バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

愛のバクダン

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kyogokurowa

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「こ、これが『モノレール』!?」
「これは…何とも奇怪な……」

駅で待つこと、数分―――対岸より天井に敷かれた線路を伝い、駅構内に到来したのはモノレール。
そのスケールに圧巻されるムネチカとライフィセット。
現代社会においては、さぞ珍しくもない乗り物ではあるが、二人が元いた日常では、このような電動の大型車両は普及していない。
尤もムネチカの世界では、先代の旧人類こと『大いなる父』(オンヴィタイカヤン)の時代には珍しくもない代物だったはずだが、それはまた別の話。

プ シ ュ ― !

と自動ドアが開くと、ライフィセットは雪崩れ込むように、モノレールの中へと駆け込んだ。
「待たれよ、ライフィセット殿! もう少し警戒を―――」と、ムネチカも慌ててこれに続く。
未知との遭遇に、ムネチカは気を引き締めるが、彼女とは対照的に、ライフィセットは、「うわぁ〜!」と感嘆の声を上げ、車内を探索する。
少年のエメラルド色の瞳はキラキラと輝いている。

「まもなく、発車します…」

発車ベルと同時に、μの無機質な声が木霊すると、車両は対岸に向けて動き出した。

「わぁ動いた! 凄いよッ、この乗り物! どんな仕組みで動いてるのかなぁ? あっムネチカ、海だよ、海ッ! 海に出たよッ!」
「う、うむ。そのようだな」


二人を乗せた鉄の方舟は、駅を後にすると、直ぐに海上エリアへと飛び出す。
ライフィセットは、この大型車両の運行に、えらく感激したようだ。
興奮気味に窓に手を押し当て、車外の景色を楽しんでいる。
無邪気にはしゃぐライフィセットを見て、ムネチカもまた頬を緩ませる。
好奇心に満ちた少年の姿は、殺し合いの真っ只中にあるということを忘却させるほど、底抜けに眩く、『ヤマトの盾』とうたわれた武士(もののふ)の心を和ませるに足るものであった。

(ここは海上…。であれば、敵からの襲撃はありえぬか……)

ライフィセットの愛らしい姿によって、幾分と緊張の糸がほぐれたムネチカは、ふぅ…と短い溜息とともに座席へと腰掛ける。
デパートを出てからは、常時気を張り詰めていたムネチカにとって、これは束の間の休息と言えるだろう。
相も変わらず窓の外の世界に夢中なライフィセットを微笑ましげに眺めながら、ムネチカは今後のことを思案する。


(聖上…何処(いずこ)に……)

殺し合いが始まって、ここまで接触した他参加者はライフィセットのみ。
デパートを出発してからここに至るまで、誰一人として遭遇することはなかった。
殺し合いに乗った人間に襲撃されることはなかったという点を鑑みると喜ばしいことではあるが、その反面、アンジュを始めとした自身の仲間達やライフィセットが探す人々の情報は掴めておらず、手掛かりがないのが現状だ。

もう暫くすると、会場にも日が昇り、「放送」なるものが始まると聞いている。
時間は着実に流れていっているというのに、知り合いはおろか、他の参加者の情報すら得られていないのは、好ましい状況とは言えない。

否―――思い返せば、気になるものは一点だけ発見していた。

(志乃乃富士……)

デパート内で、四角い箱に映し出された“アレ”は一体なんだったのだろうか。
聖上に献上せんと拝借した書物に描かれた「志乃乃富士」が、穢れを知らないライフィセットには到底見せることのできない、いかがわしい行為を行なっていた。

ムネチカには高度な術式の知見はない。
したがって、ここからは先は完全な推測となる。
仮に、あの四角い箱が高度な術式で動く代物で、逓信衆(ティリリャライ)が使用する念話よりも高度な術式を応用し、何処の光景を即時的に伝達する類のものだとしよう。
だとすれば、アレを見せつけてきた術者は一体何者だろうか?
箱の中で嬌声を上げていた「志乃乃富士」か? それとも第三者の手によるものか?

また、その目的も測り知れない。
アレを、我々に披露して一体何となる?
術者に一体何の得があるというのだ?


(―――やはり、小生の浅い思慮では、考察に限界があるな……。かような時、オシュトル殿がおれば、皆が納得する答えを導いてくれるやもしれぬが……。)

何れにせよ、前途多難か…と、ムネチカは再度溜息をつきながら、頭を抱えて、現状を憂うのであった。





所変わって、ここはテレビ局の主調整室(マスター・コントロール・ルーム)。
その機械の前に張り付く黒髪の少女が一人。名前は佐々木志乃。
志乃は、公共の電波に自身の痴態を晒されたことを知り、その原因を突き止めんと、こうしてテレビ局に戻ってきた。
唐突に降り掛かった理不尽に対して、志乃の心は、羞恥と怒り―――そしてそれ以上に、焦燥に満ちていた。

(もしも、アレが―――あかりちゃんの目に留まりでもしたら……きっと、あかりちゃんに嫌われちゃう……)

志乃はこの殺し合いにおいて、アリア以上の戦果を挙げて、あかりの心を鷲掴みにすることを目論んでいた。
しかしそれ以前に、自分の変態行為を、あかりに見られてしまい、ドン引きされてしまっては元も子もない。アレが原因で絶交なんかされたら、死んでも死にきれない。
故に志乃は、焦っていた。

元はと言えば、身から出た錆ではあるのだが、あいにくと焦燥する志乃には、そこまで考える理性は残っていなかった。


「何でッ!? どうして、止めることが出来ないよのぉッ!!」

志乃は、キーボードから手を放すと、苛立ちと共に、その拳を机に叩きつける。
局内を探索すること小一時間。放送をコントロールするコンピュータを発見はした。
しかし、放送を止めようとコンピュータを弄るものの、放送内容のキャンセルは受け付けられなかった。横に添えられているマニュアルによると、一度配信設定された内容は、何があってもキャンセルは受け付けられないとのことだ。
したがって、志乃のあかりちゃん行為は第一回放送が始まる午前六時までは、配信され続けることとなる。

コンピュータ自体の破壊も考慮したが、マニュアル曰く、コントロールパネルが破損しても、設定された放送の内容が中断されることはないとのことだ。

(そ、そんな……)

悲観に暮れ、絶望する志乃。
配信を止められない以上、もはや、あかりがあの映像が触れないことを祈るしかない。
もしくはあの映像について弁明する配信を行うという案も、一瞬思いついたが、そもそもあの行為に弁明できる余地など存在しなかった。

(―――あの二人……!!)

ここで志乃の脳裏に浮かんだのは、警備室の映像アーカイブに映っていた二人の参加者の姿であった。
志乃は主調整室の前に、警備室にも訪れていたのだが、其処で過去の映像アーカイブを確認。自分と同じ時間帯に、局内には他に二人の参加者がいたことを知った。


マニュアルによると、テレビ局が流す配信の設定は、この殺し合いの参加者のみが行えるという。
となれば、あの志乃の痴態を配信したのは、過去にテレビ局にいた、あの二人組だという結論に至る。
何が目的でアレを垂れ流したのかは不明だが、悪意を以て行ったのは間違いないだろう。
特にあの怪しげなマスクを被った参加者については、怪しさ満点だ。

(もしも、鉢合わせることがあれば―――その時は覚悟してもらいますからね……)


志乃は激情をどうにか抑え込み、諸悪の根源と思わしき二人組への復讐を誓う。

主催者による、第一回放送が始まったのは、それから間もなくのことであった。





『それでは皆様、次は正午の放送でまたお会いしましょう、ご機嫌よう〜。』

テミスと名乗った女による告知が終わると同時に、μと呼ばれた白の少女が歌を奏で始める。
破壊衝動と闘争。人間の心の奥底にあるドス黒いものを煽るような歌詞。
先程出会った「茉莉絵」なる少女の姿を彷彿させるようなその曲調に、ジオルドは不快感を覚えながら、テミスの放送内容を回顧する。

「君は先に逝きましたか、キース……」

キース・クラエス―――カタリナ・クラエスの義弟。
彼もまた、ジオルドと同様にカタリナに魅かれる者の一人であり、何かにつけてジオルドとカタリナが二人きりになる機会に割って入り、妨害してきた。
「いい加減、姉離れしてはどうですか?」と苛立ちとともに牽制すると、「いやいや、姉さんに、もしものことがあってはいけませんから」と笑顔で返してくる。あのやり取りが遠い昔のように感じた。

彼のことだ。この殺し合いの場でも、幼き日より慕う姉のために奔走したに違いないだろう。

正直疎ましいと感じることも多々あったが、彼もまた、カタリナと過ごす色彩に溢れた日常の一部であり、幼き日よりの友人であることに違わなかった。

だからこそ、彼の死にジオルドは心を痛めた。

「―――これからどうしましょうか……」

人を人だと思わず、悪意を撒き散らかすあの少女から逃げるように、南下してきたジオルド。
13人という数値が示すように、ジオルド以外にも、殺し合いに乗っている参加者は多々いるようだ。
事実、ジオルド自身も『産屋敷邸』の一同を襲撃した白い少年とその同伴者や、同行者を愉しげに虐殺したあの少女を見てきた。

こと人数を減らすことに関しては、彼女らのような積極的に殺し回る連中に委ねて、ジオルドは殺せそうな人間は間引いていき、強大な敵がいようならば、無理はせずに彼女らにぶつけていくのが得策ではないだろうか。

「ははっ―――結局のところ、僕が辿るのも、彼女と同じ血塗られた道という訳ですか」

ふと振り返り、如何に効率よく人殺しを行い、優勝を目指すべきか模索する自分自身に乾いた笑みを零した。

その瞳は、カタリナ達と過ごしたあの日々のように煌くことはなく、濁りきり、まるで幽鬼の如く、南方の方角を見据えるのであった。






H-6にある所謂埠頭エリア。周囲には無数の荷役機械やコンテナが散見される、この何とも殺風景な場所を横断するのは二つの人影。

人生初のモノレール体験を経て、興奮冷めやらぬ様子のライフィセットは、ムネチカを伴って、ウキウキした足取りで、バンエルティア号を目指していた。

『参加者の皆様方、ご機嫌よう』

……しかし、唐突にその瞬間は訪れた。
午前六時の到来と同時に、第一回放送が始まる。
まるで愛玩動物に言い聞かせるような口調を以って。底なしの悪意を孕みながら。テミスは、死亡者の名前を告げていく。

「エレ、ノア……?」

エレノアが死んだ―――。
彼女の名前が告げられた時、ライフィセットの思考は掻き乱された。
死亡者の告知が終わっても、尚も放送は続くがライフィセットにとって、それは「ノイズ」に過ぎなかった。

本来は「器」たるエレノアが死んだ場合、ライフィセットの業魔化を抑制するものは無くなってしまう。
その場合は暴走が懸念されるが、今のところライフィセットが、ドラゴンに化けるような片鱗は見せていない。
尤も、ライフィセットはこの会場に来てから、エレノアとの繋がりを感じとることはなかった。何らかの力によって、そういった類の理は掻き消されているやもしれない。
だが、今のライフィセットにそのような理性的な考察は出来ない。

かけがえのない大切な仲間―――エレノア・ヒュームが死んだ。
ただその事実だけが、ライフィセットの心にスッポリと穴をあけた。

生真面目で優しかったエレノア。
ライフィセットが思い悩んだとき、何かと気遣ってくれて、真摯に相談に乗ってくれていたのも彼女だ。

涙が溢れてくる。これが【大切な人を亡くす】という感覚なのだろうか。
もう二度と彼女と会話をすることも、笑い合うことも出来ないと思うと、心が張り裂けそうになる。

やがて「ノイズ」は止んだ。ライフィセットの周辺は静寂に包まれる。
強いて言うならば、涙を流すライフィセットの嗚咽が虚しく響いているくらいだった。
その他は、一切の無音であった。

悲しみに暮れるライフィセットであったが、とある違和感に気付く。
それをトリガーとして、まるで靄が晴れるように、その思考は現実へと引き戻される。

―――いくら何でも静かすぎる。

その違和感の正体を探るべく、ライフィセットは背後へと振り返る。

「―――っ!? ムネチカっ!!?」

ライフィセットは目を見開く。
そこには、白銀に光る刃を自らの腹部に突き立てんとするムネチカがいた。
彼女の表情にもはや生気はなく、その瞳は淀んでいた。

「何やってんだよ、ムネチカっ!?」

慌てたライフィセットは、ムネチカに飛び付き、果物包丁を握る腕を抑え込もうとする。
が、ムネチカもまた抵抗。揉み合いとなる。

「放されよッ、ライフィセット殿! 聖上はお隠れになられた――小生は務めを果たすことができなかったのだ……! この失態、命を以って償うしかありえませぬッ!」
「駄目だよ、そんなのッ!」
「小生は身命を賭して聖上をお護りすると誓った……。 だが、その聖上が危機に瀕していたにもかかわらず、小生はそれを察する事もできず、うつつを抜かしていたのだ……! これを生き恥と評さず、何とするかッ! 武士(もののふ)として、小生はこれ以上の、生き恥を上塗りすることなどできぬッ!」

不甲斐ない己自身への憤怒、嫌悪、後悔―――感情を爆発させたムネチカが、力を込めて腕を振り払う。
ヤマトにその者ありと言わしめた女傑の腕力に、ライフィセットの小さな体躯は、ボールのように弾かれ、地面をバウンドする。
「ぐぅぅ……」と呻くライフィセットの姿に、申し訳なさを感じたムネチカは眉根を寄せる。


「―――すまぬ、ライフセット殿……。」

ポツリと懺悔の言葉を漏らし、再度両の手でナイフを天高く突き上げ、今度こそ、自らの腹部に突き刺さんとするのだが。


「……霊子解放! 仇為す者に―――」
「なっ!?」

途端に、ムネチカの周囲に霊力の鎖が出現し、その身体を拘束する。
ライフィセットは折れていなかった。尚も立ち上がり、術式を展開している。

「秩序をもたらせ! バインド・オーダー!」
「がはぁッ!」

ライフィセットが掌底で解き放つと、今度はムネチカの身体が真後ろへと吹き飛ばされ、コンクリートの地に転がる。
その掌からは果物ナイフが零れて、ライフィセットはそれを拾い上げる。

「これは預からせてもらうよ、ムネチカ……」
「ライフィセット殿……。何故―――何故ッ! 小生の邪魔をするッ!? 小生にはもはや生きる意味など―――」
「うるさい、だまれえっっ!!」
「…っ!?」

予想だにしなかったライフィセットの剣幕に、ムネチカは圧倒され、口を噤む。

「エレノアが死んだんだ! 僕に優しく接してくれた大切な仲間(ひと)が! 僕はこれ以上、誰かを失いたくないっ!!」
「ライフィセット殿……」
「出会って間もないけど、僕はムネチカも失いたくない―――ムネチカに『生きること』を止めてほしくない! ムネチカが絶望したって知るもんか!!」

少年は、ボロボロと溢れる涙を拭い、顔を真っ赤にして訴える。
一言で言ってしまえば、これはライフィセットの我儘。
ムネチカは主人を失い絶望。文字通り、生きる意味を見失っている。
そんなムネチカに、ライフィセットは無理矢理に立ち上がれと促しているのだ。

「―――小生に、これ以上の生き恥を晒せと……、そう申されるのか……?」
「ムネチカは本当にこれで終わりで良いの!? 亡くなったアンジュさんは、ムネチカにこんなことを望むような人なの!?」
「……っ! 小生は―――」


出会って半日も経っていない少年を相手に、ムネチカは言葉を詰まらせる。
そして、逡巡する。主君を失ってしまった武士(もののふ)の今後の在り方についてを―――。






一悶着の後、ムネチカは思い詰めた様子で「暫し、猶予をいただきたい」と申し出た。
ライフィセットは「分かった、待ってるから」と返して、鎮座するムネチカを残し、周辺の探索に出掛けた。

じっくりと己と向き合って、「生きる意味」を見出して欲しい―――そんな希望から、ライフィセットは彼女を一人にした。
振り返ってみると、ムネチカには酷なことを言ってしまったかもしれない。
だけど、彼女には死んで欲しくない―――そう強く思ったからこそ、感情を爆発させて我儘をぶつけた。

「そういえば、あの時もそうだったなぁ…」

ふとライフィセットの脳裏に浮かんだのは、池脈空間での出来事。
全てに絶望して、カノヌシに喰べられようとしたベルベットを連れ戻したあの時も、頭に血が上った。

「ベルベット……」

思い返すうちに、自ずと少年の口からは、彼女の名前が漏れた。
ライフィセットが、護り抜くと誓った大切な人。
彼女は今どこで何をしているのだろうか。
エレノアの死も相まって、彼女の安否が心配になってくる。

そうこう考えながら、ぶらついていると、前方のコンテナの影から一つの人影が飛び出して、ライフィセットとバタリと遭遇する。

「……っ!?」
「―――今度は子供ですか……」
「ええっと…貴方は……?」

ライフィセットが見上げるは、如何にも身分の高そうな衣服を見に纏う、金髪碧眼の青年。
端正な顔立ちではあるが、心なしか、少しやつれているようにも見える。
青年はライフィセットを値踏みするように、じっくりと見つめる。

「僕は、ジオルド・スティアートと言います。君の名前は……?」
「ライフィセット…です……」
「どなたか同伴されている方はいないのですか?」
「今は一人だよ」
「そうですか……」

ライフィセットは、あえてムネチカの情報を伏せた。
今は一人にしてあげたいから、というムネチカへの気配りによるものだった。
ジオルドは濁った眼差しを向けたまま、沈黙。無言の圧が暫く続いて、ライフィセットは困惑する。
「あの―――」と言い掛けたところで、ようやくジオルドは口を開くが、それは思いも寄らない内容だった。

「ライフィセット……予め断っておきますが、僕はこの殺し合いに乗っています」
「えっ?」
「そして、僕はこれから貴方に襲いかかります。 殺されたくなければ、抵抗してください」

目を丸くするライフィセット。
しかし、少年に驚く暇はなかった。
次の刹那―――その幼い身体を焦がさんと、紅色の炎が差し迫る。
冒険で刷り込まれた戦闘経験から、反射的に後方へと跳躍して、これを回避し、事なきを得る。

「―――その反応……。ただの子供ではなかったということですか」
「ジオルド、どうして!?」
「無駄口を叩くつもりはありませんッ!!」

ジオルドは会話に応じるつもりはない、ただ目の前の障害を排除すべく魔力を駆使―――再び紅蓮の嵐が生じて、ライフィセットに襲い掛かる。

「白黒混ざれ! シェイドブライト!」

しかし、ライフィセットもやられっぱなしとはいかない。
詠唱とともに、聖隷術を展開―――光の弾と闇の弾が交わりながら放出。
二つの弾は、そのままジオルドの炎と正面衝突を果たして、轟音とともに大爆発が生じる。

(やはり…彼もまた、一筋縄とはいきませんか……!)

ジオルドは苦い表情を浮かべつつ、潮風に揺れる爆煙を眺める。

これまでジオルドが遭遇してきた参加者が曲者揃いだったこともあり、一見大人しそうなライフィセットもまたその類の者ではないかと予感はしていた。
それでも、何の罪もないような少年に不意打ちで殺しに掛かるのは、心苦しかったため、前もって警告を発した。

もしかすると、この非合理的な行動には、殺し合いを嬉々として楽しむウィキッドの姿を目の当たりにした影響もあったかもしれない。
自分は彼女とは違う―――それを自分自身に言い聞かせるための行動であったということは否定できない。

しかし、その結果がこの有様だ。
虚を突けばあっという間に討ち取れていたかもしれないのに、こうして厄介な戦闘へと招いてしまった。

(本当に、何をやっているんでしょうね、僕は……)

ジオルドは、自らの体たらくを心中で自虐する。
しかし、その思考は、黒煙の向こう側の声によって打ち切られる。

「聖泡散り行き魍魎爆ぜよ―――」
(来るっ……!!)

少年の攻撃に備えて、ジオルドも魔法を発動。
炎を腕に纏い、迎撃に備える。

「セイントバブル!」
「っ……!」

煙の彼方から現れたのは、浮遊する四つの大きな水泡であった。
それぞれの水泡は、まるで生き物のように、ジオルドを飲み込まんと差し迫る。

(水の魔法……!? 成る程、僕の炎を殺しに来ましたか……!)

古来より、火を鎮めるのに用いられてきたのは水である。
相性の良い属性の魔法を使って攻めてくるのは、定石通りの戦略と言ってよいだろう。
だが、それでもジオルドは退くわけにはいかない。

「はぁあああっーーー!!!」

ありったけの魔力を込めて、眼前に聳え立つ水の塊を突き破らんと、炎を撃ち込む。
愛する者と平穏な日々に戻るため、魔法の相性などで、臆するにはいかない。
ジオルドの執念が宿った火の渦は、水泡に直撃。水泡はたちまち四散する―――

だが……。

「なっ……? ゴハァッ……!!」

破裂した水泡から、小さく細かい無数の水泡が弾け飛び、弾丸のような速度で、ジオルドの身体を撃ち抜いた。

セイントバブル―――ライフセットが展開したそれは、ある種の破片手榴弾。
大きな泡を発生させ、それを破裂させることにより、攻撃する上級譜術である。

無双の水の弾丸は、ジオルドの華奢な体に穴をあけさせるほどのものではなかったが、その威力を侮るなかれ。国の次代を担う王子の身体は、ボロ人形のように宙に舞い、地面にグシャリと落下する。
その衝撃は内臓にも達したのだろうか、ジオルドは口からゴボリと盛大に吐血する。

「ごめんね、ジオルド。でも僕は死ぬ訳にはいかないんだ……」

倒れ伏せるジオルドの元に、ライフィセットは駆け寄る。
苦しそうに息をするジオルドと、それを気遣うライフィセット。
二人の視線が交差する。

「僕を…殺しますか……?」
「ううん、そんなことはしないよ。だけど、拘束はさせてもらうようよ。
そして、聞かせて欲しい。何故ジオルドがこんなことをしているのかを」

ライフィセットは、申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、ジオルドの身体を引き起こそうとした。
ダメージの深刻さが伺える身体に負担を掛けないよう、出来るだけゆっくりと。

ズ ブ リ

体内に侵入した異物感を知覚したライフィセットは、自身の腹部に視線を落とす。
そして、ジオルドが突き立てた先端の尖った凶器が、自分の中に深く突き刺さっていることを視認した。

「えっ…ぁっ……?」
「―――本当に甘いですね、君は……」

凶器が引き抜かれると同時に、ライフィセットは引力に引っ張られるように、バタリと倒れる。
そんなライフィセットをジオルドは冷ややかに見下ろす。

(だめだ……ちから……出ない……)

歯を食い縛り、立ち上がろうとするも叶わず。
回復術式も展開できず、意識が遠のいていく。

「さようなら、ライフィセット……僕を恨んでくれて構わない」

決着を確信したジオルドは、痛む身体を引き摺るような形で、ピクピクと痙攣するライフィセットに背を向け、歩き出す。
その手元に握られる凶器は「どくばり」。本来は霧雨魔理沙に支給されたものであるが、
巡り巡って、今はジオルドの手元にある。

説明書には

「稀に致死量の毒を流し込こみ、対象を猛毒状態にすることがある。
猛毒状態となった対象は、6時間以内に解毒しないと、死に至る。」

と書いてある。

致死量の毒が流し込まれるとのことだが、成る程、効果に偽りはないようだ。
打ち込まれた当人は、直ぐに脱力し虫の息となっていた。

「ライフィセット殿ッーーー!!!」

唐突に、ライフィセットのものでもなく、ジオルドのものでもない、第三者の悲鳴に近い叫びが木霊した。
ジオルドは背後を振り返る。
そこには、ぐったりとしているライフィセットを抱き寄せる、仮面を装着した女性がいた。





時は少し遡る。

ライフィセットが去ってから、ムネチカは目を瞑り、コンクリートの上で鎮座していた。
防波堤に寄せる波の音をBGMにして、今後の在り方について見つめていた。

主君と仰ぐアンジュが死んだ。
先代の帝の時代より、アンジュの教育係として、彼女を導き、守護ることを己が使命としていたムネチカにとって、彼女の存在は絶対的な存在であった。

その彼女が亡くなり、ムネチカは使命を失い、心にすっぽりと穴が開いてしまった。
生きる意味を見失ったムネチカは、自害を選んだが、ライフィセットはそれを許さなかった。

では、これからどうするべきか。
この催しの主催者は、死者を蘇生させることが可能と言っていた。
現に、死んだはずのマロロやヴライが参加者として名を連ねていることから、その言葉には真実性を帯びていた。

では、アンジュを蘇生さるべく、この殺し合いに乗るべきか。
否―――ムネチカは臣下である前に、一人の武士(もののふ)である。
忠節を尽くすために、外道に手を染めるようなことはあってはならない。


「それでは―――小生は何を為せばよいのだ……」

ムネチカは、眉間にしわを寄せて、更なる自問を続けるが。

ヒ ュ ン !

と風を裂く音が聞こえた瞬間に、正座の体勢を解いて、後方の宙へと翻った。

「あら残念、あまりにも隙だらけだったので、手っ取り早く斬れるかと思ったのですが……」
「―――無粋であるぞ……。むっ貴殿は……」

突然の襲撃者に、ムネチカをさらに顔を顰めて、臨戦態勢を取る。
しかし、妖しく光る刀を掲げる、その襲撃者の面貌には覚えがあった。

「志乃乃富士……」
「……しのの…何ですか? ―――まあ良いわ、先程は失礼しました。 お聞きしたいことがあって、少しお話しをさせていただいても宜しいでしょうか?」
「生憎と小生、ヒトの寝込みを襲うような俗物と、言葉を交わす器量は持ち合わせておらぬ」
「まぁ…そうなりますよね……」


―――しくじった……。

襲撃者の志乃乃富士こと、佐々木志乃は、ムネチカと睨み合いをしつつ、内心で舌打ちをする。

志乃としては、ムネチカに特段殺意があって、斬ろうとした訳ではない。
妖刀・罪歌でムネチカを支配下において、彼女が知っている情報を提供してもらうのを目論んでの行動であった。
支配下にさえ置いてしまえば、仮にムネチカが殺し合いに乗っていれば、それを無力化することも可能だ。更にそこから、嘘偽りない情報を迅速に得られることになり、運が良ければ、そこからあかりに関する情報を得られるかもしれないからだ。

志乃があかりの探索に逸るのには理由がある。
それは、先程の第一回放送で発表された、十三名という死亡者数。
この数字は、志乃の想定を遥かに上回る数であった。それだけこの殺し合いに乗っている参加者が多いことを意味する。
あかりは武偵ではあるが、未だ危ういところが多々ある。
だからこそ、早急に合流して、もしものことがないように身辺を警護しなければならない。

だからこその行動であったが、結果はこの有様―――完全に裏目に出てしまっている。
相手側からしても、唐突に斬りかかってきた志乃に対する心象は最悪だろう。


(誤解を解くのも、至難の業ですね……。ならばっ!)
「……っ!」

ここは話し合いよりも、罪歌で斬ってしまったほうが手短に収めることができると結論づけ、志乃は交戦の意思を固め、ムネチカの元へと駆け抜ける。
そして、一気に懐へと滑り込み、その胴元へと妖刀を振るう。

しかし。

「―――遅いッ!」

ムネチカは斬撃を難なく躱すと、お返しとばかりにカウンターの右拳を振るう。
ムネチカの拳は、志乃の頭蓋へと差し迫る。
志乃も上体を反らし、これを回避するがーーー。

「きゃあっ!!」

直撃は避けたものの、ムネチカの拳によって生じた風圧は想像を絶する者であった。
まるで突風が吹いたかのようなその圧力に、志乃の華奢な身体はものの見事に後方へと吹き飛ばされ、コンテナの壁に衝突する。

「ガハっ……!」
「生憎と小生、今は気が立っているが故、加減を知らぬ…」

混濁する意識をどうにかつなぎ止め、前方に視線を送る志乃。
しかし、其処にはムネチカはいない。

「覚悟めされよ、志乃乃富士ッーーー!!」

上空から降りかかる声に反応して、見上げると拳を突き立て、突貫してくるムネチカの姿があった。

「っ……!」

志乃は退避。
ムネチカの拳は、勢いそのままコンテナへと突き刺さる。

その刹那。
ガゴンッ!とド派手な衝撃音とともに数トンはあるであろう、コンテナはその拳の威力によって横転し転がった。

その様子をゴクリと生唾を飲んで、目の当たりにする志乃。
瞬間、志乃の脳内で、声が反芻された。


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想定外の事態に対する恐怖と焦燥により、ピンと張りつめていた志乃の精神は、罪歌の干渉を許してしまい、彼女の中は妖刀の警鐘で溢れ返る。

「化け物……。」

そんな罪歌の声に釣られるような形で、ポツリと言葉を零す志乃。
ムネチカは志乃へと振り向き、更なる追撃をせんと、身構える。
しかし、その瞬間。


ド ゴ ォ ン ッ ! !


明後日の方向から凄まじい爆発音が生じた。
呆気にとられるムネチカと志乃。

しかし、ムネチカは唐突にハッとした表情を浮かべて、慌てた様子で、その音源の元へと飛び立った。
唖然とその後ろ姿を見送る志乃をポツリと残してーーー。




ムネチカは焦燥して、爆音が鳴り響いたその場所へと駆けつける。
焦燥に揺らぐその瞳は、疎らな炎と黒煙が生じる一帯にて、先程自分を叱咤してくれた幼い少年が倒れていることを認めた。

「ライフィセット殿ッーーー!!!」

倒れているライフィセットに駆け寄り、抱き寄せる。
しかし、当人は目を瞑り、苦しそうに呻き声を上げるだけ。

と、そこでムネチカは、自分たちを凝視する視線に気付く。

こちらを振り返るような形で凝視する金髪の青年。
高貴な装束を身に纏っているが、その実はボロボロ。
その手には、鮮血が付着した大針のようなものが握られている。

状況を鑑みて、誰が下手人なのかは明らかだった。

「貴様かぁッーーー!!!」

激昂するムネチカ。ライフィセットを横たえると、拳を握りしめ、下手人たるジオルドへと詰め寄ろうとする。
そんなムネチカの様子を見て、ジオルドはふっ、と嘲笑を浮かべた。

「何がおかしいっ!!」
「察するに僕と戦うつもりのようですが……。良いのですか? 彼をそのままにしておいて……?」
「どういう意味だっ!?」
「僕が彼に突き刺したこれは『どくばり』。 説明書によれば、これによって毒されたものは、『6時間以内に解毒しないと、死に至る』そうですよ」
「なっ!?」

息を飲むムネチカ。
咄嗟にライフィセットの服を捲る。
顕になったライフィセットの肌は基本的には雪のように白かった。
しかし、患部は既に濃厚な紫色へと変色していた。

「っ…!?」
「―――さて、どうします? それでも、彼を見捨てて僕と戦いますか?」
「こ、この卑劣漢めがぁっ!!」

ムネチカは青筋を浮かべて怒鳴りつけると、ライフィセットを抱きかかえて、ジオルドの元から走り去っていく。

「卑劣漢か…ははっ、言い逃れできませんね」

ムネチカの背中を見送るジオルドは、乾いた笑いを浮かべる。

ライフィセットとの戦闘を経てズタボロとなっている状況下、新手との戦闘はどうしても避けたかった。
故に激昂するムネチカを唆して、こうして戦闘を避けることは出来た。
だが自己の生存のために採った言動は、まさに「卑劣漢」と乏められるに値する浅ましいものであった。

この一連の出来事を通じて、改めてジオルドは、自分が徐々に殺し合いの泥沼に浸っていき、
現在進行で自分が自分ではなくなっていることを実感した。

「……カタリナは、今の僕を見ても、受け入れてくれるでしょうか?」

それでも、ジオルドは、愛する少女の存在を希望として、地獄の中で足掻き続けるしかないのであったが、


次の瞬間―――。


彼の視界は紅色に染まるのであった。






「ライフィセット殿、お気を確かにっ……!」

朝陽が照らす大地の上を、白い影が駆け抜ける。
ムネチカは疾走しつつ、抱きかかえるライフィセットに懸命に呼び掛ける。

「―――ベル…ベット……」

意識が朦朧とするライフィセットは、うわ言を繰り返すだけ。
身体に伝う体温は上がっていき、徐々に衰弱しているのは見て明らかであった。

(絶対に……絶対に死なせはせぬッ!!)

既に死のカウントダウンは始まっている。
風前の灯と化しているライフィセットの生命を護るべく、ムネチカは焦燥とともに、大地を蹴り上げる脚に力を込めるのであった。



【H-4/埠頭/黎明/一日目】
【ムネチカ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:精神的疲労(極大)、疲労(中)、焦燥、全力疾走中
[服装]:いつもの服装
[装備]:ムネチカの仮面@うたわれるもの、タイタンナックル@テイルズ オブ ベルセリア
[道具]:基本支給品一色、大きなゲコ太のぬいぐるみ@とある魔術の禁書目録(現地調達)、
クリスチーネ桃子(夾竹桃)作の同人誌@緋弾のアリアAA(現地調達)
[思考]
基本:?????
0:とにかく今は、ライフセットの治療(解毒)の当てを探す。絶対に死なせない。
1:ライフィセットと共に行動し、護る
2:ヴライ、金髪の青年(ジオルド)、志乃乃富士を警戒
3:聖上……。
[備考]
※参戦時期はフミルィルによって仮面を取り戻した後からとなります
※女同士の友情行為にも理解を示しました。
※画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。 



【ライフィセット@テイルズ オブ ベルセリア】
[状態]:気絶、猛毒、腹部に刺し傷
[服装]:いつもの服装
[装備]:ミスリルリーフ@テイルズ オブ ベルセリア(枚数は不明)
[道具]:基本支給品一色、果物ナイフ(現実)、不明支給品2つ(本人確認済み)本屋のコーナーで調達した色々な世界の本(たくさんある)
[思考]
基本:ベルベットを護り、皆と共に殺し合いから脱出する
0:(気絶中)
1:ムネチカと共に行動する
2:仲間達と合流するため、バンエルティア号へ向かう
3:エレノア……。
[備考]
※参戦時期は新聖殿に突入する直前となります
※異世界間の言語文化の統一に違和感を持っています。
※志乃のあかりちゃん行為はほとんど見てません。
※どくばりを刺されました。第二回放送あたりまでに解毒をしないと絶命いたします。
 尚、毒による衰弱で、回復術式にて自己回復することも出来ない状態です。





「―――ここまでが、僕が把握している情報の全てになります、母さん」
「成程……。さっきの獣耳の女に加えて、不死の怪物ですか……。この会場には魑魅魍魎が蔓延っているということね」

罪歌で斬り、自らの支配下においたジオルドに、彼が知りうる限りの全ての情報を吐かせた志乃。
ジオルドから聞いた情報と、自分が先程体験した出来事と併せて、この殺し合いには人ならざるものが多数参加していることを知る。
先程の獣耳の女のデタラメな戦闘能力を考えるに、こういった人外の類が仮に殺し合いに乗った場合は、唯の人間は簡単に狩られてしまうだろう。

であるならば、あかりがそういった輩と出会う前に、排除する必要があるのではないだろうか。

あの獣耳の女はともかく、ジオルドから聞いた桜川九郎なる不死身の化け物は、殺し合いには乗っていなかったと聞く。
しかし、そんな彼でも少しでも気が変わりでもしたら、あかりのような、か弱い人間は、忽ち犠牲になってしまうだろう。


愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛 化け物なんかに 愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛 人間(あかりちゃん)は渡さない 愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛


「―――ええ、化け物は排除しないといけませんね……。」

人間をただ愛する妖刀に、付け入る隙を与えてしまった志乃は、知らぬうちに人外に対する敵意が増長されてしまっていた。
志乃は、妖刀に植え付けられた敵意に従い、人外の類の討伐を決意する。
それが、自分とあかりのためになるものだと信じて。


そして―――。

「あなたにも手伝ってもらいますよ、ジオルドさん」


と、朱く目を光らせるジオルドに対して、刀を突きつけて宣告し、ジオルドもこれに頷く。

本来であれば、ジオルドは殺し合いに乗った人物。
生かしておくと、あかりと志乃のためにはならない。

しかし、現在は罪歌によって、志乃の支配下にある。
であるならば、駒として有効活用するのが得策だろうと志乃は結論づけた。

尤も、この思考についても「ジオルドは紛れもない『人間』であるから、平等に愛して、支配下に置きたい」という罪歌の意思が働いていたことを、志乃は自覚していなかった。


「それでは、行きましょうか、ジオルドさん」
「はい……」

先行く志乃の後を追うジオルド。
罪歌の子として、その目は確かに朱く光っていた。

しかし―――。

「―――僕は…カタリナを―――」
「……? 何か言いましたか?」
「何でもありません……母さんに従います……。」

ジオルドの内でも罪歌の精神干渉とカタリナへの想いがせめぎ合っていた。
今は、罪歌に圧し負けているはいるが、状況が転じれば、彼が自我を取り戻すのはあり得ない話ではないかもしれない。



【H-5/埠頭/朝/一日目】
【佐々木志乃@緋弾のアリアAA】
[状態]:健康、焦燥、罪歌による精神汚染(小)、人外に対する嫌悪
[服装]:制服
[装備]:罪歌@デュラララ!!、あかりちゃんボックス@緋弾のアリアAA
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考]
基本方針:あかりちゃんと共に生きる。その為にあかりちゃんに危害を加えそうな人外の参加者は予め排除していく。
1:所謂人外の参加者を見つけたら、あかりちゃんを護るため排除
2:あかりちゃんとの合流。あかりちゃんを愛でる。
3:アリアや高千穂以上に武貞として活躍しあかりちゃんに愛される。
4:平和島静雄...最強...?どうでもいい。一般人なら保護すればいいだけでしょう。あかりちゃんと×××する。
5:あかりちゃん愛してる。
6:ジオルドについては徹底的に利用する
7:テレビ局にいた二人組(臨也とStork)は見つけ次第、斬る
8:人外の参加者(九郎、ムネチカ)と、殺し合い乗っている参加者(ウィキッド)を警戒。
※参戦時期は高千穂リゾートへ遊びに行った後です。
※罪歌の愛を侵食しあかりちゃんに変換しました。
※罪歌の影響で気分が高揚していますが、あかりを斬るつもりは一切ありません。
※テレビを通じて、自身のあかりちゃん行為の映像を見ました。
※洗脳したジオルドより、彼が会場内で見聞きした情報、知り合いの情報を得ました。
※焦燥状態により、罪歌の精神汚染を多少受けており、所謂人外に対する敵愾心が増幅しております。


【ジオルド・スティアート@乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…】
[状態]:疲労(大)、顔面打撲(中)、右肩に銃痕、全身打痕(大)、罪歌による洗脳状態(不安定)
[服装]:いつもの服装
[装備]: 峯沢維弦のレイピア@Caligula Overdose
[道具]:基本支給品一色、双眼鏡@デュラララ!、無人駆動鎧のリモコン@とある魔術の禁書目録、どくばり@ドラゴンクエスト ビルダーズ2、不明支給品0~1、魔理沙の支給品0〜1
[思考]
基本:母さんの命令通りに動く
0:母さん(志乃)に付き従う
1:ウィキッドを嫌悪。
2:白い少年(累)とその同伴者(チョコラータ)は警戒
3:僕はカタリナのために……。いや、今は母さんのために動く。
[備考]
※ カタリナがシリウスの闇魔法によって昏倒していた時期からの参戦となります。
※ 新羅、九郎と知り合いについての情報交換を行いました。但し九郎は、自身や琴子の能力については明かしておりません。
※ ウィキッドと情報交換をして、カリギュラ勢と王についての情報を把握しました。
但し、ジオルドは他のはめふら勢のことはウィキッドに伝えておりません。
※ 罪歌によって洗脳されておりますが、母への帰属意識とカタリナへの思いで揺れています。今後の展開次第では、カタリナへの想いによって罪歌の洗脳が塗り替えられる可能性があります。


【支給品紹介】
【どくばり@ドラゴンクエスト ビルダーズ2】
霧雨魔理沙に支給。
植物のイバラを加工したどくのついた武器。
原作においては、稀に敵を即死させることができるが、本バトルロワイアルにおいては、稀に致死量の毒を流し込こみ、対象を猛毒状態にすることがある。
猛毒状態となった対象は、6時間以内に解毒しないと、死に至る。

前話 次話
方針決定 投下順 ハナガサイタヨ

前話 キャラクター 次話
異文化交流会 ムネチカ 「会えてよかった」
異文化交流会 ライフィセット 「会えてよかった」
愛されるよりも、愛したい真剣(マジ)で 佐々木志乃 愛 want you! ~Scarlet Eyes~
裏切りの朝焼け ジオルド・スティアート 愛 want you! ~Scarlet Eyes~
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