッサリンチョ 塵にするぜ今日も エーメン! 行くぜ騎士団)
「砲戦の名誉騎士(聖堂騎士より下の役職。詳しくはもう少し先にて)、サントレッター!」
(布教スッゾ 聖書売ッゾ あっちこっち噛みついて 誰にも止められない 聞いて見事驚け)
「五人揃って!」
「「「「「テンプル・ナイツ・ホーリー・クインテット!!」」」」」
「「「「「テンプル・ナイツ・ホーリー・クインテット!!」」」」」
大聖堂を背景に五機がポーズを取ると空砲がドカーンと上がった。本番ではここで花火の予定である。
「グロロ~ッ、素晴らしいぞ」
見事にリハーサルを終えた騎士達に対して大げさに拍手を送るガタイのいい老人がいた。
長髪にヒゲにサングラス。新興宗教の教祖か胡散臭い作曲家の様にも見えるがれっきとした教会のエライサン。
彼が今回の企画仕掛け人、聖女サティと法皇を引き合わせて信者も資金もウッハウッハになろーぜと
とんでもねー企画をゴリ押し提案した俗物を超えた俗物、マイルドキング大司教。
長髪にヒゲにサングラス。新興宗教の教祖か胡散臭い作曲家の様にも見えるがれっきとした教会のエライサン。
彼が今回の企画仕掛け人、聖女サティと法皇を引き合わせて信者も資金もウッハウッハになろーぜと
とんでもねー企画をゴリ押し提案した俗物を超えた俗物、マイルドキング大司教。
担当分野は営業交渉だが今回の式典時には名義の上で騎士団の指揮担当者となっている。
無論、この機会に自分を世間に売り込む為だけに防衛担当者を押しのけたのであり、
宗教パフォーマーである彼にはプロ軍人レベルの指揮能力は期待してはいけない。
無論、この機会に自分を世間に売り込む為だけに防衛担当者を押しのけたのであり、
宗教パフォーマーである彼にはプロ軍人レベルの指揮能力は期待してはいけない。
「これなら法皇様も聖女サティも二人を見に来た観光客も多いに盛り上がるだろう。
本番もこの調子で頼むぞ」
「大司教の趣味とマミッタの趣味が混ざってカオスな事になってますが、
それは置いといて少し宜しいでしょうか大司教」
「なんだね?」
本番もこの調子で頼むぞ」
「大司教の趣味とマミッタの趣味が混ざってカオスな事になってますが、
それは置いといて少し宜しいでしょうか大司教」
「なんだね?」
サントスパーダからの通信でフェルディナンドがマイルドキングに意見する。
「こうやって各騎士の間隔が広くては連携がとれず防衛に難があるのではないかと」
「グロロ~ッ、これぐらい距離をとらんとヘリからの撮影での見栄えが良くないのだ。
それに心配は無用。当日はこの場に聖女サティと彼女の付き添いでフェミリアがいる。
つまりガンダーラとラクシュミーΩが最低限戦力として計算できるという事だ。
さらに式典にはヨーロッパ各国の貴族も注目している。ならば彼らの保有する戦力にも期待できる」
「大司教!めったな事は言わない方が!」
「なあに、別に彼らに守ってもらうという事ではないよ。要するに、普段のバチカンに加えて
呼び戻したマミッタや聖女達+αがいる式典の日にわざわざ攻める敵がどこにいるという事だ。
私ならここを狙うフリをしてイギリスを攻める。ウインドスラッシャーを一気に捕獲もしくは撃破するチャンスだからな。
ズバリ言おう!式典の為のこの陣形は何のデメリットも生み出さないと!」
「グロロ~ッ、これぐらい距離をとらんとヘリからの撮影での見栄えが良くないのだ。
それに心配は無用。当日はこの場に聖女サティと彼女の付き添いでフェミリアがいる。
つまりガンダーラとラクシュミーΩが最低限戦力として計算できるという事だ。
さらに式典にはヨーロッパ各国の貴族も注目している。ならば彼らの保有する戦力にも期待できる」
「大司教!めったな事は言わない方が!」
「なあに、別に彼らに守ってもらうという事ではないよ。要するに、普段のバチカンに加えて
呼び戻したマミッタや聖女達+αがいる式典の日にわざわざ攻める敵がどこにいるという事だ。
私ならここを狙うフリをしてイギリスを攻める。ウインドスラッシャーを一気に捕獲もしくは撃破するチャンスだからな。
ズバリ言おう!式典の為のこの陣形は何のデメリットも生み出さないと!」
両手を高らかにあげて自信満々に宣言するマイルドキングの背後の空にドコーンと砲撃音。
空砲でも花火でもない。
大聖堂から少し離れた地点でサントトゥオーノに似た黒い羅甲が空に向かって煙の上がるバズーカを構えていた。
ブラッククロスからの開戦の合図である。
空砲でも花火でもない。
大聖堂から少し離れた地点でサントトゥオーノに似た黒い羅甲が空に向かって煙の上がるバズーカを構えていた。
ブラッククロスからの開戦の合図である。
「我らはブラッククロス傘下、黒天使隊!神の教えを実行する力無き存在を打ち倒し真の教義へと導くものなり!
そして我が名はルガー・ロディム!この黒天使隊を率いる者だ!」
「て、敵襲ー!?こんな時に!お前達、今すぐ機体を動かせ!私を、じゃなくて聖堂と法皇様を護るのだ!」
そして我が名はルガー・ロディム!この黒天使隊を率いる者だ!」
「て、敵襲ー!?こんな時に!お前達、今すぐ機体を動かせ!私を、じゃなくて聖堂と法皇様を護るのだ!」
黒い羅甲はバズーカを投げ捨て、近接武器を構えながら猛ダッシュで聖堂に接近する。
それを合図に三方向から新たな黒い羅甲が出現する。
それを合図に三方向から新たな黒い羅甲が出現する。
(考えろ大司教ミッション・マイルドキング!戦闘のリーダーはフェルディナンドだが、
今日バチカンが落ちれば間違いなく責任は私に降りかかる!何でよりにもよって私が名義上指揮してる時に!
空気読めブラッククロス!とにかく責任回避には奴らを撃退しないと!)
今日バチカンが落ちれば間違いなく責任は私に降りかかる!何でよりにもよって私が名義上指揮してる時に!
空気読めブラッククロス!とにかく責任回避には奴らを撃退しないと!)
「クオックオックオッ、クオックオックオッ」
人はパニックになった時スイッチを切り替える事で平常心を取り戻す。
思いっきり泣いたり、両目を潰し風だけを頼りに周囲を把握したり、足元の花を踏まない様に歩いたり
人によってそのスイッチは異なる。マイルドキングのスイッチは首を左右に振りながら
変な声で笑う事だった。
マイルドキングは首を左右に振りながら知恵を振り絞り現状への最適解を導き出す。
思いっきり泣いたり、両目を潰し風だけを頼りに周囲を把握したり、足元の花を踏まない様に歩いたり
人によってそのスイッチは異なる。マイルドキングのスイッチは首を左右に振りながら
変な声で笑う事だった。
マイルドキングは首を左右に振りながら知恵を振り絞り現状への最適解を導き出す。
(よし、まずは聖女達に助けを求めよう。二人は既に近くのホテルにいる。
私が頭を下げるまでも無く、状況を話すだけで出撃してくれるだろう。何せ聖女だからな)
私が頭を下げるまでも無く、状況を話すだけで出撃してくれるだろう。何せ聖女だからな)
「おい、そこのお前。聖女達のホテルにブラッククロスが出現して危険だから退避している様に伝えろ」
「ハッ、大司教!」
「ハッ、大司教!」
近くの司祭に伝令係を命じ、自分は大聖堂周囲をモニターで見渡す。
(グロロ~ッ、退避していろと言われてそうする事もあるまい。聖女サティなら間違いなく
我らを自主的に守りに向かってくる。フェミリアもそれに従うだろう。予想外の襲撃で驚いたが、
少数のブラッククロス如きならこれで十分)
我らを自主的に守りに向かってくる。フェミリアもそれに従うだろう。予想外の襲撃で驚いたが、
少数のブラッククロス如きならこれで十分)
「報告いたします!ガンダーラとラクシュミーΩは海岸線からバチカンを狙うアムステラ空軍を迎撃に向かいました!」
「えっ、何それ、やっべ」
「えっ、何それ、やっべ」
読者の皆様はもう大体気づいているだろうが説明しよう。
この南極女子高生は過去の短編『ぷちこあ劇場』と同じ時間軸の話である。
聖女達の戦いがどうなったのかは語る必要はないだろう。
こっちの物語において重要なのは決着までサティ達が戻ってこない事が確定しているという点である。
未来を知る事など出来ないマイルドキングも二人がこちら側の防衛のアテに出来ない事は感じていた。
この南極女子高生は過去の短編『ぷちこあ劇場』と同じ時間軸の話である。
聖女達の戦いがどうなったのかは語る必要はないだろう。
こっちの物語において重要なのは決着までサティ達が戻ってこない事が確定しているという点である。
未来を知る事など出来ないマイルドキングも二人がこちら側の防衛のアテに出来ない事は感じていた。
「大司教?」
「あー、コホン。我が騎士団はどうなっている!四機の黒羅甲は撃退できたのか?」
「現在それぞれが間近にいる敵機と交戦状態に入った模様!映像でます!」
「あー、コホン。我が騎士団はどうなっている!四機の黒羅甲は撃退できたのか?」
「現在それぞれが間近にいる敵機と交戦状態に入った模様!映像でます!」
モニターに映る映像にはサントレッターを除く四機がそれぞれ敵と接触したのが映された。
「おお!流石我が騎士団!一機も突入させる事なく食い止めておる。いいぞ」
「大司教、それぞれの騎士が対応している敵機、我々側の機体と似ている気がします。
それに相手の隊長格の男、ルガー・ロディムと名乗っていましたが確か同じ名の騎士が昔」
「グロロ~ッ、今はそんな事はどうでもよいわ。名誉騎士のマミッタが今フリーか。
よし、地上戦で一対一なら騎士達がブラッククロスなぞに負けるはずが無い!
あいつには大聖堂前にて伏兵を警戒させるのだ。聞こえているかマミッタ・マミッタ、
他の騎士への援護射撃は必要ない、待機して周囲警戒だ!」
「大司教、それぞれの騎士が対応している敵機、我々側の機体と似ている気がします。
それに相手の隊長格の男、ルガー・ロディムと名乗っていましたが確か同じ名の騎士が昔」
「グロロ~ッ、今はそんな事はどうでもよいわ。名誉騎士のマミッタが今フリーか。
よし、地上戦で一対一なら騎士達がブラッククロスなぞに負けるはずが無い!
あいつには大聖堂前にて伏兵を警戒させるのだ。聞こえているかマミッタ・マミッタ、
他の騎士への援護射撃は必要ない、待機して周囲警戒だ!」
マイルドキングが声を飛ばすと、即座にマミッタからの通信。
「はい、新たな敵が来ても私が食い止めてみせます」
「剣技の才を持たぬ故に聖堂騎士になれなかった。そんなお前のO.M.Sでの功績を
私がアッピルして名誉騎士という称号を与えてやったのだ。役職に恥じぬ活躍を期待しているぞ」
「剣技の才を持たぬ故に聖堂騎士になれなかった。そんなお前のO.M.Sでの功績を
私がアッピルして名誉騎士という称号を与えてやったのだ。役職に恥じぬ活躍を期待しているぞ」
流石に陣形スカスカすぎたかなーと心の中で心配していたマイルドキングだったが、
上手い事分散した騎士と敵がぶつかってくれて一安心。
上手い事分散した騎士と敵がぶつかってくれて一安心。
『大聖堂より数百メートル南、サントネーヴェ対デフネーヴェ』
「本当に白雪姫が私の相手になるなんて、マイルドキングという男は単純で見栄っ張り。父様の言った通り」
「…サントネーヴェ行きます!(火器も無い、飛行能力も無い、それでもこの敵から感じる自信は一体?)」
「本当に白雪姫が私の相手になるなんて、マイルドキングという男は単純で見栄っ張り。父様の言った通り」
「…サントネーヴェ行きます!(火器も無い、飛行能力も無い、それでもこの敵から感じる自信は一体?)」
『大聖堂より数百メートル東、サントネビア対デフネビア』
「あんたラッキーだぜ。こん中じゃ俺が一番弱い。機体も一番スペックが下だ。…まあモデルがお前だしな」
「喧嘩売ってるなアアン?まあテメーが弱いってんならさっさと倒して皆の援護に行かせてもらうぜ!」
「あんたラッキーだぜ。こん中じゃ俺が一番弱い。機体も一番スペックが下だ。…まあモデルがお前だしな」
「喧嘩売ってるなアアン?まあテメーが弱いってんならさっさと倒して皆の援護に行かせてもらうぜ!」
『大聖堂より数百メートル北、サントトゥオーノ対デフトゥオーノ』
「人は変わるものだな、そう思わないかマモート君」
「確かに。少し運命が違っていれば立ち位置は逆だったかもしれん。だが、今は聖堂騎士として悪の貴方を討つ!」
「人は変わるものだな、そう思わないかマモート君」
「確かに。少し運命が違っていれば立ち位置は逆だったかもしれん。だが、今は聖堂騎士として悪の貴方を討つ!」
『大聖堂より数百メートル西、サントスパーダ対デフスパーダ』
「その機体、あんたがここの最強か?ヨロシクニキー」
「法皇やマイルドキング大司教の世代で伝説と呼ばれた騎士ルガー、もし奴が同一人物なら墜ちたものだ。
ブラッククロス入りした事もそうだが、何より許せんのはこの私との勝負を避けて子供をぶつけた事だ!
私が辿り着くまで持たせなさいマモート!」
「その機体、あんたがここの最強か?ヨロシクニキー」
「法皇やマイルドキング大司教の世代で伝説と呼ばれた騎士ルガー、もし奴が同一人物なら墜ちたものだ。
ブラッククロス入りした事もそうだが、何より許せんのはこの私との勝負を避けて子供をぶつけた事だ!
私が辿り着くまで持たせなさいマモート!」