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傘 04/10/10

  傘は余り好きではない。

  そもそも傘に限らず荷物を手に持つことが大変に嫌いであり、しかし空いた手はポケットに突っ込んであるから空けても意味はないのだが荷物を持つことで崩れる均衡が腹立たしい。傘は軽くても長さが存在感を主張していて邪魔だ。

  仕込まれた発条を外すと勢いよく開く種類の傘には風情がない。しかも雨の中をずばんと開けば雨粒が跳ね飛んで迷惑この上なく、下に開くと裾に飛沫、上に開けると間の抜けた姿を晒すことになる。たとえ金属製の骨にビニールであろうとも、まず少し開き中ほどは力を抜いたままゆっくりと、一呼吸置いて差す高さにしてから最後にぱちんなどの無粋な音をさせないよう静かに留めるような、つまり襖を開ける時の気分と雰囲気をもって傘を開くべきなのだ。

  唐傘の美しはその骨の数にあり、それを取り入れた古風か現代風かどう呼ぶべきか迷う傘があり、当然自動で開く傘ではなかったから喜んで買い、その日のうちにコンビニで盗まれた。とても気に入っていたのは僅か五時間ほどで、数千円が一瞬で消えているとやはり落ち込む。

  折畳傘も正直に言えば嫌いであるが、丹念に畳み込むのは集中力が高まる気がして楽しい。御猪口と表現される傘が裏返った状態になるとその場で打ち棄てたくなるのであり、そもそも風が強ければ雨粒は真横に飛ぶので傘を差す意味がなく、「たかが雨やないけ。酸性雨で溶けるわけでもないし。禿げたら嫌やけど」と思いながら平然と濡れて歩くことを選ぶ。

  傘はとにかく壊れやすく、そして盗まれやすい。だから安いもので済ませようと考えるから売るほうの値段も段々安くなり、そして安くなればなるほど粗雑に扱うからすぐに壊れ、安くなればなるほど「この程度なら盗んでも盗まれても構へんやろ」と誰もが考え、傘が軽んじられる傾向が益々顕著になる。

  回転させて傘に付いていた水滴を飛ばすことは注意していないと無意識にやってしまうが、格別意識をせずにくるくる回転させていた場合、周りの人が警告してくれなくても握りが勝手に外れて天誅が下る。しかし取り付ける為に再度回転させてしまうから反省には遠いようだ。

関連:傘盗人

 
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