バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

譲れない大切なもの握りしめて

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kyogokurowa

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ブローノ・ブチャラティは死人であった。
これは誇張ではなく、己の属するギャング組織・パッショーネの『ボス』に間違いなく殺されたのだ。
だが、彼はこの会場に連れてこられる前にも己の意思を持って動いていた。
痛覚をはじめとするあらゆる感覚や体温や脈も、全てを失いつつあってもしっかりと戦うことが出来ていた。
何故か。
恐らく、彼の部下であるジョルノ・ジョバーナが能力で流してくれた生命エネルギーのお蔭だろうというのがブチャラティの推測だ。
だが、推測はあくまでも推測。本当のところは彼にもジョルノにもわからない。
ただ、彼は運命がほんのちょっぴりだけ偶然の奇跡を許してくれたのだろうと思っている。
それだけでも、彼が戦いの道に赴くには十分すぎる奇跡だった。その果てに惨めな屍を晒すことになろうが、仲間たちが、トリッシュが生きていられるなら悔いすらなかった。

だから、この会場で目を覚ました時には驚いた。
死んだ筈の自分の身体が、傷一つ残さず復活しているのだから。

はじめはジョルノの能力のように傷を癒すことが出来る能力者でもいたのかと思った。
しかし、確かに脈もあれば体温も生きている時のものであり、加えて素手で壁を殴りつければちゃんと痛みを感じられる。
間違いない。
自分の身体は確かに蘇っているのだ。

どうやったかは知らないが、あの女達の狙いは、自分に生身を取り戻した喜びを味合わせ、再び死人に戻るのは嫌だ、という願望を引き出すことだろう。

(奴らはそこまでして俺に殺し合いをさせたいという訳だ)

なるほど。この身体に改めて血が通い、体温を感じることで生きていることへの有難みは確かに感じている。
だが、この至福を護るためにジョルノや力なき人々を犠牲にする選択肢などありはしない。

無惨にも身体を捩じられ息絶えた少年。
無造作に選ばれ、見せしめの為だけに首を爆破された少女と彼女に縋り付き喚く少年。

あの光景を思い返すだけで、ブチャラティの胸にはドス黒い感情が渦巻いてくる。
彼らに如何な関係があったのかは知る由もない。だが、わかることはひとつだけある。
あの主催の女達は、自らの都合で何も知らぬ者でも利用し利益と快楽を得ることだけを考える『吐き気を催す邪悪』だ。
ブチャラティとて先を急ぐ身だ。こうしている間にもトリッシュ達に危険が迫っている可能性もある。

だが、あのような女の言いなりになって皆のもとへのうのうと帰れるほどブチャラティは賢い人間ではない。
だから心は既に決まっている。
このふざけたゲームを必ず止めると。あの主催の女達を必ず倒すと。

「殺し合いを破壊する。犠牲者を最小限に、可能ならばゼロに抑える。仲間のもとにいち早く帰る。...全部をやらなくっちゃあならないってのが『ギャング(おれたち)』の辛いところだな」

ギャングは有体に言えば世間からの爪はじきものである。
裏社会まで見渡せば、治安を守っている側面はあっても、やはり世間一般的には『ゴロつきの集まり』だの『血の飛び交う暴力至上主義』だの『金に汚い守銭奴』だのという認識だ。
そういった側面もあることは間違いないし、少なくとも胸を張っていい職業ではない。だから、世間から見ればそういう扱いなのは当然だと思っている。
だが、ブチャラティの信じるギャングは違う。
ヒーローとは口が裂けても言えないが、麻薬や理不尽な暴力・殺人を犯さない者。
表ではなく裏の治安を命を懸けて守れる者達。それが彼にとってのギャングだ。
その己に課すルールだけは、決して外しはしない。

ざく、ざく、と地を踏みしめて歩く。
やがて、ブチャラティの存在に呼応するかのように、月下に照らし出される影が三つ。

一つは、軍服に身を纏った金髪の青年。
一つは、マントにその小さな身体を包み桃色のツインテールが特徴的な少女。
一つは、ふわふわとした髪型と雰囲気を醸し出す西洋貴族のような少年。

何れも別方向からの合流だ。

一同は互いの存在を認識すると、武器を構え、マントに手をかけ、気配にたじろいで。
各々の反応を示し警戒心を露わにする中、ブチャラティは先んじて声を張り上げた。

「出会いがしらに不躾だが問わせてもらう!俺の名はブローノ・ブチャラティ!俺はこの殺し合いを破壊し主催を倒すつもりでいるが、お前達の意思を聞かせてもらいたい!」

突然の名乗りと意思表明に、一同の意識は嫌でもブチャラティに集中する。
ブチャラティとて、容易く信用されるとは思っていない。皆の意識を集めることにリスクがあるのも承知の上だ。
しかし、もしも皆が主催に反目する意思があれば、誰かが口火を切らなければ始まらないのだ。
いつでも自分に銃弾が放たれても対応できるよう、ひっそりとスタンドの腕を服の下に忍ばせる。

沈黙は数秒だった。

「わかった。ひとまずあんたの話を聞かせてくれ」

真っ先に警戒を解いたのは、意外にも、最も警戒心が高いと見受けられた、銃を構えていた青年だった。

一人が警戒を解けば、残る二人もいつまでもにらみ合っているわけにはいかず、流されるような形で情報交換に応じることになった。


神崎・H・アリアは武偵である。
こなしてきた任務は数知れず。「アリア」の独唱曲という意味通り、その殆どを独りで解決してきた屈指の武偵だ。
そんな彼女とて、首輪を嵌められ殺し合いを強要されるなど初めての経験だった。
しかも、名簿を見ればよく知る名も巻き込まれている。

間宮あかり。
アリアの本来とは違うもう一つのパートナー、戦姉妹(アミカ)である少女だ。
高千穂麗、佐々木志乃。
武偵高校の生徒であり、あかりの良き友達。

許せなかった。
なにが目的かは知らないが、ああも容易く人の命を摘み、玩具のように戦わせようとする女達。
ああいう連中が母のような善人に罪を被せ嘲笑っているのだと思うと余計に怒りが湧いた。

だからアリアは殺し合いには乗らなかった。
ここには武偵としてのパートナーであるキンジがいないが、それでも気後れすることはない。
必ず武偵としてあの女達を逮捕する。そして、あかりたちと共に生きて帰る。

決意を胸に、支給されたマントを羽織り夜道を歩くこと数十分。

やがて遭遇したのはブローノ・ブチャラティ、リュージ、キース・クラエスという三人の男だった。
しばし全員が警戒しあい睨み合っていたが、ブチャラティの先んじての名乗りにリュージが警戒を解き、それに倣いアリアとキースも警戒を解き情報交換の場を設けた。

だが。


「武偵?なんだそりゃ」
「俺も知らないな。学校のサークルかなにかか?」
「すみません、僕も...」

アリアは耳を疑った。
自分が知られていないのはまだいい。いくらS級とはいえ詳しくない者ならば知らなくてもおかしくないからだ。
だが、武偵の存在そのものを知らないとなれば話が変わってくる。
武偵は探偵ではあるが、私立探偵とは違い、正式に国から任命された役職である。
警察のように逮捕権を有していたり、事件現場の検分なども武偵であることを示せば諸々の手続きを踏まず現場検証に加わることもできる。
もちろん、失敗を犯せば内容によってはマスメディアからも取り上げられ罵倒の嵐に苛まれるリスクもある。
ニュースや新聞でもよく取り上げられており、一般人にも認知されている武偵をこの成人済の男たちは知らないというのだ。
一人ならまだしも三人。これには疑問を抱かずにはいられない。

「武偵っていうのは平たく言えば、文字通り武力を行使する探偵ね。普通の探偵と違うのは、ちゃんと国に認められた資格ってこと。だから知らない人なんてそうはいないはずだけど...」
「なるほど。確かにそれでは『常識知らず』は俺たちの方になる」

もしかしたら、他の地域では通称が違うのではとも思い簡単に説明したが、それでも三人とも思い当たるものはないらしい。
これにはアリアも頭を悩ませるも、しかし、これ以上は考えるだけ無駄だと判断し、武偵の認識の差異はひとまず置いておくことにした。

「とにもかくにも、殺し合いを止めるにはまずこれを外さなきゃならないわよね」

アリアが己の首輪を指させば、三人もコクリと頷き肯定の意を示す。

「私はそれなりに機械は扱えるけど...普通に考えたら、何の用意も無しに解除なんて不可能よね」
「あの連中がよっぽど間抜けなら期待できるが、ソイツに期待して下手に弄って爆死なんざ笑い話にもなりゃしねえしな」
「どこかで首輪の解析を挟むべきだな。ならばサンプルが必要となるが...」
「先に言っておくけど、死人は許容できないわよ」

首輪のサンプル。首に巻かれている為に触れることのできない内側まで調べることのできる首輪。
それはつまり、首から外されたモノということであり、当然、首を斬れば人は死んでしまう。

「武偵法九条では殺人が禁じられているの。悪人だろうと私的な判断で切り捨てるのは武偵法違反なのよ」
「おいおい...気持ちはわかるけどよ...」
「いや。俺もアリアの意見は間違っていないと思う」

やんわりとアリアを諫めようとしたリュージを真っすぐに見据え、ブチャラティは続ける。

「もちろん、リュージの考えている通り、殺しにかかってくる奴を迎え撃ち、殺してしまうのは正当防衛だ。仕方のないことだと言えるし、最悪、俺もそのつもりでいる。
だが、その仕方のないことを俺たちにやらせるのがあの女達の目的だ。俺たちに最も必要なのはアリアのような断固として殺さない存在だ」
「要は、首輪のサンプルを手に入れるのは最終盤までなんとか我慢したいってことか...ま、カナメの奴もそう考えるだろうしな。あんたらに従うよ」

ブチャラティとリュージに同意を得られたことに、アリアは安堵する。
生死を賭けた状況であるが故に強行に走る者が出てくるのはわかる。しかし、それをあっさりと処断するのを容認してしまえば脱出派の中で信頼を築くことは難しくなってしまう。
そうなれば主催達の思う壺だ。奴らに対峙した時にこちらが内部も外も既にボロボロでは逮捕どころではなくなってしまう。

「―――ちょっと、いいかな」

ここまで口数が少なかったキースが徐に口を開く。

「僕には守りたい人がいる。この命に代えても守りたいと想う女(ひと)が」

俯き、右手で左胸を力強く掴むキースに、三人の意識が集中する。

「でも、非力な僕ではあの人を護れるかわからない。僕一人では、とても...!」

キースは地に着かんほどの勢いで頭を下げる。

「お願いだ!どうか僕に力を貸してくれ!あの人を助ける力を!」

土下座と云わんばかりの勢いに、アリアは思わず息を呑み、ブチャラティは口を噤み、リュージは目を見開いた。

「ちょ、ちょっとキー...」

アリアが顔を上げるよう促そうとしたその時。


ズ ウ ン


巨大な何かがキースの背後に落下し、その衝撃は地を揺らし砂ぼこりが舞い上がり、アリアは押しのけられブチャラティとリュージは思わず腕で目を覆った。
砂ぼこりが晴れ、露わになるのは10メートルはあろう巨大な土くれの塊。大雑把に人の形を象った土人形。
えっ、とキースが小さく零すのとほぼ同時、土人形はその巨大な腕を振りぬき―――キースの身体は衝撃と共に吹き飛ばされた。

「キイイイイィィィィス!!」

吹き飛ばされたキースへと駆け寄ろうとするブチャラティに、土人形の巨腕が降りかかる。

「危ない!」

寸でのところでアリアがブチャラティに飛びつき、腕の射線から外し攻撃を回避した。

「すまない、助かった」
「ブチャラティ。リュージと一緒にキースを看てきて」

アリアは前を閉じていたマントのボタンを首元以外を外し、バサリと肩にかける。
マントの内側に立ち並ぶのは、手裏剣やこん棒、斧や大筒など大小さまざまな武器。

「こいつは私が引き受ける!」

アリアは大筒を脇に抱え、土人形に向けて放つ。砲弾は人形に当たり小さな爆発を起こす。
その衝撃に揺らめくも、土であるため火は広がらず、ダメージもないのか、構わずアリアへと腕を振るう。
アリアは空になった大筒を捨て、すぐに二本の刀剣に切り替え、跳躍で躱した腕へと斬りかかる。
斬りつけられた腕は多少は土くれがこぼれるが、血にあたるものは出ず、ほとんど手応えを感じない。

(なんなのよコイツ!本当に生き物なの!?)

妙な感触に驚いたアリアに、土人形がもう一本の腕で殴り掛かる。
反応が遅れ、回避が間に合わないと判断したアリアは咄嗟に十字に刀を構え受け止める体勢に入る。

「『ステッキィ・フィンガーズ』!!」

そんな彼女の前に躍り出るは、人型の異形を携えたブローノ・ブチャラティ。
異形がその拳で数度ジャブのように拳を当てると、土人形の拳にジッパーのような跡が付けられた。
殴りつけた反動でブチャラティはアリアを抱え、土人形の射線から外れた。

「キースは!?」
「リュージが先に向かっていた。だからキースはリュージに任せ、俺はお前とこいつを引き受けることにした」
「そう...それで、あんたの傍にいるソレは...」
「...お前が俺のスタンドを見えていることは後で考えよう。能力を話していなかったことには謝罪する」
「いいわよそんなの。私だってこのマントのこと話してなかったし」

ブチャラティの能力は確かに気になるところだが、いまはそんなことはどうでもいい。
アリアのピンチに隠していた能力を使って助けに来てくれた。いまはそれだけで十分だ。

「俺はジッパーを着けた方から攻める。アリア、逆側は頼めるか」
「問題ないわ。私は双剣双銃(カドラ)のアリア。あんなデカブツに遅れは取らないわ」

武偵とギャング。
本来ならば手を取り合うことのない筈の二人が、いま土人形(ゴーレム)退治に赴く。



ぺちぺちと頬を叩かれる感触に、キースはうめき声と共に瞼を開ける。

「気が付いたか。思ったよりも軽傷でよかったぜ」
「僕は...そうか、あいつに吹き飛ばされて...」

キースは膝に手を着き、痛む身体に鞭を打ち立ち上がる。

「おい無茶すんな。ここで大人しくしてろ」
「大丈夫。なんとかこの支給品でダメージは軽減できたから」

キースに支給されていた支給品の一つは貴族用の分厚い布団だった。
遠くに吹き飛ばされたのが幸いし、吹き飛ばされる最中、彼はこの布団を衝撃緩和に使用したのだ。

「にしても無傷じゃねえんだろ。大人しくしとけって」
「そうはいかない。状況は芳しくないようだしね」

キースの視線の先で執り行われるゴーレムの大捕り物。
アリアが左を、ブチャラティが右を攻め立て、どうにか均衡を保っている状況だが、徐々に疲労が出始めている二人に対し、ゴーレムの方はいくら傷つこうが再生し、疲労も見えない。
ゴーレムはあまり強くないとはいえ、二人は単純にサイズ差に苦戦しているようだ。このまま続けていれば戦況が崩れるのは間違いないだろう。

「僕に何ができるかはわからないけど、あの人形にみんなを殺させるわけにはいかない...あいつをどうにか倒さないと」
「お前、まさか」
「止めないでくれ、リュージ。僕よりも強い君たちは義姉さんを護る為に必要なんだ」
「本気かよ」
「言っただろう、僕は自分の命に代えても守りたい人がいると」
「本当に、本気なんだな」
「二言は無いよ」

強情なキースの態度に、リュージは額に手をやり、はぁ、とため息をついた。

「...わかったよ。俺はもう止めねえ。ただ、あの化け物を倒したいなら耳を貸せ。作戦がある」
「作戦...なにか思いついたのかい。いいよ、なんでもやろう」

リュージの言葉に従い、キースは耳を近づけた。

カチリ、という機械音と共にキースの身体に灼熱が走り、激痛と共に地に落ちる。
呆然とした表情でリュージを見上げると、彼は苦虫を噛み潰したような表情で彼方を見つめていた。
その視線を追えば、先にあるのは崩れ落ちていくゴーレムの姿。

「...やっぱりかよ。チクショウが」

リュージの苦々し気な言葉が耳に届き、全身から力が抜け、キースの瞼が落ちていく。

『義姉さんは僕と一緒にいてくれるの?』
『もちろん!これからもずっと一緒よ』

脳裏に過るのは、忌み嫌ってきた力を受け入れてくれた温もりの記憶。
家族が想い人に変わったあの瞬間。

『もう間違っても一人で部屋に引きこもったりしてはダメ!』

(ごめ...ねえ...さ...)

もうあの温もりへと手を伸ばすこともできない。
独り、先立つ不孝を心中で悔い、キースはその意識を手放した。


「言ったわよね。誰であれ殺人は許容しないって。聞いてなかったの」

リュージを見上げるアリアの視線は、今にも彼を射殺さんほどに鋭いものだった。

リュージの異能(シギル)は『嘘発見器(トゥルーオアライ)』。相手の発言が嘘かどうかがわかる能力である。
彼は他の三人と合流してから常にこの異能を使用していた。
その為、ブチャラティの名乗りも本心からだとわかっていたから真っ先に警戒を解くことができ、アリアの口にした『武偵』という存在も疑問は抱いたがそれでアリアを嘘吐き呼ばわりすることもなかった。
だが、キースは常に嘘を吐いてた。

非力な自分では大切な人を護れないというのも。
その人を護るために自分たちの力が必要だ土下座したのも。
気絶していたというのも。
ゴーレムを倒したいというのも。

全てが嘘であればどれだけよかったか。

重ねられる嘘の中で、一つだけ真実が混ざっていた。
命に代えても大切な義姉を護りたいというその言葉だけは、紛れもなく真実だった。

彼は義姉を護るために嘘を吐き続けていた。

ゴーレムに吹き飛ばさせることで自分は味方であることを演出し。
自分が非力であることをアピールすることで守られるだけの小市民を演じ。
ゴーレムを止めるフリをして、徒党を組む予定だった自分たち三人を始末し、義姉以外のすべてを殺し想い人を生還させる為に。

仮にキースを殺さず拘束したところで、己を傷つけてまで為そうとしたことをキースが止めるとは到底思えなかった。
きっと、彼の想い人が先に逝こうとも、彼は義姉を蘇生させる為に殺戮を続けただろう。

だから殺した。
嘘発見器により、キースが黒だと断定するしかなくなった上での警告を再三無視した彼を。
想い人の為に全てを捧げようとした純朴な少年を。

そんなリュージを待っていたのは、状況を理解したアリアによる糾弾だった。
リュージは、なにも反論をしなかった。

「リュージ。あんたの判断は正しかったのかもしれない。でもね、決めたことをあっさりと破るような奴を私は信用なんてできないわ」

アリアはキースの亡骸の傍らに膝をつき、地面に斧を打ちつけ、穴を掘り始めた。

「消えなさい、リュージ。助けられたのは事実だし、今回だけは風穴開けないであげる」
「...ああ」

踵を返し立ち去ろうとするリュージをブチャラティは引き留めようとするも、先んじてリュージがブチャラティの肩に手を置き制した。

「あんたはアリアに着いててやれ。気にすんな、俺たちは遅かれ早かれこうなってたさ。俺にはどうしても殺さなきゃならない奴がいるからよ」
「リュージ...わかった。無茶はするな」
「ありがとよ。最初に会えたのがあんたらみたいに正直でノってない奴でよかった」

振り返りもせず去っていくリュージを見送り、ブチャラティもまた、キースの埋葬に加わった。

(本当にクソだぜ、俺のシギルはよ..)

己の異能にほとほと嫌気が差す。
リュージは元々ダーウィンズゲームの参加者だ。殺しも初めてではない。
だが、今回のキースについては別だ。精神的な疲労が大きかった。
正直なところ、キースの気持ちはリュージにはわからないでもなかった。
自分も、カナメ達がいなければ弟の蘇生を考えなかったかと問われれば嘘になる。
今でもそうだ。カナメ達が最初に全滅したら、殺し合いに反対する理由はなくなってしまう。

もしも嘘発見器が無ければ、リュージはアリアに賛同しキースを拘束で済ましていただろう。
だが、このシギルのせいでキースが決して折れないことを知ってしまったし、彼を見逃すことによるリスクを見過ごすことはできなかった。
その牙は自分のみならずカナメやシュカ、レインにまで及ぶかもしれないからだ。

(それに俺だって死ぬ訳にはいかねえんだよ...なあ、王)

なにより、リュージはここでキースに殺されるわけにはいかなかった。
己の身と引き換えにしてでも弟の仇である王を殺す。それがリュージの抱く願いだ。

(待ってやがれよクソ野郎...てめえの相手は同じクソ虫で充分だ)

嘘発見器は己の嘘は暴けない。
殺意にギラつく視線とは裏腹に、その足取りはどこか頼りないものだったことに、リュージは気づいていない。



【キース・クラエス@乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 死亡】


【G-4/黎明/一日目】
※キースははめふら勢のことを詳しく話していません。

【リュージ@ダーウィンズゲーム】
[状態]:精神的疲労(中)
[服装]:軍服
[装備]:イケPの二丁拳銃@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-
[道具]:不明支給品0~2、
[思考]
基本:王を殺す。そのあとは知り合いの有無で考える。
0:アリア達とは別行動をとる。
1:王を殺す。
2:あかり、高千穂、志乃、ジョルノ、カナメ、シュカ、レインを探す。
[備考]
※参戦時期は宝探しゲーム終了後です。



【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
[状態]:疲労(中)
[服装]:普段の服装
[装備]:
[道具]:不明支給品1~3、キース・クラエスの首輪
[思考]
基本:殺し合いを止めて主催を倒す。
0:アリア共に行動する。まずはキースの埋葬。
1:あかり、高千穂、志乃、ジョルノ、カナメ、シュカ、レインを探す。
[備考]
※参戦時期はフーゴと別れた直後。身体は生身に戻っています。




【神崎・H・アリア@緋弾のアリアAA】
[状態]:疲労(中)、リュージへの怒り
[服装]:武偵高の制服
[装備]:竜馬の武器だらけマント@新ゲッターロボ
[道具]:不明支給品0~2、キースの支給品(不明支給品0~2)、カタリナの布団@乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…
[思考]
基本:武偵としてこの事件を解決する。
0:ブチャラティと行動する。まずはキースの埋葬。
1:あかり、高千穂、志乃、ジョルノ、カナメ、シュカ、レインを探す。
[備考]
※参戦時期は少なくとも高千穂リゾート経験後です。


【竜馬の武器だらけマント@新ゲッターロボ】
7話にて竜馬が使用したマント。斧、こん棒、ヌンチャク、大筒、刀、爆弾など様々な武器が付属されているマント。拳銃は無い。

前話 次話
グリーングリーン 投下順 Lovers

前話 キャラクター 次話
GAME START キース・クラエス GAME OVER
GAME STARTT ブローノ・ブチャラティ 小さな反逆
GAME STARTT 神崎・H・アリア 小さな反逆
GAME STARTT リュージ ライズ・イン・ザ・フィクション
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