バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

Lovers

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kyogokurowa

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彼女のことを愛してるかって?
何だい、藪から棒に。
当然至極、僕は彼女のことを愛しているよ。
例え世界を敵に回したとしても、彼女に嫌われたとしても、僕は彼女を愛し続けると胸を張って言えるね。



ここはF-4に位置する神殿。
石造りの建造物の中は所々に篝火が灯されているが、全体的に暗く、空気は冷たい。
神殿と謳ってはいるものの、今にも魑魅魍魎の類が飛び出てもおかしくはない不気味さを漂わせていた。
そんな非日常的な空間を闊歩する男が一人。

男の名は岸谷新羅。
神殿探索というシチュエーションには似つかわしくもない白衣を身に纏っている。
身長はやや高く、童顔に眼鏡という一見どこにでもいそうな青年に見えなくもないがーー其の実、非日常に溢れ返る街【池袋】で闇医者稼業を営んでいる男である。


「はぁ…セルティ、君は一体どこにいるというんだ……」

疲労と嘆きが混ざった溜息とともに反芻される「セルティ」というのは彼の恋人――セルティ・ストゥルルソンのことである。

セルティ・ストゥルルソンは人間ではない。
俗に『デュラハン』と呼ばれる、スコットランドからアイルランドを居とする妖精の一種でありーー天命が近い者の住む邸宅に、その死期の訪れを告げて回る存在だ。
切り落とした己の首を脇に抱え、俗にコシュタ・バワーと呼ばれる首無し馬に轢かれた二輪の馬車に乗り、死期が迫る者の家へと訪れる。
うっかり戸口を開けようものならば、タライに満たされた血液を浴びせかけられるーーそんな不吉の使者の代表として、バンシーと共に欧州の神話の中で語り継がれてきた。
一部の説では、北欧神話に見られるヴァルキリーが地上に墜ちた姿と言われている。

だが、新羅にとって彼女の正体が何であろうと関係はない。
幼少の頃より、新羅は同居人である彼女のことをその容姿を含めて、深く愛していた。
彼のセルティへの愛情はそれこそ山よりも高く、海より深いものである。
彼女に褒めてもらえるかもしれない、という考えのもと周囲の人間にも温和に接してきたつもりだし、時には正義の味方のような自らを省みない無茶なこともした。
彼女と共にあるために、彼女自身を騙したことだってあった。

そう……岸谷新羅にとって世界の中心は常にセルティであり、その行動原理もまたセルティが中心に考えられている。

そんな彼がこの殺し合いにおいて目指すところは、至極単純『セルティと一緒に帰る』ことであった。


名簿にはセルティ以外にも見知った名前があった。
平和島静雄と折原臨也――。
両名とも、人間には平等に興味を持たない新羅にとっては数少ない友人である。
彼らを深く知る友人だからこそ、確信を持って言える。

あの二人が殺し合いに乗ることはない。

尤も静雄はあんな性格だから、今頃主催者への怒りをモノや人にぶつけて、大暴れしているかもしれないし。
臨也にいたっては、絶好の人間観察の機会じゃないか!と意気揚々と悪巧みをしている姿が容易に想像できる。
まぁ、どうせ二人とも好き放題やってるだろうし、簡単に死ぬような人間でないことは分かっているので、彼らの身を案じるなど、まさに屋下架屋――杞憂なことだ。
新羅としては早急にセルティと合流して、この迷惑極まりないゲームからおさらばしたいところである。


「あのう、すいません」

そう声を掛けられたのは、神殿内を彷徨うこと数十分――。
大広間に辿り着いたときのことであった。




はい、一応彼女と僕は交際していることになっています。
本当に、不本意ですが……。
えっ? あいつのことが大事じゃないのかって……?
大事にしてますよ。あいつは幸せになるべき人間だから。






「いやぁ、お互い災難だったよね、桜川君」
「ええ、岸谷さんの方も大切な恋人や友人と一緒に巻き込まれるなんて――心中お察しします」

新羅に声を掛けた青年は、桜川九郎と名乗った。
唐突に声を掛けられた新羅は慌てて身構えたがーー九郎が手を挙げ敵意のないことを示すと、警戒を解くまでそう時間はかからなかった。
とりあえず簡単な自己紹介を済ませ、互いの知人についての情報交換を済ませたのが、つい先ほどのことである。


「しかし、桜川君は落ち着いているね」
「……? 何がです?」
「普通は『僕と同棲している恋人は、都市伝説で噂される首なしライダーなんです』なんて告白されると、驚天動地――僕のことを頭のおかしい人間だと思うなり、質問攻めにするなり、何らか大きなリアクションがあって然るべきだ。 でも君は特にそこに突っ込むこともなく、こうして僕を受け入れてくれている」

新羅の疑問はもっともだ。
新羅はセルティ、静雄、臨也のことを差し支えない程度に話してみたが、セルティが俗に言われる首なしライダーであると告げられても、九郎は特に気にする素振りを見せなかった。むしろ生身の人間でありながら、標識を引っこ抜いたり、自動販売機を投げ飛ばしたりするという静雄の話を聞かされているときに、首を傾げていたくらいだ。


「ああ、そのことですか。 生憎と僕も昔から、怪異や物の怪といった類のものとは縁がありましてね。 先程話した僕の相方である岩永……彼女も似たようなものですので、岸谷さんの取り巻く環境については、特に驚きはしないですね」
「ええっ――!? もしかして岩永さんって子も首が無いのかいッ!?」
「いえ、一応人間ですよ。 でも似たようなものです」
「似たようなものって……。桜川君、君って結構彼女に対して厳しいね……」


一体どこの世界に、自分の彼女を妖怪扱いする人間がいるのだろうか。
新羅は、まだ見ぬ岩永琴子という、九郎の彼女に対して軽く同情する。

優男でどこか頼りなく見えるが、意外と手厳しい。
それでいて妙に生命力を感じさせる青年――それが会話を通じて得た、新羅が桜川九郎という人間に対して抱いた印象であった。


「それで僕は、変わらずセルティは探すつもりだけどーー桜川君の方も、岩永さんと弓原さんを探すってことで良いのかな?」
「ええ、良ければ一緒にーーっ!? 誰か来るッ!?」

二人の話題が今後の方針へと移り変わった時、二人の耳は大広間に近づく第三者の足音を察知した。






はい、僕は婚約者のことを愛していますよ。
彼女といると本当に飽きない。
白黒しか見えず灰色だった僕の世界は、彼女のおかげで鮮やかな色が付いて華やかなものになりました。
残念ながら僕の気持ちは届いていないようですが、それでも僕は彼女に惹かれ、これからも共にありたいと思っています。





「――と、ここまでが、僕達が共有した内容かな」
「成る程……概ね理解しました。ありがとうございます、新羅、それと九郎」


新羅と九郎の前に現れたのは、まるで御伽話から飛び出てきたようなーー白馬に跨る姿が絵になる、金髪碧眼の美男子であった。
話を聞いてみると、ジオルドは本当に王子様だということで二人は驚く。
ソルシエ王国スティアート王家の第三王子――それが、眼前で自分たちと会話しているジオルド・スティアートの出自であるとのことだが、ここで二人は疑問を浮かべた。

現代日本で生きる新羅と九郎ではあるが、二人ともジオルドが話す「ソルシエ王国」という国名を耳にしたことはなかったのだ。
加えて、ジオルドが二人に語り聞かせた彼の日常の話においても、「魔法」という非現実的なものをベースとした荒唐無稽な内容であり、所謂「非日常」に慣れ親しんでいる二人にとっても頭を捻らせるものであった。
ジオルドにとっても、自分たちの社会の根幹にある「魔法」という存在を知らないという二人の反応に困惑したようで眉根を寄せた。
疑問を残したまま、次に新羅と九郎が本日二度目となる自己紹介と知人の情報をジオルドに打ち明けて、今へと至る。


「しかし、こうして話をしてみますと、やはり僕と新羅達との間で、常識にズレがありすぎますね」
「ええ、触れている文明が全く違うって印象を受けました。 まるで僕達とジオルドさんは住んでいる世界が違っているような……」
「そうだね、僕達からしてみれば『魔法』の話といい、ジオルド君が語った内容はまるでゲームの世界の話だね。ジオルド君の見た目なんて、典型的な乙女ゲームの攻略対象キャラそのものだし」
「ちょっと失礼ですよ、岸谷さん」
「ええっ、そうかな?」
「……? オトメゲームとは?」
「ああ、いえ、こっちの話です。気にしないでください!」


乙女ゲームの攻略対象キャラーー新羅が放った言葉はまさに言い得て妙。
九郎も心の中では同意するが、幾らなんでも失礼に当たるのではと思い、慌ててフォローへと回る。
そんな二人のやり取りを見て、ジオルドはキョトンとするが、やがて柔和な笑みへと表情を変える。


「でも、僕にとって今の状況は却って好都合かなーー」
「……? どういうことだい、ジオルド君」

訝しむ新羅に、ジオルドは表情を崩さず、和やかに語る。
気が付くと、ジオルドの周りには点々とした光が漂っていた。

「貴方達は魔法を使えないーーつまりは、僕のこの場における優位性は揺るがない、と言うことですよッ!」

瞬間――彼は高速に腕を振り払う。
紅蓮に燃える炎がジオルドの手から発せられ、新羅を飲み込まんと迫る。
新羅当人は、何が起こったか理解が追いつかず、呆然と差し迫る炎をただ見つめていたがーー。

「岸谷さんッ!」
「――ッ!?」

彼の視界は、飛び出してきた九郎の背中で塞がれる。
九郎は新羅を庇い、前に立ち。
その身体は炎に包まれる。

「さ、桜川君――!」

ようやく自分の置かれている状況を理解した新羅が、手を伸ばそうとするがーーこれを俗にいう火達磨という状態だろうか。
既に炎は九郎の全身を包み込み、手が付けられない状況となっていた。
猛烈な熱波と煙――それと肉が焦げる臭いが辺り一面に充満する。
薄暗かった大広間は九郎という灯によって、明るく照らされる。


もしかしたら、喉は既に焼けて声を発することも出来ないのだろうか、炎に包まれた九郎は悲鳴を上げることもなく、それでも一歩また一歩と、ジオルドへと近づいていく。
九郎の表情は炎に埋もれて窺うことは出来ないが、ジオルドの表情は未だに余裕を保って、ジッと九郎を見つめている。
やがて、九郎がジオルドへと肉薄し、掴みかからんと腕を伸ばしたその刹那――。

ジオルドは、再度高速で腕を振り上げた。
その手に握られていたのは黒光りする細剣。

ボトリとーー
新羅の眼前に何かが落ちてきた。
一瞬の間をおいて、新羅はそれが黒く焦げた九郎の右腕であることを認識する。

と同時に、炎に覆われていた九郎は、ジオルドの眼前でバタリと倒れこみ、完全に事切れたのか動かなくなる。
九郎を包んでいた炎はいつの間にか立ち消えており、その場には黒焦げの九郎だったものが残っていた。


「一応聞いても良いかい? どうして、こんなことを……?」
「――カタリナと一緒に帰るためですよ。僕はそのために優勝を目指します」
「ジオルド君、自分の言っていることを理解しているのか? 君が優勝するためには、君の婚約者も一度死ぬ必要があるということになるんだよ」
「分かっていますよ。だから優勝したら、あのテミスという女にカタリナを生き返らせてもらいます……。本音を言うと僕だってこんな事はしたくはない……だけど主催者に抗うには、相手はあまりにも強大で得体が知れない。だから、僕はーー」
「彼女と元いた場所に帰れる可能性がより高い方を選択した、ってところかな。 成る程ね、気持ちは分からなくもないね」
「…………。」

悠然と語り聞かせる新羅を他所に、ジオルドの周りには先ほどと同じように眩い光が取り巻く。
これは言うなれば、殺意の合図。
桜川九郎という青年の命を刈り取った炎を顕現させる前兆といえる。

「それでも今はこのゲームに乗るつもりはないね。 僕は静雄みたいな馬鹿力はないし、ジオルド君のように『魔法』なんて使えないから、優勝なんてとてもとてもーー。それに、仮に僕が殺人を犯してしまったら、セルティはとても怒るし悲しむからね。 だから僕はッーー!」

ジオルドの手に業火が宿り、新羅へ向けて解き放たれる。
その炎はまるで生き物のように、猛スピードで新羅へと襲い掛かるが。

「何としても、生き延びる!」

目前へと迫る業火を前に、新羅は肩から降ろしたデイパックを拡げる。
取り出されたのは、中央に水晶のような装飾を施した、紫陽花色の盾であった。
新羅の身体を包むかのように掲げられた盾は、炎の進行を阻害する。

「―ーッ!」

ほんの一瞬、虚を突かれたような表情を浮かべるジオルド。
しかし、それはほんの一瞬。
その手に更なる殺意と魔力を込める。

「この――ッ!」

炎の勢いは更に増す。
盾は変わらず、新羅を炎が守り役目を果たしてはいるもののーー
炎の勢いは、ただの一般人である新羅には殺しきれず。

「う、うわぁああっ!」

新羅の身体は大きく仰け反る。
ジオルドはその隙を見逃さない。

「終わりですッ!」

ジオルドは、一気に距離を詰めて、新羅に肉薄。
冷や汗を浮かべ焦る新羅。
その胴へと無慈悲に細剣を突き立てんとするが。

「――ッ!?」

突如背後より何かに力強く肩を掴まれ、引力とともにジオルドは身体を引き戻される。
振り返るとそこにはーー。

「…………。」
「何故貴方が……?」
「さ、桜川君……?」

先程焼け死んだはずの桜川九郎が立っていた。
目を疑う光景にジオルドも、新羅も呆然とする。
黒焦げになっていた肌は、何事もなかったかのように元通りとなっており、その瞳には確固とした生命力を宿している。
そして、つい先ほど切り離されたはずの腕は、呆気にとられるジオルドの肩を強く掴んでいた。

九郎は無言のまま、もう片方の手で拳を握りしめ、ジオルドの顔面へと叩きこんだ。

「――がぁッ!!!」

渾身の左ストレートをまともに喰らったジオルドは苦痛に顔を歪め、地面へと倒れ伏せる。
端正な顔立ちに不相応な鼻血が、ポタリポタリと、石の床を濡らす。
起き上がり、殴打された部分を手で覆うジオルドではあるが、生憎とその痛みに悶える暇はない。
九郎は無表情のままジオルドへと接近し、追撃の拳を振るった。

「くッーー!」

――が、これは空振り。
態勢を立て直したジオルドが、ひらりと身を躱す。
お返しとばかりに、がら空きとなった九郎の胸部――つまりは心の臓を目掛けて、レイピアを突き刺した。

「――――。」

ジオルドを睨みつけたまま、ゴボリと血を吹き出す九郎。
殺ったーーとジオルドは確かな手応えを感じる。
やがて九郎の瞳から生気は色褪せていき、だらりと前のめりに脱力した。

だが次の瞬間――。
その瞳はパッと見開き、再び闘志を宿す。

「なッーー!?」
「――――。」

驚愕するジオルド。
九郎は心臓が串刺しにされている状態のまま、のそりのそりとジオルドへと近づき、その頭蓋目掛けて、拳を振り上げんとする。

「――ッ!」

攻撃を察知したジオルドはいち早く剣を引き抜き、バックステップで後退。
距離を取ることで、九郎の拳の攻撃範囲外へと逃れる。

そこでジオルドの目に飛び込んできたのは、九郎の身体からドクドクと零れ落ちていたはずの血液が、時間を巻き戻しているかのように宿主の元へと戻っていく光景であった。
床に撒き散らされていた血溜まりはたちまち消えてなくなり、九郎の胸に空いた穴は完全に塞がっていく。

人間ではない……。と声を漏らしたジオルドは、先に繰り出したものとは比較にならないほどの激しい炎を腕に纏い、自身に駆け寄る九郎に向けて放出した。

「消えなさいッーー!」
「っーー!?」


九郎の身体は忽ち炎に飲み込まれた。
その状景は、言うなれば灼熱地獄――。
至る所を徹底的に焼かれているため、九郎は身体を自由に動かすこともままならず。
ジオルドへの進行は妨げられ、やがて膝をつく。
尚も、その身体は火達磨の状態である。

さらにジオルドは、事態を傍観する新羅に対してもその炎を放つ。
突然矛先を向けられた新羅は迫りくる煉獄の炎に、あわわわわ、と慌てて盾で身を守る。

火達磨となり動けずにいる九郎と、自分の身を守るために精一杯な新羅を尻目に、ジオルドは元来た大広間の入り口へと駆けていきーーやがて二人の前から姿を消した。

ジオルドによって引き起こされた業火の勢いは徐々に弱まっていき、やがて鎮火する。
静寂が戻った大広間に取り残されたのは、盾を持って腰を抜かしている新羅と、黒焦げとなった九郎の死体だけであった。






「少し相手を見誤ってしまいましたか」

神殿から離れたジオルドは、一息ついて先程の二人との邂逅を振り返った。
情報交換の内容から、目の前の二人を、魔力を持たないただの平民と侮ってしまったのが失敗――。
まさか、不死身の化け物が紛れ込んでいたなどと、誰が予測できようか。

最後に、全力の魔力を込めてあの怪物を火達磨にしてみたはいいものの、それまでの経緯から察するに、その後すぐに蘇生したのではないだろうか。
自身に宿る火の魔力と研ぎ澄まされた剣技で、あれを何度も殺すことは容易い。
だが、殺せど殺せど、すぐに蘇生してしまっては、消耗戦になるだけ。
今時点で、あれを完全に排除する方法は思い浮かばない。

だからこそ、あの場では撤退を選択する他なかった。

「『異なる』世界の人間か……。」

ジオルドは、情報交換の際に九郎達が語った内容を思い返す。
彼らが言い表していたように、この殺し合いには異なる世界、異なる文明、異なる摂理で生きていた人間が集められているということであれば、単純に魔力を持つ、持たないだけで相手の力量を測るのは危険だ。
今後は、先程の九郎のような異能の存在にも気を配り、浅はかな行動は慎むようにと心に誓うのであった。


「僕は勝ちますよ、何としても……。」


先程の化け物も含めて、主催者が異なる世界からこれだけの人数の人間を攫ってきたということであれば、やはり主催者の力は絶対的だ。
万の一にも、そこに抗える術はないのだろう。
だからこそ、ジオルドは主催者がそれを望むように、殺し合いに乗る。
優勝した際に、主催者が約束を反故にする可能性もなくはない。
だが、最初の会場で観察する限り、あのテミスという女は妙にプライドの高い気配がある。ああいう自分の力を過信し、ふんぞり返っている連中ほど、自身が課した約束の履行には拘るきらいがある。
だからこそジオルドは主催者打倒よりも、優勝を目指した方が彼女と一緒に帰ることが出来る可能性は高いと考えている。


「カタリナ……心優しい君は僕がやろうとすることを知ったら、きっと反対するだろうし、糾弾するだろうね。それでも僕は……。」


この殺し合いの場に連れて来られる直前の魔法学園にてーー。
昏倒している彼女をただ見守ることしかできなかった自分に苛立ちを覚えた。
彼女に危機が迫っていたというのに、守護ることが出来なかった自分に不甲斐なさを感じた。
彼女が昏睡したまま、この場に呼ばれているのか、それとも主催者によって覚醒させられているかは分からない。


だが今は心を鬼にして、この殺し合いに勝ち残るだけ考えよう。

全ては心より愛している彼女の為に……。



【F-4/草原/深夜/一日目】
【ジオルド・スティアート@乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…】
[状態]:健康、顔面打撲(中)
[服装]:いつもの服装
[装備]: 峯沢維弦のレイピア@Caligula Overdose
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~2
[思考]
基本:優勝して、カタリナと一緒に帰る
1:不本意ながら殺し合いに乗る
2:参加者の殺害は慎重に。まずは情報収集を優先する。
3:新羅と九郎はなるべく早めに始末しておきたいが、九郎をどのように排除すべきか考えておく
4:生徒会の皆とは出来れば会いたくない
[備考]
※ カタリナがシリウスの闇魔法によって昏倒していた時期からの参戦となります。
※ 新羅、九郎と知り合いについての情報交換を行いました。但し九郎は、自身や琴子の能力については明かしておりません。


【支給品紹介】
【峯沢維弦のレイピア@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
ジオルドに支給。
帰宅部の一人、峯沢維弦がカタルシスエフェクトで発現する細剣。
このロワではあくまで形だけ模したレプリカとして支給されています。
攻撃スキルが使えるかは不明です。







「なるほど、くだんと人魚の肉をねぇ……。」
「ええ、なので僕は基本的に死ぬことはありません」


ジオルドが去った後、見るも無惨な焼死体と成り果てていた九郎の身体はすぐに再生を行い、すっかり元通りとなった。
その後、再生の一部始終を目撃していた新羅が九郎に詰め寄り質問攻めを行ったため、こうして蘇生の秘密を打ち明けたのである。

曰く、九郎は幼いころに、二体の異なる妖怪の肉を食べたということ
曰く、人魚の肉を食べたことで不死の能力を得たということ
曰く、くだんの肉を食べたことで未来予知の能力を得たということ

したがって、先程から発現している再生能力は人魚の肉を食べたことに恩恵によるものだということを新羅は理解する。

「『怪異や物の怪といった類のものとは縁がある』とは言っていたけど、まさか桜川君自身がその類だったとはねぇ、実に興味深い……。 どうだい? 一度君の身体を検査させてもらえないだろうか」
「いえ、遠慮しておきます」

鼻息を荒くし、全身を舐めるように観察してくる新羅に九郎は何とも言えない悪寒を感じた。

「しかし、主催者はどういうつもりなんだろうね。 殺し合いをしろという場に、桜川君のような不死者を交えるなんてーー」
「同感です、そもそも殺し合いが成り立ちませんよね。 でも、ここからは僕の憶測にすぎませんがーーもしかすると、この場には不死者ですら殺せる技術や異能が存在するかもしれません」
「不死者ですら殺せる技術や異能だって……?」

新羅は、突如提示された矛盾する仮説に目を丸くする。

「あくまでも推測ですよ。この場にはさっきのジオルドのように、僕らにとっては未知の能力を持った人間も参加しているようですし。 この殺し合いのゲームバランスを保持するため、不死者ですら殺せるような強力な異能を持った人間を参加させていても不思議ではないです」
「なるほど……。そうなると増々セルティが心配になってきたよ」

勿論、新羅や紗季といった一般人も紛れているのも事実ではあるが、魔法を自在に操るジオルドや、新羅から伝え聞く首なしライダーのセルティや九郎など、異能を持つ者や人外の参加者は確かに存在する。
未知の能力に、未知の怪物――。
今回は再生能力によるゴリ押しによって、相手を退散させる結果となったが、相手の異能によっては通じないこともありえるかもしれない。
用心するに越したことはないだろう。

更に、懸念すべきはこの首輪……。

(主催者が僕に装着したこいつも、不死者である僕を殺せる代物かもしれない……。)

聞けば、身体が黒炭となり原形を保っていなかったときも、首であった部分にはピタリと付きっぱなしになっていたという。そして再生を行っているときにおいても首輪は離れることはなくーー再生後もこうして元通りに冷たい感触を首筋に与えている状況だ。

(僕の再生にもしっかりと追随している……。不死者である僕の再生能力を理解した上で、対応した首輪を装着しているということか)

そう考えると、下手に外そうとするのは賢明ではないかもしれない。
主催者が九郎のバックボーンを認識したうえで、相応の仕掛けと技術が施されている可能性があるからだ。


(危険人物への対処に、首輪の解除。それと会場からの脱出か……。やるべきことが多すぎる。 まぁ何にせよ、まずは岩永を探さないとな)

会場のどこにいるであろう小柄な彼女の姿を脳裏に浮かべ、小さな溜息をついてーー九郎は、新羅と共に神殿への出口へと歩を進めていくのであった。



【F-4/神殿/深夜/一日目】
【岸谷新羅@デュラララ!!】
[状態]:健康
[服装]:白衣
[装備]:まほうのたて@ドラゴンクエストビルダーズ2
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~2
[思考]
基本:セルティと一緒に帰る
1:とにかくセルティを探す
2:桜川君の人体に興味。ちょっと検査してみたい
3:ジオルドを警戒。セルティに害を与えるかもしれないので、野放しにはしたくない
[備考]
※ 九郎、ジオルドと知り合いの情報を交換しました。


【桜川九郎@虚構推理】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装(黒焦げ)
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~3
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
1: 暫くは岸谷さんに同行
2: 岩永と紗季さんを探す
3: ジオルドを始めとする人外、異能の参加者を警戒
[備考]
※ 鋼人七瀬編解決後からの参戦となります
※ 新羅、ジオルドと知り合いの情報を交換しました。

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譲れない大切なもの握りしめて 投下順 奇跡はいつだって不幸から -Liz et l'oiseau bleu-

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GAME START 桜川九郎 物情騒然
GAME STARTT 岸谷新羅 物情騒然
GAME STARTT ジオルド・スティアート 静かな沼地の森の陰から
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