バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

水面下で絡まる思惑

最終更新:

kyogokurowa

- view
メンバー限定 登録/ログイン
遊園地を探ろう。
それがレインの下した判断だった。

理由としては遊園地という大規模な施設をわざわざエリアの隅に置いたことから、なにかを隠しているのではないかという推察からだ。
希望的観測と言えばそれまでだが、しかしかえってそういうシンプルなものが答えの時もある。
それに遊園地の近くには渋谷駅もある。
静雄とその知己の知る共通の施設だ。
もしかしたら新羅もセルティの手がかりを求めて向かっているかもしれない。

その願望込みで向かった結果だが―――その成果はゼロ。

遊園地の名が泣きそうになるくらい閑散としており、痕跡といえば自販機が幾らか壊されていた程度。
それも投げつけたというよりは叩きつけて飲み物を手に入れた、つまりは、別に戦闘があったわけでもない。
自販機を投げれるなんて脅威的だ!...なんて普遍的な感情も、静雄や竜馬、ヴライといった例を見てしまっては特別脅威でもなんでもない。

だから成果はゼロ。
レインにとってはまさに無駄足だったというわけだ。

渋谷駅の近辺を探しているはずの静雄のもとに足を運び、その成果を報告しようとするが

「......」

遊園地の駅員室に置かれた書置きに、唇を噛み締める静雄の背に、レインは言葉をかけるのを躊躇われる。
様子を見れば嫌でも察せる。
彼には収穫があった。それも、決して手放しで喜べないものが。

『北宇治高等学校にて待つ 武蔵坊弁慶 黄前久美子 セルティ・ストゥルルソン』

「...やっぱり、ここにいたんだなセルティ」

静雄の読みは当たっていた。
このゲームに反目するであろう彼女なら、新羅と自分を待つために一度はここに足を運ぶであろうという予想は。
だが間に合わなかった。

これまでの道程そのものを否定するわけではない。
ここまでの紆余曲折がなければ、レインはミカヅチに殺され、フレンダは竜馬の悪評を広めることで被害を拡大していき、梔子は彩声諸共ヴライに殺されていた。

ただ、間に合わなかったという事実をそれで流せるほど彼は器用ではなく、怒りと悲しみが握りしめた拳に溜まっていく。

そんな自分を見つめている視線に、静雄は振り返り努めて冷静にレインを迎え入れる。

「...あいつの、セルティの書置きを見つけた」
「そうですか」
「ここでのあいつを知ってる、弁慶と久美子ってやつに話を聞きてえ」
「いいと思いますよ」

静雄の申し出をレインは受け入れる。
理由としては、静雄の感傷論だけではなく、彼らとの接触は安全性が高いと踏んだからだ。
まずはこの書置きに名前が記されているという事実。

まずもって、この三人が敵対関係にあることはない。
先にも調べた通り、この遊園地において戦闘の痕は一切なく、自販機が幾つか壊れていただけ。
血痕も銃創も無いとなれば、おそらく静雄クラスの力の持ち主が中の飲料を欲して壊し、他の二人にも飲み物を分け与えたといったところだろう。
書置きが罠という可能性も考えたが、しかしそれにしては要求するものが無さすぎる。
時間も、交換要求も無ければ、これを見た参加者に来てほしいというただの要望だ。
なにより、流竜馬の仲間である武蔵坊弁慶の名が記されているのも大きい。これが書置きが罠である可能性は無いと断言できた主な理由だ。
考えても見てほしい。
この殺し合いにおいて不死身のデュラハンと流竜馬ばりのフィジカルエリートを人質として確保する価値はあるだろうか?
いや、いつ何時こちらに牙を剥いてくるかわからない獣など、すぐに排除してしまう方が正しい。

故にこの二人では人質の役を務められない。

残る久美子という名の人物だけはまだ未知数だが、首無しライダーとゲッターロボパイロットの両名が知らない施設に向かうとなれば、恐らくこの北宇治高等学校が久美子なる人物の目指す施設。
そしてこうも普遍的な高校を目印とするくらいならば、高確率で一般人だ。

久美子がどのような性格かはわからないが、なんにせよセルティ以外の二人が竜馬の同類と一般人となれば危険性はかなり低いと見ていい。
他参加者との接触がさほど叶っていない自分たちにとっては安全に情報を得られる機会は決して逃せぬチャンス。
静雄もそれは大雑把には理解しているようなので、レインとしても反対する理由はなかった。

「まだ居るかはわからねえが、北宇治高等学校ってところでいいか?」
「現状、そこ以外に手がかりはありませんからね」
「おし。わかった」

レインがロードバイクの荷台に跨ったのを確認すると、静雄はペダルを漕ぎ始め、瞬く間に速さが増していく。
友達の手がかりがある。
その希望は池袋最強の足に力を漲らせ、ペダルの回転数も瞬く間に増していく。
ちょっとした車さながらの速度に落とされないようにレインは静雄にしがみつき、壊れた線路の付近にまで差し掛かった時だった。


―――カラァン


音が聞こえた。
なにかを告げるような高らかな鐘の音が。

その音に静雄はペダルを漕ぐ足を止める。

「レイン、今のは...」
「ええ。誰かが鳴らしたのでしょう」

あの音が救援を求める鐘か、あるいは餌をおびき寄せる悪意の火種かはわからない。
しかし、少なくとも「何者かがいる」ことは確定している為、情報は得られる。

「...向こうに行くが構わねえか」

レインが悩むよりも早く、静雄はそう判断する。
罠であるかもしれない。しかし、あの鐘を鳴らしたのが友達と行動を共にしていた者たちかもしれない。
平和島静雄は全てを救うと豪語するような聖人ではないが、しかし手の届く範囲で、自分が向かえば助けられるかもしれない者を見捨てたくはないとも思っている。
煉獄杏寿郎や天本彩声のように。自分よりも心の強い彼らのように生きたいと願っている。

「...わかりました。なんにせよ情報は必要ですから」

レインもまた、合理的に考えた結果、確実になにかしらの情報を得られる機会をフイにはしたくないと判断し、静雄に賛同する。

そして。バイクさながらの速度でこぎつけること行く候。
ほどなくして、静雄とレインは鐘の音の出所であるムーンブルク城、その成れの果てである瓦礫の山に辿り着く。
爆心地とも見間違うほどの戦場痕、そこに佇むのは三人の男女と宙に浮く一匹の妖精。
二人の女は横たわる二体の躯を悼み涙を流し、妖精はそんな二人をいたたまれない表情で見つめ、一人の男はそんな彼女たちを黙って見ていた。

「おい、あんたら。さっきの鐘は」

静雄が問いかけるよりも早く、男は二人の存在を察知し、即座に銃を構え牽制する。
その傷つききった身体でなお衰えぬ殺気と怒りの気配に、しかし静雄は臆せずレインを庇うように前へと進み出て両手を挙げる。
銃を向けられたとて、静雄は怒ることはしない。自分だって、セルティが死んだと聞かされた時はこれくらい気が荒ぶっていたのだから。
人の死に涙していることから、彼らは殺し合いに乗った可能性は低いと見て、静雄は冷静に対話を続ける。

「いきなり話しかけて悪かった。俺は平和島静雄、こっちの女の子はレイン。見ての通り殺し合いに乗ってるわけじゃねえし、さっきの鐘を聞いてやってきたんだが...出直した方がいいか?」
「...いや、構わん。だが情報交換ならこの場でだ。俺たちも先を急いでいるんでな」
「先を急いでいる、とはどういうことでしょうか」

男に敵意はない、と判断したレインは静雄の隣に立ち、代わりに問答を続ける。

「貴方たちは既に戦いを終えたように見えます。そして貴方だけでなく後ろの彼女たちも行動できるかすら怪しい...そんな有様でなにをそんなに急ぐんです」
「一人、まだ戦っている奴がいる。武蔵坊弁慶。ここに連れてこられる前からの仲間だ」
「!」

探していた人間の名が思わぬところから手に入り、静雄とレインは思わず顔を見合わせる。
そして、弁慶と以前からの知己であるということは、既にあった流竜馬と脱落した安倍晴明を除き、残る彼は神隼人となる。

「なああんた。そいつはいまどこにいるんだ?」
「聞いてどうする」
「安心してください、私たちは味方です神隼人さん」
「!...俺の名をどこで知った?」
「流竜馬さんから聞きました。彼とも既に協力関係です」
「そうか、あいつが...」
「セルティって俺のダチがその弁慶って男たちと一緒に行動してたらしいんだ。力になれるならなってやりてえ」

隼人は目を瞑り、数舜だけ沈黙するとほどなくして口を開く。

「北宇治高等学校のあたりだ。場所は...行けばわかる。腐るほどの破壊痕と死体があるんでな。何人生き残ってるかはわからんが、味方は佐々木志乃、黄前久美子、鎧塚みぞれ、十六夜咲夜。敵は金髪の貴族風の男、ジオルドだ」
「わかりました。貴方たちは身体を休めておいてください。弁慶さん達の援護が終わったらまた戻ってきますから、なにがあったかはその時詳しく聞きましょう」

言うが早いか、静雄は北宇治高等学校の方面に車輪を向けるが、その前に一つの影が立ちはだかる。
その姿に静雄は目を見開く。

「お前は...!」
「ヒヒン」

コシュタ・バワー。セルティの相棒の馬だ。

「そうか、お前もいたんだな。...連れてってくれるか」

静雄の言葉に応えるように、コシュタ・バワーはすぐに己の身体を変化させる。

静雄はバイクも馬車も動かせない。
それを知っていたコシュタ・バワーは自転車の型に変化した。

「わかってるじゃねえか。ありがとよ」

静雄は乗っていたマウンテンバイクを隼人に渡し、コシュタ・バワーの自転車に乗り換え、レインと共に示された現場へと向かう。
静雄の全力の脚力で漕がれれば並の自転車など瞬く間に壊れてしまう。
しかし、デュラハンの不死身性を有するコシュタ・バワーならば彼の力にも耐えられる。

車のような速度で自転車は走りだし、静雄とレインの二人の姿はあっという間に遠ざかっていく。

「......」

小さくなっていく二人の背中を見ながら、隼人は思考する。

恐らく、彼らの援護は間に合わない。
弁慶が勝つにせよ負けるにせよ、あの場に残った面子が長期戦など出来るはずもなく、既に決着がついている頃だろう。

ではなぜ静雄たちを向かわせたかと言えば、弁慶が勝っていた場合に連れてくるのを期待したのもあるが、それ以上にこの場の面子でやらなければならないことがあるからだ。

「気は済んだかお前たち。そろそろ顔をあげろ」

未だに悲しみに暮れているクオンと早苗にぶっきらぼうに声をかける。

「ちょっと隼人、言い方ってもんがあるでしょ」
「時間はくれてやったはずだ。これ以上は待てん」

そんな隼人にアリアが注意するも彼は聞く耳など持たない。
隼人とて、協力した面々の死になにも思わない訳ではない。
だが、弁慶やビルド、マロロや志乃たちの死に嘆き縋りついたところで何の進展もないことはわかっている。
今すべきことは足を止め悲しみに暮れることではない。
現状、共に行動していたクオンはともかく、早苗とはまだロクに情報を交換できていない。
そしてクオンにしても、あの神の如き力がなんなのかをまだ共有していない。
つまり、必要なのは各々が持つ情報を整理しそこから活路を見出すことだ。

「聞かせろ。東風谷早苗、お前がここまで見てきた全てを。そしてクオン、お前が俺たちの敵か、味方かをな」

【C-5/夕方/ムーンブルク城/一日目】


【神隼人@新ゲッターロボ】
[状態]:疲労(絶大)、全身にダメージ(絶大)、出血(大)、カタルシス・エフェクト発現(現在は疲労困憊のため使用不可能)
[役職]:ビルダー
[服装]:普段着
[装備]:ミスタの拳銃@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風、ミスタの拳銃(ビルドの作った模造品)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、浜面仕上の首輪、錆兎の首輪
[思考]
基本方針:首輪を外して主催を潰し帰還する。
0:まずは早苗との情報交換、そしてクオンの見定めをする。
1:場が落ち着いたら改めて早乙女研究所に向かう。
2:ものつくりの能力を利用し有利に立ち回る。現状、殺し合いに乗るつもりはない。
3:主催との対決を見据え、やはり首輪のサンプルはもっと欲しい。狙うのは殺し合いに乗った者、戦力にならない一般人(優先度は低い)。
4:竜馬と合流する。
5:ジオルドが生きていたら殺す。
6:静雄とレインが戻ってきたら改めて情報交換する。

※少なくとも平安時代に飛ばされた後からの参戦です
※幻想郷の大まかな概要を聞きました。
※『今の自分が本物ではない』という琴子の考察を聞きました。
※夾竹桃・ビルド・琴子・リュージ・アリアと共に【鬼滅の刃、虚構推理、緋弾のアリア、ドラゴンクエストビルダーズ2、新ゲッターロボ、ダーウィンズゲーム、東方Project、とある魔術の禁書目録、スタンド能力、うたわれるもの、Caligula】の世界観について大まかな情報を共有しました。
※カタルシス・エフェクトに目覚めました。武器はドリルです。
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。

【クオン@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:全身にダメージ(絶大)、疲労(絶大)、出血(絶大)、精神的疲労(絶大)、オシュトルへの怒り、ウィツアルネミテアの力の消失、呆然自失
[役職]:ビルダー
[服装]:皇女服
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、薬用の葉っぱ@オリジナル、不明支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いに乗るつもりはない。皆と共に脱出を。
0:現状を整理する。
1:オシュトルはやっぱり許せない。
2:アンジュとミカヅチを失ったことによる喪失感
3:着替えが欲しいかな……。
4:オシュトル……やっぱり何発か殴らないと気が済まないかな
5:優勝……ハクを蘇らせることも出来るのかな……ううん、馬鹿なこと考えちゃ駄目!
6:マロロ...
[備考]
※ 参戦時期は皇女としてエンナカムイに乗りこみ、ヤマトに対しての宣戦布告後オシュトルに対して激昂した直後からとなります。オシュトルの正体には気付いておりません。
※マロロと情報交換をして、『いまのオシュトルはハクを守れなかったのではなく保身の為に見捨てた』という結論を出しました。
※ウィツアルネミテアの力が破壊神に破壊された為に消失しています。今後、休息次第で戻るかは後続の書き手にお任せします。
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。

【東風谷早苗@東方Project】
[状態]:霊夢に会えたことの安心感と同時に不安、全身にダメージ(大)、疲労(絶大)、精神的疲労(絶大)、臓器損傷、悲しみ(大)
[役職]:ビルダー
[服装]:いつもの服装
[装備]:早苗のお祓い棒@東方Project
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1、早苗の手紙
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。この『異変』を止める
0:現状を整理する。
1:豹変したドッピオに驚き。何か隠してるんじゃ…… 
2:幻想郷の知り合いをはじめ、殺し合い脱出のための仲間を探す
3:ゲッターロボ、非常に堪能いたしました。
4:ロクロウとオシュトルに不信感。兄弟で殺し合いなんて……
5:シミュレータにちょっぴり心残り。でも死ぬリスクを背負ってまでは...
6:魔理沙さん、妖夢さん……。
[備考]
※ 参戦時期は少なくとも東方風神録以降となります。
※ヴァイオレットに諏訪子と神奈子宛の手紙を代筆してもらいました。
※オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。 
※霊夢、カナメ、竜馬と情報交換してます。
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。


【アリア@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:疲労(絶大、フロアージャックはしばらく使用不可)、悲しみ(絶大)
[思考]
基本:μを止める、だけど……
0:現状を整理する
1:帰宅部の仲間との合流
[備考]
※参戦時期は少なくてもシャドウナイフ編以降。琵琶坂生存ルートです。詳しい時期はお任せします。
※『今の自分が本物ではない』という琴子の考察を聞きました。
※夾竹桃・隼人・ビルド・琴子・リュージと共に【鬼滅の刃、虚構推理、緋弾のアリア、ドラゴンクエストビルダーズ2、新ゲッターロボ、ダーウィンズゲーム、東方Project、とある魔術の禁書目録、スタンド能力、うたわれるもの、Caligula】の世界観について大まかな情報を共有しました。
※フロアージャックはしばらく使えません
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。



「おのれ...どこまで逃げたあの駄犬が...!」

陽は沈みつつある。
陽の下を歩けぬ鬼である鬼舞辻無惨にとってそれは幸運であり、同時に不運でもあった。
高坂麗奈は無惨と同じ種の鬼だ。故に太陽という楔があればその行動範囲も狭まる。
だが、麗奈が遺跡から逃げ出してから追っていた足跡は途中で途絶えてしまった。
陽が沈むにつれて行動範囲が広まってしまった所為だ。
本来の鬼の仕様である呪いもいまは使えない以上、無惨は麗奈の行動を推測して追わなければならない。
だが、肉体を齧られ放置されたヴァイオレット・エヴァーガーデンのいた逃亡現場から推測するに、麗奈は錯乱して逃げ回っている。
無惨は相手が鬼殺隊のような異常者でなければ、相手の求める答えを容易く用意できるくらいには人心掌握に長けているが、錯乱した人間の思考など読めるはずもなく。
少しばかり遠いが、数少ない麗奈の知る施設である北宇治高等学校へと向かうことにした。

ところどころ差し込んでくる陽光は番傘でどうにか凌ぎ、やがて彼は惨劇の場へとたどり着く。

(なんだこれは)

辿り着いた先には学校など存在しておらず、代わりに至る箇所に刻まれた数メートル、数十メートル規模のクレーター。
そして、焼けた大地に焼け落ちた三つの肉塊、そして脳漿と頭蓋を粉砕され頭部より内容物を露出させられた男の死体。

それそのものは人の死に対して大した感傷を抱かない無惨にとってはどうということはない。
問題はこの大規模なクレーターだ。

自身が関わった大いなる父の遺跡も、それなりの惨状であるとは思っている。
だが、この破壊の痕はその比ではない。
自分どころか、己を最も追い詰めたあの男・縁壱ですら成し得ぬかもしれないほどの規模だ。

(私よりも強力な者がいるのか?)

あり得ない、とは言い切れない。
先の岸谷新羅のような凡人ですら道具一つであそこまで己と渡り合い、垣根提督のように明らかな異端もいる。
そもそも。
自分を招いている以上、自分を殺し得るものの存在は想定しておくべきだ。

今まで麗奈に抱いていた憎悪と憤怒の感情は冷め、己よりも強者がいるかもしれないという危機感は彼の脳髄を生存の方面に舵を切らせる。

いま、最も恐れるべきはなんだ。自分が知らぬところでの高坂麗奈の死だ。
極論を言えば、最悪、自分が麗奈を見つけられなくてもいい。
彼女の命さえあれば自分は昼間でも行動できる、つまりは誰かが麗奈を保護してくれていればそれだけでもいい。
他の参加者が消えたその時に保護者もろとも始末するだけであり、人質にでも取られようものなら麗奈ごとそいつを殺してしまえば、少なくとも先ほどのように唐突に日光を浴びて害を被ることはなくなる。
高坂麗奈の身柄の確保は最上、百歩譲ってヴァイオレット・エヴァーガーデンのような者に保護される分にはまだいい。
とにかく今は『高坂麗奈がこのまま何処かで死ぬ』という最悪の事態だけを避けられればいい。

(必要なのは目だ。私以外の者を使う必要がある)

古巣の北宇治高等学校でもないとなると、もう場所の推測で範囲を絞るのは困難になる。
ならば協力者を探した方がいい。
だが、麗奈は既にいまの無惨の顔を知っている。
仮に誰かに匿わせるにしても、マトモな神経であれば、自分がいる時点で彼女自身が拒絶するだろう。
新たな配下として鬼を増やす選択肢は水口茉莉絵の叛意で既に潰れている。

ならばどうするか。

彼は既にその答えを識っている。

(気は進まないが)

無惨は己の顔を両手で覆い隠し、その場で静止する。

ゴキ、ゴキ、と硬いものが蠢くような音がした。

―――鬼舞辻無惨の恐ろしさ。
それは鬼としての純粋な強さ。なによりも己の命を優先する生き意地の強さ。
それもある。だが、彼が最も恐れられたのは戦う以前の問題だ。

彼は徹底して鬼殺隊の前に姿を見せるのを嫌った。
姿を。性別を。身分を。気配を。

鬼殺隊が『鬼舞辻無惨』と認識している全てを偽り、変化させることで何百年もの年月を鬼殺隊から足取りすら掴ませず身を潜めてきた。

ピタリ、と音が止むと、シンとした静寂に包まれる。

それを打ち破るかのように、キイイという金切り音と共に砂ぼこりが舞い上がりガシャンと激しい音が鳴った。
静雄とレインが到着した証である。

「ありがとよコシュタ・バワー...おい、誰か生き残ってるやつはいねえか!」
「静雄さん。あそこに人が」
「金髪じゃねえな...おい、あんた!ここでなにがあった、名前は!?」

「悪いけど、あたしも来たばかりだから何にも知らないわよ」

鬼舞辻無惨『だった』者は、先ほどまでの男声ではなく甲高い女声で静雄の問いかけに答える。

その髪は黒色ではなく桃色に。
ウェーブのかかった髪は長いツインテールに。
大柄な体格は一尺以上縮まった小柄なものに。

「あたしは神崎・H・アリア。高坂麗奈って子を探してるの。あんたたちは知らないかしら?」

紅梅職の瞳と猫のように縦長の瞳孔を残して、『鬼舞辻無惨』は『神崎・H・アリア』として二人に向き合った。

【F-7/夕方/北宇治高等学校跡/一日目】


【平和島静雄@デュラララ!!】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)、全身火傷(大・処置済み)、出血(小~中、止血済み)、全身に複数の切り傷(小)、精神的ダメージ、全身に複数の打撃痕、レインの仮説による精神的躊躇(小)
[服装]:いつものバーテン服(ボロボロ)
[装備]:なし
[道具]:見回り用の自転車@現地調達品、コシュタ・バワー@デュラララ!!
[状態・思考]
基本行動方針:主催者を殺す。
0:ひとまず目の前の少女と情報交換を。その後、隼人たちのところに戻る。
1:仮面野郎共(ミカヅチ、ヴライ)は絶対殺す。
2:新羅を探す。やばいことになってたらぶん殴る。
3:ノミ蟲(臨也)は見つけ次第殺す。
4:フレンダは非常に怪しい。もしも煉獄を殺したのが彼女なら……?
5:竜馬の知り合いに遭ったら一応伝えておいてやる。
6:彩声との約束を守るため、梔子を護る。
7:仮面をつけている参加者を警戒。
8:弁慶・久美子と会ってセルティの話を聞きたい。
[備考]
※参戦時期は少なくともセルティが罪歌と関わって以降です。
※静雄とミカヅチの戦闘により、公園が荒れ放題となっております。
 仮面アクルカによる閃光は周辺地域から視認できたかもしれません。
※彩声の遺体は喫茶店に運び込まれています。
※梔子と情報交換しました。
 ただウィキッドは仲間の義理として細かくは説明してません。

【レイン@ダーウィンズゲーム】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)
[服装]:普段の服
[装備]:ベレッタM92@現実、レミントンM700@現実
[道具]:天本彩声の支給品(基本支給品、ランダム支給品×0~2)
[状態・思考]
基本行動方針:会場から脱出する
0:ひとまず目の前の少女と情報交換を。その後、隼人たちのところに戻る。
1:情報は適切に扱わなければ……
2:サンセットレーベンズメンバーとの合流を目指す。
3:μについての情報を収集したい。
4:琵琶坂、ウィキッド、無惨に警戒。
5:フレンダは非常に怪しい。もしも煉獄を殺したのが彼女なら...?
6:竜馬の知り合いに遭ったら協力を仰いでみる。
[備考]
※参戦時期は宝探しゲーム終了後、カナメ達とクランを結成した頃からとなります。
※ヒイラギが名簿にいることから、主催者に死者の蘇生なども可能と認識しております。
※彩声の支給品はレインが回収しました。
※『参加者は赤の他人がキャラクターになりきってる』と言う説と、
 『それが参加者が折れ殺し合いをするしかない結論をさせる為の罠』説を立ててます。
 どちらも確証はありません。(前者の方は辻褄が合い、後者の方は発想の逆転のようなもの)
※梔子と情報交換しました。
 ただしウィキッドには仲間であるため細かく説明してません。



【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(極大)、全身ダメージ(大)、神崎・H・アリアの姿、デジヘッド化(無自覚、浸食率低め)、麗奈の回復スキルにより回復力向上
[服装]:ペイズリー柄の着物
[装備]:シスの番傘@うたわれるもの 二人の白皇(麗奈の支給品)
[道具]:不明支給品1~3、累の首輪、鈴仙の首輪、オスカーの首輪
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない
0:まずは麗奈を確保する。そのための人員確保としてアリアの姿を借りて目の前の二人と情報交換をする。
1:太陽克服のカラクリを究明するため、ウィキッドから『デジヘッド』の情報を吐かせる。
2:私は……太陽を克服したのか……?
3:麗奈は徹底的に利用する。まずはこいつの能力の詳細を確認し、太陽克服のカラクリを探る。問題ないようであれば、麗奈を吸収することも視野にいれる。
4:昼も行動するため且つ鬼殺隊牽制の意味も込めて人間の駒も手に入れる(なるべく弱い者がいい)。
5:逆らう者は殺す。なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
6:もっと日の光が当たらない場所を探したい。
7:鬼の配下も試しに作りたいが、呪いがかけられないことを考えるとあまり多様したくない。
8:『ディアボロ』の先程の態度が非常に不快。先程は踏みとどまったが、機を見て粛清する。よくも私に嘘をついたな。ただでは殺してやらない。
9:垣根、みぞれ、オシュトル、ロクロウ、臨也は殺しておきたいが、執着するほどではない。
[備考]
※参戦時期は最終決戦にて肉の鎧を纏う前後です。撃ち込まれていた薬はほとんど抜かれています。
※『月彦』を名乗っています。
※本名は偽名として『富岡義勇』を名乗っています。
※ 『危険人物名簿』に記載されている参加者の顔と名前を覚えました。
※再生能力について制限をかけられていましたが、解除されました。現在の再生能力は麗奈の回復スキル『アフィクションエクスタシー』の影響で、太陽によるダメージを克服できるレベルのものとなっております。
※蓄積したストレスと、デジヘッド化した麗奈の演奏の影響をきっかけに、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した麗奈からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、麗奈と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読み、「自分たちが作られた存在」という可能性を認識しました。
※ 『覚醒者』について纏められたレポートを読み、覚醒者『006』が麗奈、『007』が無惨であることを認識しました。
※ 攻撃強化スキル『ロジックマイト』を発動できるようになりました。無惨自身の生命が脅かされ、それによるストレスが蓄積された状態になると、無自覚に発動します。
※ 太陽光によるダメージで、身体の一部が炭化し、消失しました。
その影響で全身にダメージを負っています。
現在は麗奈との距離が縮んだおかげで、陽光を浴びてもダメージは受けませんが、消失によるダメージを回復するために、人間の血肉を食らう必要があります。
※今は神崎・H・アリアの姿に擬態しています

前話 次話
狂騒曲の終末に 投下順 とある少女の薄明邂逅(エンカウント)

前話 キャラクター 次話
Origin regression 平和時島静雄 天翔けるもの ―偽りの仮面―
Origin regression レイン 天翔けるもの ―偽りの仮面―
英雄の唄 ー 終章 風のゆくえ ー 神隼人 ニンゲンだから
英雄の唄 ー 終章 風のゆくえ ー クオン ニンゲンだから
英雄の唄 ー 終章 風のゆくえ ー 東風谷早苗 ニンゲンだから
狂騒曲の終末に 鬼舞辻無惨 天翔けるもの ―偽りの仮面―
ウィキ募集バナー