バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

Strange Interlude

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kyogokurowa

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ジョルノ達と別れてしばらく歩いたシグレの目に留まったのは、巨大な城だった。


(ほぉ、こいつはなんとも立派な建物じゃねえか。)
退魔士の一人として、世界各国を巡ってきたシグレからしても、見事なデザインの建築物だ。

(ただ、屋根がねえってのはどういうことだ?雨が降ったらヤバイんじゃねえの?それともそういう文化ってヤツか?)

ただし、上部を除けばだが。
遠目から見ても城壁こそは立派だが、屋根らしきものが見当たらない。
城の上を見ながら歩いていたら、足元からカチリと、乾いた音が聞こえる。

(ん?なんかヤバいもの踏んじまったか?)
その瞬間、城門へと続くの至る所から、火柱が次々と上がり始めた。


(なるほど、コイツは罠かねえ。ここへ来る前の誰かが仕掛けたのか、はたまた元からあった物なのか。)

魔物でさえもそれなりなダメージを与えるギラトラップは、普通の人間なら効果を存分に発揮する。
普通の人間と言う前提の上での話だが。


「その程度で止められると思ったか?裂空!!」

剣を両手で大きく振りかぶり、地面に思いっ切り叩きつける。
橋より重いものを持てるなら誰でも出来そうなことだが、人間離れした剣の腕を持つ者が行うことで、凄まじい威力を発揮する。
地面が抉れ隆起し、そこから出る津波のような衝撃が、災害か何かのように遠くまで飛ぶ。

裂空の爪痕となる衝撃波は火柱どころか、その出どころになっていたギラトラップまでも吹き飛ばしていく。


(スッキリして良くなったねえ。思えばこの道、ゴチャゴチャし過ぎだったんだよな。)
そのままもう1,2度裂空を打ち出し、罠で張り巡らされた道を更地にしてしまう。
阻む罠が無くなった道を、悠々と進み、城門の前にたどり着く。

(おや?)
目の前の壁の穴から、何かが光ったと思いきや、そこから矢が飛んで来た。
ここまで近いと、人間はおろか魔物でさえもそれを受けざるを得ない。
だが、ハエでも叩き斬るかのように一太刀で矢を砕いた。


(中々悪くはねえが、やっぱり生きた奴等と戦いてえもんだな。)
手ぬるい。
シグレが感じたのは罠に対する物足りなさだった。
ここまで沢山の罠を張り巡らせた技術力は認める。だがそれだけだ。
先程垣根提督という強者と戦ったばかりなので猶更である。


(さーて、この城の中には誰がいるのかな。)
あたかも招かれざる客であるかのような扱いを受けた。
今ので終わりってことにしないでくれよ、と心の中で呟きながら、城の中に入る。


しかし城内はシグレの期待を裏切り、ひどく静まり返っていた。
待ち伏せかとも思いきや、それにしても息遣いや視線を感じない。

(ま、部屋を1個ずつ探していけば、探さなくてもだれか見つけるかもな。
それにこんなデケエ城なら、珍しい武器か神水の一本でもあるかもしれねえ。)



△▽



(これは何が起こったのかしら……)
シグレが城の中に入ってから、少し経った後、赤髪の女性が城門前に現れた。
彼女は目の前の災害後のように抉れた地面を見つめていた。


もしこんなことをしでかした相手が
カタリナ様に出会ってしまったら

最悪の結果を思い描き、近くにいるであろう怪物を自分の手で殺すことを決め、城へと向かう。
その手は汗が浮かび上がり、酷く震えている。
だが最愛の女性の想いを胸に、その震えさえも無理矢理止める。


てっぺんの無い城内は、ひどく静まり返っていた。
一瞬、あの災害のような有様はここへ来る大分前に起こり、関係者は既に去っているのではないかと考える。
それならそれで、ここでひと時の休憩を取ってから魔法学園に向かえばいいとも思う。
だが、しばらく辺りを歩き回るとそうでもないことに気付かされる。


草の緑と池の青で彩られた中庭を闊歩していた時、地面からカツンカツンと、石の階段を踏む音が聞こえてきた。

(………!!)
姿形は分からないが、城前の災害を起こした相手だと思うと、押し留めたはずの恐怖心が再びせりあがってきた。
だが、この場所は自分の水の魔法を生かすには最適な場所。


(そう……木を隠すなら森の中………水を隠すなら………。)
ザックの中に潜んでいた『死の水』を、中庭の池に忍び込ませる。


△▽

(ちっ、ここもただの牢屋か。何かあると思ったら、外れ引いたかあ?)
城の一帯を見回ってから、最後に地下を探ってみたが、結局人っ子一人会えなかった。
武器はおろか、酒さえも無くこの戦いで使えそうなものと言えば、城の隅にあったしけた畑に実ってたジャガイモくらい。
そこまで飢えていないので、それも無視することにした。


「おわっ!?」
水が流れて来るかと思いきや、まるで生き物のようにとぐろを巻き、階段の上から襲い掛かってきた。


(ちったあ面白そうじゃねえか。)
道が細い階段や部屋が狭い牢屋では、長い剣を振り回すのは難しい。
だが、剣の腕のみが彼の取柄という訳ではない。
瞬発力や膂力も、彼を最強の剣士たらしめる要素である。


「震天!!」
剣を上段に構えて、姿勢を水が当たらないように精一杯低くしてから、左足で地面を思いっ切り蹴とばし、中庭まで一瞬で飛び立つ。
剣は短く持ち、最低限の動きで進行方向にある水を吹き飛ばす

「何だこりゃ?ただの水じゃねえのか!?酸か何かか?」
シグレと言えども濡れることなく地下から脱出するのは不可能だった。
かかった命あるものを食おうとする水が、うなじと右腕を濡らし、その部分が焼けるように痛む。


だが超一流の剣客は慌てず騒がず、広い場所に立ったことで、第二の技の構えを取る。

(水は斬ることも出来ねえし、銃で撃つことも出来ねえ。だが吹き飛ばすことは出来るぜ。)
「旋風!」
身をかがめたまま大きくジャンプして一回転。そのまま大剣を軽々と斬り上げる。
纏わりつく死の水を、いとも簡単に吹き飛ばす竜巻の出来上がりだ。


その余波で大理石で作られた城壁の一部が吹き飛び、中庭が荒地になってしまった。

(あらら、やりすぎちまったか。でもさっきの罠は悪くはねぇ。)
「うきゃああああ!!」
「ん?」


中庭と廊下を隔てる扉から悲鳴が聞こえた。
良く見ると、そこには赤髪の女性が蹲っていた。

「ああ、すまねえすまねえ。てっきり人がいるとは思わなかったんだ。怪我はねえか?」


うっかり攻撃に巻き込んでしまったのかと思い、とりあえず謝る。
だが気になることはシグレに1つあった。
今の水は、誰がやったのかということだ。
入り口に来た時と同じ、この城に予め配置されていた罠ならそれでいい。
だが、あの水は火柱が作動した時の、カチリという音が聞こえなかった。
別の罠だからだと言ってしまえばそれまでだが、今のはこの女がしでかしたことだという可能性も拭い去ったわけではない。


「あ……あの……お気遣いいただきありがとうございます…怪我はありません……。」
声を震わせながらどうにか言葉を紡ごうとしている。

「あ~、ビビらせちまったか?俺はシグレ・ランゲツ。殺し合いには乗ってねえから安心しな。」
自分が殺し合いに乗っている危険人物と間違っているのではないかと思い、そうではないことを告げた後、そそくさと中庭から去ろうとする。
そのまま城から出ようと思いきや、ふと思い出したかのように足を止めた。

「すまねえ、ちょっと聞き忘れてた。お前は何かデカイ剣のようなモンを支給されてねえか?『號嵐・真打』って名前なんだが。」
「いいえ、そんなものはありませんが……。」
「そうか。じゃあ残念だな。俺はその剣を探しているんだが。」

会話を交わしていく中、シグレはどうにも違和感を覚えていく。

「あの……シグレ様?誠に不躾ですが、お願いがあります。」
「一応聞いてやろうじゃねえか。」
「私、メアリ・ハントを守っていただけませんか?あなたの強さを見込んでの頼みです。」
「あのなあ。確かに殺し合いに乗る気はねえと言ったが、それでお前を四六時中守るって話にはならねえよ。」

シグレ・ランゲツは業魔から人々を守る退魔士だ。
だが、それはあくまで元の世界の話。
すすんで殺し合いに乗るつもりはないが、すすんでお助けマンになるつもりもない。
それに一人をずっと守っていればそれ以外の相手との交流の機会が減る可能性だってある。


「それと、あまり目を逸らさないでくれねえか?どうにも話しにくくてならねえ。」
「申し訳ありません……殿方の裸……見慣れてないもので……。」
「ああ、そりゃすまねえな。でも着替えはねえし、この格好で良いってことにしてくれ。」

言われてみれば自分の上半身のほとんどを覆っていない格好は、女性の、しかも見た目からして高貴な令嬢との交流には間違っても向いていない。
確かに目を逸らす理由にも納得だったが、逸らした視線の先がどうにも気に食わなかった。
中庭の池、すなわち自分に襲い掛かってきた水がありそうな場所だ。


△▽


(しかし、技だけでなく、恰好まで凄い方とは……。)
メアリの世界では、男女問わず肌を晒すことを良しとする服装は少なかったので、シグレの恰好は非常に特異に映った。

しかし、問題はファッションセンスの違いだけではない。
寸分の隙も目の前の男から感じられないのだ。
幸いなことにシグレを殺さないことで、直接カタリナに害が及ぶことは無い。
だが、彼女に見えている道は、優勝しかなかった。
よしんば最愛の人が生還しても、その先で破滅の運命からは逃れられない。
だから、殺し合いに乗る乗らないは関係なしに殺す。
今は殺せなくても、殺す。


「勝手な頼みをして申し訳ないことは分かっています。ならば、ここから北西の『魔法学園』まで、同行していただけませんか?そこには私の大切な人がいるかもしれません。」
「ちょっと遠いが……特に行き先は決めてなかったし、まあ悪くねえ。そこに知り合いがいねえからって、もう少しお願いしますとか言うんじゃねえぞ?」
「はい。勿論です。」


どうにか交渉の結果、決まった期間だけ同行してもらえることになった。
だが、城から出る間も、メアリはどうすればこの男や、この男ほど強い参加者を殺せるか考え続けた。
目下、シグレという男は、味方にすればこの上なく頼りになるはずだ。
だが、殺すとなると難しくなる。
死の水は回収はしなかった。
迂闊なことをすると、即座に首を斬られてもおかしくない。
自分とシグレの力の差は、それぐらいあると分かっていた。


そうして二人は裏口から出るが、そこでメアリが急に足を止めた。
彼女の目に留まったのは巨大な塔だった。
その真ん中にさらに巨大な塔がでんと構えており、左右にも中央ほどではないが塔が建てられている。

「何でしょうかこれは……見張り台にしては大げさすぎるようですが……。」
「どうした?魔法学園ってのに行くんじゃなかったのか?」
「いえ、少しこれが気になりまして……。」

正体不明の台の上は首が痛くなるほど上を見なければ見えないほどだ。
それはメアリが目的としている魔法学園や、想い人の屋敷以上の高さを持っていた。
城の後ろにこんなものを建てれば、城の威厳が見劣りしてしまうのではないかと思うぐらいである。


「ここに何か書いてあるぜ。」
上ばかり見て下の看板に気付かなかった。ところで、シグレが声をかけた。


『ミナデイン砲
ムーンブルク王国が戦争のために使った、人手も魔物でも使える凄まじい力を持つ兵器
副塔にゆうきのオーブと、まりょくのオーブ、中心にゆうきのオーブを置くことで、その力を発揮する』

「恐ろしいものですね……。」
「これだけデカけりゃ、さぞかし強ええ力を出せるんだろうな。」
興味深そうにてっぺんを見つめるシグレ。
一方で、メアリも似て非なることを考えていた。
これを使えば支給された仮面以上に安全にかつ確実に、参加者を葬ることが出来るのではないかと。
だが、残念なことはその兵器の使い方を知らないということだ。

そしてもう一つ、戦いに慣れた者にも、そうでない者も覚えた違和感があった。


2つの塔があり、片方に飾りがあり、もう片方はない。
これで違和感を覚えない方がおかしい。
只の飾りというには、塔の土台にある宝玉は、メアリ一人では到底賄えないほどの魔力を秘めていた。
だから看板に書いてあったオーブとは、あの宝玉のことで間違いないのは、この城のことが分からない者にも察しは付いた。


「土台の片方にだけ飾りがないのはどういうことでしょうか……。」
「俺はこういうもののことを良く知らねえから、どうとも言えねえや。」


そもそもこの兵器は、今使えるのかどうかも分からない。
それ以前に、発動源となるらしきオーブとやらがどこにあるのかさえ不明な限りだ。
第一、 これ以上興味を示すのは、殺し合いに乗ろうとしていると勘づかれて危険だ。


「まあ、こんな道具に頼った力ってのも面白くねえな。やっぱり一番は持ち主と得物の力がいっぺんに出る剣だ。」
「私……剣を持ったことないので分かりません。」
結局二人はミナデイン砲を後にし、魔法学園へと向かう。


別の世界のこの城で、かつて別の創造主が感じた、何かがおかしいと感じたような、わだかまりを覚えながら。






【C-5 ムーンブルク城 裏/早朝/一日目】

※ ムーンブルク城入り口のギラトラップは、少なくともほとんどは崩壊しました。
※ 中庭の池は『死の水@とある魔術の禁書目録』で満ちています
※ ミナデイン砲の砲台には、『ちからのオーブ』はありますが、少なくとも『まりょくのオーブ』がないため今は作動できません。
他の支給品になっているか、それともどこかにあるかは、また『ゆうきのオーブ』の有無は次の書き手にお任せします。

【シグレ・ランゲツ@テイルズ オブ ベルセリア】
[状態]:右腕、背中に火傷(小)
[服装]:普段着
[装備]:七天七刀@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考]
基本方針: 帰る。號嵐・真打を探す。
0:敵なら斬る。強い剣士なら更に良い。敵意がないなら斬らない。
1:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティは襲わず先にマギルゥとの契約を話す。ただしそれでも襲ってきた場合は別。
2.メアリ・ハントと共に、魔法学園を目指す
3.こいつ(メアリ)何なんだ?
4.ついでに心水(酒)もほしい。

[備考]
  • キララウス火山での決戦前からの参戦です。


【メアリ・ハント@乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…】
[状態]:健康、狂気
[服装]:いつもの服装
[装備]:プロトタイプ@うたわれるもの3 二人の白皇
[道具]:基本支給品一式、エレノアの首輪、カタリナ・クラエスのメモ手帳@はめふら、不明支給品1つ
[思考]
基本:優勝してカタリナ様を破滅から救う
1:カタリナ様の破滅に繋がる連中(ジオルド、キース、マリア)は始末する
2:シグレと共に、魔法学園へ向かう
3:ミナデイン砲のトリガーとなるオーブを探す
[備考]
※魔法学園入学前からの参戦です

前話 次話
病院へ行こう 投下順 物情騒然

前話 キャラクター 次話
屍の道を進み メアリ・ハント Go frantic
何れ花となるモノ シグレ・ランゲツ Go frantic
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