バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

崩壊序曲

最終更新:

kyogokurowa

- view
メンバー限定 登録/ログイン
「いやいや、流石にこれはちょっと……。」

D-4エリアの岩陰から、隣のエリアを遠巻きに覗き込む深紅の瞳が二つ―――。
鈴仙・優曇華院・イナバは、目を見開きながら、遥か視線の先にある光景を眺めていた。
そこで繰り広げるのは、雷鳴轟き、豪風吹き荒れる戦場だった。
幾つもの閃光と爆音が鳴り響き、大地には炎の嵐が吹き荒れる。
それは正しく地獄絵図。
黒平安京の支配者・安倍晴明とヤマト左近衛大将・ミカヅチの衝突は、神話の世界さながらの様相を見せていた。

「はぁ~何で揃いも揃って、こんな無茶苦茶な連中ばかりなんだろう……。」

最初に自分たちと交戦した仮面の巨漢といい、あそこで戦闘を繰り広げる二人といい、どうにも、この殺し合いの会場には規格外の怪物がごまんと存在するようだ。
フィールド一帯が焼け野原となりつつある圧倒的な火力と、光のような速さで繰り広げられる攻防を前にして、鈴仙は呆れ果てたように呟いた。
あんな化け物同士の戦い、自分ひとりでは到底手に負えないだろうし、今は安全圏にいるが、いつあの戦禍に巻き込まれるかわからない。
そうなれば、いくら鈴仙であろうと、ただでは済まない。

「とにかく、ここはさっさと退散してオスカーさん達のところに戻るのが身のためね」

鈴仙はそそくさとその場から退散を決意する。
元々鈴仙、オスカー、みぞれの三人は蝶屋敷探索を経て、墓地を向かっていた。
しかし、道中で後方から凄まじい衝突音が木霊するようになってから、最も俊敏且つ観察力に長ける鈴仙が、偵察役として先行して様子を見に来て、今に至る。
そして、偵察の結果、確認できたのは二人の怪物の激突のみ。
実はその周囲には、化け物達と比べるあまりにも無力な少女が二人いたのだが、壮絶な戦闘音と吹き荒れる炎や土埃によってその姿は完全にかき消されて、鈴仙がそれに気付くことはなかった。
そんなこんなで、鈴仙は一刻も早くここから立ち去ろうとしていたわけなのだがーーー。

「……ん?」

ふと、鈴仙はこちら側に近付いてくる気配を感じて振り返った。
すると、そこには影のような黒い馬のようなものがいた。大きさもそれなりの。
ただ奇妙なことに、馬の首にあたる部分がなく、あるべきはずのものがないその空間には黒いモヤモヤのようなものが揺らめいている。

鈴仙の前に姿を表したそれは、コシュタ・バワー。
セルティ・ストゥルルソンの相棒でもある首無し馬「シューター」。
この殺し合いにおいては、高千穂麗に支給され、彼女とその仲間達を、黒平安京から渋谷駅、公園へと送り届けた存在である。
そんなコシュタ・バワーではあったが、公園到着後は一時待機状態となっていた。
しかし、その後公園に清明が襲来―――天地を揺るがす激闘の余波に巻き込まれまいと、己が生存本能に従って避難を行い、こうして鈴仙と遭遇したのであった。

「……えっと、あなた何者ですか……?」

突如現れた異形―――常人であれば、その存在に怖気付くこともあるかもしれない。
しかし、鈴仙は神、妖怪、魑魅魍魎といった類が蔓延る幻想郷の住人である。
こういった邂逅も珍しいものではないし、この異形からは特段敵意のようなものは感じ取れない。
怪物達が死闘を繰り広げる戦場の傍らで、鈴仙は眼前の異形に対して、コミュニケーションを試みるのであった。




ゆらゆらと、揺れ動く世界の中で、私の意識は覚醒した。
視界は黒一面で覆われていた、今自分がどこにいるのかがわからない。
身体に伝う振動は決して心地の良いものではなく、むしろ不快感を伴うもので、私は本能的にその不快な感覚から逃げ出そうと身体を動かそうとした。

(えっ!?)

だけど、何故か私の意思に反して、手足が動かない。そして同時に全身を襲う強い圧迫感……。
そこで初めて私は自分の置かれた状況に気が付いた。
今、自分は何やら大きな袋のようなものに詰められて、何処かへ運ばれている最中だと。


(―――何で、私……)

何故こんな事になっているのか、記憶を辿る。

最初は訳の分からないままに、殺し合いをしろと言われて、見ず知らずの場所に放り込まれて……。
そこでヴァイオレットさん、ブチャラティさん、月彦さんの三人と出会って……。
そこから月彦さんと一緒に行動を共にして……。
放送で、希美先輩とあすか先輩の死を知って……。
それから、月彦さんに演奏を披露して―――その後の記憶がない……。

結局、なぜ今私がこんな状況に陥っているか分からなかった。

(とにかく、今はここから出ないと!)

だけど、まずは、この窮屈な場所から逃れようと、必死にもがく。
しかしいくらもがいてもこの空間からは抜け出す事が出来ず、それどころか次第に息苦しさと苛立ちが増してくる。

―――その時。

「騒々しいな、小娘」

突然、頭上から冷たい声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声。つい最近聞いた事があるような気がする。
だが誰の声なのかを思い出す前に、私が閉じ込められている袋の中に大量の空気が流れ込んできた。どうやら何者かによって、袋の口が開かれて、外の世界へと解放されたようだ。
新鮮な空気を肺一杯に取り込んで一安心するも束の間―――。

「痛っ!?」

自分の髪が誰かの手によって鷲掴みされている事に気が付く。
乱暴に髪を引かれる痛みに耐えながら顔を上げると、そこには見知った顔があった。

「……つ、月彦さん……?」

不愉快そうに眉間にシワを寄せるのは、月彦さん。
一切の日光を照らさない深緑の森を背に、彼は佇んでいる。
息を呑む私のことを、まるで虫けらを見るかのような目つきで見下ろす彼の姿には、先程までの紳士的な態度の面影など微塵もなく、ただひたすら嫌悪感のようなものが滲み出ていた。
その豹変ぶりに怯みかけるも、今の状況について尋ねずにはいられない。

「あ、あの―――」
「黙れ」

瞬間、ポキリと枯れ枝を折るような音と共に、私の指先に激痛が走った。

「っ!?」

見れば、私の右手の人差し指が折れ曲がり、あらぬ方向を向いていた。

「いっ、たぁ―――」

身体の一部を破壊されたという恐怖心と灼熱のような痛みに襲われて、涙を流し叫びそうになるが。

ポキリ

と、再び乾いた音が鳴り響くと同時に、今度は親指に鋭い痛みが走る。

「ひぐっ!?」
「お前はただ私の質問に答えれば良い。それ以外の発言は許さない」

有無を言わさぬ迫力で突き付けられる高圧的な言葉。

――この人に逆らってはいけない。

私の本能がそう告げている。
全身から汗が吹き出し、呼吸が荒くなる。
だけど懸命に痛みに耐え、込み上げて来る感情を抑え込んだ。
そんな私の心情など知ったことかと、月彦さんは淡々と口を開く。

「お前は、ただの人間か? それとも鬼か? 或いはそれに類するものか?」
「えっ?」

何を言っているのか理解できなかった。
私が一体何者なのか、と問われている事は分かったけど、そもそも「鬼」って何の事だろう……。
困惑している私に対して、月彦さんは不機嫌そうな表情を浮かべると。

「返事が遅い」

ボキリ。
また一本、指を折り曲げられた。

「つあああああああああああっ!!!」

あまりの痛みに悲鳴が溢れる。
月彦さんは相変わらずの不愛想な面持ちのまま、更に四本目の指を折ろうとする。
嫌だ、なんで私がこんな目に遭わないといけないんだろう……。
どうして私はこんな恐ろしい人に捕まっているんだろう……。
様々な疑問と恐怖が入り混じる中、必死に涙を堪えて、私は答える。

「――わ、私は、人間です!」

嘘は言っていない。正直「鬼」とか言われてもピンとこない。
昔話とか怪談とかに出てくるような角を持った怪物のことを思い浮かべるが、私の思う「鬼」と月彦さんが言うそれは違うものなのかもしれないし。
だけど私の言葉を聞いた月彦さんは――。

「嘘をつくな」

――ポキンッ。
四本目の指を躊躇なくへし折った。

一瞬、意識が飛びそうになるほどの痛みに、堪らず絶叫する。

「では、何故貫かれたはずのお前の腹部、何事もなかったかのように完治している?」

そう言って、月彦さんは私の制服に指をさす。
そこで、私は制服には赤い血の跡がべったりと付着していて、穴が開いていることに初めて気付いた。
そして、その下には傷一つ無い、真っ白な肌が晒されている。

腹部を貫いた?どういう事か分からない。
それに貫かれたはずなら、この服の下はもっと酷い状態になっているはず。
だけど、この血のようなものの跡は一体――。

私は訳も分からず、ただただ呆然と立ち尽くす。
脳が理解に追い付いていないから。

だけど―――。

「答えろ」

ポキッ。
五本目の指が折られ、思考の放棄を許さないとばかりに、催促される。
激痛と悲鳴を伴う圧倒的な理不尽を前に、私は成す術がなく。
とにかく今は目の前のこの人を怒らせないように努めるしかなかった。




「―――ということで、この子は私達と行動を共にすることになりました」

オスカーとみぞれの元へと帰還した鈴仙は、引き連れてきたコシュタ・バワーをそのように紹介してみせた。

「そうか。事情は理解した」
「……。」

この首のない馬を眼前にして、二人は当初こそ警戒の色を示したものの、鈴仙による掻い摘んだ説明を受け、ひとまずは受け入れることにした。
尤も、話の肝はそこではないので、主題はすぐに、隣接するエリアで激突している二人の参加者へと切り替わる。

「陰陽師風の男と、裸の仮面剣士か……。付近に他の参加者がいないというのであれば、わざわざ、そちらに介入する必要はないな。」
「それが良いと思います。あれは関わらないのが吉ですよ」

オスカーの意見に、鈴仙も賛同の意を示す。
みぞれの探し人である黄前久美子や高坂麗奈を始めとする他の参加者が、その戦いに巻き込まれているとすれば話は変わるが、彼女は殺し合う二人を除く人影を見た覚えはない。
であれば、あの破茶滅茶な戦闘に下手に関わることは得策ではないと判断したのである。

「……それにしても……また、仮面……」

一方で、それまで聞き手に徹していたみぞれは、呟くように声を発した。
仮面を付けた漢---そう聞くと否応なしに連想するのは、ゲームが始まって間もなくして交戦した、あの炎を纏う巨漢の姿。しかし、陰陽師風の男と交戦しているのはまた別の男であったという。

「何にせよ、仮面を付けている者たちは総じて警戒するに越したことはないな。」
「ですね。色々と反則すぎますよ……」

オスカーと鈴仙は口々に言って、みぞれもこれに同意する。

-――仮面を付けている参加者は一概に強く、危険である。

この殺し合いで見聞きした情報を総括し、三人は共通認識としてそれを胸に刻み込んだ。
そんな折だった。

ドゴンと。
一際大きな爆発音が響き渡り、空気の振動が肌にまで伝わってくる。
音の出所はどうやら、先ほどまで激闘を繰り広げていた二人がいた方角かららしい。

「とにかく今はここから離れましょう。巻き添えを食らうかもしれません」

鈴仙はそう言うと、コシュタ・バワーにサインを送る。
すると首無し馬は、黒いモヤのようなものを醸しながら、その形状を変化させて---瞬く間にそれは複数人が搭乗できるような馬車へと姿を変えた。

「えっ……!?」
「これは……!」

驚きの声を上げるみぞれとオスカーだったが、鈴仙は得意げな顔で、

「凄いですよね、この子色んな乗り物に姿を変えられるみたいなんですよ」

と言い放った。
そして、そのまま彼女は御者台へ腰掛け、手綱を握る。

「さぁ、乗ってください。行きますよ!」
「あ、あぁ…。」

促されるまま、オスカーとみぞれはそれぞれ荷台に乗り込み、座席に腰掛けたところで鈴仙の手が振られた。
直後、三人を乗せたコシュタ・バワーは駆け出す。

進路は東に。当初の予定通りに、墓地方面を目指して。




「ふむ」

鬼舞辻無惨は、目の前で倒れ伏せる高坂麗奈を見下ろしながら、顎に手を当てる。
麗奈の十本の細い指は、全部が全部あらぬ方向に折れ曲がっていて、ぐちゃぐちゃになっている。
涙も枯れたのか、彼女の瞳からは光が消え失せていて、虚空を眺めているだけ。

「なるほど、お前がただの人間だったということは、よく分かった」

拷問に近い尋問の末、無惨は彼女が本当に唯の人間の女であったことをようやく理解した。
本来であれば、このような書生、さっさと殺してしまえばいいのだが、それでも彼は本能的に察していた。
この女には利用価値があると。
理由としては、自分に掛かった再生力に対する制限の解除。
それにこの女自身の傷の再生力にある。
見れば、折れていたはずの麗奈の指は徐々にだが、元に戻り始めている。
恐らくこの女は自分の意思とは関係なしに、自分をまきこんだ周囲のものに対する回復能力を有しているのだろう。
だが、そのカラクリが解せない。一般人であるはずのこの女に、そんな大層なものが備わった理由が。

「―――高坂麗奈……」

無惨は、麗奈の首根っこを掴むと、そのまま持ち上げた。

「かはっ……!」

麗奈は為されるがまま宙吊りになり、首を絞められ苦しそうに顔を歪める。
だが、そんなことは気にも留めずに、無惨は麗奈の顔に自分の顔を寄せた。

「お前はこれから私に付き従ってもらう。拒否権はない」
「ぁ……。」

一方的に突きつけられる宣告に、麗奈は掠れた声を漏らす。

(な、何で……こんなことに……)

麗奈はもう涙すら出てこなかった。
なぜ自分がこのような仕打ちを受けているのか、全く分からない。
ふと視線を落とすと、ボロボロになった自分の指が目に入った。

この手は、自分が『特別』になるため―――あの人に、音色を届けるためにと懸命になって磨いてきたものだった。
それが今となっては見る影もなく、まるで別の何かに変わってしまったような気がする。
悔しくて、辛くて、悲しくて―――。
そして、怒りが湧き上がってくる。
目の前の男を憎く思った。
こちらの想いも願いも何もかもを踏みにじって蹂躙してくる、この男の存在がたまらなく許せなくなった。
その怒りは麗奈の中で静かに、しかし確実に膨れ上がり――。

「―――っ!!」

やっぱり、やられっぱなしは性に合わない。
意を決して反抗の意思を示そうとしたその時―――。

「高坂さん!!」

麗奈にとって聞き覚えのある声が、何処からか聞こえた。
無惨はピクリと眉を動かすと、声の聞こえた方向へと顔を向ける。
麗奈も釣られてそちらに目を向ければ、三つの人影が木々の合間を縫うようにして駆け寄ってくるのが見えた。
その内の一人は見覚えのある人物。

「……よ…ろい…づか……先輩……」

いつも誰よりも早く朝練に来て、オーボエの練習に勤しむ先輩の姿がそこにはあった。
普段は物静かな彼女からは想像もつかない程の焦燥感に駆られているようで、息も絶え絶えに、こちらへと向かって来る。
その後ろには見知らぬ男女が二人付いていた。
ブロンド色の短髪の男は、黒のタイツに純白の騎士服とマントを羽織っている。
女の方は兎のような耳を頭に付け、赤のネクタイ、紺のブレザーにプリーツスカートを履いている。

「何だ、お前達は?」

麗奈の首を片手で締め付けたままで。
突然の乱入者に無惨は不快感を示すように睨み付ける。

「それはこっちの台詞ですよ、貴方こそ彼女に何をしているんですか!?」

兎耳の少女は毅然な態度で言い放つ。
その指先は既に無惨の頭蓋に標準を定めている。

「か弱き女性への蛮行、到底見過ごすわけにはいかない。彼女を離してもらおう」

金髪の騎士風の青年も、少女の隣に立ち、無惨を威圧する。

「……高坂さんを…放して……!」

そして、鎧塚みぞれも麗奈が見たこともないような険しい表情で、彼を威嚇する。
三者三様に、無惨に対して敵意を剥き出しにしている。

それを見た無惨は、眉間にシワを寄せると――。

「不愉快だ」

殺意を剥き出しにして、眼下にいる三人を抹殺すべく、身体から触手を出現させる。
――瞬間。
ゴウッ!と凄まじい突風が吹き荒れたかと思うと、それぞれの触手が三人に向けて、襲いかかるのであった。




コシュタ・バワーで、森林地帯を駆けること数刻。
木漏れ日が全く差し込まない薄暗い森の中で、みぞれは視界の隅で、“それ”を捉えて、弾かれたように馬車を飛び出した。

「何っ!?」
「ちょっ、みぞれさん!?」

みぞれの唐突な行動に鈴仙とオスカーは驚きの声を上げたものの、彼女は既に馬車の外に飛び出している。
二人も慌てて彼女の背中を追って馬車を飛び出すと、みぞれが走るその先に、二つの人影があることに気付く。
一人目は、ペイズリー柄の着物に身を纏った青年。
そしてもう一人は、みぞれと同じ学生服を身に纏った少女で、青年によって首を締め上げられている。
恐らく暴行を受けている少女は、みぞれから伝え聞いている黄前久美子か、高坂麗奈のどちらかであろうが、どちらにせよ、この暴行現場を捨て置く訳にはいかない。

「……高坂さんを…放して……!」

オスカーと鈴仙を伴って、二人の前に立ったみぞれは、青年に対して、少女―――高坂麗奈の解放を要求する。
だが、そんな三人に返ってきたのは、青年の苛立ち交じりの言葉と、指から放たれた三本の触手であった。

「こんのーーーっ!!」

眼前の男は人間ではない―――そう悟ると同時に、鈴仙は弾幕を放ち、それらを撃ち落としていく。
青年は麗奈の首を絞めたまま、ピクリと眉を顰めると、空いている片手から追加の触手を振るう。

「……オスカーさん、これをっ!!」
「ああっ!」

みぞれは瞬時に氷の剣を生成し、それをオスカーに投げ渡す。
そして、続けざまにもう一本の剣を生成すると、後に続く触手を斬り捨てていく。
オスカーは受け取った剣を握りしめ、襲い掛かる触手を躱しつつ、青年の元へと肉薄する。

「目障りだ」

オスカーの接近を煩わしく感じたのか、その男―――鬼舞辻無惨は鬱陶しげに吐き捨てると、麗奈を投げ捨て、本格的な迎撃の態勢をとる。
ゴミのように投げ飛ばされた麗奈は、そのまま近くの樹木に叩きつけられ、ずるりと地面に落ちた。

「高坂さんっ……!」

みぞれの呼びかけに反応ができない麗奈。意識はどうにか保ってはいるようだが、それでも相当のダメージを負っているらしく、苦しそうに悶えている。
それを横目に、鬼の王は全身から触手を伸ばす。
先程は埃を払いのける程度の感覚だったが、今度は明確なる害意を以て放たれたそれらは、先のものとは比にならないほどに速く、オスカーの頭蓋目掛けて一直線に伸びる。

「っ!!?」

電光石火の如く迫る脅威に、オスカーは反射的に身を捩るが、数本の触手が彼の肩を切り裂いた。
鮮血が舞う中、オスカーは歯噛みしながら後退する。
だが、無惨の追撃は止まらない。
間髪入れずに、複数の触手が四方八方から一斉に押し寄せる。

「……させない……!」

オスカーを援護すべく、みぞれが冷気を纏った氷柱を生み出し、飛来する触手を打ち落とさんとする。
しかし、それよりも速く別の触手が氷柱を貫き、粉砕。
勢いそのまま、みぞれの身体を貫かんと襲い掛かり、同時にオスカーの喉元にも別の触手が差し迫る。
オスカーもみぞれも咄嗟に回避を試みようとする。
しかし、触手の速度はまさに弾丸―――人間の反応速度では到底間に合わない。

「波符『赤眼催眠(マインドシェイカー)』!」

そこに割って入ったのは、鈴仙だった。
彼女は樹木の上へと跳躍し、光弾を展開―――それを拡散。
そして号令を下すと、空中で静止していた弾幕は雨のように降り注ぎ、二人に迫りくる触手を寸前で撃ち抜いていった。
危機を脱したオスカーは僅かな時間で体勢を立て直すと、触手の主へと向かって地を蹴り上げた。

だが―――。

「何故、私が―――」
「「「っ!?」」」

土埃と落ち葉が勢いよく舞い上がったかと思うと、既にオスカーの視界から、鬼の首魁の姿は消えていた。

「お前たちのような下等生物に時間を割かなければならない?」

そして次の瞬間には、太枝の上―――鈴仙の真横に立っていることに全員が気付いた。
鈴仙は、慌ててその場を離れようと試みるも、時すでに遅く。

「―――私の手を煩わせるな」

こめかみに青筋を浮かばせながら、無惨は背中から伸びた触手の先端で鈴仙の胸を貫いた。

「がはっ……」
「鈴仙さん!!」

ごぽっと口から血液が吐き出され、鈴仙は力なく崩れ、地面に落下。
無惨からすると、何かと質量ある弾幕を放ってくる鈴仙は、最も目障りな存在であったため、戦いを円滑する上で、最初に排除したのである。

「よくも―――」
「次は―――」

血溜まりを作り倒れ伏せる鈴仙から、次に始末すべき人間へと視線を移そうとしたその時――。
無惨の瞳は、自身に向けて飛び上がり、剣を振りかざさんとするオスカーの姿を捉えた。

「お前か」

無惨は忌々しそうに顔を歪めると、先程と同様に鞭の如く、全身の触手を振るう。
しかし、オスカーは臆することなく無惨に向かっていき。

「ライジングブラスト!」

手にした剣を振り上げ、霊力を宿した竜巻を無惨へと放つ。
暴風の直撃に触手は千切れ飛ぶが、無惨自身は咄嗟に大樹から飛び降り、これを回避。
オスカーの技は、そのまま樹木に激突。
轟音と共に、巨大な幹が斜めに裂けるように切断され、それに伴い、暗がりの森の中に一筋の陽光が差しこむ。
無惨は、その光から遠ざかるため、木陰の元に跳躍。
こめかみに浮かぶ青筋を増やしつつ、反撃に転じようとするが。

「アイス・ウォール!」

みぞれの掛け声とともに、足元から突き出してきた巨大な氷の壁。
障害物の出現に否応なしに、足止めされる。

「小賢しい真似を―――」

怨恨の籠った呟きと共に、触手を一振りし、無惨は障壁を破壊。
分厚い壁が粉々に砕かれ、視界が開ける。
しかし、壁越しに存在していたはずのオスカーは、既にそこにはおらず。

「ミラージュダイブ!」

直後、無惨の真上から声が聞こえた。
無惨が見上げると、そこには剣を振り下ろす純白の騎士の姿―――。
咄嵯に無惨は両肩から触手を伸ばさんとするが、間に合わず。

――ザンッ!! 一閃。

無惨の右腕は、オスカーの剣によって斬り落とされる。
鮮血が噴き出し、枯れ枝や枯葉で覆われた地面が紅色に彩られる。
その光景を見て、無惨はピキリとまたしても額に血管を浮き上がらせる。

「アサルトファング!」

すかさず追撃。オスカーは両手に握った剣を無惨の胴目掛けて振るう。
―――この怪物は確実にここで仕留めなければならない。
そんな強い意志を込めて斬撃が繰り出されるが。

「図に乗るなよ、下郎!」
「っ!?」

無惨は斬られた腕の断面から新たな触手を生やすと、それでオスカーの剣を掴む。
オスカーが目を見開くと同時に、肩口から生やした触手をオスカー目掛けて突き出す。

緋の蒼(Realize)―――」

しかし、オスカーの背後より、影が一つ躍り出ると、

「―――瑠璃陽夜(Lapix Soliel de minuit)!」

両手に氷の大剣を握りしめ、みぞれはオスカーを庇うようにして、無惨の触手を弾き飛ばした。

「何っ……?」

弾き飛ばしただけではない。大剣に纏わる冷気がみぞれの意思に呼応しているのか、触手から伝い無惨の左肩まで凍らせていく。
その攻撃に、無惨は眉を吊り上げてみぞれを睨み付け、瞬時に後退。
一方で、オスカーは触手から強引に剣を引き抜くと、再度それを振るい、霊力を宿した光弾を放つ。

「忌々しい虫けらどもが……」

無惨は苛立ち交じりに吐き捨てると、光弾から逃れるべく跳躍。
その瞬間、それを待っていたかと言わんばかりに、複数の弾丸が無惨の身体を貫く。

「貴様ァ……!」

激昂する無惨が見下ろすと、片手で胸の傷口を庇うように押さえつつ、もう片方の手で無惨を指さし、苦々しく“したり顔”を浮かべる鈴仙の姿がそこにはあった。
彼女は倒れ伏せた後、死に体の身体に鞭打って起き上がっては、波長を操って無惨の視界から行方をくらましていた。
そして、オスカーとみぞれが無惨の注意を惹きつけている間に、死角から攻撃を仕掛けたのである。

(……とりあえずは、まだ戦える……だけど……)

歯噛みをしつつ、宙に浮かぶ無惨に向けて、弾幕を連射していく鈴仙。
先程の深傷については、支給品の『対外傷キット』なるチューブに詰められたジェルを利用して、応急処置は済ませている。
彼女がこうして一命を取り留め、戦線に復帰できているのは、塗るだけで消毒・止血・傷口を閉じるという3つの効能を発揮するという優れた支給品と、永遠亭で八意永琳に師事した医療知識の賜物であるのだが―――。

ゴボリ。

―――瞬間、鈴仙の口から盛大に血が溢れでた。

「……かはぁ……」
「鈴仙っ!?」

問題は、先の一撃より沸き上がる体内から身体を急速に蝕まわれる感覚。
全身に伝う灼熱感を伴う激しい痛み。
考えられるのは一つ。毒――それも外傷用の消毒作用などでは到底太刀打ちできない猛毒。
それが先の攻撃で、直接体内に打ち込まれたというところだろうか。

「……気を付けて下さい!こいつ、攻撃の際に毒のようなものを……!」

血反吐を吐き出しながらも、鈴仙はオスカーとみぞれに警告しつつ、無惨との戦闘を継続。オスカーとみぞれも、彼女の言葉を聞いて、より一層気を張り巡らす。

(……何れにしろ、早めに解毒しないとまずいわね……でも、この状況じゃあ……)

自分は長く戦い続けることは出来ない、故に早期に決着をつけねばならない―――と、鈴仙は焦燥感に駆られながら、必死に弾幕を放ち続けるのであった。




「うぐっ……」

全身に走る痛みを堪えながら、ようやく身を起こすと、目の前では信じられないものが繰り広げられていた。

「……っ!?」

それは、私が初めて目にする「殺し合い」の光景であった。
あの月彦という男は、化け物だったのだろうか。気持ちの悪い触手を全身から伸ばし、それらをまるで手足のように振り回している。
そんな化け物相手に果敢に立ち向かっているのは、騎士風の男性と、兎耳の少女、そして鎧塚先輩だった。
三人は、私の理解の及ばない飛び技や、魔法のようなものを駆使して、応戦している。
他の二人はまだしも、鎧塚先輩は私と同じただの一般人だったはず―――。
どうしてあんな芸当ができるのだろう? 疑問は尽きないが、今はそんなことを考えても仕方がない。

「鎧塚先輩―――」

眼前で繰り広げられているのは、人智を超えた戦いだ。
何の力もない私が迂闊に近づこうものなら、足手纏いにしかならない。
だから、今はその趨勢を見守ることしかできない。

「負けないで……」

祈るように呟く私の視界の中で、戦況は刻々と変化していった――。




(下衆どもめが―――)

殺したと思い捨て置いた兎にまさかの不意打ちを喰らって、怒り心頭の無惨。
幾重の弾丸を全身に浴びた後も、殺意を絶やすことなく、無数の触手を鈴仙とオスカーに射出し、攻め立てる。

(誰の許しを得て、この私の邪魔をする……!)

襲い掛かる触手に対し、オスカーも鈴仙も迎撃及び回避しつつ、捌いていく。
しかし、ヒュンヒュンと唸りを上げて、振り回される触手は、無惨の感情の高揚に比例して、その速度を上げていき、徐々に二人の反応が追い付かなくなる。

「ぐぅ……!」
「がぁっ……!」

捌ききれなかった触手が二人の身体を貫き、肉を抉り、鮮血が宙に舞う。
それでも二人は怯むことはなく、果敢に触手の迎撃に奮闘する。

二人(・・)とも間違いなく殺してやる……!)

そんな二人に対し、更に苛立ちを募らせる無惨は、無数の触手を鞭の如くしならせ、一気に畳み掛けにいく。
それはまさに怒涛の勢いであり、オスカーと鈴仙は為す術もなく追い詰められるが。

(―――待て……!)

その瞬間、無惨の中で、一つの違和感が芽生えた。
何か気持ちの悪い感覚が胸中を渦巻く。

(何だ、この違和感は……!)

確かに目の前の二人の命は風前の灯火だ。
そこに疑いようはない。しかし、それなのに、何故か無惨の本能が警鐘を鳴らしているのだ。
何か重要なことを見逃しているのではないか、と。
そして、それが一体なんなのか――。

緋の蒼(Realize)―――」


思考を巡らす無惨の耳に、少女の声が響いた。

ハッとした様子で、声のした方向―――上空を見やると、そこには背中に氷の翼を顕現させたみぞれの姿があった。

銀青色の魔力を帯びて、煌々と輝く双翼が羽ばたかせるその姿は、まさに「青い鳥」。

「青い鳥」はその両の掌を無惨に向けてかざしており、青白い光が収束しつつある。



瞬間、無惨はゾクリと背筋が凍るような感覚を覚えた。



(―――何故だ、何故私はあの女の存在を失念していた? )



自分の身体を凍らせた時点で、あの女は男よりも優先して、排除すべきだと認定したはず。

なのに何故―――。



「……ぶち、かましてください……みぞれさん!」



満身創痍の自身の身体を支えながら、鈴仙が叫ぶ。

その紅い瞳は妖しく輝いており、眼光鋭く無惨を射抜き、勝ち誇った顔を浮かべている。



(こいつか……この畜生風情が、何か術の類を――)



鈴仙の能力により、自らの認識にズレが生じていたことを悟る無惨。

実際のところ、無惨はみぞれの存在を忘却させられたわけではない。正確には、鈴仙が「波長を操る程度の能力」によって、無惨の認識を、オスカーと鈴仙の二人のみに極振りさせた、という言い方が正しい。

頭の隅には、記憶は残っているものの、その他の事柄はぼやけたようにしか覚えておらず、頭に血が上りすぎたのも相まって、無惨は無意識のうちに、みぞれという存在についての警戒を怠っていたのである。



「―――リズと青い鳥(Liz et l'oiseau bleu)ッッッ!」

だが、時既に遅し。みぞれの叫び声と共に、集約された膨大な魔力が無惨の頭上から放たれる。
―――アレはまずい、と無惨の体内にある五つの脳が満場一致で、警鐘を鳴らす。
生物としての生存本能が、全力の逃走を促す。
しかし、そのような猶予は与えられず。
瞬間、無惨の身体は眩い青の光に吸い込まれるのであった。




先程までの喧騒が嘘のように、静まり返った森林の中。
オスカーと鈴仙は荒くなった呼吸を整えつつ、力なく地面に腰を落としていた。
そんな二人の前に、みぞれがふわりと舞い降りると、眼前の光景を眺める。
視線の先には、氷漬けにされたフィールド。
大地も、樹木も、何もかもが氷結され、その場にいるだけで肌が痛くなるような寒さに見舞われる。
そしてその中心には、一つの氷像―――背を向け全力で逃走しようと試みるも、逃げること叶わず、氷漬けとなった哀れな怪物の姿があった。

「……。」

オブジェのように、ただ静かに佇むそれを、みぞれはじっと凝視して―――。

「―――演奏終了(finale)……」

ポツリと呟いたと同時に、魔力を解除。
バリン!と派手な音と共に、凍結していたあらゆるものが砕け散った。
地は裂け―――。木々は粉砕され―――。
そして、鬼舞辻無惨の身体もバラバラに弾け飛び、纏わりついていた氷も霧散した。
ぐちゃりと、鬼舞辻無惨だった肉片が、荒廃した大地に飛び散った。

「……っ!!」

その惨状に、みぞれは顔を顰める。
嘔吐感が込み上げてくるのを堪えつつ、その瞳は揺らめきながらも無惨の残骸を捉える。

―――これ、私がやったんだ……。

麗奈を助けるため、自衛のためとはいえ、自らが犯してしまった「殺人」という行為への背徳感―――。
そして、人としての一線を越えてしまったという事実に対する恐怖が押し寄せて来ると同時に、大量の魔力の行使の反動で、みぞれの意識は遠退きそうになるが――。

「しっかりしろ、みぞれ」
「オスカーさん……」

倒れそうになったところを、オスカーに支えられる形で事なきを得た。
「ありがとうございます……」と礼を述べながら、みぞれはゆっくりと立ち上がる。

「また君に助けられた形になってしまったな……礼を言う」
「いえ、オスカーさんと鈴仙さんが注意を惹きつけてくれたおかげですから……」

オスカーの身体はあちらこちら痛々しい傷跡があり、そこから血が流れ出ている。
鈴仙も同じようにボロボロの状態で、向こうでへたり込んでいる。
満身創痍の二人を見て、申し訳なさそうに頭を下げるみぞれ。
そんな彼女の肩をポンと軽く叩いて、労うと、オスカーは倒れている鈴仙の元へと歩いていく。
みぞれもそれに続こうとしたところで、「鎧塚先輩……!」と彼女の背後からよく知る声が聞こえてきた。
振り向くと、そこには身体を引き摺るように歩み寄ってくる、吹奏楽部の後輩の姿があった。

「高坂さん……」
「先輩……もう終わったんですよね……?」

恐る恐る尋ねる麗奈。
その怯え戸惑う姿は、普段の部活で見せるクールで情熱的な彼女とはかけ離れており、とても弱々しい小動物のような印象を受ける。
無理もない―――彼女はかつての自分と同じ、ただの女子高生なのだから。そんな彼女を見て、みぞれはゆっくりと口を開く。
そして、穏やかな口調で――。
部活では先輩らしいことは何もしてあげられなかったから……せめて今この場だけでも、先輩として彼女を安心させてあげようと――。

「うん……もう大丈夫……」

そう答えた。
その言葉を聞いて、ほっと麗奈は安堵の表情を浮かべた。
そんな彼女に、みぞれはそっと手を差し伸べる。

「え……?」
「これからは、一緒に……」

差し出された手を戸惑いがちに握る麗奈。
みぞれの手は冷たかったが、不思議と温もりを感じた。
その温もりに、麗奈は心落ち着かせる。そこでようやく―――。

(……ってあれ?)

麗奈は自分の身に起きている異変に気がつく。

(私の指が……)

無惨によって折り曲げられた十本の指が全て元に戻っており、しかも折れた箇所が腫れてすらいないことに。
まるで、これまで体験したことが全て悪夢であったかのような錯覚に陥る。

(確か、あいつも『腹部が治っている』と言っていたけど……?)

麗奈は自分の身に何が起きているのか混乱する。
無惨は自分のことを『普通の人間』かどうかを疑っていた。
自分は間違いなく、『普通の人間』である―――はず。
しかし、この回復能力はいったい何なのだろうか?
それに、みぞれがあの化け物相手に振るっていた能力も気になる。
何故、ただの女子高生であるはずの自分達が、映画で観るような超能力に触れるようになったのだろうか?

「あの…鎧塚先輩---」

聞きたいことが山ほどある。
だから一度、情報整理も兼ねて、どこか腰を据えて話をしようと、麗奈が口を開こうとした矢先――。

「鈴仙っ!!しっかりしろ、鈴仙っ!!」

二人が振り返ると、オスカーが大声で鈴仙の名を呼びながら、彼女を抱き起こしていた。
鈴仙は、盛大に口から血を溢して、苦しそうに肩で息をしている。いつの間にか、顔には赤い腫れ物のようなものまで出来ている。
そんな鈴仙の様子を目の当たりにして、二人は慌てて駆け寄る。

「っ!?」

側に寄ってみぞれ達はその惨状に絶句する。
鈴仙の顔には赤く大きな腫れ物が出来ており、身体は既にボロ雑巾のように傷だらけであり、満身創痍の状態であった。

「……ど、どうやら、相当強力な猛毒のようで―――」

鈴仙は苦悶の表情を浮かべながら、必死に言葉を紡ぎ出す。

「今は喋るな!東に行けば、病院があるはずだ。解毒剤もあるかもしれない。それまで耐えてくれ!」
「……すみません……助かります……」

オスカーは、口笛を吹き、離れた場所に待機させていたコシュタ・バワーを呼び寄せる。
そして、鈴仙を運ぶべく、彼女に触れようとしたその瞬間。

「ゴホッ……ゲボッ……!」

今度はオスカーが咳き込み、その場で、がくりと膝をついた。

「オスカーさん!?」

目を見開くみぞれたちの前でオスカーは吐血。
口からはゴボリと紅い液体が零れ、地を彩る。
それを皮切りに、オスカーは呼吸が乱れ、苦悶の表情を浮かべるようになる。

「……ぐぁ……こ、これは……」
「ま、まずいですね……オスカーさんにも毒が回り始めてるようですね……」
「そ、そんな……」

鈴仙ほどではないにしろ、オスカーも先の戦闘で、無惨の触手によって無数の傷を負っている。

時には裂かれ、時には穿たれ―――。
無惨が攻撃の際に、毒を注入するということであれば、その機会は十分にあったといえる。
鈴仙の時と同様に、オスカーの身体の中にも既に無惨の血液が侵入していたとしてもなんらおかしくもない。

「と、とにかく……急がないと……高坂さん、手を貸して……」
「は、はい!」
「……ハァハァ……すまない……」
「……で、出来るだけ……急いでもらえると……助かります……」

慌てた様子で、みぞれはオスカーに肩を貸して立ち上がらせる。
麗奈の方は、鈴仙の身体を支えるように寄り添い、共に歩き出そうとする

―――事態は一刻を争う。
故に四人は、大急ぎでその場から立ち去ろうとする。だが――。

「―――待て」

ヒュンと風を切る音が聞こえたかと思うと、次の瞬間にはボトリと何かが落下する鈍い音。

「えっ?」

突然の出来事に、麗奈は呆気にとられる。
目の前に落ちたそれに、視線を落とすと彼女は目を見開く。
地面に転がっているそれは、彼女の右腕であったのだから。
そして自分の右肩より先の部位がなくなり、断面から血飛沫を上げていることを認めると同時に、激痛が走った。

「あ”あ”あ”あ”あああああああああああああっ!!!」

切断された右腕の断面を、もう片方の手で抑えて、絶叫を上げる麗奈。
彼女という支えを失った鈴仙は、地面に倒れ込み、呆然と麗奈を見上げる。

「―――誰の許しを得て、私の元を去ろうとしている?」
「「「っ!?」」

その場にいる全員が、声のした方向に振り向く。
そこには、紛れもなく、つい先程倒したはずの鬼の王―――鬼舞辻無惨の姿があった。

「何で、どうして……!」

驚愕のあまり、声を震わせるみぞれ。
オスカーも、鈴仙も、無惨の姿を見て唖然となる。
バラバラになったはずの身体は元に戻っており、何事もなかったのように無惨は、ただ佇んでいる。

「―――お前は私の従者と言ったはずだ、勝手に離れることなど許されない」
「あぁ…あぁ……」

無惨は、みぞれやオスカー、鈴仙などには一瞥もくれず、ただ腕を欠損しのたうち回る麗奈を睨みつける。
その視線に射抜かれた彼女は、痛みを忘れるほどの恐怖を覚え、身体を硬直させる。
そんな麗奈の態度に、無惨は眉を吊り上げて、冷酷な口調で告げた。

「―――言いつけも守れず、口も聞けぬ人間・・など不要だ」
「ひっ!?」
「高坂さ―――!?」

瞬間、爆発する殺意。

ハッと我に返った、みぞれが―――。
鈴仙が―――。オスカーが―――。
行動を起こす、その前に―――。

轟ッ!

と風が吹いたと同時に、一本の触手が麗奈の顔面目掛けて射出。

ぐしゃり。

と、果実が割れたような音とともに、麗奈の整った顔は触手によって貫通した。
顔面を貫かれた彼女は、そのままピクリピクリと痙攣し、何とも奇妙なタップダンスを披露したかと思うと、すぐに動かなくなる。
触手が引き抜かれると、壊れた人形のように崩れ落ちた。

一瞬の出来事。
だけど、これでおしまい。
「特別になりたい」と願う少女の人生は、呆気なく幕を閉じたのであった。


【高坂麗奈@響け!ユーフォニアム 死亡】




「あぁ…あぁああ……!!」

大地に倒れて動かなくなった麗奈を見て、みぞれは声にならない叫びを上げた。

「リズ」を失った「青い鳥」は、絶望ひしめく戦場で、ようやく探し人の一人と再会できた。
偶然が相まって手にした異能を以って、せめてもの彼女のことは護ってあげたいと思っていた。
だけど、それはもう叶わない。
圧倒的な理不尽が、彼女の命を奪ってしまったのだから。

「うわああああああああああああああああああっーーー!!!」

その瞬間、みぞれの中で何かが弾けた。
獣のような泣き声とともに、魔力を一気に解放し、大剣を生成。
怒りのままに、真正面から無惨へと突貫する。

「……みぞれっ!」
「……だ、駄目です、みぞれさんっ!!」

鈴仙とオスカーの声が聞こえるが、今の彼女には届かない。
感情が制御できず、頭の中には麗奈を殺した無惨への憎悪だけが渦巻いている。
そんなみぞれに対して、無惨は顔を顰め―――。

「―――異常者が……」

吐き捨てるように呟くと、全身の触手を一斉に射出。
瞬速の触手は、一斉にみぞれの大剣を捉えると、粉々に打ち砕いてしまう。

「っ!?」

勢いそのまま、みぞれの腹部を貫かんと、迫る触手の群れ。
咄嗟に氷の盾を生成し、防御は間に合ったものの、勢いは殺すことは出来ず。
あっという間に、みぞれの身体は触手の圧力により吹き飛ばされ、木の幹へと激突。
その衝撃は、華奢な身体のみぞれにはあまりにも重く―――。

「がはっ!?」

みぞれは口から血を吐き出し、ズルリと崩れ落ちる。そんな彼女に追い討ちを掛けるかのように、無惨の触手は追撃を仕掛ける。
飛来する触手から身を守るべく、みぞれは盾で全身を覆い隠す。
触手は怒涛の勢いで盾に衝突していき、彼女の身体はその都度木の幹に叩きつけられていく。

「っ……ぐぅ……っ!?」

凄まじい速度で、何度も殴打されながらも、みぞれは必死に耐え続ける。
喉の奥より込み上げてきた鮮血が口内を満たし、鼻腔を抜け、逆流する。
矢継早に押し寄せる激痛の波に、意識が遠のきそうになったその瞬間―――。

「――やめろぉおおっ!!」

怒号が響き渡り、それと同時に無数の弾丸が触手を撃ち抜いていった。

「―――死に損ないめが……」

苛立つ無惨の声に振り向くと、そこには無数に分身した鈴仙の姿。
どの鈴仙も満身創痍。立てているのが奇跡と言えるほど、ボロボロで疲弊しきっている。
それでも尚、彼女は人差し指を無惨に向けて、牽制している。
無惨は、標的を鈴仙に切り替えると、即座に無数の触手を繰り出した。

「……みぞれ、大丈夫か!?」
「……オスカー……さん……」

無惨と鈴仙の交戦によって、轟音と土煙が巻き起こっている中、オスカーが駆け寄ってくる。
自身も全身ズタボロで息も絶え絶えの状態で、自分を抱え起こそうとするオスカーの姿を、みぞれは霞む視界の中で見つめていたのだが---。

「……っぁ---」

やがて、彼女の視界は黒に染まっていき―――。
その意識は闇へと沈んでいくのであった。




鬼舞辻無惨と鈴仙・優曇華・イナバの戦闘は苛烈を極めていた。
光弾と触手が飛び交い、耳をつんざくような轟音が絶えず鳴り響き、辺り一帯には土煙や木片が舞い上がる。
そんな煙幕の中から、飛び出す黒い影が一つ。
意識を失い眠りに堕ちる少女を荷台に乗せ、戦場から離脱する黒いそれは、馬車へと変化したコシュタ・バワー。
馬車と言っても御者台には誰もいない。コシュタ・バワーは彼自身の意思で、進行方向を定めて戦場から遠ざかっていく。

「……これで良い……」

戦場から遠ざかる馬車を見送りながら、オスカー・ドラゴニアは静かに呟いた。
意識を失ったみぞれを馬車へと運び込み、戦場から離脱させたオスカーは、此処に残り、鈴仙とともに無惨と戦い続けることを選択したのである。

「ゴホッ……」

未だ喧噪が収まらない中、オスカーは咳き込むと共に、血反吐を地面に零す。

「私も長くはもたないな……」

彼の身体には、無惨の血液が既に侵入しており、脈が乱れ、激痛が走っている。今無惨と戦っている鈴仙も同様に毒を打ち込まれた状態であり、その量はオスカーよりも遥かに多い。
既に限界に達しているはずなのだが、それでも死に物狂いで戦い続けている。
戦況は絶望的―――ならばせめてもの、毒を打ち込まれた痕跡のないみぞれだけは…と、オスカーは彼女を逃がし、鈴仙とともに足止めをすべく、残ったのだ。
それが、“個よりも全”、“感情より理性”を掲げる「理」に則った最適の判断だと信じて。

「鈴仙、今、援護を―――」

覚悟を決め、鈴仙に加勢すべく戦場へと駆け出したオスカーであったが――。

「……っ!?」

ゾクリと悪寒が走る。
戦場からは先程までの喧騒が消え失せており、既に静寂に包まれた空間となっていた。
それは即ち戦闘の終焉を意味していた。
しかし、荒れ果てた地面、倒壊した樹木といった戦闘の残骸のみがそこに残されており、誰の姿もない。

「れいせ―――」

オスカーが、鈴仙の名前を呼ぼうとしたその瞬間――。
ヒュンという風を切るような音ともに、衝撃が走り、彼の身体は宙高く浮かび上がった。
訳もわけわからず、重力に従って落下したオスカーは、背中を強く打ち付け、苦悶の表情を浮かべた。

「……うっ……ごほっ!?」

口から再び血を吐き出し、苦痛に顔を歪めるオスカーは、そこで気付く。
自分の下腹部のうちの右半分が消失していることに――。

ドクドクと。
どうやら腹を裂かれたらしい。内側から外に大事なものが漏れ出していく感覚にオスカーは襲われる。

「―――あの氷使いの小娘は逃がしたか……」
「……っ!」

オスカーが見上げると、そこに無惨はいた。
無惨はもはやオスカーには興味がないのか、彼方を見据えてポツリと言葉を漏らしている。

「全くもって忌々しいが、今は優先して確認すべきことがあるか……」

独り言をぶつぶつと呟いたかと思うと、無惨は踵を返し、日陰から日向へと歩みを進めていく。
オスカーには一瞥もくれずに。

(まだだ……まだ私は……!)

無惨の背は隙だらけであった。
今なら奴に一撃を喰らわせられるかもしれない。
遠ざかろうとする彼の後ろ姿を睨みつけながら、オスカーは氷の剣を強く握りしめる。

―――狙うなら、奴の首―――銀色の首輪だ。
如何に奴が不死身であろうと、このゲームの性質上、首輪の爆発には抗えないはず―――。

そう考えたオスカーは、最後の力を振り絞り、立ち上がろうとする。

(―――みぞれのためにも、ここは私が……)

しかし――。

ガシっ!!と
背後から何者かの手により、オスカーの身体は押さえつけられ、地べたに這いつくばってしまう。

「ぐっ……!?」

背中からは何か獣のような息遣いが伝わってくる。
懸命にもがこうとするが、もはや余力など残されていない彼は、抵抗虚しく、地面に押さえつけられたまま。

そして―――。

ガブリと。
オスカーの右首筋にかぶりついた“獣”は、その肉を噛み千切り、貪り食らう。
痛みはもはや感じない。
ここでオスカーは振り返り、ようやく自分の肉を喰らう“獣”の正体を見ることが出来た。

「君は―――」

変わり果てた「彼女」の姿を目に焼き付けながら、オスカー・ドラゴニアの意識は闇へと沈んでいった――。




墓地近郊に広がる森林地帯。
先の戦闘の余波で木々は粉砕され、大地は蹂躙され、深緑に包まれていたはずの一帯には、陽の光が差し込んでいる。

「――どういうことだ、これは?」

鬼舞辻無惨は、陽光と日陰の境界付近に立ち、困惑していた。
試しに陽の光に晒される場所へと一歩踏み出してみるが、身体に変化はなく、焼け焦げることもなければ、灰になることもなかった。
それどころか、細胞が死滅していくような気配すらない。

ぐじゅっぐじゅぐじゅぐじゅっ―――。

無惨は先程から同じことを繰り返していた。
きっかけは、肉片と化した状態から再生を果たした時。
彼が再生を果たした場所は、既に日光を遮る木々は粉砕されており、不本意にも彼は生身でそれを浴びている状態で再生を果たした。
通常であれば、日光に晒されるということは鬼にとっては死地そのものであるが、彼の身体が消えさせることはなかった。
その後慌てて日陰へと避難した上で、みぞれ達と交戦したものの、戦闘が終了した今となって、この不可思議な現象を訝しみ、こうして身体の一部を陽光に晒したり、陽光を遮ったりを繰り返していたのであった。

ぐじゅっぐじゅぐじゅぐじゅっ―――。

そして試行錯誤の結果、ようやく今自分がこの会場内においては、日光を浴びても死ぬことはない状態にあると理解した。
千年以上もの間、探究してきた境地は、本人の意図しないところで唐突にもたらされたのである。

「解せぬな……」

しかし、無惨の表情は晴れることはない。
結果だけみれば、悲願達成ということになるのだが、日光克服のカラクリを正しく理解できない以上、手放しで喜ぶことは出来ない。
むしろ、言いようのない不気味さすら感じている始末だ。

ぐじゅっぐじゅぐじゅぐじゅっ―――。

思い当たる節はただ一つ。
先ほどから耳障りな音を立てながら、血肉に喰らい付いているあの者が絡んでいるのは間違いない。

「……いつまで死肉を貪っているつもりだ―――」

無惨は、隅で血肉を咀嚼する「彼女」に向かって、冷たく言葉を放った。
その瞬間、ビクリと「彼女」の身体が震え上がり、その口の動きが止まる。
恐る恐ると言った様子で振り向いた「彼女」は、無惨と視線が合うとガタガタと全身を震わせる。

「高坂麗奈」
「ひっ……」

名前を呼ばれた少女の口からは悲鳴が上がる。
本能のまま、無意識下で行動していたところ、無惨に声を掛けられることにより、彼への恐怖から、ようやく自我を取り戻したように見て取れる。
そんな彼女の口の周りには血がベッタリと付着しており、両手にはオスカー・ドラゴニアだったものの残骸が握られていた。

「えっ、な、何で、私……」
「お前には私の血を流し込み、鬼になってもらった」
「ぇ……」

固まる麗奈。
彼女は告げられた内容を理解できず、混乱しているようだ。

「今お前が口にしているのは、あの金髪の男だ。お前は鬼の習性に則り、その者を喰らった―――ここまでは理解できたか?」
「いや……嫌っ……!」

そこでようやく彼女は、自分の掌に乗る赤黒い塊が何かを理解し、狼狽しながらそれを投げ捨てた。
ベチャっと、湿った音をたてて、肉の塊が地面へと叩きつけられる。
それはまさしくオスカー・ドラゴニアの成れの果てであった。
そう―――鬼化した彼女は己が食欲を満たすために、オスカー・ドラゴニアを殺害し、その血肉を食していたのである。

「わ、私が鬼……? この人は、私が……」

頭を抱え、絶望と恐怖に怯える麗奈。
そんな彼女に容赦もなく、無惨は冷酷に告げた。

「お前はこれから私の従者として、私に尽くしてもらう。先程も言ったが拒否権はない」

理屈は不明だが、麗奈の演奏をきっかけに、何かが起こり、制限が掛かっていたはずの無惨の再生能力は、元に戻ったと彼は考えていた。
しかし、これまでの試行錯誤を経て、その実、麗奈による再生能力の向上は想定を大きく上回る程のものであり、太陽光によるダメージですらカバーできるものになったと、彼はそう結論づけたのである。

「言っておくが、私を決して煩わせるな」

麗奈の能力の詳細が分からない以上、現状は彼女を手元に留めておくしか方法はない。
しかし、彼女が素直に無惨に付き従う道理はない。
故に無惨は「恐怖」という形で彼女を従属させることを選んだ。
みぞれと共に此処から逃げ出そうとする際は、罰として致命傷の痛みを与えた上で、人としての人生を終わらせた。
今後も反抗的な態度を見せるのであれば、容赦なく痛みを与え続けるつもりだ。鬼の肉体とあの謎の回復能力があれば、簡単に死ぬことはないだろう。
ただし、痛みを与えることは出来る。

「そして、私を裏切るな。あのようになりたくなければな……」

無惨が指差すその方向に、麗奈は振り向く。
そこにあったのは、先程まで無惨と戦っていた鈴仙の遺体。
彼女は無惨との戦闘中、全身に回った毒によってとうとう力尽き、絶命に陥った。
目は大きく見開き、血涙を流し、この世のものとは思えないほどの苦悶に満ちた表情を浮かべたまま事切れていた。

「ひぃ……」

自分を助けようとしていた者の壮絶な最期に、麗奈は戦慄する。
その瞬間、ヒュン!という風を切る音とともに無惨の触手が振われると、鈴仙の遺体の頭部はスイカのように弾け飛んだ。

「あぁぁ……」
「分かったか?いくら鬼になったとしても、私にお前を殺すことなど雑作もない。私を決して裏切るな」

誰かを従わせるうえで最も効率的なものは何か―――それは絶対的な「恐怖」による支配。
その完遂のためには、圧倒的な実力差を見せつけ、痛みを与えることも重要だが、相手に抗う気力を根こそぎ奪ってしまうことも欠かせない。

「ちなみに、あの氷使いの書生は尻尾を巻いて逃げた。だから助けなどは期待しない方が良い」
「……ぁぁぁ……」

だからこそ、徹底的に希望の芽は摘み取っていく。
触手を以って、オスカーの首輪と鈴仙の首輪を回収しながら、無惨はとどめの言葉を突きつける。
その残酷な現実に、麗奈は全身の力が抜け落ちていくような感覚を覚えた。
もはや彼女に一抹の希望もない。

「せいぜい役に立て。お前の命運は私とともにある」

光を失ったその瞳を覗き込みながら、無惨はそう言い放った。
麗奈にはもはや、彼の言葉に対して首を縦に振ることしかできなかった。


―――少女はかつて「特別」でありたいと願い、トランペットに情熱を捧げた。
―――想い人に振り向いてもらいたくて、必死に努力し、時には周囲とぶつかり合いながらも、前に進み続けた。
―――しかし、そんな彼女の進むべき道は、塗りつぶされてしまった。
―――度重なる偶然と悲劇、そして、途方もない悪意によって。



高坂麗奈は、もう戻ることはできない。



【鈴仙・優曇華院・イナバ@東方Project 死亡】
【オスカー・ドラゴニア@テイルズオブベルセリア 死亡】
【高坂麗奈@響けユーファニアム! RESTART】



【D-5/墓地周辺/昼/一日目】

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(中)、月彦の姿、デジヘッド化(無自覚、浸食率低め)、麗奈の回復スキルにより回復力大幅向上
[服装]:ペイズリー柄の着物
[装備]:シスの番傘@うたわれるもの 二人の白皇(麗奈の支給品)
[道具]:不明支給品1~3、累の首輪、鈴仙の首輪、オスカーの首輪
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない
0:私は……太陽を克服したのか……?
1:採取した首輪を解析する。まずは大いなる父の遺跡から向かう。
2:麗奈は徹底的に利用する。まずはこいつの能力の詳細を確認し、太陽克服のカラクリを探る。問題ないようであれば、麗奈を吸収することも視野にいれる。
3:昼も行動するため且つ鬼殺隊牽制の意味も込めて人間の駒も手に入れる(なるべく弱い者がいい)。
4:逆らう者は殺す。なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
5:もっと日の光が当たらない場所を探したい。
6:鬼の配下も試しに作りたいが、呪いがかけられないことを考えるとあまり多様したくない。
7:『ディアボロ』の先程の態度が非常に不快。先程は踏みとどまったが、機を見て粛清する。よくも私に嘘をついたな。ただでは殺してやらない。
8:垣根、みぞれは殺しておきたいが、執着するほどではない。
[備考]
※参戦時期は最終決戦にて肉の鎧を纏う前後です。撃ち込まれていた薬はほとんど抜かれています。
※『月彦』を名乗っています。
※本名は偽名として『富岡義勇』を名乗っています。
※ 『危険人物名簿』に記載されている参加者の顔と名前を覚えました。
※再生能力について制限をかけられていましたが、解除されました。現在の再生能力は麗奈の回復スキル『アフィクションエクスタシー』の影響で、太陽によるダメージを克服できるレベルのものとなっております。
※蓄積したストレスと、デジヘッド化した麗奈の演奏の影響をきっかけに、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した麗奈からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、麗奈と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。
※デジヘッド化しましたが、無惨自身が麗奈のように何かしらの特殊スキルを発動できるかについては、次回以降の書き手様にお任せいたします。


【高坂麗奈@響け!ユーフォニアム】
[状態]:デジヘッド化(無自覚、浸食率低め)、鬼化、食人衝動(小)、回復スキル『アフィクションエクスタシー』発動中(無自覚)、恐怖による無惨への服従(極大)
[服装]:制服
[装備]:
[道具]:高坂麗奈のトランペット@響け!ユーフォニアム、危険人物名簿@オリジナル
[思考]
基本:殺し合いからの脱出???
0:月彦さんに付いていく
1:ヴァイオレットと再合流後、滝先生への手紙の続きを書いてもらう???
2:部の皆との合流???
3:久美子が心配???
4:みぞれ先輩は私を見捨てた……?
5:誰か……助けて……
[備考]
※参戦時期は全国出場決定後です。
※『コスモダンサー』による精神干渉とあすか達の死によるトラウマの影響で、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した無惨からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、無惨と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。
※無惨の血により、鬼化しました。身体能力等は向上しております。
※腕は切断されましたが、鬼化の影響で再生しております。
※墓地周辺の森林地帯に、オスカーと鈴仙の遺体と、支給品が放置されております。




殺し合いの会場を横断する黒い塊。
馬車と化したコシュタ・バワーは慌ただしくその脚を動かし、戦禍の地から離れていく。
荷台の床で、意識を失っているのは傷だらけの「青い鳥」。
舗装されていない地面を駆けるため、車体は大きく揺れるが、彼女の意識は深い闇の中のまま。

鎧塚みぞれは、まだ知らない。
この殺し合いの場で出会った仲間達が、既に事切れていることを。
高坂麗奈が、実は生きていて、凄惨な運命を辿っていることを。
そして、みぞれ自身がこれから歩むであろう道も……
彼女はまだ、知る由もなかった。


【???/昼/一日目】

【鎧塚みぞれ@響け!ユーフォニアム】
[状態]:一部分が銀髪化、全身ダメージ(大)、疲労(大)、精神的疲労(大)、気絶中、馬車(コシュタ・バワー)に搭乗
[服装]:制服姿
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、カーラーン金貨@テイルズオブベルセリア、ジークフリード@テイルズオブベルセリア、コシュタ・バワー@デュラララ!!
[思考]
基本:この殺し合い"のフィナーレを演奏する"を必ず止める
0:???
1:出来れば殺したくない
2:琵琶坂の事は―――
3:黄前さん、無事でいて……。
4:鬼舞辻無惨に最大限の警戒
[備考]
※『リズと青い鳥』、新山先生の指導後からの参戦です
※ 魔力に目覚めました。氷の剣は自分の意志で構成又は消滅が可能です
※ 後遺症で髪の一部分が銀髪化しました
※『はめふら』世界とその登場人物に対する知識を得ました
※ コシュタ・バワーがどこにいるのか、どこに向かっているかは、次の書き手にお任せします

前話 次話
いつしか双星はロッシュ限界へ 投下順 Monster Hunter

前話 キャラクター 次話
混沌への導火線 鎧塚みぞれ Monster Hunter
混沌への導火線 オスカー・ドラゴニア GAME OVER
混沌への導火線 鈴仙・優曇華院・イナバ GAME OVER
病院戦線、終幕(後編) 鬼舞辻無惨 奏でよ、狂騒曲
病院戦線、終幕(後編) 高坂麗奈 奏でよ、狂騒曲
ウィキ募集バナー