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血の涙

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血の涙 03/06/01

  「血の涙」、空想の産物ではない。

  何度も流したことがある。とは言うものの、どこかのマリア像の如くべったり流れるわけではない。

  ものもらい、この言葉どうにも馴染みが薄いので「めばちこ」とさせてもらうが、瞼の際や裏が化膿する状態がある。寝起きどころではない腫れ上がり方に外出する気も失せるわけだが、眼科に行くと切開されて膿を出し、ラベルのついていない目薬を処方される。しかし病院が苦手な奴は、瞼を無理矢理捻って絞ってどうにかして自力で潰そうとする。「変わった所に出来たにきびだ」と自らに暗示をかけ、ぼろぼろ涙を零しながら目を抉るようにいじり倒す。

  微かに瞼が腫れる感じがして縁をじっくり見ると出来物の芽がある。これを放置すると出歩けなくなるので潰すべく色々な角度に瞼をこねくり回すわけだが、芽が小さい内はどうにもならない。医者ならどうにかしてくれるだろうが、医者にかかるのが苦手な場合、もしくは保険証がない場合、あるいはその両方の場合、針を使って突付くのは怖すぎるのでどうしても爪が主なる道具になり、しかし爪では芯が出て来ずに薄い膿液が染み出すだけで苦痛は続く。

  瞬きするだけで違和感を、出来物の存在を知覚する段階になれば、立派なめばちこに成長している。外出するのを躊躇うほどに成長すれば、簡単ではないが、潰せる。ただしくれぐれも立ったまま鏡に向かって瞼を捻るのは止した方がよい。途中で平衡感覚を失って必ず倒れそうになる。めばちこのある方の目は涙でよく見えないし、ない方の目はずっと変な角度で鏡を睨んでいたから霞んでいる。頭ががんがんして「くっはあ」とよろけるのは非常に危ない。

  さて、膿を潰して芯まで出すと、一瞬目が曇る。これには最初驚くだろう。膿液が目に一瞬で広がると目潰しを喰った気がして怯んでしまうが、落ち着いて目薬を点し、目薬ごとティッシュに染み込ませて拭き取る。芯も白目に張り付いているからティッシュに吸着させる。一息入れて、潰したできものの跡をもう一度、残りの芯がないかぐっと押す。するとにきびではそういう時血がじわりと出るだろう。めばちこでも同じだ。血が出る。そしてそれをティッシュで拭き取ると、ピンク色の涙が染む。「血の涙」だ。

  くだらない?そんなことはない。「勇午」という漫画で血の涙とは非常に薄いものでせいぜいピンク色に滲むだけだという記述があり、思わず快哉を叫んだものだ。「そうそうそうそうピンク色ピンク色。ちょっとの血は涙で薄まったらピンク色になるんよそうそう。こっちはめばちこやから非常事態やけど。でも常に少しずつ血が出る体質の人なら拭いたときはピンク色になるんやろな、いつでも」

  花粉症の時期、目をこすってしまってめばちこが出来てしまったら、一度自分で潰してみては如何だろうか。「血の涙を流したことがある」と言える経験が出来る筈だ。

  手前はもう四回血の涙を流した。今年はまだない。血の涙、ピンク色であるが、血は血だ。病院は、だって怖いじゃないか。
 
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