バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

奇跡はいつだって不幸から -Liz et l'oiseau bleu-

最終更新:

kyogokurowa

- view
メンバー限定 登録/ログイン
それは、暴風であり灼熱であった

大地に吹き荒れるそれは、まさに人の形をした災害

災害の名はヴライ、ヤマト八柱将が一人、豪腕のヴライ





その災害に抗うは一人の騎士と、一匹の地上の兎

騎士の名はオスカー・ドラゴニア

兎の名は鈴仙・優曇華院・イナバ



◯ ◯ ◯


「はぁぁぁっ!」
「―――ッ!」

豪腕の一撃を、剣で受け止めるのではなく、剣を滑らせて防ぐ

(この男の一撃……何もかもが重い! どこまで鍛錬をすればここまでの力を!)
「どうした、躱してばかりでは我に傷一つもつけることなど出来ぬぞ……」
「……くっ!」

その言葉に顔を歪ませるしか無かった。あの男の一撃は、とにかく重すぎる
証拠として、その周囲は未だ燃え残る炎、そして豪腕の男の攻撃によって出来たクレーターがオスカーの周囲を埋め尽くすほどに広がっている

現在、オスカーが使用している武器であり支給品である『はかぶさの剣』。彼の使う剣技からすれば使いやすく、そして速度も出る
が、疾さだけで何とかなるほどヴライという男は甘くはない。『剛よく柔を制す』――オスカー・ドラゴニアの視点から見たヴライはまさにそれだ
まともに喰らおうものなら一撃で沈められてしまうのは必須、かといって剣で直接拳を防ごうものならおそらく、剣ごと自らの身体も粉砕されるであろう

「散れいッ!」
「ライジングブラスト!」

ヴライが打ち出した炎の拳を前に、オスカーは剣を振り上げ、霊力で発生させた水流の竜巻を放つ。竜巻は容易く炎の前に消し飛ばされたが

「やぁっ!」

その一瞬の間にヴライの背後に周り、剣を構え周りに3つの光球を出現させる。その光球は少しの間を置き、ヴライに向けてそれぞれが異なる軌道で発射。直撃するもヴライの方は傷一つつかない。だが直撃の際に出来た煙幕を利用し、斬りかかろうとするが

「ドラゴンズスウォー………!?」
「――温い」

オスカーの奮った剣の切っ先を、文字通りヴライが掴んでいたのだから。そして、切っ先を掴んだまま、剣ごとオスカーの身体を持ち上げ、放り投げる
そのまま投げ飛ばされたオスカーは何とか着地するが、眼前には拳に炎を纏わせ構えたヴライの姿

「砕け――」
「オスカーさん下がって!――波符『赤眼催眠(マインドシェイカー)』!」

ヴライがオスカーに向けて技を放とうとした途端、鈴仙の声が聞こえオスカーは後退。その直後にヴライの周囲を赤白い銃弾型の光弾が囲む
制限により鈴仙がいつも使っているそれと比べれば少ないが、それでも十分な量の弾幕

「術の類か……だがそれでは止まっているようなものだぞ」
「残念ですけど私のそれはそう簡単には凌げませんよ!」

鈴仙のその言葉と同時に、ヴライの周囲に展開されていた弾幕が分裂し、再拡散

「それが貴様の力、というわけか」
「ええ、これが私の『波長を操る程度の能力』――ただの小兎だと舐めてかかった代償は高く付きますよ!」

まさに『ドヤ顔』と言わんばかりに言い切る鈴仙。しかしヴライは一切動じず

「――小賢しい」

その一言とともに、拳に炎を纏わせ、よりにもよって迫りくる弾幕の方へと突撃
拳を振るい、文字通り弾幕の波を粉砕しながら鈴仙へと迫る

「ちょっ、嘘でしょ!? 無茶苦茶な――」
「やああああああああっっっ!」

眼前まで近づいたヴライの拳を既の所でしゃがみ回避。もちろんそれだけでは終わらず至近距離での銃弾の発射。この至近距離ならいくらなんでも……などと思っていた鈴仙だが等のヴライは関係なく拳を振りかざす

(本当に何者なんですかこの人……まさか萃香さんみたいに鬼の一人とかじゃないですよね!?)

内心そう思いながらも、皮一枚すれすれで何とか回避成功。だが追撃としてヴライが拳から撃ち放った炎が鈴仙に迫る

「――鈴仙!」

既の所でオスカーが鈴仙の手を引き回避。その間際に鈴仙が銃弾を、オスカーが光弾を発射。それはヴライに向けたものではなく地面に着弾し煙幕が場を包み込む。その間に二人は距離を開ける

「……奴め、どこまで無茶苦茶な……」
「それについてはどうしようもなく同感ですよオスカーさん……」
「物理的な実力差は歴然、かといって小手先の細工は無理にでも突破される……」

オスカーの脳裏には、最終手段の行使を考えていた。だが、最終手段――『神衣』に関しては聖隷がいない以上、発動は事実上不可能

「せめて、一撃でも傷を与えれればなんとかなるかもしれんが……。もしくは確実に急所を」
「――私にいい考えがあります」
「……鈴仙?」



「……今度は二人で来るか……? だが、何人で来ようと構わん。纏めて潰せばいいこと」

煙幕包み込む中、ヴライは焦らずに気を待つ。おそらく二人で来るであろうことは見越している







「こっちだデカブツ!」

ヴライが声に振り向けば、そこには手を銃の形して自分に向ける鈴仙の姿。

「喰らいなさい!」

その声と共に、手のひらほどの大きさの銃弾が数発放たれる

「――下らん」

そう吐き捨て、拳を振りかざし、放たれた銃弾を破壊。破壊された銃弾は爆発しヴライの周りを煙で覆う
腕を振るい、煙を吹き飛ばす。だが、煙が晴れた先に広がっていた光景は


「……なに?」

ヴライの周囲に広がっていたのは、"複数"のオスカー・ドラゴニアと、鈴仙・優曇華院・イナバ

「「「はぁ!」」」
「「「てぁっ!」」」

オスカー『達』は突きを、鈴仙『達』はその手より銃弾を撃ち放つ。
だがヴライは動じない。おそらくは、どれも『偽物』。あれらから感じる気配は偽り。おそらくはあの女の術によるものだというのは理解している

「笑止千万、その様な小細工がこの我に通用すると思うたか!」

怒号と共に、ヴライは地面に拳を叩きつけ、それを中心として炎の柱を発生させる。周囲に居た大量のオスカーや鈴仙は炎に呑まれ霧のように消失。ヴライの思っていたとおり全て分身だ、ならば本体はどこか?
黒煙が立ち込める静寂、ヴライは目を瞑り、息を抜く。相手は速度では自分より上の剣士、そして幻術等の妙な術を使う女、ならばこれすらの牽制の可能性。

目を瞑っていても感じる、4体の近づく何か。だが、それを気にせず、その手に炎を集わせる。槍、細長い炎の塊が槍となってヴライの手に構築される





「――そこかぁッッッ!!」


目を見開き、炎の槍は一閃となり投げ放たれる。『幻影』を目もくれずそれは『貫通』し―――


「!? どうしてバレ――がっは――――ッッ!?」


スペルカードの宣言をしようとしていた、鈴仙の右肩を貫通

「あ゛ッ゛―――――」

肉の焼ける感触、生気をまるごと持っていかれそうな感覚に悶え倒れてしまうも、なんとか意識だけは保つ鈴仙
それに対し、ヴライは槍を投げた動きを減速させることなく、そのまま一周するかのごとく振り向き

「――が、ぁ――!」

自らを仕留めようと剣を振るい向かっていたオスカーを、その振りかざされた剣を砕き、拳がめり込み、吹き飛ばす。吹き飛ばされたオスカーの体は2・3回ほど地面をバウンドした後に沈黙。そのまま動かなくなる

「オス、カー、ざん……!」

滲み出すように声を上げるも、剣士は微動だにしない。死んだのか、気絶したのかどうか彼女に知るすべもない

「――存外悪くはなかったぞ、我相手でなければな」
「………ぁ゛」

動けない、動かない。遠目から見える、ヴライの拳に豪炎が纏う。おそらくは確実に自分を仕留めるための技だと鈴仙は悟る
結局こうなる末路だったのか、月の異変を解決出来たから多少調子に乗っていた報いなのだろうか、それとも、やはり過去の罪からは逃れられなかっただけなのだろうか、そして

「だが、ここまでだ。―――潔く逝け」

ヴライのその言葉とともに、豪炎の波動が放たれて、鈴仙へと迫る。

(……あ)

人間は死に際には走馬灯というものが頭に過るらしい事を鈴仙は知っていたが、本当にそれを経験することになるなんて、と自嘲気味に思っていた
どれだけ死にたくないと思っていても、死が唐突に訪れる事は知っている。戦争から逃げた自分が言えたことでもないが、それはその報いだったのかもしれない

(姫様……師匠……てゐ……)

心残りもあった、でも、動いてくれないこの体で
もしあの世に逝ったら、閻魔経由で師匠に色々と怒られそうかな、と

そう、鈴仙が目を閉じた、その時であった

















「――な、に?」
「……え」

その光景に、ヴライも、鈴仙も驚く他なかった
ヴライの拳、振るわれたそれによって放たれた豪炎の波動を、その剣の一振りで凍り付かせていたのだから

(……我の一撃を、受け止めた? この娘が?)

ヴライが思考する間、例の氷の剣の少女――鎧塚みぞれは、鈴仙の隣に駆け寄り、手のひらから光のようなものを発生させ、傷口にかざす
まだ痛みこそ残るも、出血も、肉の焼ける感触も止まり、何とか意識が繋ぎ止められた。

「……間に合った。……ええと、大丈夫?」
「貴方は……確か、あの時の」

あの時の、ヴライに襲われていた女の子。そういえば名前を知らなかった

「……ごめん、あの時は自己紹介する暇もなかったから」
「いやそういうことは後で……ってそんな事言ってる場合じゃないです! 何で戻ってきたんですか?!」
「あなた達を助けるため……で納得してもらえるかな?」
「……なるほどそういう、じゃないですよ! あれは災害です! ただの人間には荷が重すぎますし、私達もこの有様。今の力が何なのかわからないですけど、そんな自殺行為なことをする暇があったらさっさとここから逃げて――」
「――嫌。嫌なの、私のせいで、誰かが死ぬのが。私は、私のせいでいちばん大切な人が死んでしまったから。あんな思いは、もう嫌だから」
「……」

眼差す瞳は冷たく透き通る、そして固い決意を現しているかの如く鈴仙を見つめる

「……それに、まだあなた達にお礼を言ってない」
「………そんなことのために、ここに戻ってきたっていうんですか。良いですよ、この傷じゃあ満足には戦いませんけど、ちょっとした支援ぐらいは出来ます。それにそんな大口叩いたんですから死なないでください」
「……わかった」

みぞれの思いにやれやれと言った形で了承した鈴仙。みぞれがもう一度振り向いた時には鈴仙の姿は見えなかったが、あの怪我だからどこかに隠れたんだろうと

「――言いたいことはそれだけか、小娘」

ヴライは、唯一立っている少女を見据える。多少の戸惑いこそは細かな仕草で残っているだろうというのは分かる。だが、最初にあった時とはまるで違う――

(その力、どこで手に入れた?)

唯一疑問があるとすればそれだ、術の類とも、『仮面(アクルカ)』の力とも違う何か。
然し――

「この我に向けてその様な啖呵を切ったのだ、覚悟は出来てるのだろうな?」
「……覚悟なんて、私には、そんな大きすぎるなんて」
「なら、せめて全力で抗ってから死ね」

『戦える』ならばそれなりに耐えてくれなければつまらん。覚悟がないのならせめて抗い、『戦士』として散れ。その思考の元、剛拳は振るわれる

「――だけど、『だからって死にたくなんてない』」

結合した氷は片手剣を大剣へと変化させ、ヴライの剛拳を受け止める。ぶつかり合う衝撃が空間に響き、突風となって周りを揺らす
剛拳を受け止めた大剣はヒビが入り砕け散る。気を逃さずヴライがもう片方の拳を振るうが、みぞれはそれを避けて間合いから後退。即座に氷の片手剣を再構成

「――ほう、我の一撃を防ぐか」
「……ッ!」

僅かにみぞれの表情が歪む。骨にひびが入る感覚、痛み。けれど、『そんなことを気にしては居られない』
だが、先の一撃が防がれた事にヴライは少しばかり笑みを浮かべ

「面白いッ!!!」

拳を地面に叩きつける。そこから魚の上ビレのような形をした炎の斬空波が発生し、みぞれに襲いかかる

「アイス・ウォール!」

即座にみぞれが左手を正面にかざす。かざした左手から青白い光が放たれると、地面から氷の壁が出現
炎の斬空波を防ぐも、それを見越してヴライは拳に炎を纏いながら突撃。何かしらの手段で防ぐと既に読んでいたヴライは、氷の壁が出たと同時に行動を開始していた
突進の威力を付け加えたヴライの拳は一撃で氷の壁を破壊、その勢いのままみぞれを殺そうと拳を振りかざそうとするも、壁の向こうに鎧塚みぞれの姿はなく――ヴライの上空に

「やあぁ!」
「小癪な!」

両手で構えた氷の剣を空中から振り下ろす。だがヴライは動揺せず、再び地面に拳を叩きつける。今度は斬空波ではなく自身を中心に展開する半球状の炎の波動
だが剣が波動に触れた瞬間炎が凍結、凍結した炎を足場に跳躍し、その直後に振るわれたヴライの拳を間一髪で回避
だが、運悪く着地時に少しばかりバランスを崩してしまう

「しまっ……」

この機を逃さずヴライが即座に突進、そのままみぞれを殴り殺そうとするが

「……ちぃっ!」

ヴライに向けて飛ぶ数発の弾丸。それに気づき拳でそれを破壊する

「――やらせま、せんよ」

射手は先程の鈴仙・優曇華院・イナバ。やはり仕留めそこねたのは響いたかと眉を顰める
鈴仙は周りの波長を歪め、ヴライの目から自分が見えづらくするようにした。結果としてみぞれにも自分の姿が見えづらく……というか見れなくなったのではあるが

だが、ヴライはみぞれが視界から外れてすぐに周囲を警戒する。最悪援護射撃は無視、あの程度ならそこまでの傷は負わない
故に今一番警戒すべきは氷の剣の女であり――


緋の蒼(Realize)―――」

その肝心の氷の剣の女(鎧塚みぞれ)、先程よりも数段大きい『朱く煌めく氷の大剣』を両手に構成

「―――瑠璃陽夜(Lapix Soliel de minuit)!」
「……そこかぁ!!!!」

まるで真夜中の太陽と見違える輝きを秘めた氷の大剣による一撃に反応し、先程よりも力と豪炎を込めた拳で対応。大剣と炎拳がぶつかりあい、大剣にヒビが入り、砕けると同時に破裂。周りは水蒸気による霧に包まれる
破裂時の衝撃で両者とも吹き飛ばされるも、先に体勢を立て直したのはヴライの方。かたや鎧塚みぞれは先の技の反動と体力の消費により動きが鈍い
『倒す技』と『殺す技』、より強いのは単純明快『殺す技』だ。あの『瑠璃陽夜』なる技に『殺意』は込められてはいなかった。自分のように殺意を込めて放つのならまだ可能性はあったのだがな、とヴライは眉を顰める
が、存外あっけない結末だったとはいえ、それなりに手こずらされたのは事実


「終わりだ」


一瞬である、鎧塚みぞれが反応した時にはもう遅い。経験の差、それがあっけなく事実として突き付けられるだけ
その拳は、鎧塚みぞれの体を、ザクロのごとく弾けさせ、その生を終わらせた
























「――な、に!?」

弾けたはずの鎧塚みぞれの姿が、陽炎の如く揺らめき、煙のように消えた。
馬鹿な、あの状況で何か出来るような事は出来なかったはずだ。まるで幻覚の呪術を――幻覚?

「……!」

鈴仙・優曇華院・イナバ――彼女の『波長を操る程度の能力』。水蒸気が立ち込めていたあの状況で、彼女は『波長』を操り、ヴライから鎧塚みぞれの存在を惑わした。ならば今、鎧塚みぞれはどこにいる?
ヴライが気づいた時には時既に遅し

緋の蒼(Realize)乖離光(SnowFlake)!」

みぞれのその言葉と共に、ヴライの周囲には氷の牢獄が展開される。だが、特筆すべきは、その氷は『燃えている』のだ。ヴライはその拳で物理的に突破しようと牢獄の壁を殴るも、触れた途端に、壁を殴ろうとした腕は凍結。溶かそうとするも、炎は即座に蒼く結晶化し、沈黙

(これ、は……!?)

気づけば両手のひらを檻の中にいるヴライに向ける鎧塚みぞれの姿。今の彼女から青白く、淡い光が発せられていて、それはヴライや、彼女の近くにいる鈴仙もまたはっきりと確認出来るほどだ
そして、みぞれの両手のひらに光が集い、それは氷となり、結晶となり、一羽の氷でできた巨大な青い鳥を構築する
そしてヴライは考える、あの技は自分を仕留めるための大技なのだろうと。そしてこの氷の檻は自らを閉じ込めるもの

(まさかこの様な小娘相手に使わざる得ないとはな――不本意であるが(うぬ)の力、認めてやろう)

ただの小娘と侮っていたのもまた事実。もとより帝の命でか、オシュトルとの戦い以外で使おうことになろうとは――屈辱と、強者に対する経緯を以って、ヴライは顔の仮面にまだ動ける腕をかざし、その言葉を紡ぐ
―――そして、鎧塚みぞれもまた、その技の名を叫ぶ

緋の蒼(Realize)――リズと青い鳥(Liz et l'oiseau bleu)ッッッ!」

仮面(アクルカ)よ、我が魂魄を喰らいて、その力を差し出せ!!」

かたや、標的に向かって羽ばたく、全てを凍て付かそうとする蒼鳥
かたや、全てを焼き尽くす豪炎の波濤

ヴライを閉じ込めていた檻は既に焼け落ちている。蒼と炎と激突し、光を放つ

「はあああああああああああッッッ!!!」
「ぬおおおおおおおおおおおッッッ!!?」

そして、その場は光に包まれ、轟音と突風と共に弾け飛んだ




「……すご、い」

光が収まり、鈴仙・優曇華院・イナバは息を呑んで驚愕していた
周囲には氷結晶化したであろう炎の不規則な形のオブジェクト。中心には爆心地に如く広がるクレーター
そしてその近くで立つ―――鎧塚みぞれの姿

「……倒したん、ですか……?」

ヴライの姿は無く、さっきので消し飛んだのか、はたまた逃げたのか、彼女たちにはわかるはずもない
一応立ち上がれるぐらいには回復した鈴仙は改めてみぞれの方に駆け寄る

「……ありがとうございます、その……」
「鎧塚みぞれ。自己紹介、まだだった、から……」
「みぞれさん、ですね。私は鈴仙・優曇華院・イナバ。信じてもらえるかわからないですけどこれでも月の兎なんです」
「鈴仙……月の兎……よろしく、ね……」

一通りの自己紹介をし終えようとした途端、みぞれの体が突然倒れ込む
倒れ込もうとしたみぞれの体を鈴仙が何とかキャッチ

「えっ、ちょっと? ……疲れたの、かな」

無理もない話だ。戦う力も、戦闘経験もなかったはずのこの子が、自分たちでも叶うかわからなかった化け物相手に戦えて、そのうえ追い払えたのだ。未知の力への警戒や、単純な相性問題に自分のサポートもあっただろうけど――もし次に戦うことがあったとして同じ結末を迎えられるかすら怪しいのだ
色んな意味で鎧塚みぞれという少女は無理をしすぎたのだ。幸いにも命に別条はなさそうではあるが、これは数時間ぐらいは目覚めないパターンだ

「……鈴仙……ぐっ」
「オスカーさん! よかった……その」

そうこう考えているといつの間にか目覚めていたであろうオスカーがやって来た。

「大丈夫だ、骨が何本か折れた感覚はするが、この程度の傷で泣き言は言ってられない。元より生傷には慣れている。それより鈴仙の方は大丈夫か?」
「オスカーさんらしいですね……私は大丈夫です」
「……すまない、こうもあっさり気を失ってしまった、情けない限りだ」
「いいえ、オスカーさんも頑張ってくれたんですから、そんな事言わないでくださいよ。それに……」

そう励ます鈴仙の目線には未だ眠っている少女、鎧塚みぞれの姿

「……彼女は確かあの時の」
「私達を助けるために助けてくれて、一緒にあの男を結果的に追い払いました。……今は疲れて眠っているだけです。数時間したら起きると思います」
「………そうか。」

「積もる話もたくさんあると思いますけど、まずは映画館で彼女が目覚めるまで待ちましょうか」
「……そうだな」

みぞれの寝顔を見つめ、二人は少しだけ微笑むのであった


【B-2/深夜/一日目】
※映画館内には傘木希美の死体及び彼女のデイバッグが残されています

【鎧塚みぞれ@響け!ユーフォニアム】
[状態]:一部分が銀髪化、疲労・魔力消費(大)、気絶中
[服装]:制服姿
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、カーラーン金貨@テイルズオブベルセリア、ジークフリード@テイルズオブベルセリア
[思考]
基本:この殺し合い|"のフィナーレを演奏する"《を必ず止める》
1:???
[備考]
※『リズと青い鳥』、新山先生の指導後からの参戦です
※魔力に目覚めました。氷の剣は自分の意志で構成又は消滅が可能です
※後遺症で髪の一部分が銀髪化しました


【鈴仙・優曇華院・イナバ@東方Projectシリーズ】
[状態]:右肩部分に貫通火傷(中・ある程度完治)、疲労(中)
[服装]:いつもの服
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品3つ
[思考]
基本:殺し合いに乗るつもりはない
1:『災禍の顕主』とその仲間たちは警戒
2:まずは鎧塚みぞれが目覚めるのを待つ
3:一旦映画館で休息&状況整理
4:あの化け物(ヴライ)があれで素直に倒されたとは思えない
[備考]
※紺珠伝以降からの参戦です


【オスカー・ドラゴニア@テイルズオブベルセリア】
[状態]:一部骨折
[服装]:いつもの服装
[装備]:はかぶさの剣@ドラゴンクエストビルダーズ2
[道具]:基本支給品一式、不明支給品2つ
[思考]
基本:殺し合いは必ず止める
1:『災禍の顕主』とその仲間たちは最大限警戒。ただしエレノアに関しては彼女の行動次第
2:まずは鎧塚みぞれが目覚めるのを待つ
3:一旦映画館で休息&状況整理
[備考]
※死亡後からの参戦です



◯ ◯ ◯

「ぬうぅぅぅ……!」

大の字に倒れたその身を起こす。あの刹那、仮面(アクルカ)の力を行使した、檻を無理矢理にも破壊したまではよかったが、その力のぶつかり合いが結果としてヴライ自身をこの様な場所まで吹き飛ばした
だが、そんな事はどうでもいい、それ以上に

「あの女……!」

仮面(アクルカ)を行使した時の消費が激しい。おそらく、あの女(テミス)が何か細工したというのは察せれた。帝から賜った忠誠の証。それがあの女なぞに細工されるなど侮辱にしても許されざるものだ
どこまで飛ばされたのかは知らないが、ここはどこかの建物の近く……壁に植物の蔓が張っているのを見るに、かなり古びた建物なのだろう。が、それにしては風化の跡が不自然なほどにない。それに建物内からは妙な力のようなものを感じる

「………」

小さいものの喧騒の音が聞こえる。『戦の音』だ。ここでも何かしら戦いが繰り広げられているのであろう
だが、それがどうした、先の傷は大したものではない。誰であろうと立ちふさがるなら殺す。平等に皆殺す。全てはヤマトの為に、そしてその果てに、永遠の好敵手(オシュトル)との決着もつける


豪腕の修羅は変わらない。力を持って全てを制す、力を持って全てを下す
何も変わらない、彼の生き様は、何も変わらない


【B-3/一日目/深夜】
【ヴライ@うたわれるもの3 二人の白皇】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[服装]:いつもの服装
[装備]:ヴライの仮面@うたわれるもの3
[道具]:基本支給品一式、不明支給品2つ
[思考]
基本:全てを殺し優勝し、ヤマトに帰還する
1:オシュトルとは必ず決着をつける
[備考]
※エントゥアと出会う前からの参戦です

前話 次話
Lovers 投下順 盤上の支配者たち

前話 キャラクター 次話
奇跡はいつだって不幸から -Haze Aweking- 鎧塚みぞれ あの向こうの色を見る為に
奇跡はいつだって不幸から -Haze Aweking- オスカー・ドラゴニア あの向こうの色を見る為に
奇跡はいつだって不幸から -Haze Aweking- 鈴仙・優曇華院・イナバ あの向こうの色を見る為に
奇跡はいつだって不幸から -Haze Aweking- ヴライ 炎獄の学園(上)
ウィキ募集バナー