天本彩声は困惑していた。
帰宅部の仲間である巴鼓太郎が、オスティナートの楽士の一人、シャドウナイフを庇い死んでしまった。
彼の死という精神的ダメージを負った帰宅部は、とにかく一度解散し、自分の気持ちを整理したらもう一度集まろうと約束した。
その数日後、部室に一人を除く全員が集合した時、事件は起きた。
部室の扉が外から南京錠をかけられ、皆が部室から出られなくなった。
そしてウィキッドの曲が流れ始めるのとほぼ同じタイミングで、部の皆の連絡用アプリ『WIRE』に、同じ帰宅部の守田鳴子から、自分たちが彼女に騙されていたとのメッセージが送られてきた。
彼の死という精神的ダメージを負った帰宅部は、とにかく一度解散し、自分の気持ちを整理したらもう一度集まろうと約束した。
その数日後、部室に一人を除く全員が集合した時、事件は起きた。
部室の扉が外から南京錠をかけられ、皆が部室から出られなくなった。
そしてウィキッドの曲が流れ始めるのとほぼ同じタイミングで、部の皆の連絡用アプリ『WIRE』に、同じ帰宅部の守田鳴子から、自分たちが彼女に騙されていたとのメッセージが送られてきた。
誰にも教えていない筈の部室の場所が割れていた。
鳴子ただ一人がいない現状。
食料も風呂もないまま、ただただウィキッドの曲が鳴り響き、狭い閉鎖空間の中でそれらに耐えるしかできない精神的拷問。
鳴子ただ一人がいない現状。
食料も風呂もないまま、ただただウィキッドの曲が鳴り響き、狭い閉鎖空間の中でそれらに耐えるしかできない精神的拷問。
これらの要素が絡まり、一日が過ぎた時点で、自分を含めた皆が体力も精神も疲弊してきていた。
ダメ押しと言わんばかりに、裏切り者はもう一人いる、などと鳴子がメッセージを送ってきた為に、男子を中心に身内を疑う言動が出始め、それの解決もできないままひたすらウィキッドの曲を流され続け。
このまま餓死してしまうのではないかと諦めかけたその時だった。
ダメ押しと言わんばかりに、裏切り者はもう一人いる、などと鳴子がメッセージを送ってきた為に、男子を中心に身内を疑う言動が出始め、それの解決もできないままひたすらウィキッドの曲を流され続け。
このまま餓死してしまうのではないかと諦めかけたその時だった。
気が付けば帰宅部の面々は見当たらず、代わりに一面が闇の聞きなれぬ声の人々が集う部屋におり、ステージ上にμと謎の女が現れて。
その上、自分たちに殺しあえと首輪を嵌め、楽士の一人である少年ドールがμに殺されたかと思えば、首輪を爆破されてもう一人女の子が死んだ。
その上、自分たちに殺しあえと首輪を嵌め、楽士の一人である少年ドールがμに殺されたかと思えば、首輪を爆破されてもう一人女の子が死んだ。
あの部室から出られたのと空腹感や汗のべたつきが無くなっていたのは幸運だったが、現状の意味不明さによる不安感の方が勝っていた。
わかるのは、殺人を犯し強要するμへの印象は最悪にかなり近くなったということだけだ。
わかるのは、殺人を犯し強要するμへの印象は最悪にかなり近くなったということだけだ。
(...先輩たちも来てるのかな)
帰宅部の面々も巻き込まれているのか、あるいは自分一人だけなのか。
どちらにせよ喜べない事態ではあるが知らなければ始まらない。
不安のままに彩声は名簿を確認した。
どちらにせよ喜べない事態ではあるが知らなければ始まらない。
不安のままに彩声は名簿を確認した。
知った名前が自分を除けば四つあった。
Stork。
オスティナートの楽士の一人である覗き魔のド変態。
殺しには乗らないのかもしれないが、所詮は変態。
どうせ最期の宴だとでも考え覗き以上のこともして回るのだろう。
この機に死んでくれればせいせいする。
オスティナートの楽士の一人である覗き魔のド変態。
殺しには乗らないのかもしれないが、所詮は変態。
どうせ最期の宴だとでも考え覗き以上のこともして回るのだろう。
この機に死んでくれればせいせいする。
梔子。
彼女もまた楽士の一人であり、異様に帰宅部の一人、琵琶坂永至を異様に憎んでいた。
ただ、他の楽士とは違い変態的ではなく、一番話が通じそうでもあった。
少年ドールがああも残虐に殺されたことから、楽士も被害者の立ち位置である可能性が高い。
火を見ると呼吸困難に陥り倒れてしまう彼女は心配だし、彼女が協力してくれれば心強いと思う。
彼女もまた楽士の一人であり、異様に帰宅部の一人、琵琶坂永至を異様に憎んでいた。
ただ、他の楽士とは違い変態的ではなく、一番話が通じそうでもあった。
少年ドールがああも残虐に殺されたことから、楽士も被害者の立ち位置である可能性が高い。
火を見ると呼吸困難に陥り倒れてしまう彼女は心配だし、彼女が協力してくれれば心強いと思う。
ウィキッド。
この楽士の正体が鳴子先輩なのかはまだわからない。
もしも、彼女がこの会場にいた場合は、残念ながら彼女は裏切り者だったということになる。
帰宅部を追い詰めた報いを受けさせてやると怨念を抱くと同時に、どうか正体が鳴子でないことを祈る。
この楽士の正体が鳴子先輩なのかはまだわからない。
もしも、彼女がこの会場にいた場合は、残念ながら彼女は裏切り者だったということになる。
帰宅部を追い詰めた報いを受けさせてやると怨念を抱くと同時に、どうか正体が鳴子でないことを祈る。
そして最後の一人が。
「なんであいつなのよ...!」
彩声は思わず声を荒げた。
琵琶坂永至。帰宅部の一員であるため、彩声とは仲間の立場にある男だ。
だが、彩声は彼を一切信用していない。それは彩声が潔癖なまでの男嫌いだからというだけでなく、彼という人間そのものが異常なのだ。
初めは隙の無い好青年といった印象で、これで男でなければ仲良くもできたかもしれないと思えるほど疑わしい要素はなかった。
琵琶坂永至。帰宅部の一員であるため、彩声とは仲間の立場にある男だ。
だが、彩声は彼を一切信用していない。それは彩声が潔癖なまでの男嫌いだからというだけでなく、彼という人間そのものが異常なのだ。
初めは隙の無い好青年といった印象で、これで男でなければ仲良くもできたかもしれないと思えるほど疑わしい要素はなかった。
だが、彼はその本性を徐々に表していった。
キッカケはシーパライソの太陽神殿にて、敵である梔子と対面した時だった。
憤る梔子を自分のカタルシスエフェクトの炎で黙らせ、願いを叶えると言いつつ帰宅部を牢屋に閉じ込めようとするμに怒鳴り散らした。
そこまではいい。μが楽士やデジヘット達の願いに偏重し帰宅部の願いを蔑ろにしている面があるのも事実なのだから。
問題はその後だ。牢屋から出せばもう手出しはしないという約束をあっさり反故にしμを壊そうとし、倒れた梔子に対しては必要以上に足蹴にし罵倒し唾を吐きかけた。きっとあのまま放っておけば殺していただろう。
ウィキッドの時もそうだ。口を開けばすぐに他者に疑いをかけ、鳴子に対しては必ず殺してやるなどと呟いていた。
誘拐事件にあった過去があるらしいが、だからといってそれを免罪符にしてああも平気で人を傷つけることが出来るのはおかしい。
きっと、あの男は自分が助かるために平然と他人を犠牲にするだろう。
あんな男を信用できるはずもない。帰宅部から連れてくるなら、せめて信頼できる女性陣、百歩譲っても大人しく危険性を感じない峯澤か女に免疫が無く真面目な笙悟辺りにして欲しかった。
キッカケはシーパライソの太陽神殿にて、敵である梔子と対面した時だった。
憤る梔子を自分のカタルシスエフェクトの炎で黙らせ、願いを叶えると言いつつ帰宅部を牢屋に閉じ込めようとするμに怒鳴り散らした。
そこまではいい。μが楽士やデジヘット達の願いに偏重し帰宅部の願いを蔑ろにしている面があるのも事実なのだから。
問題はその後だ。牢屋から出せばもう手出しはしないという約束をあっさり反故にしμを壊そうとし、倒れた梔子に対しては必要以上に足蹴にし罵倒し唾を吐きかけた。きっとあのまま放っておけば殺していただろう。
ウィキッドの時もそうだ。口を開けばすぐに他者に疑いをかけ、鳴子に対しては必ず殺してやるなどと呟いていた。
誘拐事件にあった過去があるらしいが、だからといってそれを免罪符にしてああも平気で人を傷つけることが出来るのはおかしい。
きっと、あの男は自分が助かるために平然と他人を犠牲にするだろう。
あんな男を信用できるはずもない。帰宅部から連れてくるなら、せめて信頼できる女性陣、百歩譲っても大人しく危険性を感じない峯澤か女に免疫が無く真面目な笙悟辺りにして欲しかった。
現状、確実に信頼できる人間はいないと思っていい。もしもなんでも願いが叶うなら邪悪な男を滅ぼしたいとでも願うだろう。
しかし、彩声は殺し合いには乗らない。叶えたい願いがあっても、その為に人を傷つけることを正当化すれば、それは琵琶坂永至と同じだ。
そんなのは嫌だ。あんな奴みたいにはなりたくない。だから、必ず誰も殺さずこのゲームから帰ってやる。μたちを倒して、帰宅部の皆も救ってやる。
しかし、彩声は殺し合いには乗らない。叶えたい願いがあっても、その為に人を傷つけることを正当化すれば、それは琵琶坂永至と同じだ。
そんなのは嫌だ。あんな奴みたいにはなりたくない。だから、必ず誰も殺さずこのゲームから帰ってやる。μたちを倒して、帰宅部の皆も救ってやる。
決意と共に、彩声はその足を踏み出した。
☆
フレンダ=セイヴェルンは息を切らしながら全力で走っていた。
目指す場所がある訳ではない。ただただ、迫りくる脅威から逃げていたのだ。
目指す場所がある訳ではない。ただただ、迫りくる脅威から逃げていたのだ。
「待ちやがれぇぇぇぇぇぇ!!」
追跡者は流竜馬。追いかけるのは引き留める為ではなく、彼女を殺す為。
例え相手が可憐な女子相手だろうが、彼は構わず肩に担ぐ鉄球と斧を振るう。
例え相手が可憐な女子相手だろうが、彼は構わず肩に担ぐ鉄球と斧を振るう。
彼らの再会はあまりにもあっけないものだった。
フレンダは竜馬が早乙女研究所を目指していたことなど露知らず、木陰で身を休ませていたところに竜馬が通りがかった。
フレンダにとって不幸中の幸いといえるのは、彼女があまりにも気を抜いて休息をとっていたこと。
この時、フレンダが『この広い会場の中、早々行き先が被ることはないだろう』と楽観視せず警戒に努めていれば、彼女の殺気を感じ取られ、既にその身は裂かれていただろう。
フレンダの横を通り過ぎた竜馬は、遅れて気が付いたものの、彼女が逃げる前に行動できずそのまま逃走を許してしまう。
そこからはもうはちゃめちゃの嵐。
フレンダが逃げる為に爆弾や簡易的な罠を設置するも、竜馬はそれを容易く破壊しかいくぐる。
悲鳴に交じり爆音が夜の街に鳴り響くこと幾候。
フレンダは竜馬が早乙女研究所を目指していたことなど露知らず、木陰で身を休ませていたところに竜馬が通りがかった。
フレンダにとって不幸中の幸いといえるのは、彼女があまりにも気を抜いて休息をとっていたこと。
この時、フレンダが『この広い会場の中、早々行き先が被ることはないだろう』と楽観視せず警戒に努めていれば、彼女の殺気を感じ取られ、既にその身は裂かれていただろう。
フレンダの横を通り過ぎた竜馬は、遅れて気が付いたものの、彼女が逃げる前に行動できずそのまま逃走を許してしまう。
そこからはもうはちゃめちゃの嵐。
フレンダが逃げる為に爆弾や簡易的な罠を設置するも、竜馬はそれを容易く破壊しかいくぐる。
悲鳴に交じり爆音が夜の街に鳴り響くこと幾候。
何十分も走り続けたフレンダの服は汗と埃でぐしゃぐしゃになり、鼓動はバッタのように跳ね続け、息は絶え絶えになっていた。
重たい身体で振り返る。竜馬の姿は見えない。
ようやく撒けたのかと、へなへなと腰を落とす。
重たい身体で振り返る。竜馬の姿は見えない。
ようやく撒けたのかと、へなへなと腰を落とす。
「ねえ、あなた大丈夫!?」
突如かけられた声にビクリと跳ね上がる。
もう見つかったのか。フレンダはすぐに立ち上がり逃げ出そうとする。
もう見つかったのか。フレンダはすぐに立ち上がり逃げ出そうとする。
「待って!あなたに敵意はないの!」
その心配げな声音に、フレンダは思わず立ち止まり声の方へと顔を向ける。
そこにいたのは竜馬のような粗野な男とは似ても似つかない、"可憐"の二文字が相応しい美少女だった。
そこにいたのは竜馬のような粗野な男とは似ても似つかない、"可憐"の二文字が相応しい美少女だった。
「私、天本彩声。さっきの悲鳴、あなただよね。私、あなたを助けに来たの」
「た、助け...?」
「た、助け...?」
フレンダは彩声の言動を咀嚼し彼女という人間を品定めする。
こちらを心配そうに見つめる眼差し。涙と爆撃の逃避行を直接見たわけではなさそうだが、それでもあの音を聞いて駆けつけて来られる性根。
なにより、竜馬と違い対話をしようとする意思を明らかにする姿勢。
こちらを心配そうに見つめる眼差し。涙と爆撃の逃避行を直接見たわけではなさそうだが、それでもあの音を聞いて駆けつけて来られる性根。
なにより、竜馬と違い対話をしようとする意思を明らかにする姿勢。
「...ふえぇ~ん、恐かったよぉ~!」
品定めの結果、フレンダは彩声を利用することにした。
「ヒドイ...!」
流竜馬という悪漢に襲われ命からがら逃げてきたという、涙を流しながらのフレンダの説明を受けた彩声は悲痛な表情を浮かべた。
フレンダの応急手当をしながら怪我の具合を見ていたが、説明と食い違いはない。
フレンダの応急手当をしながら怪我の具合を見ていたが、説明と食い違いはない。
「私、友達が殺されていきなりあんなのに襲われて...恐くて怖くてしかたなかった訳...」
「大丈夫だよ、フレンダちゃんは私が守る!」
「大丈夫だよ、フレンダちゃんは私が守る!」
目尻に涙を溜めただけでこうも容易くノせられるとは楽なものだとフレンダは内心でほくそ笑む。
やっぱ女の子が涙を流してたらこうくるのが普通だよね~、と予想通りの展開に鼻歌の一つでも歌いそうな気分になった。
やっぱ女の子が涙を流してたらこうくるのが普通だよね~、と予想通りの展開に鼻歌の一つでも歌いそうな気分になった。
「ありがと、じゃあ」
「うん。私、その竜馬って奴を倒してくる」
「うん。私、その竜馬って奴を倒してくる」
有頂天になった気分はすぐに引きずり降ろされた。
「許せない...男っていつもそう。汚くて、自己中で、なんでも暴力で解決しようとして...いつも被害者になるのは女の子(わたしたち)だ」
「あ、彩声~?」
「家族や部長たちが異常だったんだ...まともな男なんてあの人たちくらい!男なんてみんな琵琶坂や田所と同じよ!存在するだけで害になる!!」
「あ、彩声~?」
「家族や部長たちが異常だったんだ...まともな男なんてあの人たちくらい!男なんてみんな琵琶坂や田所と同じよ!存在するだけで害になる!!」
突如ヒステリックに声を荒げる彩声にフレンダは狼狽する。
悪漢・流竜馬に怒りを燃やすのは思惑通りだが、ここまで激昂するのは予想外だ。
先ほどまでは宥められていたフレンダだが、今度は彼女が宥める番になっていた。
悪漢・流竜馬に怒りを燃やすのは思惑通りだが、ここまで激昂するのは予想外だ。
先ほどまでは宥められていたフレンダだが、今度は彼女が宥める番になっていた。
「う、うんそうだね、彩声の言う通り。あいつは危ない奴だから、彩声も一緒に逃げて皆に知らなくちゃいけない訳よ」
「ダメだよ、私たちが逃げてる間にフレンダちゃんの友達も傷つけられちゃうかもしれない。だったら流竜馬はここで倒しておくべき!」
「ダメだよ、私たちが逃げてる間にフレンダちゃんの友達も傷つけられちゃうかもしれない。だったら流竜馬はここで倒しておくべき!」
激昂する彩声は、フレンダの制止も聞かず、自分の荷物を持って立ち上がる。
「フレンダちゃんは逃げてて。私に万が一のことがあった時のために、少しでも遠くに離れてて!」
「待ってってば、彩声!...行っちゃった...」
「待ってってば、彩声!...行っちゃった...」
疲れ果てているフレンダが彩声を引き留めることなどできる筈もなく。
彩声の背中はあっという間に遠ざかっていく。
彩声の背中はあっという間に遠ざかっていく。
「あ...あぁ...」
こんな筈じゃなかった。
彩声を味方に着けて、隠れ蓑代わりにし、そして竜馬の悪評を流しつつもっと頼れそうな味方を増やすつもりだった。
なのに、彩声は一人で突っ走ってしまった。どう見積もっても自分より弱い彼女が竜馬を倒せるとはとても思えない。これではただの自殺行為だ。
彩声を味方に着けて、隠れ蓑代わりにし、そして竜馬の悪評を流しつつもっと頼れそうな味方を増やすつもりだった。
なのに、彩声は一人で突っ走ってしまった。どう見積もっても自分より弱い彼女が竜馬を倒せるとはとても思えない。これではただの自殺行為だ。
「し...知ーらない。結局、私は悪くないって訳よ」
もしも関わった時間がもう少し長ければ、彩声を止める為に影ながら後を追ったかもしれない。
しかし、保身を捨ててまで足を運ぶには彩声と関わった時間は短すぎる。
しかし、保身を捨ててまで足を運ぶには彩声と関わった時間は短すぎる。
せめて彩声が竜馬を一秒でも長く足止めできることを願い、フレンダは彩声とは別の方角へとその歩を預けた。
☆
「クソッ、あのガキどこ行きやがった!」
竜馬は舌打ちと共に地団太を踏む。
見失った。偶然、フレンダと再び遭遇できたまではよかったが、暗く複雑な森や入り組んだ構造の建築物に阻まれ思うように追跡できずこの有様だ。
このままでは腹の虫が治まらないが、しかしこのままでは当てもないのも事実。
再び早乙女研究所に向かうか、フレンダを追うか。どちらにしようかなの指さしで決めようとした時だった。
見失った。偶然、フレンダと再び遭遇できたまではよかったが、暗く複雑な森や入り組んだ構造の建築物に阻まれ思うように追跡できずこの有様だ。
このままでは腹の虫が治まらないが、しかしこのままでは当てもないのも事実。
再び早乙女研究所に向かうか、フレンダを追うか。どちらにしようかなの指さしで決めようとした時だった。
殺気。
こちらを睨みつける視線に、竜馬は振り返る。
立っていたのは栗色の髪の少女―――天本彩声だった。
立っていたのは栗色の髪の少女―――天本彩声だった。
「...あんたが流竜馬」
「だったらなんだってんだ」
「やっぱりあんたが...」
「だったらなんだってんだ」
「やっぱりあんたが...」
低くくぐもった声に竜馬は疑問符を浮かべる。
見覚えのない顔だが、彼女からの殺気は確かに感じられる。
あそこまで憎悪を募らせているということは、何度かノしたことがある極道達の娘だろうか。
見覚えのない顔だが、彼女からの殺気は確かに感じられる。
あそこまで憎悪を募らせているということは、何度かノしたことがある極道達の娘だろうか。
「あんたみたいな奴がいるから...ウアアアァァァ!!!」
彩声の絶叫が響き渡り、彼女の胸からドス黒く太い針が突き出し、両手には盾が、顔には目元を隠すバイザーが体現する。
さしもの竜馬も警戒心を抱き構えをとる。
さしもの竜馬も警戒心を抱き構えをとる。
「流竜馬、私はあんたみたいな男を許さない!!!」
「わけのわかんねえこと言ってんじゃねえ、やるってんなら相手になるぜ!」
「わけのわかんねえこと言ってんじゃねえ、やるってんなら相手になるぜ!」
彩声の叫びに応えるように吼える竜馬。
たとえ年下相手だろうが、敵意をぶつけられたなら応えずにはいられない男だった。
たとえ年下相手だろうが、敵意をぶつけられたなら応えずにはいられない男だった。
「わあああァァァ!!!」
駆け出し、盾を振り下ろす彩声。竜馬は彼女の攻撃を鉄球で受け止めた。
瞬間。
「―――ッ!?」
身体を駆け巡る衝撃に竜馬の動きが止まり、彩声はその隙をつきドロップキックを彼の胸に叩き込む。
見た目以上に重たい一撃を受け、たたらをふみ五歩ほど後退する竜馬。
その彼の姿に優越感を抱くでもなく、ただただ収まらなぬ怒りを彩声はぶつける。
見た目以上に重たい一撃を受け、たたらをふみ五歩ほど後退する竜馬。
その彼の姿に優越感を抱くでもなく、ただただ収まらなぬ怒りを彩声はぶつける。
「フレンダちゃんの痛みはこんなものじゃない...あの子に泣いて謝るまで許さないんだから!」
フレンダの名前が出た瞬間、竜馬は察した。
この少女がなぜ怒っているのか。なぜ殺意をぶつけてくるのか。
この少女がなぜ怒っているのか。なぜ殺意をぶつけてくるのか。
「俺を―――ナめんじゃねええええええ!!!」
それはこの程度で自分を倒せると思っている彩声に対してか、あるいは彼女の陰に潜むフレンダか。
痺れの残る身体など眼中にないと言わんばかりに、竜馬は憤怒と共に駆け出した。
痺れの残る身体など眼中にないと言わんばかりに、竜馬は憤怒と共に駆け出した。
「―――ッ!?」
予想外に早い復活に驚く彩声だが、彼女とて曲がりなりにも多くのデジヘッドと戦ってきた戦士だ。
我に返るよりも先に、次の攻撃へと身体が動いていた。
並の電撃では足りない。この男を黙らせるにはもっと強力なものを、と。
盾を勢いよく地面に叩きつけ、地面を伝いより強力な電撃を放つ。
我に返るよりも先に、次の攻撃へと身体が動いていた。
並の電撃では足りない。この男を黙らせるにはもっと強力なものを、と。
盾を勢いよく地面に叩きつけ、地面を伝いより強力な電撃を放つ。
これが彩声のオーバードーズ。彼女の有する最大火力の技である。
目に見えぬそれを、竜馬が躱すことなどできはしなかった。
目に見えぬそれを、竜馬が躱すことなどできはしなかった。
「ぐあああああああああ!!」
先ほどよりも強力な電撃に、たまらず竜馬は大口を開けて叫びを上げる。
手応えあり、と彩声は実感を抱く。
手応えあり、と彩声は実感を抱く。
が、しかし。
その叫びも僅かな時間で終わる。
すぐに歯を食いしばり、己を見下ろし睨みつける竜馬の目に彩声が気が付くももう遅い。
盾を地面に叩きつけるということは、この瞬間、彩声の身体を守るものはなにもないということ。
彼女が盾を再びかざすよりも早く、竜馬の拳が頬を捉え、彼女の身体を錐もみ上に吹き飛ばした。
すぐに歯を食いしばり、己を見下ろし睨みつける竜馬の目に彩声が気が付くももう遅い。
盾を地面に叩きつけるということは、この瞬間、彩声の身体を守るものはなにもないということ。
彼女が盾を再びかざすよりも早く、竜馬の拳が頬を捉え、彼女の身体を錐もみ上に吹き飛ばした。
「へっ、晴明に比べりゃあ屁みてえなもんだぜ」
身体が少々焦げつつも平然と笑う竜馬を見ながら、彩声は思う。
暴力的で。下品で。自己中で。無駄に頑丈で。これだからこういう男は嫌いだと。
彩声は目の前の男への嫌悪をなおも燃やしつつ、その意識を手放した。
☆
「...けったくそ悪ィ」
気を失った彩声を近場にあった警察署に放置し、竜馬は舌打ちする。
彩声はフレンダの代わりに自分を倒すと言っていた。
そのことから、フレンダが自分の悪評を刷り込み、彼女を使い捨ての手先として放ったのは容易に推測出来た。
彩声はフレンダの代わりに自分を倒すと言っていた。
そのことから、フレンダが自分の悪評を刷り込み、彼女を使い捨ての手先として放ったのは容易に推測出来た。
彼が彩声を殺さなかった理由もそこにあった。
敵であれば誰であろうと殺意には殺意で返すのが竜馬だが、無駄な犠牲の上に立つのも嫌う男。
彩声の殺意はフレンダに仕込まれた偽物の殺意だ。
その為、ここで彩声を殺しフレンダの思惑に乗るのを避けたのだ。尤も、あまりにしつこく狙ってくるようならば殺害も辞さないのだが。
敵であれば誰であろうと殺意には殺意で返すのが竜馬だが、無駄な犠牲の上に立つのも嫌う男。
彩声の殺意はフレンダに仕込まれた偽物の殺意だ。
その為、ここで彩声を殺しフレンダの思惑に乗るのを避けたのだ。尤も、あまりにしつこく狙ってくるようならば殺害も辞さないのだが。
彩声の支給品から抜いた食糧を漁りながら、竜馬はこれからの方針を考える。
このままフレンダを放置しておけば、彩声のようにフレンダに先導された連中に狙われ続ける画が容易く思い浮かぶ。
ならば早乙女研究所に向かうよりも、一刻も早くフレンダを仕留めてしまった方がいい。
このままフレンダを放置しておけば、彩声のようにフレンダに先導された連中に狙われ続ける画が容易く思い浮かぶ。
ならば早乙女研究所に向かうよりも、一刻も早くフレンダを仕留めてしまった方がいい。
竜馬は自分の負うべきリスクを他者に押し付け後ろでほくそ笑むタイプを嫌う。
彩声との一件はフレンダへの殺意を滾らせるには充分だった。
彩声との一件はフレンダへの殺意を滾らせるには充分だった。
「あのチビガキ、首を洗って待っていやがれ」
彩声のおにぎりを頬張りながら、竜馬は殺意の混じる不敵な笑みを浮かべながら警察署を後にした。
【B-5/警察署/黎明/一日目】
※気絶している天本彩声が放置されています
※気絶している天本彩声が放置されています
【天本彩声@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:顔にダメージ(大)、気絶
[服装]:普段の服装
[装備]:
[道具]:不明支給品1~3(食料品を抜かれている)
[思考]
基本:殺し合いからの脱出。
0:暴力的な男(特に竜馬)は絶許。μとももう和解なんて考えない。
1:琵琶坂にもStorkにもウィキッドにも要警戒する。梔子は彼女次第では協力しようと思う。
2:ウィキッドが鳴子先輩なのか確かめる。
[状態]:顔にダメージ(大)、気絶
[服装]:普段の服装
[装備]:
[道具]:不明支給品1~3(食料品を抜かれている)
[思考]
基本:殺し合いからの脱出。
0:暴力的な男(特に竜馬)は絶許。μとももう和解なんて考えない。
1:琵琶坂にもStorkにもウィキッドにも要警戒する。梔子は彼女次第では協力しようと思う。
2:ウィキッドが鳴子先輩なのか確かめる。
[備考]
※参戦時期は琵琶坂生存ルートでウィキッド編で閉じ込められている最中。部長は女のようです。
※参戦時期は琵琶坂生存ルートでウィキッド編で閉じ込められている最中。部長は女のようです。
【流竜馬@新ゲッターロボ】
[状態]:ダメージ(小~中)、疲労(小)、額から出血(小)、身体に軽い火傷。
[服装]:
[装備]:悲鳴嶼行冥の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、彩声の食料品
[思考]
基本方針:主催をブッ殺す。(皆殺しでの優勝は目指していない)
0:早乙女研究所に向かうより、あのガキ(フレンダ)をぶっ殺すのを優先する。敵に容赦はしねえ。
1:粘着野郎(晴明)を今度こそぶっ殺す。
2:戦う気のない奴に手を出すつもりはない。
3:弁慶と隼人は、まあ放っておいても死にゃしねえだろう。
[状態]:ダメージ(小~中)、疲労(小)、額から出血(小)、身体に軽い火傷。
[服装]:
[装備]:悲鳴嶼行冥の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、彩声の食料品
[思考]
基本方針:主催をブッ殺す。(皆殺しでの優勝は目指していない)
0:早乙女研究所に向かうより、あのガキ(フレンダ)をぶっ殺すのを優先する。敵に容赦はしねえ。
1:粘着野郎(晴明)を今度こそぶっ殺す。
2:戦う気のない奴に手を出すつもりはない。
3:弁慶と隼人は、まあ放っておいても死にゃしねえだろう。
※少なくとも晴明を倒した後からの参戦。
※フレンダの後をちゃんと追えてるかは次の書き手にお任せします。
※フレンダの後をちゃんと追えてるかは次の書き手にお任せします。
【B-5/黎明/一日目】
【フレンダ=セイヴェルン@とある魔術の禁書目録】
[状態]:全身にダメージ(中)、疲労(大)、右耳たぶ損傷、頬にかすり傷。衣服に凄まじい埃や汚れ。
[服装]:普段の服装(帽子なし)
[装備]:麻酔銃@新ゲッターロボ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、『アイテム』のアジトで回収できた人形爆弾×2他、諸々。
[思考]
基本方針:とにかく生き残る。
0:現状は首輪の解除を優先するが、優勝も視野には入れている
1:麦野たちと合流できればしたい...後々を考えると複雑な気分ではあるが。
2:あの化け物(竜馬)から逃げる。絶対に関わり合いになりたくない。
3:彩声にちょっぴりの罪悪感。まあでも仕方ない、切り替えていこう
[状態]:全身にダメージ(中)、疲労(大)、右耳たぶ損傷、頬にかすり傷。衣服に凄まじい埃や汚れ。
[服装]:普段の服装(帽子なし)
[装備]:麻酔銃@新ゲッターロボ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、『アイテム』のアジトで回収できた人形爆弾×2他、諸々。
[思考]
基本方針:とにかく生き残る。
0:現状は首輪の解除を優先するが、優勝も視野には入れている
1:麦野たちと合流できればしたい...後々を考えると複雑な気分ではあるが。
2:あの化け物(竜馬)から逃げる。絶対に関わり合いになりたくない。
3:彩声にちょっぴりの罪悪感。まあでも仕方ない、切り替えていこう
※どこに向かっているかは次の書き手にお任せします。
前話 | 次話 | |
復讐スルハ我ニ在リ | 投下順 | グリーングリーン |
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インフィニア | フレンダ=セイヴェルン | 闇を暴け(上) |