テスト中

勧誘電話

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
管理者のみ編集可


勧誘電話 03/02/27

  伝説の徒花、「ポケットベル」が全盛期の頃の話だ。

  時は携帯前夜、手前は一人暮らしで自分の電話回線を持っていたからポケットベルは必要なかったが、自宅から通っている友人は皆所持していた。ごく初期、まだ「8451」で「はよ来い」などと半ば暗号状態でやり取りしていたらしい頃、自分の名前の打ち方だけを教えて貰い、それを打ち込んで向こうから掛けて貰うようにしていた。当然、名前でなくて電話番号をそのまま打ち込めばそれを見てその番号に掛けることになる。

   あるとき、名前を仮に沢口としておくが、沢口が妙に焦った顔で部室に入って来た。彼のポケットベルに着信があり、見覚えのある番号ではなかったものの、市外局番から考えて友人の自宅だろうと気楽に思い、その番号に掛けてみたところ、

  「 はい ○○組本部 」

  随分ドスが利いていたそうな。余りにも有名で市外局番さえここに書けないあの団体の本部に繋がってしまったらしく、しかし、それは友人の悪戯であろうと思って

  「はあ?何言うてんねん。あのなあ、この前の話やけど・・・」

  「 誰や お前 」

  しばらくそのままのやりとりが続いたらしい。しかし、徐々に相手の巻舌が加速してきたのを感じ、もしかするとこれは本物かもしれないと思い至った瞬間「しゅみませんでした」と言ってそっと受話器を置いた。何だったのか判らないままポケットベルを確認すると、いつのまにか新しい番号が着信していて、それは見慣れた番号であったからまずこっちから片付けようと掛けてみれば、その友人曰く

  「どおよ。掛けた?○○組。繋がったやろ?」

  危険すぎる悪戯であった。しかもこれは悪戯電話を「掛けさせる」という手の込んだやり方で、それを聞いて手前は笑うよりも先に「そういう手もあるのか」と感心していた。見せてもらったポケットベルの番号は一度唱えると覚えてしまったぐらい単純な番号で、妙に現実味を帯びていた。

  手前は当時下宿しながら大学に通っており、自分の電話を持つことは便利でもあったが、同時にそれはあらゆる勧誘電話が掛かってくることをも意味していた。

  そして英会話の勧誘電話もまた何度も何度も掛かってくる。それまではただ鬱陶しいとしか思っていなかったのに、これほど勧誘電話を待ち望んだことは後にも先にもこの時だけだ。こちらに話す隙を与えず一方的にまくしたてるお姐ちゃんにこの日は長く付き合ってあげて、最後に冷たく断ると「じゃあさ、英会話の勉強したいお友達とか居る?」ここだ。あの番号だ。

  「うんうんうんうん。おるおるおる。そういえば海外に行くことになるかもしれんから英語勉強してみたい言うてたツレおるよ。○○君。電話番号教えよか?○○君の実家の番号やけど?」

  かなり不自然な対応ではあった。しかし教えたくて堪らないものだから勢いだけで進んだ。

  「うん。じゃあ教えて」

  教えた。これが確か大学一年の頃だ。そしてそれ以降何故か勧誘の電話は何一つ掛かってこなくなった。勧誘する側のリストに何らかの印がつけられたのだと思う。

  そしてまた引越の後に勧誘電話が掛かってきた。もう危険すぎる悪戯はしない。が、当然人間とは学習する動物である。手前は人間である。故に学習している。

  「あーそういえば友達がそういうのに興味を」

  消費者苦情受付センターの番号を教えた。また掛かってこなくなった。
 
TOTAL ACCESS: -  Today: -  Yesterday: -
LAST UPDATED 2025-11-08 01:46:24 (Sat)
 
ウィキ募集バナー