
オオミズナギドリ
オオミズナギドリ(Calonectris leucomelas)は、日本近海の島嶼において繁殖する大型のミズナギドリ科の海鳥である。翼開長は約120センチに達し、体長も50センチ前後と大柄であり、羽色は背が灰褐色、腹部が白色である。独特の青みがかった太いくちばしを持ち、滑空するように海上を飛翔しながら、カタクチイワシやイカ類を捕食する。主な繁殖地は伊豆諸島、小笠原諸島、南西諸島などであり、御蔵島はかつて世界最大規模の繁殖地であった。繁殖期には地表の斜面に長く掘った横穴を巣とし、夜間にひっそりと帰巣する。昼間は海上で過ごすことが多く、陸上では不器用な動きを見せる。
野生化ネコによる捕食被害
御蔵島を中心とする繁殖地では、かつて人為的に持ち込まれたイエネコが野生化し、オオミズナギドリの成鳥や雛、卵に対して大規模な捕食を行っていることが確認されている。特に2025年に森林総研の研究により発表された報告では、野生化ネコ1頭につき年間でおよそ330羽を捕食していると推定され、島全体ではおよそ35,000羽が犠牲となっている可能性が指摘された。この影響により、かつて300万羽規模であった個体数が、近年ではわずか10万羽程度にまで減少している。ネコは人間の到達よりも早い段階で営巣地に侵入しており、その狩猟能力は非常に高いとされる。調査では他の鳥類、アカコッコやオオコノハズクなども食害の対象となっており、伊豆諸島全体の鳥類相に深刻な影響を及ぼしている。
保護活動の展開
この危機に対し、行政・研究機関・住民が連携するかたちで野生化ネコ対策が進行している。御蔵島では「ネコ捕獲プロジェクト」が開始され、トラップによる捕獲、不妊去勢処置、そして島外への移送といった段階的な取り組みが展開されている。ネコに対する安易な駆除ではなく、福祉と生態系のバランスを両立させる形での対応が模索されている。これらの活動は地域社会の理解と協力を必要としつつも、少しずつ成果を上げている。
ケモドラwikiに記録する意義
ケモドラwikiにおいてオオミズナギドリを記録する意義は、単なる野鳥としての知識整理に留まらない。まず第一に、獣性・鳥性の高い存在が人間社会との共生に失敗した結果として、他の動物との共存系が破綻する現象を象徴的に示している点がある。野生化ネコによる捕食は、ある種の「可愛らしさ」と「獣性」が衝突する舞台であり、擬人化や獣キャラクターの文化においても、その両義性を再考させる事例となる。
また、オオミズナギドリは夜に帰巣し、ひっそりと地下に暮らすという生態から、地下世界や潜航性をテーマとする竜性・鳥性キャラクターの創作にも示唆を与える存在である。地上では不器用で、空と海でこそ本領を発揮するという特性は、表と裏の二面性、あるいは環境によって性質が変容する存在としてのメタファーにもなり得る。
さらに、生息地の孤立性と個体数の急減という背景は、「失われつつある種の記録」としてロストメディア的文脈とも通じる。すなわち、自然界における静かなる絶滅は、ファン文化やサブカルチャーにおける記録忘却とパラレルな構造を成している。ケモドラwikiがこれを記録することは、単なる生物学的情報の集積ではなく、創作と記録、そして存在証明の場としての機能を果たすこととなる。
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