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開けてはいけない扉
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開けてはいけない扉 03/02/16
聞いた話だ。
以前の「泣いている」に良く似た、開けてはいけない扉を開けてしまったもう一人の男の話をしよう。
状況にあっては付き合いはじめてほぼ一ヶ月。キスまでの仲。彼女の家に行くのは四回目。今回で本丸を陥落させようと考えていた。
彼女はややおっとりした性格で男に免疫がない感じで、一緒に居てどぎどきするより安心出来る人との評価が下されている。手料理をつつき、飲めないと言い張るお酒をやや強引に飲ませてさあ今こそ。
そこで彼女は拒否しなかったので、彼はいけると踏んでキスを重ねてシャツのボタンを外そうした瞬間突き飛ばされる。「ごめん・・・ちょっと待って・・・」そう言って彼女はトイレに駆け込んだ。この時彼は飲ませ過ぎたか、と思い部屋を片付けたり玄関や窓の鍵がおりているのを確認したりCDを選んでランダムエンドレスモードに設定したりそれなりに期待しながらもなかなか出てこないので少し心配していた。そんなにお酒弱かったのか。ワインをグラスに三杯だけのはずだが。しかし手料理と言っても水炊きは手料理には入らない気もするが。
そんなこんなですっかり待ちくたびれて、残っていた酒も飲んでしまい、まだ出てこないので本格的に心配し始めた。そんなに気分が悪いなら今日は遠慮しておこうか。しかしここがチャンスでもあるし。しかし遅い。とても静かだ。普通は激しく吐く音が聞こえてくるが。聞かれたくなければトイレの水を流してその音に紛れて吐くだろうが水を流す音も聞こえない。もしかしてトイレの中で倒れているんじゃないか。
ここで彼は開けてはいけない扉に近付く。耳を澄ませてみるが何も聞こえない。いよいよ心配になって「ねえ大丈夫?」と言いながら開けてみると。
彼女は上半身ブラジャーだけになって左手を上に伸ばし、右手の毛抜きで脇毛を抜いていた。
開けた瞬間彼は即時に状況を正しく読み取ったが、彼女とぴったり目があって凍りつく。何か言わなければいけない。しばらく時間が溶けた飴のようにねっとり流れるのを感じながらようやくのことで苦し紛れに、開けてはいけない扉を開けた彼が脇毛を抜いていた彼女に発した言葉とは。
「・・・あ・・・手伝おうか?」
同じく左手を上に伸ばしたまま固まっていた彼女がそれに返した言葉。
「・・・ううん・・・大丈夫・・・もうすぐ終わる・・・」
彼は「そう」といってさり気なく閉めたそうだ。開けてはいけない扉を開けてしまい見てはいけないものを見てしまった男がここにもいたわけだ。
その後出てきた彼女と如何なる会話が交わされたのかを尋ねる意味で「で、その後は?」と聞いたら彼はこう答えた。
「うん。今は僕の嫁さん」
聞いた話だ。そしていい話だ。
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