影狼隊徒然記【白い狐と緑の兎】
~ 早朝・操兵シミュレーター空間内 ~
普段ならば未だ、人の気配すら無い時間にも関わらず。戦闘訓練シミュレーターが稼動していた。
その仮想空間内の戦闘フィールドは、遮る物も無い荒野。吹き荒ぶ風の中、距離を空けて佇むのは二機の操兵。
その仮想空間内の戦闘フィールドは、遮る物も無い荒野。吹き荒ぶ風の中、距離を空けて佇むのは二機の操兵。
うち一機は大鎌を構えた白銀の機体。対峙する漆黒の機体は、尊大に腕組みをしたまま白銀の機体を見据える。
「さぁて・・・俺を満足させてくれるよな? 大尉・・・いや、『エース・パイロット』」漆黒の機体が静かに語りかける。
「もちろんですとも。行きますよっ、『ブラッディフォックス!』」白銀の機体はそれに応えて叫ぶ。
「もちろんですとも。行きますよっ、『ブラッディフォックス!』」白銀の機体はそれに応えて叫ぶ。
その叫びと同時に白銀の機体 ― 白鎌狐(びゃくれんこ)― の両肩の可動式バインダーから、拡散レーザー・銀雨(ぎんう)が放たれる。
だが、その強烈な拡散レーザーの射線を瞬時に見切り、腕組みしたまま回避する漆黒の機体 ― 黒竜角(こくりゅうかく)―
だが、その強烈な拡散レーザーの射線を瞬時に見切り、腕組みしたまま回避する漆黒の機体 ― 黒竜角(こくりゅうかく)―
「・・・フッ。『遊び』も混ぜて見切り難くしたか。中々、工夫してるな」「この銀雨は布石! 本命はッ!」
その言葉通り、銀雨を避ける黒竜角の回避先は既に読まれていた。一気に間合いを詰め、手にした大鎌を振りかざす白鎌狐。
白鎌狐の名の由来でもあるその大鎌・斬刹(ざんせつ)。重装甲のゴーリキーの四肢をも瞬時に切断した必殺の鎌が黒竜角を襲う!!
それでも腕組みしたままで数合、その刃風を避け続けた黒竜角だが。遂に右腕の鉤爪(ジェノサイドクロー)で、迫る刃を打ち払った!
白鎌狐の名の由来でもあるその大鎌・斬刹(ざんせつ)。重装甲のゴーリキーの四肢をも瞬時に切断した必殺の鎌が黒竜角を襲う!!
それでも腕組みしたままで数合、その刃風を避け続けた黒竜角だが。遂に右腕の鉤爪(ジェノサイドクロー)で、迫る刃を打ち払った!
「・・・やるな。もう俺に手を出させるか」「まだまだっ! ・・・次はその腕ごと切り裂いてみせますっ!」
その言葉を聞くなり黒竜角は間合いを空け、伸ばした腕で白鎌狐を指差す。
「よく吼えた。ならば受けてみろっ!『レイジングストームッッ!!』」
「今日こそ、貴方を超えたと証明してみせるっ!『九尾蒼焔ッッ!!』」
「今日こそ、貴方を超えたと証明してみせるっ!『九尾蒼焔ッッ!!』」
二機の奥義が交錯する衝撃音・・・そして訪れる静寂・・・。
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~ 朝・操兵シミュレーター室 ~
パ タ ッ ! パ タ ッ ! パ タ ッ ! パ タ ッ !
「・・・それで? ガミジン隊長~、何でルッチーと連戦してるんですか?!」
緑と黒のメッシュの髪をしたサンダル履きの少女が、腰に手を当ててパタンパタンと足を踏み鳴らしつつ文句を言う。
文句を言われて居るのは、苦笑いを浮かべたガミジンと、まだ荒い息を整えている最中のルース。
文句を言われて居るのは、苦笑いを浮かべたガミジンと、まだ荒い息を整えている最中のルース。
「いや済まん済まん。ルースの成長っぷりについ、興が乗っちまってな」「ちょ、ちょっとクロエ君。その『ルッチー』って綽名は止めて」
「でも、今日はこれから私の戦闘訓練にも付き合ってくれる予定でしたよねぇ?」
「ハ、ハハ・・・ちょっと待て休憩だ。流石に疲れた・・・ってか、腹減った」
「もうっ! 朝ごはんの前から張り切りすぎですっ! いくら『ルッチーの相手なんか朝飯前だ!』だからって、本当に…」
「だからクロエ君っ! その『ルッチー』って言うの止めて!!」
「でも、今日はこれから私の戦闘訓練にも付き合ってくれる予定でしたよねぇ?」
「ハ、ハハ・・・ちょっと待て休憩だ。流石に疲れた・・・ってか、腹減った」
「もうっ! 朝ごはんの前から張り切りすぎですっ! いくら『ルッチーの相手なんか朝飯前だ!』だからって、本当に…」
「だからクロエ君っ! その『ルッチー』って言うの止めて!!」
ルースの切実な懇願を聞き流しつつ、クロエは頬を膨らませたまま「朝ごはんですよ」と、2人に弁当箱を差し出す。
「おっ、気が利くな・・・こりゃ旨そうだ」楕円形の弁当箱を受け取り、綺麗に盛り付けられた中身を見て目を細めるガミジン。
「ありがたく頂きま・・・ねぇ、クロエ君? これ・・・」長方形の弁当箱を受け取ったルースは、その中身を見て絶句する。
「ありがたく頂きま・・・ねぇ、クロエ君? これ・・・」長方形の弁当箱を受け取ったルースは、その中身を見て絶句する。
まぁ、そりゃそうだろう。ルースに渡された弁当箱にぎっしり詰まってるのは白米。中央にアクセントで梅干があるだけの、ほぼ白一色。
「それは『日の丸弁当』といいまして。先日、ルース先輩が惨敗したKGFがある国、日本に古くから伝わる弁当だそうです」
「(なんか、言動の端々がすっごく痛いよ!)・・・随分と殺風景な弁当ですね・・・でも、これだけ?」
「まさかぁ。ルース先輩はまだ一応、育ち盛りですし。おかずも別にありますよ」
「(なんか、言動の端々がすっごく痛いよ!)・・・随分と殺風景な弁当ですね・・・でも、これだけ?」
「まさかぁ。ルース先輩はまだ一応、育ち盛りですし。おかずも別にありますよ」
そう言ったクロエは別の小さな弁当箱もルースに渡し、自分用にも楕円形の弁当箱を出して一緒に食事を始める。
「さて、食うか!」「いただきまーす♪」「・・・いただきます。(でも、待遇違うよね! どう考えても待遇が違うよね!!)」
ガミジンとクロエのお揃い弁当箱と、手にした日の丸弁当と余り物を詰め込まれたおかず弁当箱を見つつ、複雑な表情になるルース。
しかし空腹には勝てず、黙々と朝食を平らげ始める。
しかし空腹には勝てず、黙々と朝食を平らげ始める。
「・・・ふぅ~っ、食った食った」「・・・ごちそうさま」「はい、お茶どうぞ」
トポトポトポ・・・トポトポトポ・・・トポトポトポ・・・トポトポトポ・・・
「今日のも旨い朝食だったぜ」「えへへっ」「(まぁ、美味しかったですけどね・・・)」「・・・ふむ。良い頃合いかな」
・・・ ッ ! ? !
予想外の声に驚いたルースが、首をグリンッ!と回して声の主を見る。そこに居たのは、注いで貰った茶を悠然と飲んでいる影狼隊隊長。
「いっ、何時の間にっ・・・?!」
「あぁ。そいつはたまに湧くんだ」「かげちょーさんが来るのって大抵、隊長に頼み事がある時ですよねー」
「(いやいやいや。湧くって。ゴキブリか何かじゃあるまいし。しかもマイ湯呑持参?! ってかクロエ君も慣れ過ぎでしょ!)」
「あぁ。そいつはたまに湧くんだ」「かげちょーさんが来るのって大抵、隊長に頼み事がある時ですよねー」
「(いやいやいや。湧くって。ゴキブリか何かじゃあるまいし。しかもマイ湯呑持参?! ってかクロエ君も慣れ過ぎでしょ!)」
「あぁ。次回出撃予定の打ち合わせをと思ったのだがな。その前に良いものを観せて貰った。で、ルース大尉」
「・・・はいっ?!」
「時間があれば一つ、手合わせを願えるかな?」
「・・・えぇ! 是非、お願いします!」
「・・・はいっ?!」
「時間があれば一つ、手合わせを願えるかな?」
「・・・えぇ! 是非、お願いします!」
影狼隊隊長から意外な誘い。以前、戦場で共闘した事(SRC作品『毘沙門』、『一意穿震・第三章』参照)はあるが、手合わせは初めてだ。
ガミジン以外の強者とも手合わせして経験を積むというのは、ルースとしても望むところである。
ガミジン以外の強者とも手合わせして経験を積むというのは、ルースとしても望むところである。
「それで、だ・・・相手が現役のエースともなればな・・・少々ハンデを貰いたいのだが。構わないかね?」
「・・・えぇ。構いませんとも」前髪を払いつつ、一転して尊大な表情と化すルース。
「・・・えぇ。構いませんとも」前髪を払いつつ、一転して尊大な表情と化すルース。
普通に考えれば、純粋な戦闘仕様の操兵を相手に、いくら隊長機とはいえ隠密仕様の操兵で真っ向勝負を挑むのは不利というもの。
ましてやあのガミジンを抜いて、最年少のエースとなったルースが相手なのだ。そりゃあハンディキャップが欲しくもなるだろう。
しかし、影狼隊隊長も只者では無かった。彼が述べるその『ハンデ』とは・・・
ましてやあのガミジンを抜いて、最年少のエースとなったルースが相手なのだ。そりゃあハンディキャップが欲しくもなるだろう。
しかし、影狼隊隊長も只者では無かった。彼が述べるその『ハンデ』とは・・・
「そうだな・・・まず、フィールドは先程の荒野で良いだろう。起伏無し、遮蔽物無し、光源の偏り無しの条件にして貰おうか」
「そして開始距離は中間距離から、双方視認状態で始めるとしよう」
「それとクロエ君。折角だから君にもルース君と組んで参加して貰うか・・・ここまでは別に良いだろう?」
「そして開始距離は中間距離から、双方視認状態で始めるとしよう」
「それとクロエ君。折角だから君にもルース君と組んで参加して貰うか・・・ここまでは別に良いだろう?」
矢継ぎ早に『ハンデ』を述べる影狼隊隊長の発言を聞いて、怪訝な顔をするルース。
「えぇ、僕は構いませんよ。ですが・・・それの何処が『ハンデ』ですか?」
「むっ? まだ付けても良いのか。ならば私は『左腕の攻撃で』君達を仕留めると宣言しよう!」
「むっ? まだ付けても良いのか。ならば私は『左腕の攻撃で』君達を仕留めると宣言しよう!」
プ ッ チ ー ン ッ ! !
もうこれは駄目だ。どういう『ハンデ』かと思えば、フィールド環境は真っ向勝負向きの設定だし、しかも2対1の条件。
あまつさえ、とどめの一発は『左腕の攻撃で』決めると指定してきた。むしろこれは、影狼隊隊長への『ペナルティ』と言わないか?
怒りに打ち震えたルースは、大見得を切って言い放つ!
あまつさえ、とどめの一発は『左腕の攻撃で』決めると指定してきた。むしろこれは、影狼隊隊長への『ペナルティ』と言わないか?
怒りに打ち震えたルースは、大見得を切って言い放つ!
「・・・そうですか。貴方がそんな条件でこの僕に勝てるとでも思うのなら・・・」
「 ま ず は そ の 、ふ ざ け た 幻 想 を ブ チ 殺 す っ ! ! 」
「 だ か ら お 前 は ア ホ な の だ ぁ っ ! ! 」
激昂したルースの科白に、間髪入れず放たれた罵倒。しかし、そう叫んだのは・・・クロエ?!
「・・・は? クロエ君、一体何…」「惑わされるな!」
「い、いやクロエ君? だから僕は…」「惑わされるなと言っている!」
「い、いやクロエ君? だから僕は…」「惑わされるなと言っている!」
すっかり毒気を抜かれたルースが絶句したのを確認して、クロエは発言を続ける。
「かげちょーさんが何考えてるか判んないですけど。どうせやるなら勝ちたいんですよねー、私は」
「・・・いやちょっと待った。それで何で僕が罵られなきゃならないんです?」
「全くもぉ。先輩はアホで御座いますか? これはチームプレイですよ。先輩が怒ってたら、かげちょーさんの思う壺ですって」
「・・・なっ、なるほど?・・・何か釈然としませんが・・・」
「あーもぅ。細かいコト気にしてたら若ハゲになりますよ、ルース先輩」「・・・嫌なフラグ立てるの止めて」
「・・・いやちょっと待った。それで何で僕が罵られなきゃならないんです?」
「全くもぉ。先輩はアホで御座いますか? これはチームプレイですよ。先輩が怒ってたら、かげちょーさんの思う壺ですって」
「・・・なっ、なるほど?・・・何か釈然としませんが・・・」
「あーもぅ。細かいコト気にしてたら若ハゲになりますよ、ルース先輩」「・・・嫌なフラグ立てるの止めて」
そのやり取りを面白げな顔をしながら眺めていた影狼隊隊長が、横から口を挟む。
「では、勝利条件を確認させて貰おう。勝利条件は、相手の操兵を戦闘不能にする事。これは良いかな」
「えぇ、了解しました」「はーい!」
「そして私は、『左腕の攻撃で』君達の操兵に止めを刺す。これも良いな」
「良いですが・・・そんなの今更確認するまでも無いでしょう?」「ですよねー」
「フフフ・・・何、念の為さ。後で文句が出ない様、念の為に確認をな・・・」
「えぇ、了解しました」「はーい!」
「そして私は、『左腕の攻撃で』君達の操兵に止めを刺す。これも良いな」
「良いですが・・・そんなの今更確認するまでも無いでしょう?」「ですよねー」
「フフフ・・・何、念の為さ。後で文句が出ない様、念の為に確認をな・・・」
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~ 操兵シミュレーター空間内 ~
フィールド上に、まずは二機の操兵が具現化した。一機は大鎌・斬刹を持つ白銀の機体、ルースの愛機 ― 白鎌狐 ― 。
もう一機は両側頭部に兎の耳にも見える大型複合センサーを備え、両手足に鉈状の刃を装備した緑色の操兵。
これがクロエの愛機 ― 断刀(だんと) ― である。偵察任務仕様ではあるが、四肢の刃を見ての通り、近接格闘戦を得意とする。
もう一機は両側頭部に兎の耳にも見える大型複合センサーを備え、両手足に鉈状の刃を装備した緑色の操兵。
これがクロエの愛機 ― 断刀(だんと) ― である。偵察任務仕様ではあるが、四肢の刃を見ての通り、近接格闘戦を得意とする。
彼らに相対するは、闇の色を帯びた細身の操兵。犬の頭を思わせる胸部に光る単眼、地に触れる程の長い両腕を持つ隠密機。
影狼隊隊長機 ― 妖爪鬼(ようそうき) ― 、彼が繰り出す戦法の全てを見た者は未だ居ない・・・。
影狼隊隊長機 ― 妖爪鬼(ようそうき) ― 、彼が繰り出す戦法の全てを見た者は未だ居ない・・・。
「クロエ君、任せますよっ!」「了解っ!」
ルース達の掛け声とほぼ同時に、妖爪鬼が閃光に包まれる。これは妖爪鬼が持つ視覚センサー潰しの一つ、暗輝(あんき)である。
シミュレーターの映像モニターもそれに反応して暗転するが、ルース達は既に映像モニターから目を離していた。
間髪入れず、断刀が最大出力で索敵。妖爪鬼の放つ各種センサー妨害効果をも打ち破り、その位置を把握。白鎌狐にも位置を伝える。
だが、妖爪鬼は自ら放った煙幕・闇霞(やみがすみ)の中に埋没して、その姿を隠している。
シミュレーターの映像モニターもそれに反応して暗転するが、ルース達は既に映像モニターから目を離していた。
間髪入れず、断刀が最大出力で索敵。妖爪鬼の放つ各種センサー妨害効果をも打ち破り、その位置を把握。白鎌狐にも位置を伝える。
だが、妖爪鬼は自ら放った煙幕・闇霞(やみがすみ)の中に埋没して、その姿を隠している。
「無駄ですよ。視覚が効かなくても、断刀のセンサーは貴方の位置を把握してますっ!」
斬刹を振りかざした白鎌狐が、薄墨の様な闇の中へ踏み込みかけ・・・その場に留まる。
(「いや待て! 『断刀に位置を把握されるのは承知の上で何故、未だ闇に隠れて居る?』」)
くるりと斬刹が回転したかと思うと、その石突が隣に居る断刀を思い切り突き飛ばす。
次の瞬間。大きくよろけた断刀の居た場所に、上空から鉤爪が振り下ろされ、大地に大きく爪痕を残す!
次の瞬間。大きくよろけた断刀の居た場所に、上空から鉤爪が振り下ろされ、大地に大きく爪痕を残す!
「やはりね。ですが、僕が五体満足の内にそんな大振りな攻撃を仕掛けるなんて。作戦が雑なんですよっ!!」
その叫びと共に白鎌狐の両肩から光の矢が放たれる。右側に着弾したらしき火花が散るが、その効果を確認する前に斬刹が唸りを上げる。
ルースの必殺技の一つ、ブラッディフォックス。妖爪鬼を闇から追い出しつつ、光刃の舞が虚空を切り裂く。
しかし妖爪鬼もさるもの。その刃の連撃を避け、何度かは右手の鉤爪で弾き返して有効打を与えない。
ルースの必殺技の一つ、ブラッディフォックス。妖爪鬼を闇から追い出しつつ、光刃の舞が虚空を切り裂く。
しかし妖爪鬼もさるもの。その刃の連撃を避け、何度かは右手の鉤爪で弾き返して有効打を与えない。
(「さっきの銀雨は妖爪鬼の左肩に当たったのか? 確かに左腕は使ってませんが・・・まずブラフでしょうね」)
「それにしても、僕の攻撃をこうも避けますか! ガミジン隊長以外でここまで避ける人は早々居ませんよっ!!」
「ルース先輩っ! 私も行きます! 『ブレードテンペストっ!!』」
「ルース先輩っ! 私も行きます! 『ブレードテンペストっ!!』」
横合いから手足を振り回しつつ飛び込んだ断刀が刃の暴風と化して妖爪鬼を襲い、白鎌狐は一旦引いてその様子を見守る。
「ほぉ・・・新しいパターンか。良いな、精度や意外性も申し分無い。これも充分実用に耐えるレベルだ」
「だったら! ・・・そんな簡単に・・・避けないで・・・下さい・・・よっ!!」
「だったら! ・・・そんな簡単に・・・避けないで・・・下さい・・・よっ!!」
断刀の猛攻と、それを避ける妖爪鬼を観察するルース。じきに激しく動く妖爪鬼の胸部単眼が観ているモノに気が付く。
(「・・・そうか、足捌きだ! 断刀の踏み込みで次の動きを判断しつつ、自らも運足で攻撃のポイントを外して居るっ!」)
(「これじゃ僕の攻撃も当たらない筈だ・・・ならば、そうか! この手なら行けるかも!!」)
(「これじゃ僕の攻撃も当たらない筈だ・・・ならば、そうか! この手なら行けるかも!!」)
「クロエ君っ、下がって! 僕に考えがあります!」
間合いを取った断刀の背後に白鎌狐が寄り添い、肩に手を置いて傍受対策の接触通話で数瞬のやり取り。
白鎌狐が手を離すのと同時に、断刀とその背後に白鎌狐が並んで、妖爪鬼に向かって身構える。
白鎌狐が手を離すのと同時に、断刀とその背後に白鎌狐が並んで、妖爪鬼に向かって身構える。
「じゃあ行きますよ、クロエ君!」「任せてっ、ルース先輩っ!!」
「 ブ ラ ッ デ ィ … 」「 … テ ン ペ ス ト ! ! 」
白鎌狐の両肩から再び、光の矢が放たれる。だが今度は、同時にその光の中を刃の暴風が駆け抜ける!
それだけでは無い。長柄を活かして断刀の背後から連続で打ち込まれる光刃が合わさり、光刃の嵐風が吹き荒れるっ!!
それだけでは無い。長柄を活かして断刀の背後から連続で打ち込まれる光刃が合わさり、光刃の嵐風が吹き荒れるっ!!
「2人分の必殺技! 見切れますかっ?!」「かげちょーさん、これで終わりですっ!!」
「むうぅっ・・・やるなっ!!」
「むうぅっ・・・やるなっ!!」
二機の同時連続攻撃で、流石の妖爪鬼も全ては避け切れずに被弾していく。そして遂に、その胸部単眼を斬刹の刃が抉り取った!
だが彼らが勝利の予感を感じたその瞬間! 今まで全く動かなかった妖爪鬼の左腕が突然閃めき、断刀を狙う槍と化す!!
だが彼らが勝利の予感を感じたその瞬間! 今まで全く動かなかった妖爪鬼の左腕が突然閃めき、断刀を狙う槍と化す!!
「危ないっ!」「きゃっ!」
しかし断刀は、左肘を砕かれて転倒しながらも致命傷を避け、同時に繰り出された斬刹により、妖爪鬼の左腕は肩から断ち切られる。
「左腕の無い今、これで貴方の勝ちは無くなりましたね。止めですっ!!」
斬刹を振り上げる白鎌狐。・・・試合前はともかくこの戦闘中。ルースは、全く冷静さを失わずに戦って来た。
だが、ルースの冷静さが崩れたのは。斬刹を扱う白鎌狐の精妙な指捌きが乱れた時では無かったろうか・・・。
だが、ルースの冷静さが崩れたのは。斬刹を扱う白鎌狐の精妙な指捌きが乱れた時では無かったろうか・・・。
「・・・えっ??!」
白鎌狐の右拳が開き、握った斬刹がすっぽ抜ける。そして慣性の残った斬刹を左手一本で抑えた状態。こんな大きな隙を逃す筈は無い。
妖爪鬼の右腕が下から白鎌狐の装甲の隙間を狙い、エビの甲殻を剥く様に胸部の装甲板を剥ぎ取る。だがこれは、致命傷には程遠い。
次の瞬間、何かにつまづいた様な感じで白鎌狐がうつ伏せに倒れて行く。その倒れ込む先にあるのは黒い筒状の塊。一体何だ?
妖爪鬼の右腕が下から白鎌狐の装甲の隙間を狙い、エビの甲殻を剥く様に胸部の装甲板を剥ぎ取る。だがこれは、致命傷には程遠い。
次の瞬間、何かにつまづいた様な感じで白鎌狐がうつ伏せに倒れて行く。その倒れ込む先にあるのは黒い筒状の塊。一体何だ?
(「やられた! 右手に蛇牙を撃ち込まれたかっ! そして今の足元は・・・さっき地を削った跡! 何て高度な罠を!!」)
(「ですが、受身を取って立ち上がればまだチャンスはある・・・ん? 何です、あの黒い筒・・・っ!!!」)
(「ですが、受身を取って立ち上がればまだチャンスはある・・・ん? 何です、あの黒い筒・・・っ!!!」)
勝利を確信した一瞬の隙に、機体の行動を阻害する電磁針・蛇牙(じゃが)を受けたと悟り、ルースは揺らぎかけた冷静さを取り戻す。
しかし黒い筒状の物体の正体と、その意味に気付いた瞬間。ルースの冷静さは完全に吹き飛んだ。
しかし黒い筒状の物体の正体と、その意味に気付いた瞬間。ルースの冷静さは完全に吹き飛んだ。
「ばっ、馬鹿なぁっ! 通るかそんなモノっ!!」
「・・・通す。言った筈だぞ・・・『左腕の攻撃』で止めを刺すとな。・・・骸破」
「・・・通す。言った筈だぞ・・・『左腕の攻撃』で止めを刺すとな。・・・骸破」
影狼や妖爪鬼の四肢に仕込まれた自爆装置・骸破(がいは)。通常運用では爆発しないが、手足を切り離せば機密保持の為に爆弾と化す。
白鎌狐は、装甲を剥がれた状態でそんな『左腕の』爆弾に向かって倒れ込んだのだ・・・当然、爆発に巻き込まれて戦闘不能となる。
白鎌狐は、装甲を剥がれた状態でそんな『左腕の』爆弾に向かって倒れ込んだのだ・・・当然、爆発に巻き込まれて戦闘不能となる。
(「・・・ルース先輩っ?! でも、チャンスっ!!」)
倒れて居た断刀が立ち上がったのは、白鎌狐が骸破で戦闘不能になるのとほぼ同時。
妖爪鬼の右腕は装甲を剥いだ構えのまま振り上げられており、その胸部の単眼は先ほど潰されて完全に機能は失われて居る。
そして何よりも、左腕は完全に無いのだ。これは反撃出来ないだろうし、少なくとも妖爪鬼に負ける心配はもう無い。
妖爪鬼の右腕は装甲を剥いだ構えのまま振り上げられており、その胸部の単眼は先ほど潰されて完全に機能は失われて居る。
そして何よりも、左腕は完全に無いのだ。これは反撃出来ないだろうし、少なくとも妖爪鬼に負ける心配はもう無い。
「貰ったあぁっ!!」
だが次の瞬間。クロエは自分の思惑の全てが誤算だった事を悟らされた。
妖爪鬼の無貌の頭部が、迫る断刀を見つめるのと同時に。翻転した妖爪鬼の左踵が、破城鎚の如く断刀の鳩尾に叩き込まれる。
そして、大きく吹き飛ばされた断刀が起き上がろうとする処に打ち込まれる刃・・・
妖爪鬼の無貌の頭部が、迫る断刀を見つめるのと同時に。翻転した妖爪鬼の左踵が、破城鎚の如く断刀の鳩尾に叩き込まれる。
そして、大きく吹き飛ばされた断刀が起き上がろうとする処に打ち込まれる刃・・・
「・・・あ。あぁ~っ!! そんなのあり~っ?!」
そう。断刀に止めを刺したのは、妖爪鬼の右手に握られた『断刀の左腕』に装備された鉈だったのだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~ 操兵シミュレーター室 ~
「クククッ・・・相変わらず汚い手を使う奴だ。純朴な少年少女を騙して楽しいか?」
「また随分と酷い言われようだな。『左腕の攻撃で』とは言ったが、攻撃方法やどの機体の左腕を使うかまでは指定して居ないぞ」
「そういうのを汚いってんだよ」
「また随分と酷い言われようだな。『左腕の攻撃で』とは言ったが、攻撃方法やどの機体の左腕を使うかまでは指定して居ないぞ」
「そういうのを汚いってんだよ」
シミュレーターから出てくる3人を、ガミジンはニヤニヤと笑いながら出迎える。
そして、悔しそうな顔で出て来たルースとクロエに対して、影狼隊隊長は声を掛けた。
そして、悔しそうな顔で出て来たルースとクロエに対して、影狼隊隊長は声を掛けた。
「それにしても、ハンデを貰ってたのは正解だったな。あれが無ければ君達に勝つのはもっと困難だった筈だ」
「・・・嫌味ですか、それ」「どう考えても私達の方が有利でしょ? あの条件って」
「いや、そうでもないさ。・・・一つ聞くが、妖爪鬼の左腕が断たれた時に『勝った!』と思っただろう?」
「えぇ、それはまぁ・・・っ! そうかっ!!」「そりゃ、あの条件なら誰だってそう思いますよ~」
「そう。君達が『左腕の攻撃』を強く意識してた分、付け入る隙が大きかった訳さ」
「・・・嫌味ですか、それ」「どう考えても私達の方が有利でしょ? あの条件って」
「いや、そうでもないさ。・・・一つ聞くが、妖爪鬼の左腕が断たれた時に『勝った!』と思っただろう?」
「えぇ、それはまぁ・・・っ! そうかっ!!」「そりゃ、あの条件なら誰だってそう思いますよ~」
「そう。君達が『左腕の攻撃』を強く意識してた分、付け入る隙が大きかった訳さ」
そこへガミジンが、面白げな表情のまま横から口を出す。
「まっ、2人共この汚い野郎相手に良く頑張ったと褒めてやるぜ。だがなぁルース・・・俺はいつまでお前の隊長なんだ?」
「・・・へっ? 僕、『ガミジン隊長』って言ってました?」
「あー・・・確か言ってたな」「そういえば言ってましたね。これだからルッチーはダメダメなんですよ~」
「こ、これからは気を付けますっ! ・・・って言うかクロエ君っ! ルッチー言うなっ!!」
「・・・へっ? 僕、『ガミジン隊長』って言ってました?」
「あー・・・確か言ってたな」「そういえば言ってましたね。これだからルッチーはダメダメなんですよ~」
「こ、これからは気を付けますっ! ・・・って言うかクロエ君っ! ルッチー言うなっ!!」
案の定、元部下と押しかけ部下の口論が始まったのに背を向けて、ガミジンが影狼隊隊長に声を掛ける。
「・・・で? 貴様、今日はどんな厄介事を持ち込みやがった?」
「あぁいや、済まないな。今日の用件というのは口実だ。現在のルース大尉やクロエ君の実力を測る丁度良い機会だったのでね」
「フン、そういう事か。用件が済んだなら、とっとと帰ったらどうだ?」
「そうするか。・・・あー、いや待て思い出した。来週までに営倉を掃除させておくから、ブチ込まれる準備をしておけ」
「何だそりゃ? 俺がまた軍規違反するとでも言うのか?」
「やるだろう? 今週末はSanssouci(サンスーシ)のキャンペーン期間だからな。で、こっちが出撃予定表」
「あぁいや、済まないな。今日の用件というのは口実だ。現在のルース大尉やクロエ君の実力を測る丁度良い機会だったのでね」
「フン、そういう事か。用件が済んだなら、とっとと帰ったらどうだ?」
「そうするか。・・・あー、いや待て思い出した。来週までに営倉を掃除させておくから、ブチ込まれる準備をしておけ」
「何だそりゃ? 俺がまた軍規違反するとでも言うのか?」
「やるだろう? 今週末はSanssouci(サンスーシ)のキャンペーン期間だからな。で、こっちが出撃予定表」
渡された出撃予定表を確認して、忌々しそうな顔をするガミジン。
「クソッ! 折角の週末に、お貴族様の尻拭いなんぞやってられるか!」
「だろ? だからお前の営倉行きは確定だ」
「この野郎っ・・・やっぱり厄介事を持ち込みやがった!!」
「だろ? だからお前の営倉行きは確定だ」
「この野郎っ・・・やっぱり厄介事を持ち込みやがった!!」
※Sanssouci(サンスーシ)
地球のからくり町近辺にある喫茶店。甘味処として高い人気を誇る。
公式17話「悪魔来たりて」、28話「明日のエース」参照。
なお、SS作品・Shooting Star【EX作品】の第六話でガミジンが挙げて居るのもこの店と思われる。
地球のからくり町近辺にある喫茶店。甘味処として高い人気を誇る。
公式17話「悪魔来たりて」、28話「明日のエース」参照。
なお、SS作品・Shooting Star【EX作品】の第六話でガミジンが挙げて居るのもこの店と思われる。