バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

病院戦線、終幕(後編)

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kyogokurowa

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轟音が響く。

激しく壁に打ち付けられた垣根提督の肉体がミシミシと悲鳴を上げ、重力に従い床に落ちる。

「ハアッ、ハアッ」

荒い呼吸音を鳴らすのは―――鬼舞辻無惨。
その身体には未だ再生能力は健在であり、多少負った傷も既に完治している。
だというのに、彼からは先ほどまでの不愉快さを除けば余裕すら含ませていた不愛想さは消え失せていた。

(私の身体になにが起こっている?)

ここに連れてこられる前の鬼殺隊との決戦を思い返す。
あの時もそうだった。
疲労など感じない鬼である自分が、裏切り者に打ち込まれた幾重もの薬により弱体化し、手負いの鬼狩りすら即座に仕留められないほどに弱体化させられた。
だがあの薬はこの会場に連れてこられた時には全て取り除かれていた。
まさか今更ぶり返したのだろうか?否。身体の組織自体には目立った変容はない。
だが、確かに攻撃の速度と精度は落ち、疲労を感じている。
ならばこの原因は薬などではなく―――

「貴様、なにをした?」
「さあな。そいつはてめえで考えな」

憎悪の籠る眼光を、垣根は流れた血を拭いながら不敵な笑みで受け流す。

(教えてやるかよ。こちとらこのフィールドを作るのに命賭けてんだからな)

垣根が作ったのは、限りなく酸素の薄い空間。
彼は無惨の切断面から覗かせた複数の脳と心臓を見て考えた。
伸縮自在な身体に複数の同種の臓器。そして高い再生能力。
確かにこの男は化け物だ。だが、根本的な生物機能としては人間に近いのではないかと。

無惨には目がある。鼻がある。耳がある。口がある。
それは即ち、目で見たものを追うし、鼻で嗅いだものの情報を辿るし、耳で聞いた音を理解するし、口で食べたものを体内に摂取するということ。
ならば。心臓と脳が複数あり、全てを破壊しなければ死なないというならば―――逆に言えば、それらがすべて機能している場合、必要な酸素の量も比例するのではないか。

人間が空気から取り入れた酸素を使う臓器には脳と心臓も含まれている。
ならば、単純計算すれば脳が5つあれば常人よりも必要酸素も5倍は必要になるということだ。
無論、たとえ必要量が多くとも、屋外やこの病院棟のように広い空間であればさしたる問題ではない。
空気は事実上無制限であり、消費量の膨大さにより底をつくことはないからだ。

ではこれが密室であればどうなるか。
当然、常人でも一度も空気を換えることなく留まり続ければ、いずれは酸素不足に陥ることになる。
そんな中で複数の脳と心臓を持つ生物が激しく動き回ればどうなるかは言うまでもない。

(てめえが化け物なら酸素はいらねえか?違うよなあ。でなけりゃ口も鼻も複数ある脳と心臓もいらねえはずだ)

垣根の推測は当たっていた。
鬼には寿命という概念はなく、体力も人間のソレとは遥かに違うが、それでも上限はある。
血鬼術を使い続ければ再生能力は目に見えて落ち、千年単位で老いれば技の精度も落ちていく。
当然、呼吸をおこなわなければ死なずとも身体の動きは鈍くなっていく。


だがここは密室ではない。
如何に建物とはいえ、階段へ通じる空間があり、空気の循環はされている。
だから垣根は未元物質の応用により上階へと通じる階段への空気の壁を作り簡易的な密室を作った。
触れれば容易く弾けるような、しかし無音無臭の見えない壁を―――その密室の中を、高山よりも遥か高い場所と等しくなるよう未元物質で調整し、空気を極端に薄くしながら。

(この環境の中でそんだけ臓器増やしてぶんぶん動き回ればいくらてめえでも堪えるだろ)

無論、この密室にいる垣根とてそのままでいれば被害は免れない。
無惨が消耗しきるよりも前に垣根の方が窒息で尽き果てる。
だから空気の壁と室内の空気を破壊しながらも並行して『垣根提督にのみ害のない空気』を未元物質で演算し作っていた。
その三つの事象操作の並行作業は当然ながら彼も消耗が激しい。制限されているならばなおさらだ。
だから垣根はひたすら防御に専念していた。
少しでも無惨よりも体力を温存し、その首輪を狙う為に。

(ここまでやってまだ互角にもならねえとはな、クソッタレ)

無惨に気づかれない空気操作。
挑発とアピールにより無惨からの注目を周囲ではなく垣根自身に集めること。
水面下で行われる体力の消耗戦。
そもそも無惨に疲労という概念はあるのかどうか。

これら全ての賭けに勝利しながらも垣根提督は未だに不利だ。
それほどまでにこの病棟での無惨との戦いは相性が悪かった。

(奴の身体能力の高さから見て勝率は3割ってとこか...ハッ、これくらい掴み取らねえと第二候補【スペアプラン】から脱却なんざ夢物語だわな)

垣根は夢見がちなドリーマーではない。
現実を見据えるリアリストだからこそ、3割の勝率すら勝ち取れない被検体が、第一位(一方通行)の席を取りアレイスターの鼻を明かすことなどできないと理解している。
そう。
鬼舞辻無惨すら越えられなくて一方通行を越えるなどとんだ思い上がりと言えよう。

(さあて、正念場はこっからだ―――)



ドンッ


突如、天井から激しい音が響き渡り、数多の瓦礫が降り注ぐ。

「あぁ!?」
「!?」

垣根も無惨も驚愕の色を浮かべ、後退し降り注ぐ瓦礫から退避する。

「クソッ、なんてパワーだ!」
「パンチ一発でワシの魔術の数倍はやりすぎじゃろうがぁ!」

先ほどまで二人のいた中央に砂塵が巻きあがり、その中で喚きたてる二つの声を聞いた時、垣根の額に青筋が走る。

「てめえらなにやってやがる!」
「垣根、今の状況はいったい」
「説明してもらいてえのはこっちだっつーんだよジョルノ・ジョバーナァ!!」

この時ばかりは冷静沈着な垣根も声を荒げた。
なんせ自分が命を賭けて作り上げたバトルフィールドを身内にあっさり壊されてしまったのだから。

(クソッタレ、また空気の壁を作り直すか!?いや、それよりも

「なんだ今の力は...あんな力、僕に出せたか?」

ジョルノたちに遅れてゆらりと影が立ち上がる。
その声を。砂塵に浮かび上がるシルエットを見たその時。

鬼舞辻無惨は目を見開いた。

瞬間、無惨の身体は動いていた。

地を鳴らすほどの音が響いた。

砂塵が晴れるよりも早く彼は瓦礫の山に駆け出した。

「なっ!?」
「は?」

迫る影にジョルノは反射的にスタンドの腕を盾のように構えさせ、マギルゥもボードのように巨大化させた式神を盾にする。
その上から。

パギャッ

無惨の振るった腕にジョルノはスタンドのガードごと吹き飛ばされ。
マギルゥは式神ごと腹部を触手で貫かれ放り捨てられた。

「えっ」

累が「敵である二人が吹き飛ばされた」と認識するのとほぼ同時。

風が眼前にまで迫った。

ぶちりと鈍い音を立てて視界が急上昇した。

自分の身体が遠ざかっていくのもあっという間だった。

「累。よく生きていた」

かけられる優しい声音に、累はチラと視線だけ向ける。
身体と繋がっていた首の断面を伝い、掌が優しく撫ぜられた。

「無惨様」

累はここに至りようやく理解した。
自分は、無惨に頸を斬られたのだと。


「累。私にお前の命を捧げてくれるな?」

それはまさに処刑宣告。
既に鬼の始祖が首を斬っている以上、累の命は彼の掌の中にある。
そしてこの状況に至り、無惨が累の身体を戻すことなどよほどのことがなければ在りえない。

「ぁ...」

無惨の顔を見るなり、累は何か言おうとしたが言葉が出なかった。
どうして。なぜ。
そんな言葉も、無惨から向けられる視線の前では自然と消え失せてしまった。

代わりに脳裏に過るのはところどころが欠けてしまったぼろぼろの記憶。

―――かわいそうに。私が救ってあげよう。

始まりはその言葉だった。
病弱だった俺に朽ちぬ強い身体をくれた。

―――すべてはお前を受け入れなかった××が悪いのだ。己の強さを誇れ。

なにか大変なことをしでかしてしまった俺を慰める言葉をかけてくれた。
それからも何度も足しげく通ってくださった。
群れを作るのを認めてくれて。下弦の伍よりも上を目指さないのも許してくれて。
他の鬼ではありえないほどの待遇をしてくださった。

(そうだ。俺は)

無惨様からはたくさんもらった。
救ってくれた。
きっと、忘れてしまった『なにか』は本当に俺を苦しめるだけのものだったのだろう。
無惨様には感謝しかない。
だからだろうか。

「はい。僕の全ては貴方のものです」

嗚咽も漏らさず、ただ静かに紡がれたその言葉に、恐怖も偽りもまるでなかった。
チョコラータという偽りの絆すら見限ったいま、一人の鬼としての『役割』を果たさんとするように。
その様を無惨は慈愛に満ちた表情で眺めていた。

「だから私はお前が好きだよ、累」

もしも鬼舞辻無惨という男を知る者がいれば驚愕を隠せないだろう。
この主催に命を握られている状況で、一刻でも早く枷を外さなければならないこの状況で。

己の駒にしかすぎない鬼に最期の言葉を遺す余裕を与え、あまつさえ意思確認までもするなどと。
それほどまでに無惨という男にとって累という存在は特別だった。

グシャリ

けれど、そんな『特別』よりも優先するのは己であることに変わりはなく。
無惨がほんの少し力を籠めただけで、累の頭部は弾け飛び、あっという間に血だまりを吐き出し肉塊と化した。

そして、落ちた首輪を回収すると、番傘を差し、いくらかの大きめの瓦礫を頭上に掲げると、窓を突き破り瞬く間に去っていった。



「...あ?」

垣根は思わず呆けた声を漏らす。
つい先ほどまでこちらに殺意を滾らせていた男が、一人の参加者を殺害して脇目もふらず去っていったのだから無理もない。

(俺のやったことに見当がついたようには思えなかったが...あの状況で逃げたってのか?)

垣根の見識は正しい。
無惨は垣根のしていたことを理解したわけではない。
ただ、鬼殺隊との決戦の際に珠世に打ち込まれた薬のような己の異変を察した以上、ムリにここに留まる理由はなくなった。
その為、倒すのに非常に手間取りそうな垣根よりも、目的である累の首輪を回収することを優先した。

これは垣根にとっては幸運であり不運でもある。
彼にとっての幸運は己の勝率の低い賭けをしなくても済んだこと。
不運は、これより先、鬼舞辻無惨は垣根提督を脅威と判定し、進んで会いに来ることはないであろうことだ。


「なんだってんだ...まあいい」

決着を着けられなかったもどかしさを感じながらも、垣根は灰になっていく累の肉体に一応警戒を払いつつ、蹲るジョルノの眼前に立ち頭上より見下ろした。

「おーおー、こりゃヒデェな。ぐちゃぐちゃじゃねーか」

垣根の言葉通り、ジョルノの腕は『凄惨』そのものだった。
無惨の攻撃を防いだゴールドエクスペリエンスの腕は、その威力を殺しきれず、肘から先までの肉と骨が圧縮プレス機で潰される途中の缶詰のようにひしゃげ、ところどころ骨が突き出しピンク色の肉がはみ出ていた。

「ショック死しなかったのは褒めてやるよ。で、治さねーのか?」

垣根の問いかけにジョルノは口をつぐむ。
ゴールドエクスペリエンスの能力は「己の拳で触れること」でようやく発動できる。
いまのジョルノにはその拳が無く、能力を発動することが出来ない。治したくても治せないのだ。

(彼には知られたくなかった...!僕の能力が使えないと知られた以上、彼に僕らと組む理由がなくなってしまう!)

現状、実力差のある垣根との同盟が成立しているのは、ジョルノとマギルゥの術が有用であることを示したからだ。
その能力が使えないとなれば、ジョルノたちの価値は一気に暴落する。
垣根からしてみれば、負傷者を連れ歩くよりは解析用の首輪を調達してしまった方が早い―――そう考えてもおかしくはない。

「ったく、仕方ねーな。手が治りゃあいいんだな?病院なんだ、包帯くらいはあるだろ」

だが、ジョルノの不安は杞憂に終わった。
交渉すらなく、腕の治療を提案されたことにジョルノは思わず呆気にとられる。

「なんつー顔してんだ。俺は使い道のあるヤツをそのまま廃棄するほど短慮じゃねーよ」

垣根提督は同志が殺されても感情的になることは無い。
しかしそれは綺麗ごとだけでは終われないと割り切っているだけのことであり、その場の感情の赴くままに身内を殺すようなことはしない。
ジョルノの腕が治れば能力が使えるというのなら、そこで廃棄するのではなく治せばいい。
使えるモノはなんでも使う。それが垣根の流儀だ。

「こいつにはまだ使い道がある。だからまだ殺させねえよ、リゾット・ネェロ」
「......」

流し目で背後を見る垣根の視線の先から、スゥ、と透明化を解いたリゾットの姿が現れる。

「あのカビ医者は殺ったのか?」
「ああ。これが証拠だ」

リゾットは懐からチョコラータの首輪を取り出し、垣根に手渡す。

「あのバケモンの横やりを入れさせねえって契約の報酬はこれでいいとして...悪いがジョルノにはまだ働いてもらう予定だ。くれてやることはできねえ」
「案ずるな。さっきも言ったが、俺の狙いはあくまでもボスだ。ヤツを殺した後にまだ俺の命があれば、それが決着の時だ」
「透明化を使っていたのは?」
「試運転していただけだ。俺も血を流しすぎたからな。案の定、気配を殺していたつもりが気づかれていた。当分は派手な戦闘は行えんだろう」
「そりゃ難儀なこった...あ?おまえ、腕は...」

垣根は無惨が乱入してきた時のことを思い出す。
あの時、リゾットは不意打ちで確かに右腕を斬り落とされていた。
しかしその右腕が今は『ある』。

「期待させたところ悪いが、これは治療に使える代物じゃあない」

リゾットはが右腕を垣根に向けて突き出す。
すると、無惨に斬られた箇所から先がボロリと崩れ、しかし掌が地に落ちる前にピタリと止まる。
その腕の断面に。

ロォォ ロオォォォ ロォォォォドォォォォ

極小サイズのナニかが呻き声を挙げながら蠢いていた。
リゾットが落ちた右腕を再び切断箇所同士につけると、そこから金属状の針が生み出され、医者の縫合のように切断面同士を縫い合わせる。

「理解したか?これは俺の身体にスタンドが蔓延っているからこそできる応急処置にしかすぎない。土台、ひしゃげた腕を治すような芸当はできん」
「どの道、全員の手当は必要みてえだな...おい、そこの死んだふりしてラクしようとしてる魔法使い。なんか使える道具があるか探しに行くぞ」

垣根の言葉に、今まで微動だにしていなかったマギルゥの身体がむくりと起き上がる。

「なんじゃ気づいとったんか。...しかし、腹を刺されて痛いのは事実なんじゃしもうちっと乙女を気遣う心意気というものを...
「そんだけペラペラ喋れるなら平気だろ。いくぞ」
「言った傍からこれかい!ハー、全く女遣いの荒い男じゃ」

一番重傷のジョルノは1階に待機させ、リゾットとやれやれとかぶりをふるマギルゥを連れ、垣根は階段へと向かう。

(色々とゴタゴタしちまったが、結果は上々だ)

元々は妖夢の検死の為に立ち寄った病院だったが、その下手人であるチョコラータと累を始末でき、『スクール』としての戦力を増やし、首輪のサンプルも手に入った。
ノーダメージとはいかず、始末しておきたかった者を逃がしたのは痛手だったが、それを加味しても手に入れたものと比べればおつりがくる。

(だがこれで終わりじゃねえ―――こっからだぜアレイスター)

天井を見上げ、主催の女たちの背後で糸を引いているであろう存在を睨みつける。
そう。
彼は決して神様気取りの遊戯板の駒で終わるつもりはない。
奴らの常識(ルール)が、駒は掌の中で果てることであるならば、その遊戯板ごとひっくり返して掌握してやる。

心理定規も。誉望も。弓箭も。砂皿も。杠も。ジョルノも。マギルゥも。リゾットも。そして、垣根自身も。
『スクール』の全てはその為の駒だ。

(首を洗って待っていやがれ。てめえらの常識が俺には通用しないこと、その身に刻み付けてやる)

階段に足をかけ、ようやく始まった反撃の狼煙の感触を抱き、そして終わりが始まる。



【D-6/一日目/午前】

【垣根提督@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(中)、全身に掠り傷、
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3
[思考]
基本方針: 主催を潰して帰る。アレイスターのプランを変えるぐらいの異能が集まるこの場所なら…?
0:ジョルノ達の治療のできそうな道具を探す。
1:妖夢(名前は知らない)の死体の解析などを行う...つもりだったが、もう必要ねえか。
2:異能を知るために同行者を集める。強者ならなお良い。
3:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティを探す。
4:小屋で何者かの気配を感じた気がしたが...コイツ(リゾット)だったのか。
[備考]
  • VS一方通行の前、一方通行を標的に決めたときより参戦です。
  • ジョルノ・マギルゥ・リゾットをスクールに加入させました。


そう。

【ジョルノ・ジョバァーナ@ジョジョの奇妙な冒険黄金の風】

[状態]:両腕破壊(大、自然治癒は困難)、全身にダメージ(大)、疲労(絶大)、無惨の血混入(大)
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3、妖夢の遺体
[思考]
基本方針: 一刻も早く帰る。ブチャラティを治す方法がここなら…?
0:まずは腕を治さなければ...
1:垣根…………僕に恨みでもあるんですか?
2:仲間を集める。殺し合いに乗っていないものはよく観察し考える。襲われたのなら問答無用。
3:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティを探す。
4:號嵐・真打を探す。
[備考]
  • アバッキオの情報で手に入れた手掛かりからコロッセオに向かう途中の参戦です。チョコラータ戦を経験しています。

彼の反撃の狼煙はここで終わる。

【マギルゥ@テイルズオブベルセルリア】
[状態]:疲労(大)、霊力消耗(絶大)、腹部に刺し傷(中)、無惨の血混入(大)
[服装]:普段着
[装備]:シルバ@テイルズ オブ ベルセリア、土御門の式神(数個。詳しい数は不明)@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考]
基本方針: 帰る。仲間を探す
0:みんなの怪我を治療できそうな道具を探す。
1:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティを探す。
2:號嵐・真打を探す。
3:エレノア・ヒューム物語(半分くらい作り話)を、ジョルノに聞かせる。
[備考]
  • キララウス火山での決戦前からの参戦です。
  • シルバと契約を結ばされているが、マギルゥの意思で解除可能です。
  • ビエンフーと契約を結びました。
  • シルバは意思持ち支給品枠ですが、自我が薄く自分からの攻撃などができません。これが制限によるものなのか、自我が薄くされているのかは不明です。マギルゥの中にしまうこともできますが、基本デイパックの中に潜んでいます。

彼の手に入れた駒の全てに 

【リゾット・ネェロ@ジョジョの奇妙な冒険黄金の風】
[状態]:疲労(中)、右腕切断(応急手当による止血済)、無惨の血混入(大)
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、顔写真付き参加者名簿、不明支給品2つ
[思考]
基本:ディアボロを探し出し、今度こそ仕留める
0:治療の出来る道具を探す。
1:ソルベ、ジェラート、仇は取ったぞ。
2:ディアボロを探す
3:ジョルノ・ジョバァーナ、その次は貴様だ。
[備考]
※ 参戦時期はディアボロとの戦闘に敗れ、死亡後からとなります。
※ソルベとジェラートの仇、チョコラータを仕留め、しばしの感傷に浸っています。
※【スクール】に加入しました。
※ 顔写真付き名簿により、自分を殺した青年(ドッピオ)が『ディアボロ』という名前でこのゲームに参加していることに気付きました。
※ 顔写真付き名簿については、ゲームスタート時の参加者の容姿が写った写真が名前と一緒に掲載されております。
例: ウィキッドについては水口茉莉絵モードの容姿、ディアボロについてはドッピオの容姿が写った写真となります。尚プロフィール等、その他の情報については記載されておりません。

鬼舞辻無惨の攻撃は『完了』している



―――幸せの定義は人それぞれだ。

お腹いっぱいにご飯を食べた時や、大好きな人ととの順風満帆な結婚生活、仕事や勉学の成果が出た時なんかもそうだろう。

人を傷つける時や貶めることで感じる人もいるかもしれない。

そんな色とりどりの幸せの中でも、共通していることはひとつ。

幸せが壊れる時には、いつも血の匂いがする。




それは突然だった。

階段を上りかけた垣根は、どん、と壁にもたれかかる音に振りむいた。

リゾットとマギルゥは、共に左右の壁に身を寄せていた。

二人にどうしたのか、尋ねようとした瞬間―――花が、舞い散った。

どす黒く、真赤な血しぶきが、二人の身体から飛び散りびちゃびちゃと赤い滝が吐き出された。
それはみるみるうちに小さな赤い水たまりを作り、二人の身体はそこに倒れ込んだ。

「―――あ?」

激痛と苦しみに歪む表情。
耐え切れず漏らされる苦悶の声。
唐突の惨状に一瞬思考が停止しかけるも、暗部での経験値はすぐに垣根の脳髄の動きを再開させる。

「ッ...おい!」

垣根は咄嗟にリゾットとマギルゥの胸に手を当て、容態を測りながら呼びかける。

「ぉ...」

リゾットはか細い呻き声を漏らしながら震える手を伸ばす。

「ぉ...まだ...やつ、を...」

既に意識が朦朧としているのか、ぼそぼそとなにごとかを呟きながらも、伸ばした掌は執念を体現しているかのように虚空に爪を突き立てる。
痙攣もほどなくして弱まり、やがて伸ばされた腕もぽとりと血だまりに落ち動かなくなった。

「―――マギルゥ!」

リゾットが死んだと直感的に判断した垣根は咄嗟にマギルゥへと顔を向ける。

「...ッ」

垣根は思わず息を呑んだ。
つい先ほどまで相変わらずのマイペースさで絡んでいた彼女の、苦痛に耐えきれず目を見開き大口を開けたまま硬まった顔に。

なにが起こった?
何者かの襲撃があったのか?
まさかチョコラータが生きていたのか?
ならばなぜ自分だけが無事なのか?

レベル5の頭脳を以てしても理解できぬ現状。
動かなくなった二人を後に、垣根はジョルノのもとへと急いで戻る。

「ジョルノ!」

戻った先、彼の視界に飛び込んだのは―――同じく、血だまりに沈み痙攣するジョルノの姿だった。

「ぁ...」
「クソが、おい、しっかりしろ!」

垣根はジョルノを抱きかかえ呼びかける。
ジョルノは辛うじて目を開け、ボソボソと声を紡ぐ。

「ふたり、は...」
「...あいつらは死んだ。お前みたいになってな」
「そう、ですか...やはり...ならば...!」

息も絶え絶えになりながらも、ジョルノはゴールドエクスペリエンスの腕を発現させる。

「壊れた腕を、温存しておく必要はなくなった...これが、最期の...!」

既に拳の体を為していない腕を振り上げ、己の胸―――心臓部に打ち付ける。
すると、心臓は徐々に蛇へと姿を変えていく。

「聞いて、ください、垣根。おそらくさっきの『奴』は、攻撃の際に毒を混ぜる...僕は、スタンドで受けたので、毒の周りが二人に比べて、遅かったのでしょう」

ジョルノは既に己の死を自覚し覚悟している。
激痛に苛まれながらも、今の己の症状とまだ無事な垣根との差異から、今起きていることを推理し伝える。
未だに血の一つも出ていない垣根と、致死量の出血をした自分たち三人のどこが違うのか。

垣根は傷こそはそれなりにあれど、せいぜいが掠り傷程度のものでありとても重傷とは程遠い。
対して自分たち三人はといえば。
右腕を落とされたリゾット。
腹部を貫かれたマギルゥ。
両腕を破壊された自分。

いずれも無惨に負わされた重傷に近い怪我だ。
そして、この時間差でくる攻撃と吐血量から、無惨の能力を『一定以上の傷を負わせた際に毒を注入するもの』と推測した。

「だから、いま、僕は心臓から蛇を生み出しています。奴の『毒』に侵された僕の心臓から、ね」

そこまで言われれば、垣根もジョルノの意図は理解した。
毒に塗れたモノから産み落ちた蛇は、それに対する免疫力を持って産まれる為、発病しない。
そして免疫を持つ生き物の細胞や血液からは『毒』に対する免疫を作るワクチンを手に入れることが出来る。
ジョルノは自身の命と引き換えに、無惨の毒に対抗する抗体を作ろうとしていた。

己の命の灯が燃え尽きんとする中、ジョルノは最期の力を振り絞り口を開いた。

「後は頼みます」



現状での解析・解体は不可能だ

病院から抜け出した無惨が、累の首輪を検分して出した答えがこれだった。

重さから爆薬の量を測るのは不可能。継ぎ目もないとくれば解体するよりも前に中身を知らなければなるまい。

それには専門の工具が必要となるが、生憎といまは手持ちにない。

施設にあるとすれば、早乙女研究所が一番怪しいのだが、生憎と地形は街。

病院の周辺はところどころに木々があったので番傘と瓦礫を傘に凌いだが、ガラスなどで太陽光が反射しやすい街の中では、太陽が上がっている内の行動は危険が伴ってしまう。

研究所を目指すのは日が沈んでからとするとして、だ。

(いまの私が迎える場所で怪しいのはここか)

無惨が注目したのは『大いなる父の遺跡』と名された地図中央の施設。
地図を信じるなら、此方の方角に行けばより森林が広がり日陰もできやすい。
それにこうも大層な名前が冠されているのだ。なにかしらの情報を得られるかもしれない。

ふと、鞄の中の高坂麗奈のことを思い出す。
病院の中で鬼にしようとしていたが、思わぬ邪魔が入り後回しにしていた。
鬼の血に耐えれるかもわからない為、今のうちに血を入れておこう。
そう思い、気絶している麗奈を鞄から出し、気が付く。

(腹部の傷が完治している?)

麗奈の制服こそは彼女自身の血で汚れているが、貫いたはずの腹部に関しては既に完治している。
彼女もまた鬼かそれに近い異形だったのか?いや、共に過ごした六時間余りにそのような素振りは見受けられなかった。

「......」

いまここで彼女を殺すのは容易い。しかし、自分の生存本能が告げていた。
ここで殺すのは嫌な予感がすると。

(様子を見るとしよう)

もしも麗奈が自分ですら自覚していない異能を持っているなら、それを引き出し手綱を握る。
そうでないなら鬼にして実験に使う。

無惨は再び麗奈を鞄に仕舞い、大いなる父の遺跡に向けて足を進める。
己が惨劇を起こした病院には一瞥もくれず。


【D-6/一日目/午前】

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(中)、月彦の姿、デジヘッド化(無自覚、浸食率低め)、麗奈の回復スキルにより回復力大幅向上
[服装]:ペイズリー柄の着物
[装備]:シスの番傘@うたわれるもの 二人の白皇(麗奈の支給品)
[道具]:不明支給品1~3、累の首輪
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない
0:累の首輪を解析する。まずは大いなる父の遺跡から向かう。
1:麗奈を鬼化させるかは検討中。
2:昼も行動するため且つ鬼殺隊牽制の意味も込めて人間の駒も手に入れる(なるべく弱い者がいい)。
3:逆らう者は殺す。なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
4:もっと日の光が当たらない場所を探したい。
5:鬼の配下も試しに作りたいが(麗奈を鬼化させる前に病院の参加者で試しておきたい)、呪いがかけられないことを考えるとあまり多様したくない。
6:『ディアボロ』の先程の態度が非常に不快。先程は踏みとどまったが、機を見て粛清する。よくも私に嘘をついたな。ただでは殺してやらない。
7:垣根は殺しておきたいが、執着するほどではない。
[備考]
※参戦時期は最終決戦にて肉の鎧を纏う前後です。撃ち込まれていた薬はほとんど抜かれています。
※『月彦』を名乗っています。
※本名は偽名として『富岡義勇』を名乗っています。
※ 『危険人物名簿』に記載されている参加者の顔と名前を覚えました。
※再生能力について制限をかけられていましたが、解除されました。現在の再生能力は麗奈の回復スキル『アフィクションエクスタシー』の影響で、太陽によるダメージを克服できるレベルのものとなっております。
※蓄積したストレスと、デジヘッド化した麗奈の演奏の影響をきっかけに、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した麗奈からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、麗奈と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。
※デジヘッド化しましたが、無惨自身が麗奈のように何かしらの特殊スキルを発動できるかについては、次回以降の書き手様にお任せいたします。


【高坂麗奈@響け!ユーフォニアム】
[状態]:デジヘッド化(無自覚、浸食率低め)、気絶中、腹部貫通(回復中)、回復スキル『アフィクションエクスタシー』発動中(無自覚)
[服装]:制服
[装備]:
[道具]:高坂麗奈のトランペット@響け!ユーフォニアム、危険人物名簿@オリジナル
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
0:???
1:ヴァイオレットと再合流後、滝先生への手紙の続きを書いてもらう
2:部の皆との合流。
3:久美子が心配
[備考]
※参戦時期は全国出場決定後です。
※『コスモダンサー』による精神干渉とあすか達の死によるトラウマの影響で、デジヘッド化しました。但し、見た目は変化しておらず、精神干渉を行うレベルに留まっております。現在は、同じくデジヘッド化した無惨からの精神干渉の影響で、デジヘッドの状態を維持しておりますが、無惨と離れればデジヘッド化の状態は、解除されます。

■ 発現能力紹介: アフィクションエクスタシー@Caligula Overdose
デジヘッド化した麗奈が、無自覚に発動している能力。
自身を含む近距離にいるデジヘッド、もしくはカタルシスエフェクトを発現している参加者を回復させ、効果時間の長い自動回復状態を付与する。
あくまでも己の精神を具現化(デジヘッド化、カタルシスエフェクト発現)している参加者のみに効果があり、それ以外の参加者には、特に影響を与えることはない。


「な、なにがどうなったんでふか」

今まで戦闘中だったこともあり、手元に戻されたままだったのが突如解放されたビエンフーは、目の前の惨状に目を白黒とさせていた。

「姐さん、しっかりするでふよ姐さん!」

目を見開いたまま動かないマギルゥをビエンフーは涙ながらに揺らし必死に呼びかける。

「きっ、きみ!なにか水とか氷とか持ってくるでふよ!できるだけたくさん!」

傍にいたシルバに指示を出すと、コクリと頷き駆けだそうとする。

「―――必要ねえよ、そんなもん」

そんなシルバの行く先を防ぐように現れたのは垣根。

「必要ないって、姐さんたちがどうなってもいいんでふか!?」
「死人にゃ必要ねえって言ってんだよ」

詰め寄るビエンフーに構わず、垣根は強い語気と共に翼を展開、もう動かないマギルゥとリゾットの肉体へと羽根を突き刺す。
すると、二人の肉体は瞬く間に砂のように崩れ去っていく。

「ヒッ!?」
「わかってんだろ。てめえのご主人様はもう死んでたことはよ」
「そ、それは...でも、わかりたくないこともあるでふよ!」

ビエンフーにとってマギルゥは恐怖の対象であった。
精霊使いが荒く、自身もメルキオルからの契約術により情報を横流ししなければならず、常に胃が痛いような状況だった。
けれど同時に、マギルゥは大切な存在だった。
彼女が道化師の如き軽いだけの女ではないことはわかっていた。だからどんな時でも『姐さん』呼びをやめなかった。
そんな彼女があんな死に方をするなど、ビエンフーは認めたくはなかった。

「...あっそ。ならそこで腐ってな」

垣根はリゾットとマギルゥの首輪を拾い、CTスキャンを探しに向かう。
その後を無言で追うシルバに続き、ビエンフーもマギルゥだった灰を名残惜しそうに見つめながら、彼らの後を追う。

(なめやがって)

垣根の表情は険しく、誰がどう見ても怒りに満ちていた。

彼は同志を殺されてもさして感情を表には出さない。
目下、彼を怒らせているのは鬼舞辻無惨だ。

(俺の同盟連中は全員殺したくせに、俺は殺す価値もないってか?)

病院から去る時のあのこちらを一瞥もしない横顔を思い出す。
垣根にとっては無惨との戦いは命を賭ける程のものだった。
しかし、奴にとってはそうではない。
あんなものは戯れでしかないと言わんばかりに、一切の躊躇いもなく戦闘を切り上げた。
言外に、お前の命などどうでもいいと告げているかのように。
それが垣根のプライドを傷つけた。

(てめえは必ず殺すぜ、化け物)

無惨に対し、アレイスターや一方通行に並ぶほどの殺意を滾らせる。

鬼舞辻無惨はそんな彼の想いなど知らないし興味もない。
そうして鬼の王は、この会場に於いても虎の尾を踏み龍の逆鱗を踏み続けるのだった。



【累@鬼滅の刃 死亡】
【リゾット・ネェロ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 死亡】
【マギルゥ@テイルズオブベルセルリア 死亡】
【ジョルノ・ジョバーナ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 死亡】


【D-6/病院・2階/一日目/午前】

【垣根提督@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(中)、全身に掠り傷、激しい怒り
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3、ジョルノの心臓から生まれた蛇から取り出した無惨の毒に対するワクチン、チョコラータの首輪、ジョルノの首輪、マギルゥの首輪、妖夢の首輪、リゾットの首輪
[思考]
基本方針: 主催を潰して帰る。アレイスターのプランを変えるぐらいの異能が集まるこの場所なら…?
0:まずは首輪を解析する。CTスキャンなどがあれば試す。
1:あの化け物(無惨)は殺す。
2:妖夢(名前は知らない)の死体の解析などを行う...つもりだったが、もう必要ねえか。
3:異能を知るために同行者を集める。強者ならなお良い。
4:災禍の顕主一行(ベルベット、ライフィセット、ロクロウ、マギルゥ、エレノア)とブチャラティを探す。
[備考]
  • VS一方通行の前、一方通行を標的に決めたときより参戦です。
※ジョルノ、リゾット、マギルゥの支給品も垣根が持っています。
※シルバ@テイルズオブベルセリア、ビエンフー@テイルズオブベルセリアは垣根のもとにいます

前話 次話
Liber AL vel Legis -THE WORLD REVOLVING- 投下順 絶対絶望少女

前話 キャラクター 次話
病院戦線、終幕(前編) 垣根帝督 最後に笑うは
病院戦線、終幕(前編) マギルゥ GAME OVER
病院戦線、終幕(前編) ジョルノ・ジョバァーナ GAME OVER
病院戦線、終幕(前編) リゾット・ネエロ GAME OVER
病院戦線、終幕(前編) GAME OVER
病院戦線、終幕(前編) 鬼舞辻無惨 崩壊序曲
病院戦線、終幕(前編) 高坂麗奈 崩壊序曲
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