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雨男
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雨男 05/02/20
雨が降ると憂鬱になるのは徒歩の旅が好きだったことが原因だろう。
稀に雨男とも呼ばれるが、呼ぶ方も呼ばれる方も雨男という特殊能力を心底では信じていないから笑い話で済む。実際にそのような能力があるならばただちに砂漠へ搬入して緑化に身を尽くす羽目になってしまう。雨男や雨女とは催しに顔を出す度に雨が降り、偶々居ないときに晴れると奴が雨男だったのだと印象付けられるだけの他愛ない話ではある。
しかし知り合いに伝説の雨男が居ることも事実だ。科学的には全くの裏付けなどないのに周囲の人間はそういえばあの時も雨だった、あの時も雨だったと言うし、本人でさえ自ら雨男であることを認めている。小さな催しでは軽くぱらつき、催しの規模が大きくなると雨の勢いも激しくなる。それは単に雨が降ったときだけの記憶が堆積した故の印象であろうと分析してみても納得するには至らないほどの激しさであって、それが単なる笑い話から伝説に昇華するきっかけとなったのは、ある旅のことだったそうだ。
その旅は数人で東北地方を電車などにて縦断北上する内容のもので、元々夏の終わりという季節柄ある程度の雨は覚悟しており、その雨も「また雨男の・・・」程度の話であった筈が、東北地方を南部から北上する旅程に合わせて台風が忠実に後を追いかけてきたらしい。旅を終えると台風は急に勢力が衰えてしまい、その旅の一同は「もはや伝説」と認定した。
そこまで激しくはないが手前も多少雨男の気があるらしいのでその昔雨男と呼ばれる原因の究明を目論んだことがある。しかしどうしても単なる偶然としか思えないのであって、偶然が続く以上はそれに乗るのが博打の定石であるかもしれないが、雨の原因にされることは理不尽ではある。一人の旅でも雨は降るかと尋ねられて「降る」と答えたからそう呼ばれるが、何かの資料で見たのだが、年間降雨日を計算すると平均して二日に一度は雨が降っているらしいから問題はない筈だった。
しかし一人旅の毎に雨が降るのは確かに変なので、時間があったからじっくり考えてみるとひとつの仮説が誕生した。
「雨男は天気予報を見ない」
天気予報を見て雨の降ることが高確率で予言されている場合にたいした用事でないならば外出しないのが通常の人種であり、天気予報をろくに見ず時間があるかないかだけで外出する人間は傘を持って出たりしないから突然雨に降られた気分になり、自ら「雨男かもしれん」と弱気になるのだ。
「天気がいいから何処かへ行こう」と考える人と、「時間があるから何処かへ行こう」と考える人の違いが雨男かどうかの判別方法ではないだろうか、と雨の中で考えていた。
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