―――アメリカ空軍、とある基地にて
夕暮れ時、基地の滑走路に1機の機体が着陸する。
黒と白を基調とし、背に大きな翼、カウボーイのようなテンガロンハットを装備した機体だ。
胸には「U・S・A・F」、即ちアメリカ空軍を示すアルファベットが描かれ、
空軍所属の機体であることを示している。
黒と白を基調とし、背に大きな翼、カウボーイのようなテンガロンハットを装備した機体だ。
胸には「U・S・A・F」、即ちアメリカ空軍を示すアルファベットが描かれ、
空軍所属の機体であることを示している。
この機体の名はピースメイカー。
アメリカ空軍・対アムステラ特殊兵装師団に所属する特機(スーパーロボット)である。
アメリカ空軍・対アムステラ特殊兵装師団に所属する特機(スーパーロボット)である。
着陸したピースメイカーは滑走路脇に歩を進め、
それを待っていたかのようにやってきた輸送キャリアに身を預けると、そのまま格納庫へと運ばれていった。
それを待っていたかのようにやってきた輸送キャリアに身を預けると、そのまま格納庫へと運ばれていった。
同時刻、基地内、とある部屋。
ピースメイカーが格納庫へと運ばれていったのと同時に、その部屋で動きだすものが1つ。
口元から足元までをマントで覆い、テンガロンハットを被った、1mほどの少女であった。
長い金髪に、右目には眼帯を模した、メカニカルなゴーグルをつけている。
少女はぱちりとその青い目を開くと、周囲を見回す。
壁には西部劇映画のポスター、デスクの上にはモデルガン。その他、そこかしこに西部劇や、ヒーロー関連の品々が置かれている。
どちらかといえば少年の部屋と言ったほうがいい周囲を見回すと、満足げに首肯。
ピースメイカーが格納庫へと運ばれていったのと同時に、その部屋で動きだすものが1つ。
口元から足元までをマントで覆い、テンガロンハットを被った、1mほどの少女であった。
長い金髪に、右目には眼帯を模した、メカニカルなゴーグルをつけている。
少女はぱちりとその青い目を開くと、周囲を見回す。
壁には西部劇映画のポスター、デスクの上にはモデルガン。その他、そこかしこに西部劇や、ヒーロー関連の品々が置かれている。
どちらかといえば少年の部屋と言ったほうがいい周囲を見回すと、満足げに首肯。
「うむ、異常なし」
そして少女はダッシュボードの上にある写真に目を向ける。
その写真には、少女をそのまま大人にしたような、白衣の女性が移っていた。
その写真には、少女をそのまま大人にしたような、白衣の女性が移っていた。
「ただいま、ママ」
母親の写真にも頬を緩めず、無表情でぺこりと一礼。すると、不意にその横にあった端末が起動した。
そこに移されるのはショートカットの銀髪に眼帯をつけた、白衣の女性。
穏やかな笑みを浮かべる女性を見ると、少女はまた一礼した。
そこに移されるのはショートカットの銀髪に眼帯をつけた、白衣の女性。
穏やかな笑みを浮かべる女性を見ると、少女はまた一礼した。
「ただいま、セシル」
「はい、おかえりなさいイロク。ひとまずブリーフィングルームにきて頂戴な、ユキオももう来てるわよ」
「アイ、マム。すぐいく」
端末が切れると同時にイロクは部屋を出、セシルと呼んだ女性の元へと向かった。
超鋼戦機カラクリオーSideStory
『Le Avventure di Pinocchio』
『Le Avventure di Pinocchio』
少し後。イロクがブリーフィングルームに付くと、そこにはすでに3人の先客がいた。
広めの下手の最も端、作戦内容などを表示するスクリーンの側に1人。
短めの銀髪に眼帯、そして白衣。先ほどイロクを呼んだセシルという女性だ。
本名、セシル・ハーマッド技術大尉。特機開発計画の主任であり、
米空軍の特機・ピースメイカーの開発を主導する人物。
もしイロクが『人間の男』であるのならその白衣を内側から押し上げる豊かな胸に目が行ったろうが、
イロクにはどうでも良い事だった。たとえ自分が『人間の女』であったとしても。
短めの銀髪に眼帯、そして白衣。先ほどイロクを呼んだセシルという女性だ。
本名、セシル・ハーマッド技術大尉。特機開発計画の主任であり、
米空軍の特機・ピースメイカーの開発を主導する人物。
もしイロクが『人間の男』であるのならその白衣を内側から押し上げる豊かな胸に目が行ったろうが、
イロクにはどうでも良い事だった。たとえ自分が『人間の女』であったとしても。
最前列から2列ほど下がった席に、また一人。
空軍の軍服を着込んだ、歴戦の雰囲気を醸し出す金髪の男性だった。
胸に付いた勲章の数から察するに、基地でも高い地位にいる人物であろう。
名をアルバート・ブレイク。この空軍基地を預る司令官である。
がっしりとした体格の大柄な人物だが目つきには愛嬌があり、
頼れる上官、と思えるような風格を見せている。
空軍の軍服を着込んだ、歴戦の雰囲気を醸し出す金髪の男性だった。
胸に付いた勲章の数から察するに、基地でも高い地位にいる人物であろう。
名をアルバート・ブレイク。この空軍基地を預る司令官である。
がっしりとした体格の大柄な人物だが目つきには愛嬌があり、
頼れる上官、と思えるような風格を見せている。
そして最前列、セシルの目前から少しずれたところに、最後の1人。
墨を流したような漆黒の長髪に、それに合わせたような黒の着物を着た、赤い瞳の女性。
明らかに場違いであろうその身の横には、使い込まれた様子の日本刀が立て掛けてあった。
彼女は藤塚雪生(ふじつか・ゆきお)。直接の軍関係者ではないが、
セシルやイロクの知人であり、彼女ら、特機開発チームの護衛、およびアドバイザーとして滞在している。
墨を流したような漆黒の長髪に、それに合わせたような黒の着物を着た、赤い瞳の女性。
明らかに場違いであろうその身の横には、使い込まれた様子の日本刀が立て掛けてあった。
彼女は藤塚雪生(ふじつか・ゆきお)。直接の軍関係者ではないが、
セシルやイロクの知人であり、彼女ら、特機開発チームの護衛、およびアドバイザーとして滞在している。
イロクはその面々を見回すと最前列へと進み、ユキオの手を借りて椅子に座る。
「あい、ただいま」
マントのスリットからぴょこんと手を上げて挨拶する少女。だが、その手は一種異様なものであった。
金属でできた、まるで玩具のような腕や関節。
その手は不自然に大きく、手袋がそのまま付いているかのようだった。
また、スリットから見える少女の体もまた異様というしかなかった。
鉄板を組み合わせたような胴体に、ボールにつま先とかかとをつけた様な足。
よく見れば、瞳もまたカメラのようになっている。そう、彼女は人間ではないのだ。
しかし、他の3人はそれを意に介した様子もなくにこやかに返答する。
金属でできた、まるで玩具のような腕や関節。
その手は不自然に大きく、手袋がそのまま付いているかのようだった。
また、スリットから見える少女の体もまた異様というしかなかった。
鉄板を組み合わせたような胴体に、ボールにつま先とかかとをつけた様な足。
よく見れば、瞳もまたカメラのようになっている。そう、彼女は人間ではないのだ。
しかし、他の3人はそれを意に介した様子もなくにこやかに返答する。
「はい、おかえり」とセシル。
「ええ、お帰りなさいイロク」とユキオ。
「今日も活躍したようだな、お疲れ様」とアルバート司令。
一通り挨拶が終わったところで、セシルがおもむろにスクリーンを起動させ、映像を流し始める。
内容はピースメイカーの戦闘映像。アムステラ側の量産機、羅甲の空戦型と交戦し、
危なげなく撃破するまでが収められていた。
内容はピースメイカーの戦闘映像。アムステラ側の量産機、羅甲の空戦型と交戦し、
危なげなく撃破するまでが収められていた。
「とまあ、今日の出撃も特に問題はなかったわね。
ラコータイプ程度であれば、まず負けはない。その程度には仕上がって来てる。
まあ、ピースメイカーは私達が寝食を削って作った機体だもの、
そう簡単にやられはしないけれど。まあ問題があるとすれば……
誰かさんがガンマンを気取って油断しなければ、かしらね」
ラコータイプ程度であれば、まず負けはない。その程度には仕上がって来てる。
まあ、ピースメイカーは私達が寝食を削って作った機体だもの、
そう簡単にやられはしないけれど。まあ問題があるとすれば……
誰かさんがガンマンを気取って油断しなければ、かしらね」
そう言ってちらりとイロクに視線を向けるセシル。
それに対しイロクは「む」とうなると、仰け反って(胸を張っているようだ)ふん、と鼻を鳴らした。
それに対しイロクは「む」とうなると、仰け反って(胸を張っているようだ)ふん、と鼻を鳴らした。
「ただ戦うだけ、なんていうのはだれでもできるぞ、セシル。
でも、わたしとピースメイカーはスーパーロボットなんだ。ただの戦闘機じゃない。ヒーローだ。
ヒーローってのはな、かっこつけてないとヒーローじゃないんだ。
かっこよくないと、だれもあこがれない。見てるやつがあこがれるようでなきゃ、だめなんだ。
だれかのあこがれになってこそ、だれかの希望になってこそ、スーパーロボットなんだ。
ヒーローだっておなじだ。強いだけじゃ、ただの兵器なんだ。そんなんじゃ、だめだ」
でも、わたしとピースメイカーはスーパーロボットなんだ。ただの戦闘機じゃない。ヒーローだ。
ヒーローってのはな、かっこつけてないとヒーローじゃないんだ。
かっこよくないと、だれもあこがれない。見てるやつがあこがれるようでなきゃ、だめなんだ。
だれかのあこがれになってこそ、だれかの希望になってこそ、スーパーロボットなんだ。
ヒーローだっておなじだ。強いだけじゃ、ただの兵器なんだ。そんなんじゃ、だめだ」
イロクは、セシルを見返しながらそう語る。
彼女の言うことは幼稚なヒーロー論だ、突っ込みどころはいくらでもある。
だが、それを胸を張り、自信をもって言うイロクに、セシルの口元は思わず綻んだ。
彼女の言うことは幼稚なヒーロー論だ、突っ込みどころはいくらでもある。
だが、それを胸を張り、自信をもって言うイロクに、セシルの口元は思わず綻んだ。
「ほんと、言うようになったわねぇ、あなたは。自覚があるならいいけれど、
カッコだけになっちゃだめよ? それこそ、強くあってこそのヒーローなんだから」
カッコだけになっちゃだめよ? それこそ、強くあってこそのヒーローなんだから」
「まあ、ケレン味があるのは良い事ですよね。
それだけではいけませんけれど、ピースメイカーはアメリカの空の旗印ですもの。
多少気取っているぐらいで丁度良いのではないかしら」
それだけではいけませんけれど、ピースメイカーはアメリカの空の旗印ですもの。
多少気取っているぐらいで丁度良いのではないかしら」
「大尉の言うこともわからんでもはないがな。
現状、その『かっこつけ』もそれなりに効果は上がっている。
よほど大きな失敗でもない限りは自由にさせても良いだろう」
現状、その『かっこつけ』もそれなりに効果は上がっている。
よほど大きな失敗でもない限りは自由にさせても良いだろう」
ユキオや司令からもフォローが入り、イロクはむふー、とさらに仰け反り……
「ぬあ」
バランスを崩して椅子から転げ落ちた。
「ほら、調子に乗ってるからそういうことになるのよ。
ほんと、AIの癖にへんなところばかり母親に似ちゃって……」
ほんと、AIの癖にへんなところばかり母親に似ちゃって……」
起き上がろうともがくイロクを見て苦笑するセシル。
AI、そう、AIなのだ。イロクは、とあるAI工学者により作られた人工知能なのである。
そして、今までの一連の流れ。ピースメイカーとイロクが同一であるような周囲の言動。
それは、「彼女らにとってはそれが当然である」からなのだ。
なぜなら、ピースメイカーはパイロットを必要としない無人機。
正式名称「I-06」、通称イロクと呼ばれる人工知能を搭載することで、
彼女の第二のボディとして制御・運用しているのだ。
AI、そう、AIなのだ。イロクは、とあるAI工学者により作られた人工知能なのである。
そして、今までの一連の流れ。ピースメイカーとイロクが同一であるような周囲の言動。
それは、「彼女らにとってはそれが当然である」からなのだ。
なぜなら、ピースメイカーはパイロットを必要としない無人機。
正式名称「I-06」、通称イロクと呼ばれる人工知能を搭載することで、
彼女の第二のボディとして制御・運用しているのだ。
「てれる」
「褒めてないわよ」
起き上がったイロクに冷静に突っ込むセシル。
その直後、司令のもつ端末に着信。基地のオペレーターからのようだ。
起動すると、若い女性の切羽詰った声が室内に響く。
その直後、司令のもつ端末に着信。基地のオペレーターからのようだ。
起動すると、若い女性の切羽詰った声が室内に響く。
『司令! ピースメイカーにスクランブル要請!
アムステラの空戦機が多数接近中との事です!』
アムステラの空戦機が多数接近中との事です!』
「何だと!? 格納庫につなげ! 整備班! ピースメイカーはどうだ!」
『はぁ!? 被弾はしてねえから綺麗なもんですが、さっきの今ですよ!?
補給だってまだ終わっちゃいないってぇのに!』
補給だってまだ終わっちゃいないってぇのに!』
「それでも、いくしかない。エクステンダーはB装備、他のはいらん。至急たのむ。
あ、ショットガンだけつけといてくれ。……いいだろ、セシル」
あ、ショットガンだけつけといてくれ。……いいだろ、セシル」
司令と整備班の会話に割り込み、セシルを見るイロク。
イロクにじ、と見つめられ、セシルは仕方ない、とばかりに苦笑する。
イロクにじ、と見つめられ、セシルは仕方ない、とばかりに苦笑する。
「せめて戦闘データの吸出しが終わってからにしてほしかったけどね……
どうせ、ダメって言っても行くつもりでしょ?」
どうせ、ダメって言っても行くつもりでしょ?」
「とーぜん。最低限の調整と補給がおわったらすぐにでる。
ユキオの国のことわざにもあるだろ、善はいそげだ」
ユキオの国のことわざにもあるだろ、善はいそげだ」
夕焼けに照らされる滑走路に、ピースメイカーが歩を進める。
黒い機体を朱に染める光を、イロクは美しいと思った。
ピースメイカーを動かす事は、どちらかといえば好きだ。
普段の日常生活用のボディでは処理できないような大容量、高画質で世界を見ることができる。
空戦機であるため、上空高くからものを見ることができる。
だから、イロクは知っている。この世界が、どれほど美しいものかを。
黒い機体を朱に染める光を、イロクは美しいと思った。
ピースメイカーを動かす事は、どちらかといえば好きだ。
普段の日常生活用のボディでは処理できないような大容量、高画質で世界を見ることができる。
空戦機であるため、上空高くからものを見ることができる。
だから、イロクは知っている。この世界が、どれほど美しいものかを。
だから、守るのだ。だから、戦うのだ。AIらしくないと言えばそうなのだろうが、
そもそも、人工知能と人間は、どれほど違うものだろうか。
人間がいわゆる所の『哲学的ゾンビ』ではないなどと、誰も証明などできないのだから。
人と機械の違いというのは、構成素材を除けば、思考プログラムの精度の違いに過ぎないのではないだろうか。
そもそも、人工知能と人間は、どれほど違うものだろうか。
人間がいわゆる所の『哲学的ゾンビ』ではないなどと、誰も証明などできないのだから。
人と機械の違いというのは、構成素材を除けば、思考プログラムの精度の違いに過ぎないのではないだろうか。
だから、それでいいのだ。自分が自分であれば、あろうとすれば、自分は自分なのだから。
そう結論付け、イロクは背の翼に力を溜め、数瞬の後に助走を開始。瞬く間に飛び立ち、空に消えた。
そう結論付け、イロクは背の翼に力を溜め、数瞬の後に助走を開始。瞬く間に飛び立ち、空に消えた。
同時刻、アメリカ上空。空戦羅甲を主体とした一団の中に、様相を異にする機体が存在した。
アムステラ軍の空戦用機、『斬空』が3機。それぞれ、四肢の形状や装備が微妙に違う。
1機は偵察任務仕様に大改造を施した斬空一式改・禍風、
もう1機は高速格闘戦仕様、斬空二式・忌影。
最後の1機は忌影の操作性向上型、斬空二式改・黄泉影。
3機は空戦羅甲からは若干離れた位置を飛び、何事かを窺っている様だった。
アムステラ軍の空戦用機、『斬空』が3機。それぞれ、四肢の形状や装備が微妙に違う。
1機は偵察任務仕様に大改造を施した斬空一式改・禍風、
もう1機は高速格闘戦仕様、斬空二式・忌影。
最後の1機は忌影の操作性向上型、斬空二式改・黄泉影。
3機は空戦羅甲からは若干離れた位置を飛び、何事かを窺っている様だった。
「しっかし、こんな見え見えの誘いに乗ってくるかね? 兄貴」
『来るさ。どっちにしろ、迎撃に出なきゃ話にならんしな』
忌影のパイロット、紅毛の娘が呟くと、通信ウィンドウが開き、無精髭の男が答える。
ウィンドウ下部に記される記号の羅列は、彼が禍風のパイロットであること、
名をバドスと言うらしいことを示していた。
ウィンドウ下部に記される記号の羅列は、彼が禍風のパイロットであること、
名をバドスと言うらしいことを示していた。
『出てくれないとデータ取れませんしねぇ。最近出てきた新型らしいですし、
最低限武装構成だけでも調べとかないといけないんですけど。
まあ、私は数合わせみたいなものなので、
メインでやりあうのはイェンさんとバドスさんにお任せしますー』
最低限武装構成だけでも調べとかないといけないんですけど。
まあ、私は数合わせみたいなものなので、
メインでやりあうのはイェンさんとバドスさんにお任せしますー』
男の横に更にウィンドウが開き、前髪にひと房、緑のメッシュの入った少女が割り込んでくる。
あはは、とお気楽に笑う少女を半眼で睨み、赤毛の娘……イェンは眉根を寄せた。
あはは、とお気楽に笑う少女を半眼で睨み、赤毛の娘……イェンは眉根を寄せた。
「言っとくけどクロエ、あんたも手伝ってよね? 助っ人とはいえ、
一応はウチらのサポートって事で来てるんだからさ」
一応はウチらのサポートって事で来てるんだからさ」
『善処します。いや実際、私の断刀ならともかく、借り物の黄泉影でどこまでやれますかねえ。
どうも空の上ってふわふわして落ち着かないんですよ。やっぱり人間、地に足ついてないと』
どうも空の上ってふわふわして落ち着かないんですよ。やっぱり人間、地に足ついてないと』
「しれっと斬空操縦出来るくせに何いってんのさ。
それにしても、アンタって小器用よね。順応性が高いって言うか。
所属は違うけど、何だかんだでうちのやり方にもなじんできてない?」
それにしても、アンタって小器用よね。順応性が高いって言うか。
所属は違うけど、何だかんだでうちのやり方にもなじんできてない?」
イェンの言うとおり、クロエはこの作戦において他から入った助っ人である。
イェンとバドスは偵察や破壊工作を主とする特殊部隊『影狼隊』の所属。
クロエは上司の関係上他所の隊の助っ人に入ることが多く、
また陸戦が本職ではあるが空戦や諜報もそれなりにこなせるため、
影狼隊の助っ人として任務に当たることも多い。
通常はバドス・イェンともう1人、ルカスという男の3人で任務に当たることが多いが、
今回彼は別任務があったため、手空きであったクロエが助っ人として参加している。
イェンとバドスは偵察や破壊工作を主とする特殊部隊『影狼隊』の所属。
クロエは上司の関係上他所の隊の助っ人に入ることが多く、
また陸戦が本職ではあるが空戦や諜報もそれなりにこなせるため、
影狼隊の助っ人として任務に当たることも多い。
通常はバドス・イェンともう1人、ルカスという男の3人で任務に当たることが多いが、
今回彼は別任務があったため、手空きであったクロエが助っ人として参加している。
『ドサ周りが多いと自然と覚えちゃうもんですよ。
隊長はあんまりかまってくれませんし、あの人の部下って言うのも半ば自称ですし……
専用機はあるにはあるけど倉庫で埃被ってた扱いづらい実験機ですし……
与えられる任務と言えばよそのサポートだったり地方のドサ周りだったりしますし……
あー、自分で言ってて欝になってきた……』
隊長はあんまりかまってくれませんし、あの人の部下って言うのも半ば自称ですし……
専用機はあるにはあるけど倉庫で埃被ってた扱いづらい実験機ですし……
与えられる任務と言えばよそのサポートだったり地方のドサ周りだったりしますし……
あー、自分で言ってて欝になってきた……』
「わー! クロエ高度下がってる下がってる! 戻ってこーい!
ほら兄貴、兄貴からも何とか言ってやってよ!」
ほら兄貴、兄貴からも何とか言ってやってよ!」
1行ごとにどんよりと俯き、次第に機体の高度も下がり始めたクロエをあわてて宥め、
イェンはバドスに助けを求める。
バドスはその視線に『え、俺がやんの?』とでも言うように顔をしかめるが、
ため息をひとつ吐くとクロエに声をかけた。
イェンはバドスに助けを求める。
バドスはその視線に『え、俺がやんの?』とでも言うように顔をしかめるが、
ため息をひとつ吐くとクロエに声をかけた。
『まあ落ち着けよクロエ。お前さんの腕は信用してる。
だからうちの隊長もお前さんにうちの黄泉影を預けてんだしな。
ま、気楽に行こうや。気負いすぎてちゃ、追いつけるもんも追いつけねえぞ』
だからうちの隊長もお前さんにうちの黄泉影を預けてんだしな。
ま、気楽に行こうや。気負いすぎてちゃ、追いつけるもんも追いつけねえぞ』
『善処します……』
うー、とうなりながらもどうにか復帰したらしいクロエを見てイェンは安堵のため息を漏らす。
直後、コックピット内にアラート音が響いた。どうやら目標が食いついたらしい。
直後、コックピット内にアラート音が響いた。どうやら目標が食いついたらしい。
「兄貴!」
『おう、読み通りだ! 羅甲隊は引け! 無駄に落とされるこたぁねえ!
イェン、クロエ、出来るだけ引き付けて手の内引きずり出すぞ!
撃破は出来るときでいい、欲はかくな!』
イェン、クロエ、出来るだけ引き付けて手の内引きずり出すぞ!
撃破は出来るときでいい、欲はかくな!』
『了解です!』「了解っ!」
前方の羅甲隊が引くと同時、進行方向から猛烈な勢いで飛んでくる黒い機影をレーダーが補足した。
イロクのピースメイカーだ。ピースメイカーは3機を発見するなりショットガンを構え、発砲する。
イロクのピースメイカーだ。ピースメイカーは3機を発見するなりショットガンを構え、発砲する。
『いきなり撃ってきやがるか! イェン、カマすぞ!』
急加速で散弾をかわし、3機とも戦闘態勢に入る。
クロエはかねてからの手筈どおり、後方でデータ採りを開始した。
地球の新型はどうやら、バランス重視の射撃型のようだ。
左手にショットガン、右手には前腕部そのものが砲身となったビーム砲。
出力調整などで単発・拡散を切り替えられるようで、口径から推察される最大出力は相当であろう。
また機動性にも秀でているようで、先ほどからイェンとバドスの連携攻撃を防戦ながらも直撃は避け続けている。
なるほど、これでは空戦仕様の羅甲では叶わないはずだ。バドスの判断は間違っていなかった。
クロエは計器やモニターに表示される情報を見逃さないようにし、画面内を飛び回る3機を見つめる。
クロエはかねてからの手筈どおり、後方でデータ採りを開始した。
地球の新型はどうやら、バランス重視の射撃型のようだ。
左手にショットガン、右手には前腕部そのものが砲身となったビーム砲。
出力調整などで単発・拡散を切り替えられるようで、口径から推察される最大出力は相当であろう。
また機動性にも秀でているようで、先ほどからイェンとバドスの連携攻撃を防戦ながらも直撃は避け続けている。
なるほど、これでは空戦仕様の羅甲では叶わないはずだ。バドスの判断は間違っていなかった。
クロエは計器やモニターに表示される情報を見逃さないようにし、画面内を飛び回る3機を見つめる。
(最高速度でいうならおそらくマッハ3・5から6、イギリスの飛行機さんには及ばない……
まあ操兵の速度としては十分、斬空と同クラスか……でも、気になるのはあの機動性ですよね。
所々、ありえない動きで直撃をかわしてる。普通あんな動きをすればGで肋骨が逝く筈。
でも、このエネルギー波形を見るに重力制御装置はついてない。あって緩和装置かな)
まあ操兵の速度としては十分、斬空と同クラスか……でも、気になるのはあの機動性ですよね。
所々、ありえない動きで直撃をかわしてる。普通あんな動きをすればGで肋骨が逝く筈。
でも、このエネルギー波形を見るに重力制御装置はついてない。あって緩和装置かな)
ふーむ、と眉根を寄せ、再び意識を3機に戻す。
「パイロットが頑丈なのか、エネルギーの遮蔽能力が高いのか……
まさかあの動きで無人機ってわけじゃないだろうしなぁ。うーん……」
まさかあの動きで無人機ってわけじゃないだろうしなぁ。うーん……」
その頃空軍基地では、ユキオが滑走路から空を見上げていた。
「ユキオ、イロクが心配?」
その声に振り返ると、マグカップを片手に持ったセシル。
ユキオはその言葉に困ったように笑うと、ええまあ、と答える。
ユキオはその言葉に困ったように笑うと、ええまあ、と答える。
「そうですねえ。あの子は私にとっても妹のようなものですから。
セシルさんはよろしいのですか? 指揮所にいなくて」
セシルさんはよろしいのですか? 指揮所にいなくて」
「指揮は司令の仕事だし、私はあの子が帰ってきてからが本番よ。
今の所、ちょっと分は悪いようね。そろそろあれの出番かも」
今の所、ちょっと分は悪いようね。そろそろあれの出番かも」
セシルは空いているほうの手で滑走路の片隅、ピースメイカーの格納庫でないほうの格納庫を指す。
「サンダーバード……完成したのですか?」
「組みあがったという意味ならね。まだテストもしてないし、本当に飛べるかも不透明かしら。
それに、あれだけで出ても意味はないし。それで、ユキオ。イロクが心配?」
それに、あれだけで出ても意味はないし。それで、ユキオ。イロクが心配?」
悪戯っぽく先の言葉を繰り返すセシルに、ユキオもまた、困ったように笑う。
「本当、意地悪な方ですよね、セシルさんって」
そして、場面は戻る。