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錘 04/08/09

  浴衣の袂には錘を入れること。

  少しの風で袖が舞うのは見苦しい。着物より格落ちする浴衣に折目正しさを求めるのは筋が違うようだが、浴衣の氾濫する季節には百花繚乱と呼べるほど無茶苦茶な着付けが行き交うわけであって、正式な着法に拘る必要はなくとも、避けた方がよい決まりがある。

  パンツを穿くべきでないのは、薄い生地に段差が表れるからであって、個人的には穿くなと言いたくても大勢には逆らえないので丁字腰巻を許可しよう。裾を割って歩く事がはしたないとされているが、それは大いに推奨しよう。胸元の開放角度については議論の余地があるにしても、全く余裕がなくて鉄壁の守備を誇るよりは多少の隙を演出する方が好ましい。折角浴衣を着るならば項を露出するべきであって、浴衣にパーマは落胆する。

  膝と膝に紙を挟んで歩く訓練をする女形を見習ってしゃなりしゃなりと歩けばつい振り返りもするのだが、草履をサンダル扱いして蟹股でずしずし歩いていては、いくら裾が割れていても評価は低い。肩甲骨が絶対に浮き出ないほど肩を開いて顎を引き、歩幅を小さく体全体の上下動を最小に抑えてするすると歩く姿を見れば、手前は何もない平坦な地面で躓くことを保証する。

  袖が風に舞う状態は活発さよりもだらしなさを発散している。袖や裾の一番下には錘を縫い込むことで落ち着いた色気を醸すことが出来るのだ。裾に錘を縫い付ければ少々の風では裾が割れない。同様に袂にも錘を縫い付けてしずやかな雰囲気を纏えば奥床しさを際立たせる効果があり、それを見た男に様々な波及効果が表れること請け合いだ。

  しかも袂の錘には実用的な側面がある。振り廻せば武器になるのだ。腕をそのまま振るのではなくて右腕なら右袂を掴み鎖鎌みたいにぶんぶん反時計廻しで正面にいる敵の側頭部を狙う。もし過たず命中したならばショルダバッグの金具並に痛いのであって、あらゆる意欲が削がれてしまう。

  裾の下に錘を縫い付けることは冬のコートにも応用出来る。これは大変有効な武器となるのであって、コートを脱いで落とすと見せ掛けて振り回す。「たかがコートを」と侮る馬鹿は鈍い衝撃音を残して膝をつくからあとは畳み掛けるなり止めを刺すなり逃げるなり好きにしてよい。

  錘の選択として、板錘を流用すると楽なのだが加工が多少面倒でもあるから、鎖を布で巻き絞めたものを裾に沿って縫い付ければよい。重過ぎると生地が痛む上に蹴りながら歩く羽目になるから最も違和感のないあたりを試行錯誤して見つけることだ。
 
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