バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

病院混戦~劇薬投下~

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kyogokurowa

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「グハッ!?」

 もう何度目だろうか。チョコラータの右腕から剃刀や針が、彼の飛び出してくる。

「ゼェ……ゼェ……ゼェ……。」

 かろうじて縫合を済ませ、病室で手に入れていた輸血パックで足りない血を補おうとするが、剃刀とともに、輸血パックが爆発した。

「ギャアッ!?」
「チョコラータ。」

 チョコラータから七メートルほど離れた背後。そこに彼は立っていた。メタリカの透明化を解除して、あえてその場に姿をさらしたのだ。

「……ひ、卑怯だぞ!! さっき手を出さないって言っていたじゃないか……!!」

 チョコラータは、未元物質の翼を展開し、椅子に腰かけてそよ風を起こしながらあくびをしている垣根に声を上げる。
 しかし垣根はけろりとした顔で、

「何言ってやがんだ。俺のほうにカビが飛んで来たら払うにきまってるじゃねぇか。ついでに換気してるだけだろ?」

 そう言って笑みを浮かべる。そう。チョコラータはカビが使えない。未元物質の影響で性質を変換された風が、あたりに充満しているせいだ。そして、カビ自体は実質無限の射程距離を誇るグリーン・デイも、カビが無ければただの近距離パワー型スタンド。パワーは高いがスピードが足りず、リゾットにその拳は届かない。

「諦めて殺されることだな、チョコラータ。俺はお前に近づかない。そして、お前は俺に、近づけない。」
「クソッ!!」

 バタバタと手足を動かし、必死に逃げようとするが、

「メタリカ!!」
「ぐぎゃぁ!?」

 再び足から血を流し、椅子の側に倒れこんだ。

「ヒューッ、惚れ惚れするねぇ。さすがはギャングお抱えの暗殺者だ。」

 終わった。先ほどの強気な表情から一転、自慢のカビもろくに扱えず、無様に地べたに這いつくばり、恐怖と絶望で埋め尽くされた表情をしたチョコラータに、そう感じた垣根は、立ち上がり、チョコラータのほうへと近づいていく。

「……茶化すな。そして、油断大敵だぞ。」

 そういうリゾットだが、

「問題ねぇ。コイツの能力は俺には通じねぇよ。」

 と、その言葉を笑い飛ばしてから、リゾットに近づき、

「トドメの前にコイツに聞きたいことがある。少し待て。」
「……好きにしろ。」

 目をつむり、そう言うと垣根は満足そうに笑い、チョコラータに向き直る。

「あ……あ……。」
「無様だなぁ、チョコラータ。」

 カツ、カツ、と靴音を響かせながらチョコラータに向けて歩いていく。

「そういやぁ、ここに来る途中に女の死体を見つけたんだが…………犯人、お前だろ?」
「何?」
「なんつーか、直感? みたいなもんだ。お前みたいな奴は息をするように人を殺す。そしてお前は輪切りにしてホルマリン漬けとかそういう拷問チックな事をして相手の反応を見るのが好きな奴だ。そして、あの女は恐怖を顔に張り付けてやがった。お前の仕業、じゃねぇのか?」
「ッ!?」

 チョコラータの顔に、図星か。と垣根はつぶやく。

「だがそう考えると一つ気になることができる。あの女に目立った外傷はなかった。カビに体を食い荒らされた様子もねぇし、糸で体をバラバラにされた様子もねぇ。じゃぁ何が、女の命を奪ったのか? なぁ、教えろよ。」
「え……あ……。」
「だんまりか。なら、」

 そう言って近づいてこようとする垣根に、チョコラータは心の中でほくそ笑んだ。

「(もう少しだ……もう少し前に出ろ。そうすれば、塁の仕掛けたライタートラップに引っかかる……!!)」

 そう。倒れたチョコラータの前には、塁の仕掛けた極細の糸と、それに繋がったライターの、垣根が危惧している、魂魄妖夢の命を奪った要因、そのトラップがあるのだ。しかしそれを悟られるわけにはいかない。だからあえて、チョコラータは恐怖におびえた顔をする。

「く、来るなっ!!」

 そう言いグリーン・デイを発現させて殴り掛かる。あえて、威力を少し弱めて。それを翼で受け止めた垣根は、そんな思惑にも気が付かず、

「いい攻撃じゃねぇか。意外と力あんだな。そのスタンドとやら。」

 一歩、踏み出す。

「(あと二歩……)」
「答えるのなら、苦しませずに殺してやるよ。だから、」

 もう一歩、踏み出す。

「(あと一歩。ここは挑発してやれば、たやすく踏み出してくれるはず。)」

 そう考えたチョコラータは、顔を上げた。

「言うと思うのか? お前のような奴に。」
「そうか。じゃぁ苦しんでもらうことになるな。」

 そう言い、足を上げる。

「(あと少し、あ「と少し。だろうな。」ッ!?」

 そんな思考から、チョコラータはリゾットの声で現実に引き戻された。見れば、トラップの糸、その糸にギリギリ、靴は触れている。そう、垣根の靴の下に置かれた、垣根の一歩を阻む、リゾットの靴底に。

「これに懲りたら気を付けることだ垣根帝督スタンド使い同士の戦いでは、浮かれた奴から死んでいく。言ったはずだぞ? 油断大敵だと。」
「…………チッ、貸し作っちまったな。」
「な、何で……わかった…………。」

 驚愕に身を包むチョコラータに、リゾットは答える。

「親衛隊のボスの切り札。それがお前の立ち位置だ。俺たちはボスに近づくために、お前ら親衛隊の情報も仕入れていた。まぁロクな情報はなかったが、お前のような手合いは周到で狡猾だと相場が決まっている。。」
「…………。」
「そんな奴がおびえ散らかしているのは俺には想像できない。さっきまでのお前の言葉は、俺にはとても白々しい猿芝居に聞こえたよ。」
「…………。」
「だから、逆転の一手をお前が狙っているのが分かった。なるほど、トラップだったか。」

 足を下した垣根をしり目に、リゾットは屈んで、ソファの下にあった物を手に取った。

「ポルポのライター。なるほど、異世界から人を集めているのは知っていたが、まさか奴のスタンドのモドキのようなものまで再現できるのか、あるいは主催者側には異世界から呼び寄せたポルポでも居るのか…………。それとも似て非なる何かを出すトラップなのか。」
「く、クソッ!!」

 顔を青ざめるチョコラータ。それにリゾットは、

「どうやらお前は頭を切り飛ばす程度では生ぬるいようだ。」
「ヒッ!!」

 慌てて立ち上がり、背を向けて逃げようとする。それを冷ややかな目で見たリゾットは、

「逃げるか……俺たちは、正面から戦う時も、逃げるという選択をすることは一度もなかった…………!! お前には、内臓をズタズタにされる苦しみを味わいながら死んでいってもらう!! メタリカアァァァ!!」

 右腕をチョコラータに向けた次の瞬間…………。

 肉の切れる音とともに、リゾットの腕が宙を舞った。

「ガッ!?」

 音を立ててその断面から血が噴き出す。

「だ、誰だっ!?」
「不愉快だ。」

 振り返った垣根が見たのは、手の先から細い触手を展開している、鬼舞辻無惨の姿だった。

 鬼舞辻無惨にとって、それは幸運だったのだろうか。リゾットはチョコラータに夢中になり、チョコラータは逃げることに夢中になり、垣根すらも、病院の入り口に意識なんて向けなかったし、考えなかった。
 そう。新たな人間が、病院に入ってくるなどとは。そして、その人間がいきなり攻撃を仕掛けてくる。なんて可能性は、完全に頭の中から抜け落ちていた。
 だが、彼ら三人だけの戦いを繰り広げていた三人は、現実に引き戻される。この戦いは、あまたの人間が戦うバトル・ロワイヤル。最後に立っているものが立つ。自分以外は全員敵のステージなのだと。

「まさかすでに戦いが起きているとは思わなかったが……予定は変わらない。」

 冷ややかな目で、膝をつくリゾットと、構えを取る垣根を見据える二人に、チョコラータは、

「(何が起こってるか理解が追いつかない…………が、好都合だ!!)」

 そう考え、逃走を開始した。病院中央の受付の側にある、階段を駆け上る。

「ま、待て!! チョコラータ!!」

 リゾットが、怒りの表情で彼のほうを向く。しかし、それは悪手だった。

「私の前でよそ見とは。」

 神速の触手が振るわれる。それを垣根は、かろうじて未元物質の翼で防いだ。

「ッ!! 済まない…………。」
「これで貸し借りなしだ。」

 垣根はそう言ってから、

「お前は奴を追え、俺はこいつを何とかする。」
「…………感謝する。」

 あえて始末するとは言わなかった垣根を残し、リゾットは階段の元まで走った。

「遺言は済んだか?」

 下らない友情劇を見せられ不機嫌な無惨に、垣根は笑みを浮かべ、

「お前こそ、遺言はそれでいいのかよ!?」

 そう言い、未元物質の翼をはためかせた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ジョルノや、来るぞっ!!」
「分かってますっ!!」

 そんな声とともに二人は左右に飛びのく。そこを、累の糸が通過し、棚にあった薬品袋から薬液が漏れて弾ける。

「何が相手が糸を扱うなら僕の能力が有利です。じゃ!! あんな糸をこぶしで殴れると思っておったのか!?」
「まさか僕も糸で切断なんて離れ業を使ってくるとは思いませんでした!! すみません!!」

 ギャーギャー騒ぐマギルゥにジョルノも言い返す。

「喧嘩してる余裕があるの?」
「うわっ!?」
「きゃうっ!?」

 今度は糸が横凪に振るわれる。

「(くっ、厄介だ。そして恐ろしいのは……奴はさっきから一本しか糸を出して来ていないこと…………こういうものは五本の指で操る手数の多さと視認性の悪さが強み…………五指から変幻自在の斬撃が来れば、避けられる自信はない…………!!)ゴールド・エクスペリエンス!!」

 叫んだジョルノは、一本のシリンダーを、ゴールド・エクスペリエンスで殴りつけてから、手術台に並んだ大量の刃物を取った。

「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 連続でそれを投擲する。だが、

「うっとうしい、なっ!!」

 累が手を振るえば、それは次々と切断される。

「(やはり、全部で糸は十本!!)気を付けてくださいマギルゥ!! これから攻撃が激化します!!」
「ああ…………だがそれよりもアレを見よ。」
「え?」

 妙に冷めた声をするマギルゥにつられて塁を見たジョルノは、己の頬から冷や汗が落ちるのを感じた。
 塁が切断したメスやガンマナイフ。それらのうちいくらかが、累の頬や肌を切り裂いていた。しかしそれらがじわじわと再生していくのだ。

「傷が……再生している!?」
「そういう能力なのか……そういう種族なのか。業魔がいるのじゃ。人間以外の種族がいてもおかしくはないのう。じゃからとて、これはいささか反則な気もするだの~。」
「のんきなこと言ってる場合ですかっ!?」
「そうじゃの……来るぞっ!!」
「くっ!!」

 とっさに飛びのいたが、メスなどが載っていたトレーはサイコロステーキのようにバラバラに切り刻まれた。

「マギルゥ!! あなたも聖霊術とやらで攻撃してください!!」
「霊力も限りがあるからの~。無限に再生する相手では…………。」
「ああもう!!」

 毒づいたジョルノだったが、

「ちょこまか逃げ回ってうっとうしいな。」

 そうため息をいた累が、赤く染まった指を交差させる。

「血鬼術」

 ジョルノの周囲に、深紅の糸が舞い、それが網目状に、ジョルノを中心にかごを形成する。

「刻糸牢」
「しまっ!?」

 ジョルノがバラバラに切り刻まれる…………と、二人は思った。しかし、

「スペルアブソーバー。」

 マギルゥの声が響いた瞬間。赤い糸はほつれ、解けて霧散する。そして、赤い光がマギルゥの右腕に集中してい行き、

「ピアッシング・ラヴ!!」
「なっ!? ぐわぁっ!?」

 吹き飛ばされた累は、先ほど切り裂いたのとは別の薬品棚にぶつかり、何やら酸っぱい匂いのする液体をぶちまけた。

「チャンスだ!! マギルゥ!! 僕たちに電気を防ぐ術式を!!」
「何をするかわからんが……ほいさっ!!」

 マギルゥが式神を振るって頼まれた術式をかける。すると、ゴム手袋に包んだ手で、ジョルノは何やら細長いものを投げた。ビチャリ。という水音を響かせて累の足元に転がったのは、

「ウナギか?」
「ええ。でもただのウナギじゃありません。電気ウナギです。そして、病院の手術室には、伝導率の高い薬液がごろごろしています。そして、電気ウナギの発電は、最大で800Vにも上る!!」

 バチッ!! という音が立ち、電気ウナギが発電を開始する。

「そんな電気ウナギに、さっきシリンダーを変えさせてもらった。いくら人間じゃなくても、高圧電流は痺れるだろう?」
「くっ!!」

 青ざめる累。しかし、それに気が付くのには遅すぎた。電流が、彼の全身を駆け巡る。

「ぐっ、ああぁぁぁぁっ!!」

 鬼とはいえ、元の体は人間。電流は、無慈悲に累の体を貫き、累は手術室の床にうつぶせに倒れた。

「ぐ、うぅ、」
「こ奴……意識を手放しておらんのか?」
「すさまじい生命力ですね……。」

 二人が顔をしかめた時、ビクッ!! と、累の体がはねた。

「ぐ、ぐぅ…………。」
「こ、こやつまだ!!」
「くっ!! ゴールド・エクスペリエンス!!」

 とっさにゴールドエクスペリエンスで攻撃しようとしたジョルノだったが、

「うう…………。」
「び、びくともしない!! 手術台の台座に指がめり込んでいる…………なんて握力だ!!」

 そう声を上げる。そう、どれだけ殴っても、累の指は手術台に食い込み、離れることはない。

「ぐ、うおアァァァ!!」

 そして、皮がちぎれる音とともに、一回り大きないや、少年から青年へと、肉体が成長した累が、少年累の皮の中から現れた。

「だ、」
「脱皮しおったぁ!?」

 二人が青ざめる中。

「ああ、気分がいいな。」

 と、累は声を出す。

「さっきまで、体を突き抜ける感覚が気持ち悪くてたまらなかった。お前らと戦うのも鬱陶しかった。まるであの時に僕の周りをブンブン飛び回ったハエみたいに。」

 そう言い、今まで隠れていた右目を、髪をかき上げて見せる。

 下弦の伍

 そこに記された文字の意味を、ジョルノとマギルゥは知らない。

「十二鬼月であるこの僕が、本気で相手してあげるよ。」

 青年累は、そう言って笑みを浮かべた。

【D-6/病院4F/一日目/午前】

【累@鬼滅の刃】
[状態]:気分が向上
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:からっぽ島の動物セット(猫・牛・犬・羊)@ドラゴンクエストビルダーズ2
[思考]
基本:無惨様の為に戦う。家族も増やしたい
0:まずは目の前の二人に対処
1:チョコラータが新しい父さんに相応しいか見定める。
2:無惨様と合流し、チョコラータを鬼にしていいか尋ねる。
[備考]
※参戦時期は姉以外の鬼が全滅したあたりです。その為、義勇の存在を知りません。
※チョコラータに着けられたカビは解除されました。
※支給品の一つである【にわとり@ドラゴンクエストビルダーズ2】を投げつけたことで消費しました。
※父親の鬼に分け与えていた血気術、脱皮により見た目が少し成長し、身体能力が向上しています。

【ジョルノ・ジョバァーナ@ジョジョの奇妙な冒険黄金の風】
[状態]:健康、疲労(小~中)少しばかり悩みが
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3、妖夢の遺体
[思考]
基本方針: 一刻も早く帰る。ブチャラティを治す方法がここなら…?
0:まずは、この状況を切り抜ける。
1:垣根…………僕に恨みでもあるんですか?
2:仲間を集める。殺し合いに乗っていないものはよく観察し考える。襲われたのなら問答無用。
3:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティを探す。
4:號嵐・真打を探す。
[備考]
  • アバッキオの情報で手に入れた手掛かりからコロッセオに向かう途中の参戦です。チョコラータ戦を経験しています。

【マギルゥ@テイルズオブベルセルリア】
[状態]:健康、疲労(小~中)、すこし感傷
[服装]:普段着
[装備]:シルバ@テイルズ オブ ベルセリア、土御門の式神(数個。詳しい数は不明)@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考]
基本方針: 帰る。仲間を探す
0:この状況を切り抜け、妖夢(名前は知らない)の死因を調べる。
1:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティを探す。
2:號嵐・真打を探す。
3:エレノア・ヒューム物語(半分くらい作り話)を、ジョルノに聞かせる。
[備考]
  • キララウス火山での決戦前からの参戦です。
  • シルバと契約を結ばされているが、マギルゥの意思で解除可能です。
  • ビエンフーと契約を結びました。
  • シルバは意思持ち支給品枠ですが、自我が薄く自分からの攻撃などができません。これが制限によるものなのか、自我が薄くされているのかは不明です。マギルゥの中にしまうこともできますが、基本デイパックの中に潜んでいます。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ハァッ……ハァッ……。」

 垣根は、いまだ無傷の無惨を前に、荒い息をしていた。服はところどころに触手がかすったおかげで破け、頬やいたるところにかすり傷がある。

「いつまで耐える? 虫けらごときが、不愉快だ。」

 そういう無惨は、かぶっていた帽子を取ってはいるし、服が破けている。だが、傷は一切ない。受けたそばから再生しているからだ。

「クソが……この、バケモンがよ…………。」

 そう毒づくが、

「(クソが……傷をつけたそばから再生しやがる・しかも、さっきトばしたアイツの右腕…………。)」

 もう消えてなくなっている右腕があった場所を見やる。

「(中から脳と心臓がこぼれていやがった……クリーチャーか? 一体体内にいくつの主要臓器を隠し持ってやがる!!)」

 冷や汗が流れる。脳裏に不安がよぎる。自分では、こいつに勝てないかもしれない。

「だが不愉快だ。もう少し私の機嫌がよければ配下にしてやってもよかったが、お前は殺すことにしよう。」

 何より、うっかり己より強くなられてしまったり、時間をかけたせいでカバンの中で眠っている高坂が起きてしまい騒ぎ出したりすれば、彼の計画が根元から破綻しかねない。

 余裕綽々と言った表情で背後のディバックを一瞥し、また触手が振るわれる。

「ぐっ!!」

 それをかろうじて未元物質の翼で防ぐ。そして、別の翼で無惨を切りつける。が、そんな傷はまるでなかったかのように再生される。

「(クソがっ……一方通行(アイツ)なら、こんなことしなくてもこいつを遠くまでぶっ飛ばせる。触手なんて防御の姿勢を取る必要もねぇ。つくづく嫉妬しちまうぜ。クソッたれが。)」

 無惨と戦う中、感じるのは、劣等感。実力という面なら、垣根は一方通行に負けない自信がある。だからこそ、彼が学園都市の一位で、自分が二位なことが気に入らなかった。
 だが、能力という点。未元物質は確かに強力だ。一方通行のベクトル操作でも防げない攻撃ができる。彼との戦いになれば、勝てる自信が垣根にはある。
 だが、今この場、鬼舞辻無惨という敵を前に有利な能力はどちらか、と言えば、それは明白だ。物理攻撃相手に無敵に近い実力を誇る、一方通行だろう。

「しぶとい。」
「(待て……俺は……)」

 触手が振り下ろされる。それを上の羽を交差させて防ぐ垣根。その時、彼の頭の中に電流のようなものが走った。

「(俺は……何を考えていた?)」

 触手を受け止め、舞い落ちる未元物質の羽の中、彼の思考は、無惨の声の届かない、深いところまで潜っていく。

「(この場で、俺は奴に勝てず、一方通行は奴に勝てる……? そんなのは……)この俺が、無様に負けを認めてるってことじゃねぇかよ…………!!」
「何?」

 思わず口に出した言葉に、無惨が反応を示す。

「(クソッたれが……一方通行にできて俺にできないことじゃァねぇ。それは負けるための言い訳じゃだ。今ここにいるいない一方通行の話には、何の意味のねぇ。この俺だ。俺が今、こいつの前に立ってるんだ。)」

 屈みがちだった体制から、立ち上がり、無惨に笑みを向ける。

「(一方通行に出来て未元物質に出来ないことじゃねぇ。能力に相性はあるが、絶対に負けることのない無敵の能力なんてものはない。事実、一方通行は一度負けている。考えろ、未元物質に出来て、一方通行に出来ないことを探せ。あるはずだ、奴の再生能力をぶち破る何かが、必ずどこかに。そうじゃなきゃ、このゲームが成り立たねぇ!! 考えろ…………ん? 待てよ? ゲーム?)」

 垣根の脳裏に、ある一つの考えが浮かんだ。

「(そうだったぜ。この方法なら、奴をぶち破れる。)見つけたぜ、攻略法をなぁ。」
「攻略法だと?」

 その言葉に、無惨が不愉快そうに眉根を寄せる。

「ああ。俺がお前に勝つ方法だよ(だが、この方法はちょっとばかし、いや、かなりリスキーだ。下手をすれば、いや、俺の予想が間違っていたら死ぬのは俺。いや、よくよく考えたらシステム上その可能性のほうが高い。だが、)」

 目の前の冷ややかな目をした男。この男に勝つためには、

「攻略法だと? ………この下らないお遊戯は私をつくづく不愉快にさせてくれる…………ここまで不快な気分を味わったのは、あの鬼狩り共を前にしても、ここまで不快にはならなかったというのに!!」

 怒れる形相で触手を振り下ろした無惨の前で、垣根は、笑う。

「らしくねぇ。俺が一目掛けなんて、本当にらしくねぇが、(やるしかねぇ。負け=死。それは暗部じゃ当たり前。いつもより、いくらか賭けの分が悪いだけ。やり直しはナシ、チャンスは一度、掛け金は、俺の命。オールインだ。)」

 薄氷の上を歩く、そんな作戦を慣行するために。

【D-6/病院1F/一日目/午前】

【垣根提督@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康。こめかみと全身に浅い傷。
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3
[思考]
基本方針: 主催を潰して帰る。アレイスターのプランを変えるぐらいの異能が集まるこの場所なら…?
0:目の前の男……突破するしか道はねぇ。
1:妖夢(名前は知らない)の死体の解析などを行う。
2:異能を知るために同行者を集める。強者ならなお良い。
3:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティを探す。
4:小屋で何者かの気配を感じた気がしたが...コイツ(リゾット)だったのか。
[備考]
  • VS一方通行の前、一方通行を標的に決めたときより参戦です。
  • リゾットをスクールに加入させました。
  • 三人でスクールを結成しました。
  • リゾットに興味を抱いています。

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康、月彦の姿、デジヘッド化(無自覚、浸食率低め)、麗奈の回復スキルにより回復力大幅向上
[服装]:ペイズリー柄の着物
[装備]:シスの番傘@うたわれるもの 二人の白皇(麗奈の支給品)
[道具]:不明支給品1~3
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない
0:最優先で高坂麗奈を鬼化させ、能力を確かめる。病院の参加者は基本皆殺し。垣根のせいで超不愉快。だから殺す。
1:累と合流し、首輪を調達若しくは爆発の実験体にする。
2:昼も行動するため且つ鬼殺隊牽制の意味も込めて人間の駒も手に入れる(なるべく弱い者がいい)。
3:逆らう者は殺す。なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
4:もっと日の光が当たらない場所を探したい。
5:鬼の配下も試しに作りたいが(麗奈を鬼化させる前に病院の参加者で試しておきたい)、呪いがかけられないことを考えるとあまり多様したくない。
6:『ディアボロ』の先程の態度が非常に不快。先程は踏みとどまったが、機を見て粛清する。よくも私に嘘をついたな。ただでは殺してやらない。
[備考]
※参戦時期は最終決戦にて肉の鎧を纏う前後です。撃ち込まれていた薬はほとんど抜かれています。
※『月彦』を名乗っています。
※本名は偽名として『富岡義勇』を名乗っています。
※ 『危険人物名簿』に記載されている参加者の顔と名前を覚えました。
※再生能力について制限をかけられていましたが、解除されました。現在の再生能力は麗奈の回復スキル『アフィクションエクスタシー』の影響で、太陽によるダメージを克服できるレベルのものとなっております。
※蓄積したストレスと、デジヘッド化した麗奈の演奏の影響をきっかけに、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した麗奈からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、麗奈と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。
※デジヘッド化しましたが、無惨自身が麗奈のように何かしらの特殊スキルを発動できるかについては、次回以降の書き手様にお任せいたします。


【高坂麗奈@響け!ユーフォニアム】
[状態]:デジヘッド化(無自覚、浸食率低め)、気絶中、腹部貫通(回復中)、回復スキル『アフィクションエクスタシー』発動中(無自覚)
[服装]:制服
[装備]:
[道具]:高坂麗奈のトランペット@響け!ユーフォニアム、危険人物名簿@オリジナル
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
0:???
1:ヴァイオレットと再合流後、滝先生への手紙の続きを書いてもらう
2:部の皆との合流。
3:久美子が心配
[備考]
※参戦時期は全国出場決定後です。
※『コスモダンサー』による精神干渉とあすか達の死によるトラウマの影響で、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した無惨からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、無惨と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。

■ 発現能力紹介: アフィクションエクスタシー@Caligula Overdose
デジヘッド化した麗奈が、無自覚に発動している能力。
自身を含む近距離にいるデジヘッド、もしくはカタルシスエフェクトを発現している参加者を回復させ、効果時間の長い自動回復状態を付与する。
あくまでも己の精神を具現化(デジヘッド化、カタルシスエフェクト発現)している参加者のみに効果があり、それ以外の参加者には、特に影響を与えることはない。


 リゾット・ネェロは、音もたてずに階段を上る。その先に、部下の仇がいるから。

「よく片腕で登ってきたな、リゾット。 すさまじい執念だよ。」
「どこまででも追ってやるさ。ソルベとジェラートの仇だ。」

 そこから現れたのは、少々荒い呼吸を繰り返すチョコラータだ。それをリゾットは、冷たい瞳で見据える。

「そうだな、だがそれを心配することはないよ、リゾット。」

 そういう彼の背後には、グリーン・デイが。

「私のグリーン・デイのカビは散布位置より低いところに行くと効果を発揮する。そしてこの状況。私が上で、お前が下だ。お前が上に行くには、グリーン・デイとここにいる私を突破する必要がある。」

 そう言い、笑みを浮かべる。

「何だったか、お前の決め台詞。そうだ、『俺はお前に、近づかない。』だったな? 違うだろう? お前は臆病者だ。だからこそボスに冷遇されるのさ。暗殺と言えば聞こえはいい。だがお前のスタンド、遠距離型の癖して射程はせいぜい10メートルと言ったところか。不便な能力だ。お前が近づかないんじゃない。お前は『近づけない』のだろう? リゾット。」
「…………。」
「そうだろうなぁ。実態もなく、そして、精密動作性もそこまでではないと見える。確かにその能力は目を見張るが、精密動作性がいいのなら、心臓をさっさと狙ってしまえばよかったんだ。それができない時点で、お前は私のスタンドには勝てないのさ。」

 ニヤニヤと、笑みを浮かべながらそうつらつらと言葉を垂れ流す。

「さて、そんな臆病者のお前には、降り注ぐカビと溜まったカビの板挟みになって終わってもらう。」

 そう言うと、グリーン・デイがカビを吹き出す。

「ッ!!」
「そこに立っていたら私のカビに侵されてしまう。しかし、お前が私の元へ上ってきても、結局待っているのは、グリーンデイのラッシュを食らっての死だ。」
「……それはどうかな?」
「何だと?」
「俺はお前に近づかない。その言葉は撤回しよう。だが、結果は変わらない。俺は、お前を必ずこの場で仕留める。どこへも逃がさない。お前に明日は、無い。」
「…………いい度胸だよ、リゾット。」

 不愉快そうに顔をしかめるチョコラータ。

「ならば死ね!! カビに置かされて!!」

 カビが、降り注ぐ、リゾットは、階段を一段踏み出したところで、透明化する!!

「視認させづらくする作戦か? だが、見えるぞ、リゾット。」

 そう。降り注ぐガスのようなカビのせいで、リゾットの輪郭が、

「はっきりと!! グリーン・デイっ!!」

 グリーン・デイがラッシュを放とうとしたその瞬間だった。

「ウッ!? グエエッ!?」

 チョコラータの口から、メスと剃刀が噴き出したのは。動きを止めた瞬間を逃さず、リゾットはチョコラータをタックルで吹き飛ばす。

「うごぁっ!?」

 その場を転げるチョコラータ。二階の中央の広いスペースの中央に、彼は立つこととなった。

「これで、お前と俺の立ち位置は対等だ。」
「ッ!!」

 ない右腕の断面に手を置いているリゾットは、そう言い、姿を消す。

「いいだろう、最終ラウンドだ、リゾット!!」

 そう声を上げるチョコラータは、油断なくあたりを見回す。すると、体の奥で、何かが自分を引っ張るの、感じ取った。

「お前の能力、いったいどういう能力なのか、攻撃を食らいながら、ずっと考えていたよ、リゾット。」

 虚空に向けて、彼はそうつぶやく。

「そして、分かったよ、私の中から剃刀やメスが飛び出すとき、いつもそれは一方向だった。」

 リゾットは答えない。そんな中、チョコラータは指に乗せたメスを見せる。

「お前が操っているのは磁力!! メスや剃刀の元は鉄分だろう?リゾット。そして、その磁力は、お前の方に引っ張られる。いつも、いつだって、吐き出したメスのその先に、お前はいた!!」

 チョコラータの指に乗せられたメスは、一つの方向を、まっすぐ指示していた。方位磁石のように。

「そこにいるな? リゾットォ!!」

 咆哮とともに、グリーン・デイがカビをその方向にまき散らすのは、チョコラータが、己の血とともに腹から大量の剃刀をこぼすのと同時だった。しかし、カビの濃度が違う。さらに、チョコラータは瞬く間におのれの傷を縫合してしまう。そのカビは今までにない濃度。まるで緑の風だ。

「勝った!! さぁ、見せてくれ!! 自慢の能力を破られ、カビに浸されて解けていく、お前のその絶望の表情を!!」

 そう言い、カメラを向けるチョコラータの、そのカメラがとらえたのは、リゾットの、崩れ落ちていく、右腕だった。

「何だ、もう、右腕しか残っていなかったか。カビの分量を間違えてしまったかな? ん? 右、腕?」

 そうつぶやいた瞬間、チョコラータは崩れ落ちた。

「ご、おっ?(な、なんだ、これは、息が、出来ない……?)」

 ふと、己の周りに飛び散った、血を見た。黄色かった。

「き、黄色?」
「気が付いたか。」
「ッ!?」

 その声に、チョコラータは驚愕した、そこに立っていたのは、無惨に切り飛ばされた右腕のない、リゾットだった。

「お前の読みは当たっていた。俺のメタリカは、確かに心臓などの臓器をピンポイントで狙える精密性はない。磁力を操るのも正解だ。だが、お前は一つ、考え損ねてた。その鉄分は、どこから来るのか?」
「……ま、まさか……。」
「そうだ。お前の体内の鉄分。それが、お前をむしばんでいた物の正体だ。そして、鉄分が無くなった体がどうなるか、医者のお前に説明する必要は、無いな?」

 そう、チョコラータの体は、酸素を運ぶことができず、酸素欠乏症に陥っているのだ。

「こ、これが…………これが狙いだったのか?」
「いや、違う。」

 チョコラータの問いに、リゾットは否定で答えた。

「ただ、酸素欠乏症で死ぬなんてもったいない。」

 ボコリ。と、チョコラータは喉に異質を感じた。

「お前は体を分離してカビを利用して動かすことが出るそうだな? 賞賛に値するよ。その汚らしいウジ虫のような意地汚さと節足動物じみた生命力も。だが、頭を切り飛ばしても、お前は生きていられるのか?」
「リィゾットオオオォォォッ!!」

 チョコラータの体内のすべての酸素を吐き出すような絶叫。それとともに襲い来るグリーン・デイの拳は、リゾットには遅すぎた。

「チョコラータ!! お前を今、ソルベとジェラートのもとに送ってやる!! せいぜいその罪の許しを神に希いながら、地獄の窯でその身を焼かれ続けろ!! メタリカアァァァ!!」

 ズバッ!!

 音を立てて、チョコラータの頭が飛ぶ。リゾットの顔と、実体がないと侮った彼のスタンドの、己の肉体に侵入し、血液の中に潜んでいたメタリカのスタンド像が逆さに見える。最後にチョコラータの思考にあったのは。

「(この私が…………死ぬ? ジョルノ・ジョバァーナへの雪辱も果たせずに、ボスと戦うこともなく、こんな奴に? そんなことは…………そんなことは…………)ありえない。」

 最後まで、最後の最後まで、チョコラータは己の死を受け入れることができなかった。

【チョコラータ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 死亡】
【残り53人】

「フッ、」

 笑みを浮かべたリゾットは、倒れこんだ。

「ソルベ……ジェラート……仇は……とったぞ。」

 左手を顔に当て、そういう彼の頬から流れ落ちた液体の正体は、誰も知らない。

【D-6/病院2F/一日目/午前】

【リゾット・ネェロ】
[状態]:気絶 少し、感傷。右腕の欠損
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、顔写真付き参加者名簿、不明支給品2つ
[思考]
基本:ディアボロを探し出し、今度こそ仕留める
1:ソルベ、ジェラート、仇は取ったぞ。
2:ディアボロを探す
3:ジョルノ・ジョバァーナ、その次は貴様だ。
[備考]
※ 参戦時期はディアボロとの戦闘に敗れ、死亡後からとなります。
※ソルベとジェラートの仇、チョコラータを仕留め、しばしの感傷に浸っています。
※【スクール】に加入しました。
※ 顔写真付き名簿により、自分を殺した青年(ドッピオ)が『ディアボロ』という名前でこのゲームに参加していることに気付きました。
※ 顔写真付き名簿については、ゲームスタート時の参加者の容姿が写った写真が名前と一緒に掲載されております。
例: ウィキッドについては水口茉莉絵モードの容姿、ディアボロについてはドッピオの容姿が写った写真となります。尚プロフィール等、その他の情報については記載されておりません。

前話 次話
噓と真 投下順 後悔先に立たず

前話 キャラクター 次話
病院戦線 開幕 垣根帝督 病院戦線、終幕(前編)
病院戦線 開幕 マギルゥ 病院戦線、終幕(前編)
病院戦線 開幕 ジョルノ・ジョバァーナ 病院戦線、終幕(前編)
病院戦線 開幕 リゾット・ネエロ 病院戦線、終幕(前編)
病院戦線 開幕 チョコラータ GAME OVER
病院戦線 開幕 病院戦線、終幕(前編)
とくべつになった少女 鬼舞辻無惨 病院戦線、終幕(前編)
とくべつになった少女 高坂麗奈 病院戦線、終幕(前編)
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