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乗物酔い

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乗物酔い 03/06/27

  乗物酔い、これは体質なのであって仕方がないと諦めている。三半規管が弱いわけだからキリキリ舞をした後は当然しばらく立ち直れず、轍に嵌った自転車のように望んでいない方向へよろよろ進んでへたり込むことになる。へたり込むと体はもう止まっているが感覚はまだ止まっていないので、視界が時計回りか半時計回りに回転している。この回転する方向は最初のキリキリ舞の回転の方向と関連があるように思うのだが、最初どちらに回転すれば右に斜行するのか左に斜行するのか、その後へたり込んで後に視界が時計回りになるのか半時計回りになるのか、具体的に知るべく実験するも、うねる視界に結局どうでもよくなる。

  乗り物に酔った時の気分の悪さは格段の趣があって、お酒の酔いとはかけ離れた感覚であるから、車に酔う前に酒に酔ってしまえというのは例えるなら箪笥にぶつけた足の小指に熱湯を浴びるが如き苦しみとなる。そもそも酒の酔いは気持ち良くなるのだが乗物酔いは気持ち悪くなるだけであって、確かに酒も過ぎれば視界が異次元の様相を呈してくるが、こちらの場合は頭の働きが鈍くなってくるので気分が悪いから吐きたいと思った瞬間一見シチューのようなものが奔流となって溢れるが、気分が悪い吐きたいと訴える猶予がない。その点乗物酔いにはその猶予がたっぷりあって、しかもその気分の悪さは序々に増大するのであって、いっそ吐けば気分がよくなるのかとも思いたくなる辺りではまだまだ序の口だ。この段階では吐きたくても出ない。やがて頭がくらくらして胸を掻き毟りまっすぐ立っていられなくなるまで苦しみに耐えると何かが込み上げてくる。しかし乗物酔いの場合、吐いたところで振り出しに戻るわけではなく、「吐きたくなるのは付録」であるから、胃を空にしたところでまっすぐ立っていられない気分の悪さは変わらない。

  最も危険なのはバスである。バスの特にタイヤがぽっこり突き出している上の座席は複雑極まる振動に加えて右左折する際の横揺れ、ゴーストップの前後揺れの三所攻めにより、例え窓を開けて外の空気だけを吸っていても頭の芯がどんよりしてくる。タクシーも危ない。運転に馴れているから客として乗り心地はよい筈なのだが、運転に馴れているという事は、つまりそれとわからない急加速急ブレーキを多用するのであって、普通の人なら何ともなくても乗物酔いする人種は急加速急ブレーキを感じなくても正直な体が勝手に反応して酔うのだ。当然船など最初から覚悟せねばならない。甲板に出て風に当たれば、横たわって接地面積を広く取り船の動きに同調すれば酔わないというのは普段酔わない人の対処法なのであって、普段酔う人ならば、風に吹かれると潮の香りに「うっぷは」横たわるとエンジンの響きに「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛」つまり何をしても無駄なのだ。当然乱気流に突入した飛行機など墜落のことまで思いが及ばず淀んだ空気に漏れ聞こえる悲鳴が絶大なる効果を発揮して様々な物が出てくる。気車も実は危ない。私鉄やローカル線の気動車はもともと激しい振動と共にローカル線であるが故の曲がりくねった経路に目一杯車体を傾けて走る。精神を統一して早く次の駅に着いて一息入れさせろと願っていてもローカル線であるが故に駅と駅の間が長い。それでも何とか耐えていたところに突然鳴り響く汽笛によって防壁が脆くも崩れ落ちてしまう。ローカル線であるが故にいろいろな動物が線路を横切るからだ。電車なら大丈夫か。残念ながらそんなことはない。電車は最近高速化が進んで窓が開かない車両が増えている。高速ということはつまりそれだけ揺れるのであって、あとはどうなるか想像がつくだろう。連結部に酸っぱい匂いが立ち込めていたならば、それは手前の残像と考えて差し支えない。
 
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