
龍
概要
龍とは、東アジアを中心とする神話・伝承に登場する神聖な霊獣であり、古代中国において成立した概念に強く由来している。水や天候を司る力を持つとされ、古代より皇帝の象徴として扱われた。漢字文化圏では「龍」の字が広く用いられ、儒教・道教・仏教いずれの伝統においても重要な存在として位置づけられている。
東アジアでは一般的に「善の存在」として描かれ、人間に利益をもたらす守護神的側面が強い。また、他の動物の特徴を融合した合成的な姿をしており、独自の美学と象徴性を持って発展してきた。
アジアの龍と竜の違い
「龍」と「竜」は表記の揺れとして同一視されることもあるが、創作や学術的な文脈ではしばしば使い分けられる。特に日本語において「竜」は西洋的なドラゴンを和訳・翻案した表現として用いられる傾向があり、「龍」は東洋的な霊獣としての意味を強く帯びている。
アジアの龍は基本的に長くうねるような体躯を持ち、翼を持たずに空を翔けることが特徴である。対して、「竜」として描かれる存在は、翼を持ち火を吐くなど、ドラゴンに類似した性質を有している場合が多い。すなわち、アジア的な神聖さを帯びた霊的存在としての「龍」と、西洋的なモンスター的存在である「竜」は、文化的・概念的に異なる存在であるといえる。
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