バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

異文化交流会

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kyogokurowa

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「ライフィセット殿、なにやら声が聞こえぬだろうか」
「えっ?...あっ、本当だ」

二人が耳を澄ませば、確かに声が聞こえる。
語り掛けてくるようななにかの声が。

「ライフィセット殿、小生の後ろに」

ライフィセットに服の裾を掴ませながら、ムネチカは慎重に歩を進める。
デパートの棟内は照明が点いているため、暗がりに身を隠すことはできない。
しかし声は警戒の気配も見せず、絶え間なく発されている。
もしやこちらを試しているのか。ならばそれに応じるべきだろう。

「我が名はヤマト八柱将が一人、ムネチカ!小生に交戦の意思はない、交渉の場を設けて頂きたいのだが如何か!?」

ハッキリと、大きな声で宣言したムネチカだが、しかしその返答はなく、声は変わらず一方的に放たれ続けるだけだ。
こちらに気づいていない訳ではないだろうに、如何な意図があってしゃべり続けているのだろうか。

(このままでは埒があかんな)

背後のライフィセットに目配せし、ライフィセットがコクリと頷くとムネチカはライフィセットを残し、電光石火の如く駆け出した。
瞬く間に声のもとへと辿り着いたムネチカは、声の主へと牽制をかけるために拳を振り上げ、しかしそこで停止する。

「...?」

そこに人はいた。しかし、正方形の四角の箱に収まるほどに小さく、ムネチカが眼前に立っていてもまるで反応を示さない。
構えを解き、箱に触れてみるが、体温を感じることもできず、中の人間に触れることもできない。
かと思えば、瞬時に別の女に切り替わり、なにやら激しい動きと共に食品を紹介していたり。
ますます困惑するムネチカの様子が気にかかり、ライフィセットもムネチカのもとへと向かい箱と対面する。

「ライフィセット殿、これはいったい...」
「向こうからは僕たちが見えていないみたいだね。ただ一方的に喋ってるし、ここにもいないんじゃないかな」
「ふむ...」

ムネチカは顎に手をやり考える。
遠方にいながら情報を伝える。そんな術を持つ者には心当たりがある。

「もしや逓信衆(ティリリャライ)ではないだろうか」
「ティリリャライ?」
「うむ。ライコウ殿が重用する兵で、遠くの戦場でも情報の伝達を迅速に行える兵のことだ。視覚にうったえる者がいるという話は聞いたことがないが」
「だとすると何のために?」
「小生にもそこまでは...うーむ」

眼前で流されるのはただのテレビCMだが、テレビという文化のない二人ではその答えには辿り着かず、ひとまずは無害だということで放置しておくことにした。

「そういえばここ、よく見たら色んなものがあるね」

キョロキョロと見回せば、本やゲーム、CDや生活用品など様々なコーナーが設けられている。
そのうちの一つのコーナーで、ライフィセットの目が留まる。

「あれ?この本...」

その目に留まったものを手に取りまじまじと見つめてみる。
間違いない。この本は、ベルベットが始めてくれた古代語の本と同じタイトルの本である。
ただし、使い古しのあの本そのものではなく、新品同様の小奇麗な状態であったため、自分の本ではないことはすぐにわかったが。

「なにか知ったものでも?」
「僕の好きな本があったんだ。...うん、中身もちゃんとしてる」

中身を検めるライフィセットの頭上からムネチカはひょいと顔を覗かせ中身を見せてもらう。

「おぉ...ライフィセット殿は博識だな。小生も文字は読めるが意味はとんとわからぬ」
「えっ?ムネチカもこの文字を読めるの?」
「...?いや、小生は確かに武人だが、聖上の傍に控えるものとして恥じぬ程度には読み書きできるが...」

ライフィセットとムネチカは共に首を傾げる。
ムネチカからすれば、神代文字でない基礎の読み書き程度把握しているのは当然の事であり。
ライフィセットからすれば古代語など勉強しようと思わなければ読める筈もなく。
両者の抱く常識の差は違和感を生じさせる。

「あっ...!」

その正体に気づいたライフィセットはハッと目を見開く。

「そうだよ...文字と言葉だ」
「ライフィセット殿?」

未だ困惑の中にあるムネチカを他所に、ライフィセットは傍に陳列された本を漁り次々に目を通していく。
じっくりではなく、ほんの数秒目を通しては本を変え、通しては本を変えといった具合に。

「これも僕の世界の本じゃない...やっぱり、これも、これも...」
「――――ッ!!」

読み捨てられた本の一冊を垣間見たムネチカの目が見開かれるも、ライフィセットは気づかずそのまま流し読みを続ける。
本の数が15を超えたあたりで、ライフィセットは本を漁るのを止めムネチカへと顔を向けた。

「ムネチカ」
「......」
「ムネチカ?」
「はっ、な、なんでもござらぬ。まったくけしからん、けしからん...」
「...?」

口元を拳で隠し妙なことを呟くムネチカに疑問を抱きつつもライフィセットは話を続ける。


「ムネチカ、さっきの平衡世界の話は覚えてる?」
「うむ。歴史すら違う時代の住人...であったか」
「うん。僕らが経験したのは似たような世界だけど、僕たちとムネチカの世界は丸きり違う。つまり文明も文化も丸きり違うはずなんだ」
「それと先ほどの本の山が関係ある、と?」
「文字も文化のひとつだから、もしかしたらと思って。そうしたら、やっぱりどの本も読むことができたんだ」
「なるほど、そういうことか」

ここでようやくムネチカはライフィセットの言いたいことを理解した。
異世界の文字であるならば、それは異世界の文化であり知りえる筈のないものである。
然らば、異世界の本の文字が同じであれば、二人がそれらを全て読むことができるのはおかしいと。

「しかしよく気づかれた。その洞察力と観察力、尊敬に値する」
「そんな、ムネチカの言葉が無ければ気づけなかったんだからムネチカのお陰だよ!」
「謙遜めさるな。小生ではいくら考えようと気づけなかった。見事だライフィセット殿」

褒められるというのは何度されても嬉しいものだ。
ライフィセットはほんのりと頬を紅潮させ、その様子をムネチカは微笑ましく見つめていた。

(これはもう子供扱いはできんな)

幼き身でありながら、ライフィセットはもう『異世界間の文化』まで思考を広げられている。
仲間であるネコネを彷彿とさせるその聡さ、もはやただ守られるだけの子供ではなく対等な仲間として見るべきだ。

(だが"コレ"は少々刺激的すぎる)

それはそれとして。子供あれど対等な仲間だが、対等な仲間といえども子供である。
先ほどライフィセットが検問していた一冊の本をそっと抜き取り、密かに己がデイバックに入れようとする。
ほんの数秒であった為、中身の全容を把握できなかったが、文字だけ追っていたライフィセットも大して気に留めていなかったのが幸いだ。
あの本に描かれた人物が濃厚に絡み合う様。あれは間違いなく乙女本。それも、恐らくあの巨匠・ラウラウ先生のものだ。ルルティエやアンジュ、そして自分の愛読書だ。
アレは子供にはまだ早いのだ。決して読ませてはならぬ。

「あっ、その女の人同士が抱き合ってる本、ムネチカの世界のだったの?」
「――――ッ!!」

気づかれていた。
聡い子だとは思っていたが、あの数秒で文字だけでなく中身まで把握していたとは予想外である。

「む...女?」

ムネチカはくるりと振り返り、ライフィセットから見えないよう背中で乙女本を隠しながら中身を検める。
中に描かれているのは確かに女。それも身体の発育に差がある若い少女たちだ。ムネチカの知る乙女本は男同士の深く濃厚な友情物語である。

(ラウラウ先生の本では無かったか)

己の知る本で無かったのにホッと胸を撫でおろすが、しかし、女同士とはいえ濃厚なものには変わりない。
やはりこれはライフィセットにはまだ早いと本を閉じようとする。が

「...ごくり」

何故か目を離せない。少女同士の絡み合いが、交わされる友情がムネチカの心を捉えて離さない。
思えば、チラと絵が見えただけの本をあのラウラウ先生と見間違えたというのはただ事ではない。
即ち、この本にはラウラウ先生の著書に匹敵する『スゴ味』があり、ムネチカが惹かれるのも無理はない話―――なのかもしれない。

「ムネチカ、もう少し本を探したいんだけどいいかな?他の世界のことがわかる本があればこの先もやりやすくなると思うんだけど」
「むッ、承知した。入り口は小生が見張っている。安心して吟味されよ」

ムネチカの了承を得たライフィセットが本を探している内に、ムネチカは周囲への警戒を怠ることなく本へと目を通していく。

「...むっ、女相撲!?素肌をぶつけ合うことにより友達以上の関係へと発展させる競技...女体盛りは芸術であり、えんたあていめんと...つまり高尚な遊戯...これはなんとも...」

ラウラウ先生の本は基本的にしっとりとした色香で読者を蕩けさせ興奮させる。
それに対し、このクリスチーネ桃子の作品は時には大胆ダイナミックに、時には華やかに淑やかに題材と展開を構築し深い友情を育んでいる。

(これが女同士の友情...聖上やルルティエ殿もお喜びになられそうだ)

普段はアンジュやルルティエに薦められてもらう立場だが、己で開拓するのも味わい深い。
充分に堪能し、ムネチカは二人にも紹介しようと密かにデイバックに入れた。

「おまたせ」
「うむ。では参ろう」

買い物(無料)を終えたライフィセットを迎え、デパートから出発しようとしたその時だ。

「む?」

突如、先ほどまでCMの流れていたテレビにノイズが走る。
先ほどまでとは違い、明らかに異常事態だとわかるこの状況に流石にムネチカもライフィセットも気を引き締める。
食いつくように見守る中で、やがて映像が切り替わる。
映し出されたのは、ベッドの上で女の子の形を模した人形を抱きしめ股座に挟む黒髪の少女。

「ムネチカ!?なんで目を隠すの!?」
「見てはなりませぬ!決して見ては!」

ナニが行われているかを察したムネチカはライフィセットが目撃する前に即座に掌で目を隠し視界を遮る。

(な、なんとはしたないものを!おのれ破廉恥な!)

頬を染めながら、先ほどの本の影響もありつい画面をチラチラと見てしまうムネチカ。
なんともあられもない姿を晒す痴女への悪感情は抱けず、今はとにかく画面から離れようとライフィセットを連れ出していく。

(しかしあの女子(おなご)と人形、どこかで見たような気が...)

既視感のある人形と少女の姿に、己の記憶を手繰り寄せる。
昔ではない。つい最近のことのはずだ。
たしかあれは...

「ハッ」

片手でライフィセットを抑えながら、空いた手でデイバックから先ほどの本を取り出す。
女同士の友情を深める禁忌の黙示録を。

ぱらり、ぱらりとページを捲る。
ツインテールの少女『あかり』とツインテールの人形。
黒髪の長髪で、『あかり』を手に入れる為に女体盛や女相撲をとる『志乃』と画面の先で己を慰める長髪の少女。

全てが、繋がった。

「志乃乃富士...」



【G-8/デパート/黎明/一日目】
【ムネチカ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:ムネチカの仮面@うたわれるもの、タイタンナックル@テイルズ オブ ベルセリア
[道具]:基本支給品一色、不明支給品1つ(本人確認済み)、大きなゲコ太のぬいぐるみ@とある魔術の禁書目録(現地調達)、
クリスチーネ桃子(夾竹桃)作の同人誌@緋弾のアリアAA(現地調達)
[思考]
基本:仲間達とともに主催者を打倒する
0:あれは志乃乃富士...!?
1:ライフィセットと共に行動し、護る
2:仲間達を探す。最優先はアンジュ
3:ヴライを警戒
4:クリスチーネ桃子先生の本を聖上にも紹介しよう。
[備考]
※参戦時期はフミルィルによって仮面を取り戻した後からとなります
※女同士の友情行為にも理解を示しました。
※画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。 



【ライフィセット@テイルズ オブ ベルセリア】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]: ミスリルリーフ@テイルズ オブ ベルセリア(枚数は不明)
[道具]:基本支給品一色、不明支給品2つ(本人確認済み)本屋のコーナーで調達した色々な世界の本(たくさんある)
[思考]
基本:ベルベットを護り、皆と共に殺し合いから脱出する
0:ムネチカ?ムネチカ!?
1:ムネチカと共に行動する
2:仲間達と合流するため、バンエルティア号へ向かう
3:エレノアが心配。無事だといいんだけど。

[備考]
※ 参戦時期は新聖殿に突入する直前となります
※異世界間の言語文化の統一に違和感を持っています。
※志乃のあかりちゃん行為はほとんど見てません。



【デパート内の本屋】
各出典世界の本が色々と置いてある。
レジに『ご自由にお持ちください』と書いたμの書置きがあるので持って行っても窃盗にはならない。

前話 次話
乙女解剖 投下順 炎獄の果てに

前話 キャラクター 次話
護るべきもの ムネチカ 愛のバクダン
護るべきもの ライフィセット 愛のバクダン
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