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写真 03/09/15
写真の写り映えについての遣り取りの間抜けさ加減の次第はかなりのものだ。
写真と実際の違いに愕然とする程の格差がある場合、実際の方が素晴らしいならば素直に「写真とは違って綺麗ですね」とも言えるが、「写真の方が綺麗ですね」と言い張る勇気はなかなかない。写真が極端に綺麗で実際が極端に汚いならば、それはおそらく汚いことを自覚した上で精一杯「それなりに」写るような角度と光線を日々絶え間なく研究しているだろうことが予想されるわけであって、その際はもう、「いい写真ですね」と逃げるしかない。しかしそういう場合に限って自ら「写真写りが悪くて」などと非常なる努力を要したであろう極上の写真を誉めてもらおうと、写りに納得していない素振りを繰り返すから、行きがかり上誉め続けることになるが、誉め過ぎると実際の汚さが次第に浮き上がってくるので、程々にせねばならない。
プリクラの登場でこの傾向に歯止めが掛かるかと思いきや、さにあらず。簡単に撮ることが出来、すぐに手にすることが可能なものだから、「つい油断して汚いまま写る」という是正措置がまるでなされず、仕上がりの姿が眼の前の画面に出るから最も写りのよい角度を鏡よりも客観的に把握出来るようになった上、粒子もかなり粗いのであって、つまり「それなりに」より遥か以上の仕上がりを実現したまことに罪作りな機械として、一気に拡まった。実際をそのまま写すような精密さがあれば、あれほどの勢いで普及する筈がない。
写真と実際と、それほどの差がない場合、何と言えばよいか。写真写りなど全く気にしない相手なら何を言っても問題はなかろうが、気にする人の場合或いは気にする人かどうかが判らない場合は、言うまでもなく写真と実際とを見比べて真剣に答えを出そうとしてはならない。遣り取りを引き伸ばしつつ実際の顔色を窺いながら、「写真と実際、どちらを誉めてもらいたがっているのか」を正しく察知しなければならない。
あからさまな格差があるなら撮影者を誉めるとか貶すとか簡単ではあるが、ほぼそのままが写っている場合、「綺麗に写ってますね」と言えば「実際にはさほどでもない」との意味が含まれていると解釈されるおそれがあり、「実物の方が綺麗ですね」と言えば「写真見て大したことがないと思っていた」との意味が含まれていると解釈されるおそれがある。
純粋に世辞以上話を繋ぐ以上の目的しかない場合、問題をややこしくしない為に正しい言い回しというものがある。
「写真の通り綺麗ですね」
見よ。この隙のない、当り障りのない、全く意味のない言葉を。これを自然に使えるようになれば不要な摩擦を回避することが可能である。ただし、写真がとても綺麗で実際にもそのまま綺麗であるならよいが、写真が汚くて実際にもその通り汚い場合、「写真の通りですね」と言うと何故か摩擦が発生するのであって、確かに無意識の内に「綺麗」を落とした気もするわけだが、そうなると後はもう何を言っても無駄であるから、次の機会はどう言えばよいかを非常なる努力をもって研究することになる。
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