◇
大いなる父―――かつて、とある世界で、その発達した科学力を以ってして世界を席巻し、そして滅びた者達。
殺し合いの会場に用意されたこの遺跡は、そんな彼らが残した文明の遺産であるが、施設内を歩くアリアと新羅は、そんな話など知る由もない。
殺し合いの会場に用意されたこの遺跡は、そんな彼らが残した文明の遺産であるが、施設内を歩くアリアと新羅は、そんな話など知る由もない。
「見たところ、本当にただの遺跡って感じで、目新しい物はないわね……」
「うんそうだね。それじゃあ、アリアちゃん、さっさとこんな場所出ようか」
「うんそうだね。それじゃあ、アリアちゃん、さっさとこんな場所出ようか」
壁についた埃を指先で拭いつつ呟くアリアに対し、新羅がそう提案する。
だが、アリアは首を横に振る。
だが、アリアは首を横に振る。
「もうちょっと待ちなさいよ!全部見て回るまで帰れないんだから!」
「うへぇ……まだ続くのかぁ……」
「うへぇ……まだ続くのかぁ……」
ため息交じりにぼやく新羅だが、アリアはお構いなしに、奥へ奥へと進んで行く。
やがて、二人は最深部と思われる場所に辿り着いた。
やがて、二人は最深部と思われる場所に辿り着いた。
「ここで行き止まり? でも、何か扉のようなものがあるわね……」
そこには、明らかに他とは違う雰囲気を放つ、高さ10メートルは優に超えるであろう、巨大な扉があった。
しかし、いくら押せども引けどもビクともしない。
しかし、いくら押せども引けどもビクともしない。
「何よこれ、全然開かないじゃない!鍵穴もないし……」
「残念だけど、ここまでのようだね、アリアちゃん。さ、諦めてかえーーーぐえっ!?」
「残念だけど、ここまでのようだね、アリアちゃん。さ、諦めてかえーーーぐえっ!?」
踵を返しかけた新羅の首根っこを掴み、アリアは彼を引き留める。
行き詰まりの状況下で、彼女の脳裏に、ふと、新羅が所持しているとある支給品が浮かんだからである。
行き詰まりの状況下で、彼女の脳裏に、ふと、新羅が所持しているとある支給品が浮かんだからである。
「ちょっと待ちなさいよ、新羅。今こそ、アンタが持っている『マスターキー』とやらを試す時でしょう?」
「ええ~? どう見たってあの扉に、あの輪っかを嵌めるような窪みなんて無いじゃないか。暗中模索も甚だしいよ」
「つべこべ言わず出しなさい、試すだけならタダなんだから!」
「うぅ……分かったよぉ……」
「ええ~? どう見たってあの扉に、あの輪っかを嵌めるような窪みなんて無いじゃないか。暗中模索も甚だしいよ」
「つべこべ言わず出しなさい、試すだけならタダなんだから!」
「うぅ……分かったよぉ……」
アリアの剣幕に押され、新羅は渋々、懐から『マスターキー』を取り出してみる。
すると、あら不思議。『マスターキー』と巨大な扉は共鳴するように光り輝き始める。
すると、あら不思議。『マスターキー』と巨大な扉は共鳴するように光り輝き始める。
「ええっ!?何だいコレ!?どんな仕掛けになってるっていうのさ!?」
「見てっ!扉が開いてくわ!!」
「見てっ!扉が開いてくわ!!」
驚愕するアリアと新羅。
眩い光が収まる頃には、二人の目の前には、巨大な門が開かれていた。
そして、その先に広がる世界も二人の視界に入ってくるのだが―――。
眩い光が収まる頃には、二人の目の前には、巨大な門が開かれていた。
そして、その先に広がる世界も二人の視界に入ってくるのだが―――。
「「―――っ!?」」
そこには、二人にとって信じ難い光景が広がっていた。
道中で見てきた『遺跡』らしい風景とは180度異なる、まるでSF映画さながらの近未来的な空間が広がっているのだ。
奥へと続く廊下。
その床と壁は滑らかな素材で覆われており、天井からは人工的な照明が照らされている。
空調も整備されているのか、何とも心地よい風が流れてくる。
道中で見てきた『遺跡』らしい風景とは180度異なる、まるでSF映画さながらの近未来的な空間が広がっているのだ。
奥へと続く廊下。
その床と壁は滑らかな素材で覆われており、天井からは人工的な照明が照らされている。
空調も整備されているのか、何とも心地よい風が流れてくる。
「驚いたわ……まさか、こんな場所に繋がっているなんて……」
「この『マスターキー』の機能は、本物だったみたいだね……未だに大いなる父って何なのかよくわからないけど……」
「この『マスターキー』の機能は、本物だったみたいだね……未だに大いなる父って何なのかよくわからないけど……」
マスターキーに添えられた説明書には「会場内に幾つか存在する扉を開くことが出来ます。但し、使用者は大いなる父である必要があります。」と書かれていた。
扉を開けるという機能が発動したということは、新羅が大いなる父に該当することになる。
だが、大いなる父とは何なのかは已然として見当がつかない。
扉を開けるという機能が発動したということは、新羅が大いなる父に該当することになる。
だが、大いなる父とは何なのかは已然として見当がつかない。
「とにかく、先に進みましょう」
「ああっ!待ってよアリアちゃん!!」
「ああっ!待ってよアリアちゃん!!」
未だ困惑気味の新羅を置いて、アリアは歩き出し、新羅もまた慌ててこれに追従する。
今は、大いなる父に関する考察よりも、目の前に拡がった新たなる世界を探索する方が先決である。
未知の領域へと足を踏み入れた二人は、警戒をしつつも、前へ前へと進んで行き―――。
その果てで、“ソレ”と相まみえるのであった。
今は、大いなる父に関する考察よりも、目の前に拡がった新たなる世界を探索する方が先決である。
未知の領域へと足を踏み入れた二人は、警戒をしつつも、前へ前へと進んで行き―――。
その果てで、“ソレ”と相まみえるのであった。
◇
流竜馬と別れてから、ヴァイオレットとオシュトルの二人は、当初の予定通り、ひたすらに遺跡を目指して歩いていた。
陽が照りつける中、森林地帯を抜け、舗装もされていない山道を進み続ける中、オシュトルは思案する。
陽が照りつける中、森林地帯を抜け、舗装もされていない山道を進み続ける中、オシュトルは思案する。
(研究所を発ってからここまでの道中、出会った参加者はあの竜馬なる漢だけ……まあ厄介ごとに巻き込まれず、ここまで順調に来れたのは僥倖ではあるが―――)
と、チラリと前方を歩くヴァイオレットに視線を送る。
「……。」
道中ヴァイオレットとの会話は、必要最小限のものに留まっている。
互いに気遣いを行っていたというのもあるが、先の竜馬との邂逅後、二人の間には更にぎこちない空気が漂っていた。
原因については、大方察しがつく。
オシュトルとヴァイオレット、二人のこの殺し合いへの姿勢が異なるからであろう。
互いに気遣いを行っていたというのもあるが、先の竜馬との邂逅後、二人の間には更にぎこちない空気が漂っていた。
原因については、大方察しがつく。
オシュトルとヴァイオレット、二人のこの殺し合いへの姿勢が異なるからであろう。
ヴァイオレットは、この地獄のような戦場においても、人々の「想い」を尊重し、繋ぐことを第一と考えている。
対して、オシュトルは、あくまでも「主催者の打破」そして「帰還」に重きを置いている。その為には、手段は選ばず、必要があれば、ヴァイオレットが繋ごうとしている「想い」ですらも踏み躙る覚悟もある。
流竜馬との接触及び情報交換は、そんな二人のスタンスの違いを浮き彫りにする契機となり、互いの思想が相容れないことを改めて両者に認識させたのである。
対して、オシュトルは、あくまでも「主催者の打破」そして「帰還」に重きを置いている。その為には、手段は選ばず、必要があれば、ヴァイオレットが繋ごうとしている「想い」ですらも踏み躙る覚悟もある。
流竜馬との接触及び情報交換は、そんな二人のスタンスの違いを浮き彫りにする契機となり、互いの思想が相容れないことを改めて両者に認識させたのである。
「ときにヴァイオレット殿―――」
「……はい?何でしょうか?」
「……はい?何でしょうか?」
故にこの姿勢の違いは、いずれは大きな亀裂として表面化することになる。
そう考えたオシュトルは、今の内にヴァイオレットの行動原理を探ろうと、彼女に声をかけた。
馴れ合うためではなく、あくまで打算的に。
いざという時に、彼女を上手く御する為の情報を得るために。
そう考えたオシュトルは、今の内にヴァイオレットの行動原理を探ろうと、彼女に声をかけた。
馴れ合うためではなく、あくまで打算的に。
いざという時に、彼女を上手く御する為の情報を得るために。
「ヴァイオレット殿は、何故自動手記人形となり、人々の『想い』を紡ぐことに尽力しておられる?差し支えなければ、聞かせていただきたいのだが」
「……それは……」
「……それは……」
前触れもなく投げかけられた問い。
自身の本質に迫る核心的な質問に、ヴァイオレットは一瞬言葉に詰まらせる。
自身の本質に迫る核心的な質問に、ヴァイオレットは一瞬言葉に詰まらせる。
「あ、いや、答えにくいということであれば、無理にとは言わぬが……」
「……いいえ、問題ありません。ただ少し話が長くなりそうですので、歩きながらでもよろしいでしょうか?」
「……いいえ、問題ありません。ただ少し話が長くなりそうですので、歩きながらでもよろしいでしょうか?」
目を伏せながら言う彼女に、オシュトルは無言のまま小さく首肯すると、彼女の隣に並ぶように歩調を合わせ始めた。
ヴァイオレットは、この問いかけの背景にあるオシュトルの打算的な思惑を知る由もない。
しかし、これは、オシュトルに自分の意向をハッキリと伝える好機だと、彼女は捉えて、ポツリポツリと語り出す。
しかし、これは、オシュトルに自分の意向をハッキリと伝える好機だと、彼女は捉えて、ポツリポツリと語り出す。
感情を持たない「武器」として育てられた自身の生い立ちを―――。
そんな彼女と向き合い、名前を与えてくれた「大切な人」の存在を―――。
最後の戦場にて、「大切な人」から別れ際に告げられた「ある言葉」のことを―――。
その言葉の意味を知るために、人々の「想い」を繋ぐ自動手記人形となったことを―――。
代筆の仕事を通じて、様々な人々の「想い」に触れてきたということを―――。
そんな彼女と向き合い、名前を与えてくれた「大切な人」の存在を―――。
最後の戦場にて、「大切な人」から別れ際に告げられた「ある言葉」のことを―――。
その言葉の意味を知るために、人々の「想い」を繋ぐ自動手記人形となったことを―――。
代筆の仕事を通じて、様々な人々の「想い」に触れてきたということを―――。
「―――私は、少佐がくれた『愛してる』を知りたくて、自動手記人形となってから今日まで務めてまいりました」
ヴァイオレットは、尚も人形のように無表情のまま。
「そして、学びました。人々の言葉の裏には様々な『想い』が隠されていることに。
『想い』とはとても強く、とても暖かく、とても尊いものだということに」
『想い』とはとても強く、とても暖かく、とても尊いものだということに」
しかし、微かな寂しさと、一抹の切なさを声色に滲ませていた。
「だからこそ、私は、その『想い』を届けたいのです。
『想い』を通じて、人と人を繋げてあげたい……そう願うのです。」
『想い』を通じて、人と人を繋げてあげたい……そう願うのです。」
ヴァイオレットは、真っ直ぐにオシュトルを見据えると、力強い口調で言い切った。
コバルトブルーの澄んだ瞳に、確固たる意志を宿して。
コバルトブルーの澄んだ瞳に、確固たる意志を宿して。
「……成程。それが、ヴァイオレット殿が『想い』を紡ぐ理由という訳か……。」
オシュトルは、納得した様子で呟き、そして、同時に理解する。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンという少女は、修羅の道を歩まんとする自分とは、違う道を歩む人間なのだと。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンという少女は、修羅の道を歩まんとする自分とは、違う道を歩む人間なのだと。
「はい……ですから、私は、此処でも『想い』を潰えさせたくない。誰かの『いつか、きっと』を失わせたくないと、そう考えているんです」
ヴァイオレットは固い決意を以て、そう宣言すると、オシュトルは少しだけ間を置いて、「左様か」と一言だけ返す。
それは、ある種の宣戦布告ともとれた。
既にヴァイオレットは、この地においても、代筆を通じて、高坂麗奈が、恋焦がれる者へと抱く『想い』に触れた。
また、東風谷早苗が、彼女の家族といえる者たちに抱いていた『想い』に触れた。
この殺し合いに巻き込まれた参加者も、ヴァイオレットが代筆を承った依頼人達と同様、様々な『想い』を抱いているはず。
そのかけがえのないものを割り切ることなど出来はしないという信念の表れが、彼女の言葉の端々から齎されていた。
既にヴァイオレットは、この地においても、代筆を通じて、高坂麗奈が、恋焦がれる者へと抱く『想い』に触れた。
また、東風谷早苗が、彼女の家族といえる者たちに抱いていた『想い』に触れた。
この殺し合いに巻き込まれた参加者も、ヴァイオレットが代筆を承った依頼人達と同様、様々な『想い』を抱いているはず。
そのかけがえのないものを割り切ることなど出来はしないという信念の表れが、彼女の言葉の端々から齎されていた。
故に、勝利のためには如何なる手段、必要があれば殺人も厭わないというオシュトルの考えとはぶつかることになる。
「あいわかった。ヴァイオレット殿の意思しかと理解した。わざわざ説明いただき、感謝する。」
オシュトルは静かに礼を言い、再び目的地に向かい歩き出した。
ヴァイオレットから告げられた彼女の決意に、否定も肯定もせずに。
ヴァイオレットから告げられた彼女の決意に、否定も肯定もせずに。
「オシュトル様には―――」
「むっ?」
「むっ?」
そんなオシュトルの背中に、ヴァイオレットは、語りかける。
「オシュトル様には、『想い』を届けたい方はいますか?」
「……さてな。我が身命はヤマトの國と姫殿下の為にあるが故、今はそのような者はいない」
「……さてな。我が身命はヤマトの國と姫殿下の為にあるが故、今はそのような者はいない」
振り返ることなく答えるオシュトル。
「……そうですか」
ヴァイオレットは、それ以上何も言わなかった。
ただ黙ってオシュトルの隣に並びながら、共に歩み続けた。
しかし―――。
ただ黙ってオシュトルの隣に並びながら、共に歩み続けた。
しかし―――。
(そうだ、某は『オシュトル』、ヤマト右近衛大将『オシュトル』なのだ……。)
一見平然を装っていたるようにも見えるオシュトルではあるが、その心中は先程のヴァイオレットの問いに揺れていた。
『ハク』としてならば、届けたい『想い』はたくさんある。
だが、『ハク』は死んだ。今の自分は、『オシュトル』だ。
ならば、その使命を全うするために、為すべきことは決まっている。
余計な事は考えるな。立ち止まるな。振り返るな。
だが、『ハク』は死んだ。今の自分は、『オシュトル』だ。
ならば、その使命を全うするために、為すべきことは決まっている。
余計な事は考えるな。立ち止まるな。振り返るな。
(『想い』ならば、既に託されている。その力も―――。意思も―――。某は受け継いだのだ、なれば某は―――)
そう自分に言い聞かせながら、オシュトルは拳を強く握りしめ、感情を抑え込み、ひたすらに歩を進めた。
そんなオシュトルの心中を察することはなく、ヴァイオレットもまた、ただ彼の隣を歩く。
鮮明となった両者の溝は、埋め合わせをすることはなく、二人の間には、重苦しい空気だけが流れていた。
そんなオシュトルの心中を察することはなく、ヴァイオレットもまた、ただ彼の隣を歩く。
鮮明となった両者の溝は、埋め合わせをすることはなく、二人の間には、重苦しい空気だけが流れていた。
「……」
「……」
「……」
沈黙が続く中、二人はやがて遺跡の入り口へ辿り着く。
深い緑に装飾された森に佇むそれは、不気味な雰囲気を醸し出し、二人を待ち構えていた。
オシュトルとヴァイオレットは目を合わせ、互いに小さく頷くと、そのまま入り口を潜っていく。
内部は薄暗く、ひんやりとした空気が漂っている。
二人は、周囲に気を配りながらも、慎重に奥へと進んでいく。
深い緑に装飾された森に佇むそれは、不気味な雰囲気を醸し出し、二人を待ち構えていた。
オシュトルとヴァイオレットは目を合わせ、互いに小さく頷くと、そのまま入り口を潜っていく。
内部は薄暗く、ひんやりとした空気が漂っている。
二人は、周囲に気を配りながらも、慎重に奥へと進んでいく。
(この感じ、やはり旧人類の遺物とみて相違ないな……)
オシュトルは元の世界においても、旧人類の遺跡に立ち寄ったことはあるが、この施設の造りもそれに酷似していた。
クオンやネコネなどがいれば、目を輝かせながら、探索を行うであろうが、生憎とそんなことをしている余裕はない。
クオンやネコネなどがいれば、目を輝かせながら、探索を行うであろうが、生憎とそんなことをしている余裕はない。
「―――オシュトル様、止まってください」
「……ヴァイオレット殿、如何なされた?」
「……ヴァイオレット殿、如何なされた?」
ヴァイオレットが、何かに気づいたようにピタリと足を止めたので、オシュトルも同じく足を止める。
「何かが、こちらに近づいてきます。」
「何……?」
「何……?」
ヴァイオレットの言葉に、オシュトルは、警戒を強める。
程なくして、オシュトルの耳にも、空気の振動と共に音が聞こえてきた。
ドシンッ、ズドンッ!と重量感のある音を立てて地面を踏み鳴らしているような、そんな音。
程なくして、オシュトルの耳にも、空気の振動と共に音が聞こえてきた。
ドシンッ、ズドンッ!と重量感のある音を立てて地面を踏み鳴らしているような、そんな音。
そして、その音は徐々に大きくなり、遂には、二人の視界にソレの姿が映った。
「これは――」
「……っ!?」
「……っ!?」
現れたモノは、巨大な「機械人形」だった。
全長は約5メートル前後といったところだろうか。
表面は装甲で覆われており、手には大剣が握られている。
見るからに物騒な「巨人」は、ヴァイオレットとオシュトルを値踏みするかのように、ジッと見つめている。
全長は約5メートル前後といったところだろうか。
表面は装甲で覆われており、手には大剣が握られている。
見るからに物騒な「巨人」は、ヴァイオレットとオシュトルを値踏みするかのように、ジッと見つめている。
一瞬呆気に取られていたヴァイオレットだが、すぐさまオシュトルを庇うかのように前に出て身構える。
眼前の「巨人」が、どのような行動を取るのかは読めない。
しかし、仮に脅威になりうる存在であれば、いざという時にオシュトルを守らねばならない―――そう考えたからだ。
眼前の「巨人」が、どのような行動を取るのかは読めない。
しかし、仮に脅威になりうる存在であれば、いざという時にオシュトルを守らねばならない―――そう考えたからだ。
緊迫した空気が漂いはじめたその時―――。
「―――この機体、まさかアベルカムルか……」
それまで呆然と「巨人」を見上げていたオシュトルはポツリと、「巨人」の名前らしきものを呟いたのである。
「オシュトル様、ご存じなのですか?」
思わず振り向くヴァイオレットからの問いかけに、オシュトルは落ち着いた様子で淡々と説明する。
「ああ……だいぶ改造が施されているようだが、この体躯と特徴……そして、この場所が大いなる父の遺跡ということから察するに、これは恐らくはアベルカムル。旧人類の世界で普及していた作業用機であると見受けるが―――」
そこでオシュトルは「巨人」を見上げ、声を張り上げた。
「搭乗者はいるか?いるのであれば、話がしたい!某はオシュトル、そしてこちらはヴァイオレット・エヴァ―ガーデン殿だ。
我々はこの殺し合いを是としない者であり、其の方に対して敵対の意志はない!」
我々はこの殺し合いを是としない者であり、其の方に対して敵対の意志はない!」
「……」
オシュトルの声が響いてから数秒の間が空き、そして――。
「――驚いたなぁ、まさかコレを知ってる人に出くわすなんて」
何処からともなく声が響き渡ると同時に、「巨人」の後頭部から白衣を身に纏った青年が姿を現した。
「貴殿が、この機体の操縦者か?」
「うん、そうだよ。ええと、オシュトルさんに、ヴァイオレットちゃんだっけ?僕は岸谷新羅。よろしくね」
「ふむ、新羅殿か、宜しく頼む。して、早速ですまぬが、新羅殿は、このアベルカムルを如何にして手に入れたか、お聞かせ願えるか?」
「あーこれは、この遺跡の奥で見つけたんだよ。ご丁寧に説明書とともに、展示されていてさ……。あーそうそう、説明書では、こいつはオシュトルさんが言う、『あべるかむる?』ではなくて、『アヴ・カムゥ』と書かれていたなぁ……。
どうやら僕の支給品の『マスターキー』とやらで起動できるみたいでさ。
いざという時のために、試し乗りしていたんだけど……いやぁ、凄いよね、これ。
ちょっと癖はあるけど、だいぶ動かすのに慣れてきたところなんだ」
「うん、そうだよ。ええと、オシュトルさんに、ヴァイオレットちゃんだっけ?僕は岸谷新羅。よろしくね」
「ふむ、新羅殿か、宜しく頼む。して、早速ですまぬが、新羅殿は、このアベルカムルを如何にして手に入れたか、お聞かせ願えるか?」
「あーこれは、この遺跡の奥で見つけたんだよ。ご丁寧に説明書とともに、展示されていてさ……。あーそうそう、説明書では、こいつはオシュトルさんが言う、『あべるかむる?』ではなくて、『アヴ・カムゥ』と書かれていたなぁ……。
どうやら僕の支給品の『マスターキー』とやらで起動できるみたいでさ。
いざという時のために、試し乗りしていたんだけど……いやぁ、凄いよね、これ。
ちょっと癖はあるけど、だいぶ動かすのに慣れてきたところなんだ」
饒舌に語る新羅に対し、オシュトルは腕を組みながら、黙して聞き入る。
(『アヴ・カムゥ』……?『マスターキー』……?自分の知っている『アベルカムル』ではないのか…?)
オシュトルは、新羅の発した言葉に引っかかるものを感じ、考え込む。
新羅が搭乗していた機体は、自分が見知っていた『アベルカムル』に近しいものであった。
アベルカムル―――かつて旧世界を支配していた旧人類、大いなる父の元で重宝されていた機体。
操縦するためには、資格が必要であったが、自身は資格の取得が面倒くさいという理由で、『アベルカムル』に乗ることはなかった。
新羅が搭乗していた機体は、自分が見知っていた『アベルカムル』に近しいものであった。
アベルカムル―――かつて旧世界を支配していた旧人類、大いなる父の元で重宝されていた機体。
操縦するためには、資格が必要であったが、自身は資格の取得が面倒くさいという理由で、『アベルカムル』に乗ることはなかった。
しかし、新羅によれば、これは『アヴ・カムゥ』という名の機体であり、また操縦するためには『マスターキー』なるものが必要とのことだ。
(主催者によって、カスタマイズされた『アベルカムル』といったところか……)
そのように結論付け、これ以上の詮索は無駄であろうとオシュトルは判断する。
「成程……。事情は概ね察した。して、新羅殿は単身でこの遺跡におられるのか?」
「ああ、いやいや、奥にもう一人仲間がいるよ。今は遺跡で見つけた工具類を使って、首輪の分解をしているんだ」
「っ!?首輪とな……?」
「ああ、いやいや、奥にもう一人仲間がいるよ。今は遺跡で見つけた工具類を使って、首輪の分解をしているんだ」
「っ!?首輪とな……?」
オシュトルは驚きの声を上げ、ヴァイオレットも目を大きく開き、新羅を凝視する。
首輪の解析を宛にこの施設に立ち寄ったのだが、まさか先客がいて、しかも既にサンプルを手に入れた上で、解析を行っているとは予想外であった。
首輪の解析を宛にこの施設に立ち寄ったのだが、まさか先客がいて、しかも既にサンプルを手に入れた上で、解析を行っているとは予想外であった。
「新羅殿、是非ともその者に引き合わせて頂きたいのだが……」
「うん、いいよ。こちらとしても断る理由はないし。オシュトルさん達にも聞きたい事はあるし、コイツの事とか、大いなる父の事とか」
「うん、いいよ。こちらとしても断る理由はないし。オシュトルさん達にも聞きたい事はあるし、コイツの事とか、大いなる父の事とか」
そう言って、新羅は鎮座する巨人の背中を登り、中へと乗り込む。
すると、程なくして鋼の巨人は立ち上がる。
すると、程なくして鋼の巨人は立ち上がる。
「よし、それじゃあ二人ともついて来て、案内するから」
「承知仕った。ヴァイオレット殿もよろしいか?」
「はい、問題ありません」
「承知仕った。ヴァイオレット殿もよろしいか?」
「はい、問題ありません」
ヴァイオレットの返答を受け、二人は、先導するアヴ・カムウの後に続くのであった。
◇
「本当に腹が立つわね、主催の連中!」
施設内にある大型のコンピュータルーム。
散乱された工具及び、分解された首輪を前にして、神崎・H・アリアは、憤りを隠しきれずにいた。
彼女の怒りの原因は、分解された首輪の中身に他ならない。
散乱された工具及び、分解された首輪を前にして、神崎・H・アリアは、憤りを隠しきれずにいた。
彼女の怒りの原因は、分解された首輪の中身に他ならない。
爆破機能が備わっているため、爆薬の類を想定し、細心の注意を払いつつ首輪を分解するも、蓋を開けてみれば、中身は空洞。
おまけに首輪の中身には、以下のような印字がある始末。
おまけに首輪の中身には、以下のような印字がある始末。
μ特製!! 参加者用特殊首輪。
この首輪はメビウスをベースとした世界で生み出された存在を消去するために存在する、緊急手段です。
これにより、仮想世界での作られた存在である彼らのデータそのものを強制的に【消去】することが可能となります。
また、削除対象に『死』を認識させるため、削除と同時に爆発が発生します。危険なので、首輪の削除機能を始動させてからは、対象から離れるようにしてください。起爆までは十秒ほどの猶予時間があります。
また、首輪には緊急解除コードが存在します。
もしもの場合は、緊急解除コードを利用して首輪を外すなりしてください。
これにより、仮想世界での作られた存在である彼らのデータそのものを強制的に【消去】することが可能となります。
また、削除対象に『死』を認識させるため、削除と同時に爆発が発生します。危険なので、首輪の削除機能を始動させてからは、対象から離れるようにしてください。起爆までは十秒ほどの猶予時間があります。
また、首輪には緊急解除コードが存在します。
もしもの場合は、緊急解除コードを利用して首輪を外すなりしてください。
このご丁寧な説明文によれば、緊急解除コードなるものを入力することで、首輪を外す事は出来るようだが、その手掛かりは一切不明。爆薬なども混入されておらず、どのような原理で、爆破が行われているのかも一切不明。つまりは、行き詰まりだ。
おまけに『仮想世界』、『データの削除』といった目を疑うような単語も散見されており、アリアとしては、混乱するばかりだ。
おまけに『仮想世界』、『データの削除』といった目を疑うような単語も散見されており、アリアとしては、混乱するばかりだ。
「『メビウスをベースとした世界で生み出された存在』って……。私たち創り出されたデータってこと?訳が分からないわ……。」
頭を抱え、机に突っ伏すアリア。
そんな彼女の耳に、ドスンドスンと地響きと共に「巨人」の足音が近づいてくる。
そんな彼女の耳に、ドスンドスンと地響きと共に「巨人」の足音が近づいてくる。
「おーいたいた、アリアちゃん! 調子はどう?」
アリアの心労など知る由もなく、アヴ・カムゥから降りて、暢気に手を振ってくるのは同行人の新羅である。
「岸谷新羅、アンタねぇ……って誰よ、その人達!?」
こちらの苦労も知ることもなく、あまりにも無神経な態度で接する新羅に、思わず怒鳴ろうとしたアリアだったが、彼の隣に見知らぬ男女がいることに気付き、声を上げる。
「あー彼らとはさっきそこで会ってさ。殺し合いには乗っていないようだし、この遺跡のこととかも色々知っているようだから、連れて来たんだ。」
新羅が二人に目配せすると、オシュトルは恭しく一礼し、ヴァイオレットはスカートの裾を手で引き、各々のスタイルで挨拶をする。
「貴殿がアリア殿か、某はオシュトルと申す」
「お初にお目にかかります。お客様がお望みならどこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」
「お初にお目にかかります。お客様がお望みならどこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」
丁寧な自己紹介を受けると、アリアは少し面食らったように、パチクリと瞬きを挟み、姿勢を正して答える。
「あ、ええと、神崎・H・アリアよ。こっちこそよろしくね」
「して、アリア殿、新羅殿。早速、互いに持っている情報の交換といきたいのだが、如何か?」
「ええ、こちらこそ願ってもないわ、こちらも丁度首輪の解析も終わったところだし」
「して、アリア殿、新羅殿。早速、互いに持っている情報の交換といきたいのだが、如何か?」
「ええ、こちらこそ願ってもないわ、こちらも丁度首輪の解析も終わったところだし」
オシュトルの提案に、アリアは二つ返事で了承。
四人の男女は顔を突き合わせ、それぞれが把握している情報を、順に開示していくのであった。
四人の男女は顔を突き合わせ、それぞれが把握している情報を、順に開示していくのであった。
◇
一通りの情報交換が終わった後、四人の間には重々しい空気が漂っていた。
それもその筈。今回の情報交換によって、様々な懸案事項が浮上したからである。
それもその筈。今回の情報交換によって、様々な懸案事項が浮上したからである。
「―――話を整理しよう。」
オシュトルはそう前置きして語り出すと、他の三人もコクリと頷き、首肯する。
「まずは、『ブチャラティ』についてだ。この会場には『ブチャラティ』を名乗る男が二人いる。」
最初の議題はなぜか自らを『ブローノ・ブチャラティ』と名乗る男が二人いる事について。
オシュトル達も、アリア達もそれぞれ、先程まで、件の男達と行動を共にしている。
オシュトル達も、アリア達もそれぞれ、先程まで、件の男達と行動を共にしている。
「一人は、ホテルまでアリア殿達と共にいた『スタンド』なる能力を持つ『ブチャラティ』。
もう一人は、某達が研究所で別れた優男の『ブチャラティ』。状況から鑑みるにどちらかが騙っていたことになるのだが―――」
「わざわざ偽名を名乗っていた理由が分からないんだよねぇ……。余程本名を明かしたくない事情でもあったとか……?」
もう一人は、某達が研究所で別れた優男の『ブチャラティ』。状況から鑑みるにどちらかが騙っていたことになるのだが―――」
「わざわざ偽名を名乗っていた理由が分からないんだよねぇ……。余程本名を明かしたくない事情でもあったとか……?」
新羅の問い掛けに、アリアも顎に手を当てながら思索する。
「例えば、本名が悪い意味で有名だったりするとか、かしら……指名手配犯とまではいかないけど、限られた界隈---この殺し合いに参加している特定の参加者間で悪名高かったりとか……」
武偵の任務をこなす上で、悪名高き犯罪者などの裏社会の人間を相手にすることは珍しくない。そういう連中の多くは、日常生活では偽りの名を隠れ蓑にしているものである。
「アリア様、お待ち下さい。私達と行動を共にした『ブチャラティ』様は、その様な人物ではありません。」
アリアの言葉に、ヴァイオレットが即座に反論。自分が知っている『ブチャラティ』を庇うような口調で語る。
「それを言うなら、私達の方の『ブチャラティ』も、姑息な真似をするような男じゃなかったわよ」
負けじとアリアも言い返す。
リュージとの訣別後も、自分の―――武偵としてのアリアの信念を尊重してくれた男を信じたい気持ちが奥底にあったため、少しムキになる。
互いに自分達の仲間を弁護するが、平行線のまま話は一向に進まない。
しかし、そんな二人の様子に、オシュトルは口を挟む。
リュージとの訣別後も、自分の―――武偵としてのアリアの信念を尊重してくれた男を信じたい気持ちが奥底にあったため、少しムキになる。
互いに自分達の仲間を弁護するが、平行線のまま話は一向に進まない。
しかし、そんな二人の様子に、オシュトルは口を挟む。
「アリア殿、ヴァイオレット殿。心中は察するが、ここでどちらが本物かという議論を加熱させても仕方がない。『ブチャラティ』殿の件については、当人達と再会すれば、問い質すとして、ここは一旦矛を収めて頂けないだろうか?」
「……分かったわ。」
「承知致しました」
「……分かったわ。」
「承知致しました」
オシュトルの仲裁により、二人は釈然としない感じではあるが、引き下がる。
『ブチャラティ』の件については、ひとまず決着としたが、他参加者に関する事柄についてはもう一つ、無視できない問題がある。
『ブチャラティ』の件については、ひとまず決着としたが、他参加者に関する事柄についてはもう一つ、無視できない問題がある。
「―――フレンダ=セイヴェルンは、流竜馬そして仮面を付けた剣士に襲われた……そのように述べていたのだな?」
「ええ、そうよ。それで、オシュトル達はここに来る前に、その流竜馬に逢ったのよね?」
「ああ、竜馬殿は言動こそは粗暴ではあったが、話してみれば、実直で話の分かる漢といった印象を受けた。少なくとも、殺し合いに乗り、問答無用で他人を襲うような輩ではなかった。」
「私も同じ意見でございます。」
「ええ、そうよ。それで、オシュトル達はここに来る前に、その流竜馬に逢ったのよね?」
「ああ、竜馬殿は言動こそは粗暴ではあったが、話してみれば、実直で話の分かる漢といった印象を受けた。少なくとも、殺し合いに乗り、問答無用で他人を襲うような輩ではなかった。」
「私も同じ意見でございます。」
オシュトルの返答にヴァイオレットが追従する。
「そう……」
二人の意見に、アリアは眉をひそめ、険しい表情を見せる。
二人が出会ったという流竜馬の人物像と、フレンダから聞いていたそれに乖離があったからだ。フレンダからは、流竜馬は殺し合いに乗っている危ない奴で、問答無用で襲い掛かってきたと聞いている。
アリア達はフレンダからの一方的な証言を基に、流竜馬を殺し合いに乗った危険人物と認識していたのだが、実際には流竜馬はそのような蛮行を犯す人間ではなかったとのこと。
しかも、流竜馬は、フレンダこそが殺し合いに乗っている側の人間であり、ここぞとばかりに竜馬の悪評を吹聴し、他の参加者と潰し合わせる工作を行なっていると証言しているという。実際にフレンダの策略によって、竜馬は他の参加者と無用な戦闘を余儀なくされたとも。
二人が出会ったという流竜馬の人物像と、フレンダから聞いていたそれに乖離があったからだ。フレンダからは、流竜馬は殺し合いに乗っている危ない奴で、問答無用で襲い掛かってきたと聞いている。
アリア達はフレンダからの一方的な証言を基に、流竜馬を殺し合いに乗った危険人物と認識していたのだが、実際には流竜馬はそのような蛮行を犯す人間ではなかったとのこと。
しかも、流竜馬は、フレンダこそが殺し合いに乗っている側の人間であり、ここぞとばかりに竜馬の悪評を吹聴し、他の参加者と潰し合わせる工作を行なっていると証言しているという。実際にフレンダの策略によって、竜馬は他の参加者と無用な戦闘を余儀なくされたとも。
「これは、してやられたかもね、アリアちゃん。今にして思えば、フレンダちゃん色々と挙動不審なところあったしね。」
新羅は、肩をすくめながら苦笑すると、アリアもため息混じりに相槌を打つ。
「素直には認めたくはないけどね……ブチャラティや九郎が心配になってきたわ……」
「そのブチャラティ君も、本物の『ブチャラティ』じゃないかもしれないけど?」
「あぁーもう!一々言わなくていいわよ、そんなこと!本当にややこしくなってきたわね!」
「そのブチャラティ君も、本物の『ブチャラティ』じゃないかもしれないけど?」
「あぁーもう!一々言わなくていいわよ、そんなこと!本当にややこしくなってきたわね!」
新羅の指摘に、苛立ちを隠すことなくアリアは頭を掻きむしり、声を上げる。
「オシュトル、流竜馬はフレンダを見つけたら、どうするって言っていたの?」
「―――『これ以上邪魔するなら容赦はしない』と申していたが……」
「―――『これ以上邪魔するなら容赦はしない』と申していたが……」
それはつまり、彼女を殺すということだろう。
如何に相手が殺し合いに乗った人間であろうと、武偵として、人殺しだけは看過できない。
如何に相手が殺し合いに乗った人間であろうと、武偵として、人殺しだけは看過できない。
「そんなことは絶対にさせないわ!フレンダが本当にクロだったら、私がとっちめる。それで流竜馬に謝らせる。誰にも手出しはさせない」
確固たる意志を以って、アリアが宣言すると、ヴァイオレットも同調するように告げる。
「はい…私もアリア様に賛同いたします。もう誰かが犠牲になるのは嫌ですから」
「成る程……其方達の決意はよく理解した。フレンダ=セイヴェルンの対処については、アリア殿達に任せるとしよう。」
「成る程……其方達の決意はよく理解した。フレンダ=セイヴェルンの対処については、アリア殿達に任せるとしよう。」
オシュトルとしては、殺し合いの打破において障害となりうる存在は排除したいところであったが、それを明言したところで、アリア達との衝突は目に見えている。ならば、ここは下手に刺激せず、彼女らの意思を尊重させるポーズを取った方が、話を円滑に進められると判断したのだ。
「うん、それで良いんじゃないかな?まぁ僕としては、セルティと一緒に帰れることが出来れば、どっちでも良いんだけどね。」
新羅もまた、特に異論を唱える事なく、三人の決定に同意した。
そして、思い出したかのように、オシュトルに向き直り、尋ねる。
そして、思い出したかのように、オシュトルに向き直り、尋ねる。
「そういえば、フレンダちゃんを襲った仮面の剣士っていうのが、オシュトルさんの知り合いなんだよね?」
「然り―――。ミカヅチは我が戦友。義侠の漢ではあり、弱き者への一方的な殺戮を好むような者ではないが……それでも奴が殺し合いに乗ってしまった理由は察しがつく。奴は奴の護る者の為に剣を振るうことを選んだのであろうな。竜馬殿からは、別の者も奴に襲われたと聞いているが――」
「然り―――。ミカヅチは我が戦友。義侠の漢ではあり、弱き者への一方的な殺戮を好むような者ではないが……それでも奴が殺し合いに乗ってしまった理由は察しがつく。奴は奴の護る者の為に剣を振るうことを選んだのであろうな。竜馬殿からは、別の者も奴に襲われたと聞いているが――」
オシュトルはどこか寂しげな目で、天井を見上げる。
「いずれにせよ、あの漢は既に覚悟を決めている故、説得は通じぬだろう。なればこそ、戦友として、某は奴を止める義務がある。相対することあらば、某も全力で奴の覚悟と向き合うつもりだ」
有無を言わさぬ口調で、オシュトルはきっぱりと言い切る。
ミカヅチの戦友たる『オシュトル』として、そして『ハク』として、戦友に引導を渡さんという、揺るがざる信念とともに。
ミカヅチの戦友たる『オシュトル』として、そして『ハク』として、戦友に引導を渡さんという、揺るがざる信念とともに。
「……オシュトル……」
オシュトルの言葉から並々ならぬ覚悟を感じ取ったアリア達は、それ以上何も言うことはなかった。
やがて、他参加者についての議題は片付き、首輪へと話題が移り変わる。
「ーーーさっきも話した通り、首輪に関しては、解除方法が分かったわ。ただし、それが出来るかどうかはまた別問題だけどね」
アリアは分解したキース・クラエスの首輪を机に並べながら、淡々と説明する。
「緊急解除コードだっけ?……次は、それをどうにかして探る必要があるという訳だね」
「そういう事になるわね。ただ一つ気になることがあるわ。この『仮想世界』云々の文面――これが本当なら、ここは何らかの電子空間で、ここにいる私達の存在も---」
「アリア殿」
「そういう事になるわね。ただ一つ気になることがあるわ。この『仮想世界』云々の文面――これが本当なら、ここは何らかの電子空間で、ここにいる私達の存在も---」
「アリア殿」
アリアがそこまで話したとき、オシュトルが彼女の言葉を遮るように呼びかける。
オシュトルの方を向いたアリアは、彼が今まで以上に神妙な顔つきをしていることに気が付いて、ハッとする。
オシュトルだけではない。
新羅も、ヴァイオレットもまた、何かを憂慮しているような表情を浮かべていた。
オシュトルの方を向いたアリアは、彼が今まで以上に神妙な顔つきをしていることに気が付いて、ハッとする。
オシュトルだけではない。
新羅も、ヴァイオレットもまた、何かを憂慮しているような表情を浮かべていた。
彼らにとって、首輪に記されていた文面は受け入れ難い内容であった。
もしも、この文面が真実ならば、自分達は、この世界の創造主―――運営サイドによって生み出された紛い物ということになる。
そして、それは各々が抱える想いが虚構の産物であることを意味していた。
もしも、この文面が真実ならば、自分達は、この世界の創造主―――運営サイドによって生み出された紛い物ということになる。
そして、それは各々が抱える想いが虚構の産物であることを意味していた。
ハクが、親友から託された使命も―――。
新羅の、セルティに対する愛も―――。
ヴァイオレットの、人々の想いを紡ぎたいという願いですらも―――。
新羅の、セルティに対する愛も―――。
ヴァイオレットの、人々の想いを紡ぎたいという願いですらも―――。
オシュトルはそういった不安を払拭するためにも、口を開く。
「如何ような事情があれど、我等という存在がここに在るのは事実。であれば、我らは己が信念を貫き通すのみ。前に進むより他に道は無し。そうは思われぬか?」
オシュトルの言葉に、アリア達は沈黙する。
彼の言うとおり、自分達がどのような存在であれ、此処にいるという事実、そして譲れない想いを胸に抱いていることに変わりはない。
彼の言うとおり、自分達がどのような存在であれ、此処にいるという事実、そして譲れない想いを胸に抱いていることに変わりはない。
「……そうね。ここでウダウダ考えていても仕方がないわ。まずは出来ることをやるしかないわよね……」
未だ困惑は残っているが、一旦それを胸の内に仕舞い込み、アリアは自分に言い聞かせるように応じる。
新羅もヴァイオレットも、彼女に続いて頷き、同調を示した。
新羅もヴァイオレットも、彼女に続いて頷き、同調を示した。
「ふむ……少し主題から逸れてしまったが、話を戻す事にしよう。この首輪の解析結果を受けて、某達はどのように動くべきかを……」
オシュトルはそう仕切り直すと、今後の具体的な行動方針に話題を移し、一同は話し合いを続けるのであった。
◇
「はぁ…結局まだ暫くこの遺跡に足止めされることになっちゃったかぁ……。」
今は機能停止しているアヴ・カムゥを背景に、新羅はガックリと項垂れる。
話し合いの結果、首輪の緊急解除コードの手掛かりとなるものはないか、アリアとオシュトルの二人が、コンピュータルームに留まり、部屋に散らばる端末を物色することになった。
その間、いざというときの戦力として、新羅はアヴ・カムゥの運転の練習を頼まれ、ヴァイオレットはそれを見守る役目を与えられた。
しかし、新羅はアヴ・カムゥに搭乗することなく、こうして座り込んでいる。
話し合いの結果、首輪の緊急解除コードの手掛かりとなるものはないか、アリアとオシュトルの二人が、コンピュータルームに留まり、部屋に散らばる端末を物色することになった。
その間、いざというときの戦力として、新羅はアヴ・カムゥの運転の練習を頼まれ、ヴァイオレットはそれを見守る役目を与えられた。
しかし、新羅はアヴ・カムゥに搭乗することなく、こうして座り込んでいる。
「あー折角セルティを護れる手段は手に入れたのに、こんなところで足踏みしてる場合じゃないんだよなぁ……」
「新羅様、お気持ちは分かりますが、オシュトル様とアリア様は懸命に調査を行っております。どうかご辛抱下さい」
「新羅様、お気持ちは分かりますが、オシュトル様とアリア様は懸命に調査を行っております。どうかご辛抱下さい」
ぼやく新羅を宥めるように、傍らに立つヴァイオレットは声を掛ける。
「あーセルティ。愛しのセルティ。早く君に会いたいよぉ。」
「……。」
「……。」
その言葉にまるで応えることなく、新羅は天を仰ぐ。
愛する女性との再会が先延ばしになったことで、落胆を隠しきれない様子だ。
ひたすらに愛する女性の名を呼び続けるその姿は、傍から見たら痛々しい限りだが、ヴァイオレットは冷ややかに流すわけでもなく、真摯な態度で彼に接する。
愛する女性との再会が先延ばしになったことで、落胆を隠しきれない様子だ。
ひたすらに愛する女性の名を呼び続けるその姿は、傍から見たら痛々しい限りだが、ヴァイオレットは冷ややかに流すわけでもなく、真摯な態度で彼に接する。
「新羅様は、本当にセルティ様のことを大切に想っていらっしゃるのですね」
ヴァイオレットは新羅の隣に腰を下ろすと、しみじみと語りかける。
その口調はとても優しく、そして哀しみを帯びていた。
愛する人が身近にいるという幸福―――その温もりに触れられない悲しみを、彼女は誰よりも知っているから、伝え聞く新羅とセルティの日常をとても羨ましく思えたのである。
その口調はとても優しく、そして哀しみを帯びていた。
愛する人が身近にいるという幸福―――その温もりに触れられない悲しみを、彼女は誰よりも知っているから、伝え聞く新羅とセルティの日常をとても羨ましく思えたのである。
「勿論だとも!僕はセルティを愛しているからね!僕の世界はセルティを中心に回っているんだ!」
そんな彼女の心情を知る由もない新羅は、勢いよく立ち上がり、饒舌に語る。
その瞳には熱く燃えるような情熱を宿しており、同居人への想いの強さを感じさせた。
その瞳には熱く燃えるような情熱を宿しており、同居人への想いの強さを感じさせた。
「左様でございますか……ならば、折角の機会ですからお手紙を書かれてみてはいかがでしょうか?」
「手紙?ヴァイオレットちゃんの代筆サービスってやつかい?どうしてまた急に?」
「手紙?ヴァイオレットちゃんの代筆サービスってやつかい?どうしてまた急に?」
唐突の提案に疑問を抱く新羅に対し、ヴァイオレットは穏やかな表情のまま語り掛ける。
「新羅様の想いを形にして、セルティ様と再会した際に渡す贈り物にしては如何でしょうか?きっと喜ばれると思いますよ」
「うーん、恋文ってやつかぁ。ちょっと気恥ずかしい感じがするなぁ……」
「うーん、恋文ってやつかぁ。ちょっと気恥ずかしい感じがするなぁ……」
などと首を傾げつつも、ニヤニヤと頬を緩ませる新羅。
どうやらまんざらでもないらしい。
どうやらまんざらでもないらしい。
「ふへへへ……でも、僕の山より高く、海よりも深い愛を綴った恋文を見た時のセルティの恥ずかしがる姿も可愛いだろうなぁ。よし、書こう!どうせまだ、時間はあるしね!ヴァイオレットちゃん、お願いしても良いかな?」
「畏まりました。それでは……」
「畏まりました。それでは……」
と、タイプライターを取り出し、手袋を外し文字を打ち込む準備を始めるヴァイオレット。
その様子を眺めながら、新羅は愛する同居人に向けた言葉を紡ぎ始める。
アヴ・カムゥのことなどそっちのけ、ヴァイオレットに己が愛を語る男の姿は、実に楽しげで幸せそうなものであった。
その様子を眺めながら、新羅は愛する同居人に向けた言葉を紡ぎ始める。
アヴ・カムゥのことなどそっちのけ、ヴァイオレットに己が愛を語る男の姿は、実に楽しげで幸せそうなものであった。
【E-4/大いなる父の遺跡・倉庫内/昼/一日目】
【岸谷新羅@デュラララ!!】
[状態]:健康
[服装]:白衣
[装備]:まほうのたて@ドラゴンクエストビルダーズ2
[道具]:基本支給品一色、マスターキー@うたわれるもの 二人の白皇、不明支給品0~1
[思考]
基本:セルティと一緒に帰る
0:オシュトル達の解析を待っている間、ヴァイオレットにセルティへの手紙の代筆を行ってもらう
1;今後に備え、アヴ・カムゥの操縦にももう少し慣れたい
2:遺跡探索の後、静雄との合流を目指して北上(不本意だけど)。最終的には池袋駅でセルティと合流する。
3:桜川君の人体とブチャラティの『スタンド』に興味。ちょっと検査してみたい
4:ジオルドを警戒。セルティに害を与えるかもしれないので、野放しにはしたくない
5:流竜馬、仮面の剣士(ミカヅチ)を警戒
[備考]
※ 九郎、ジオルドと知り合いの情報を交換しました。
※ アリア、ブチャラティと知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。
※ オシュトル、ヴァイオレットと知り合いの情報を交換をしました。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※ アヴ・カムゥの基本操縦は出来るようになりました。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読みましたが、「自分たちが作られた存在」という部分については懐疑的です。
【岸谷新羅@デュラララ!!】
[状態]:健康
[服装]:白衣
[装備]:まほうのたて@ドラゴンクエストビルダーズ2
[道具]:基本支給品一色、マスターキー@うたわれるもの 二人の白皇、不明支給品0~1
[思考]
基本:セルティと一緒に帰る
0:オシュトル達の解析を待っている間、ヴァイオレットにセルティへの手紙の代筆を行ってもらう
1;今後に備え、アヴ・カムゥの操縦にももう少し慣れたい
2:遺跡探索の後、静雄との合流を目指して北上(不本意だけど)。最終的には池袋駅でセルティと合流する。
3:桜川君の人体とブチャラティの『スタンド』に興味。ちょっと検査してみたい
4:ジオルドを警戒。セルティに害を与えるかもしれないので、野放しにはしたくない
5:流竜馬、仮面の剣士(ミカヅチ)を警戒
[備考]
※ 九郎、ジオルドと知り合いの情報を交換しました。
※ アリア、ブチャラティと知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。
※ オシュトル、ヴァイオレットと知り合いの情報を交換をしました。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※ アヴ・カムゥの基本操縦は出来るようになりました。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読みましたが、「自分たちが作られた存在」という部分については懐疑的です。
【ヴァイオレット・エヴァーガーデン@ヴァイオレット・エヴァーガーデン】
[状態]:健康
[服装]:普段の服装
[装備]:手斧@現地調達品
[道具]:不明支給品0~2、タイプライター@ヴァイオレット・エヴァーガーデン、高坂麗奈の手紙(完成間近)
[思考]
基本:いつか、きっとを失わせない
0:新羅の手紙を代筆する
1:主を失ってしまったオシュトルが心配。力になってあげたい。
2:麗奈と再合流後、代筆の続きを行う
3:手紙を望む者がいれば代筆する。
4:ゲッターロボ、ですか...なんだか嫌な気配がします。
5:ブチャラティ様が二人……?
[備考]
※参戦時期は11話以降です。
※麗奈からの依頼で、滝先生への手紙を書きました。但し、まだ書きかけです。あと数行で完成します。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※ アリア、新羅と知り合いの情報を交換をしました。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読みましたが、「自分たちが作られた存在」という部分については懐疑的です。
[状態]:健康
[服装]:普段の服装
[装備]:手斧@現地調達品
[道具]:不明支給品0~2、タイプライター@ヴァイオレット・エヴァーガーデン、高坂麗奈の手紙(完成間近)
[思考]
基本:いつか、きっとを失わせない
0:新羅の手紙を代筆する
1:主を失ってしまったオシュトルが心配。力になってあげたい。
2:麗奈と再合流後、代筆の続きを行う
3:手紙を望む者がいれば代筆する。
4:ゲッターロボ、ですか...なんだか嫌な気配がします。
5:ブチャラティ様が二人……?
[備考]
※参戦時期は11話以降です。
※麗奈からの依頼で、滝先生への手紙を書きました。但し、まだ書きかけです。あと数行で完成します。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※ アリア、新羅と知り合いの情報を交換をしました。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読みましたが、「自分たちが作られた存在」という部分については懐疑的です。
【現地調達品紹介】
【アヴ・カムゥ(大剣武装)@うたわれるもの 二人の白皇】
大いなる父の遺跡の倉庫内に配置。
全長5m程にもなる細身の身体に巨大な甲冑を纏った機動兵器。
一撃で砦を崩すほどのパワー及び、刀剣、槍、弓矢といった歩兵用の武器を受け付けない頑丈な装甲を備え圧倒的と言える程の戦闘力を発揮し、一機で一軍に匹敵すると云われている。
硬い装甲による防御力を誇るが、関節部分などは露出し、軟質素材となっているため、そこには既存の武器が通るという弱点は存在する。
尚、正式名称は【アベル重工製極限作業用人型重機カムル三式】、通称アベルカムルとなっており、旧人類が重宝した傑作機。元々は戦闘用途ではなく、作業用途で利用されていたが、ヒトの世界では、ウィツァルネミテアと契約したシャクコポル族達が戦闘用途で利用していた。
本来の操作方法は、主に2つ。
1つ目は機体後部から内部に入り込み、搭乗者はゲル状の物質に包まれた状態で操縦を行う方法となっており、機体は搭乗者の動きをそのままトレースし駆動する。
尚、機体が損傷ないし破損すると、機体のダメージがそのまま痛覚となって搭乗者に伝わる仕様となっており、搭乗者がショック死するほどの激痛を伴うダメージを与えることで無力化も可能となっている。
2つ目は外部から操作盤を利用して、簡易操作を行う方法となっている。
尚、本ロワにおいて、会場に設置された機体については、主催者より改造が施されており、直接搭乗の方法でのみ操作可能となっている。また起動には、別途マスターキーが必要となっており、操縦はマスターキー保有者のみ可能で、少時間程度の訓練で乗りこなせられるようカスタマイズされている。
【アヴ・カムゥ(大剣武装)@うたわれるもの 二人の白皇】
大いなる父の遺跡の倉庫内に配置。
全長5m程にもなる細身の身体に巨大な甲冑を纏った機動兵器。
一撃で砦を崩すほどのパワー及び、刀剣、槍、弓矢といった歩兵用の武器を受け付けない頑丈な装甲を備え圧倒的と言える程の戦闘力を発揮し、一機で一軍に匹敵すると云われている。
硬い装甲による防御力を誇るが、関節部分などは露出し、軟質素材となっているため、そこには既存の武器が通るという弱点は存在する。
尚、正式名称は【アベル重工製極限作業用人型重機カムル三式】、通称アベルカムルとなっており、旧人類が重宝した傑作機。元々は戦闘用途ではなく、作業用途で利用されていたが、ヒトの世界では、ウィツァルネミテアと契約したシャクコポル族達が戦闘用途で利用していた。
本来の操作方法は、主に2つ。
1つ目は機体後部から内部に入り込み、搭乗者はゲル状の物質に包まれた状態で操縦を行う方法となっており、機体は搭乗者の動きをそのままトレースし駆動する。
尚、機体が損傷ないし破損すると、機体のダメージがそのまま痛覚となって搭乗者に伝わる仕様となっており、搭乗者がショック死するほどの激痛を伴うダメージを与えることで無力化も可能となっている。
2つ目は外部から操作盤を利用して、簡易操作を行う方法となっている。
尚、本ロワにおいて、会場に設置された機体については、主催者より改造が施されており、直接搭乗の方法でのみ操作可能となっている。また起動には、別途マスターキーが必要となっており、操縦はマスターキー保有者のみ可能で、少時間程度の訓練で乗りこなせられるようカスタマイズされている。
◇
場面は変わり、此処はコンピュータルーム。
凄まじいスピードで刻まれるタイプ音が室内に響き渡る。
凄まじいスピードで刻まれるタイプ音が室内に響き渡る。
「―――アンタ、何者よ……。」
目の前でキーボードを操作する仮面の男――オシュトルに視線を送りながら、アリアは呟いた。
オシュトルは、目にも止まらぬ速さでキーを叩いていき、瞬く間に大量の文字列をディスプレイ上に表示させていく。
古風な服装とは裏腹に、流れるようなタイピングで、次々と情報を入力していく様は、まるで最新鋭プログラマーのようだ。
『アベルカムル』とは何か、大いなる父とは何か、その世界の滅亡と新たな世界の成り立ちを、掻い摘んで説明してきたところから、ただの武士ではないことは分かっていたが、まさかこのような技能まで有しているとは予想だにしていなかった。
オシュトルは、目にも止まらぬ速さでキーを叩いていき、瞬く間に大量の文字列をディスプレイ上に表示させていく。
古風な服装とは裏腹に、流れるようなタイピングで、次々と情報を入力していく様は、まるで最新鋭プログラマーのようだ。
『アベルカムル』とは何か、大いなる父とは何か、その世界の滅亡と新たな世界の成り立ちを、掻い摘んで説明してきたところから、ただの武士ではないことは分かっていたが、まさかこのような技能まで有しているとは予想だにしていなかった。
「なるほど……少しブランクはあったが、身体は覚えているものだな」
感慨深げに呟きながらも、オシュトルの指は止まる事はない。
オシュトルが今行っているのは、主催者が用意したと思われるサーバへのハッキング行為。
オシュトルが今行っているのは、主催者が用意したと思われるサーバへのハッキング行為。
残念ながらコンピュータルーム内にある端末自体には、特にこれといった情報は残されていなかったのだが、端末に主催者側が用意したと思われる質素なホームページが表示されていた。
ゲーム参加者に向けて公開されているそのホームページでは、放送で発表された死亡者情報のまとめや、誰も書き込んでいないチャットルームなど複数のコンテンツが存在していたが、オシュトルが着目したのはホームページそのものの存在だ。
ゲーム参加者に向けて公開されているそのホームページでは、放送で発表された死亡者情報のまとめや、誰も書き込んでいないチャットルームなど複数のコンテンツが存在していたが、オシュトルが着目したのはホームページそのものの存在だ。
一般にこういったコンテンツをクライアント側に提供するためには、それを公開するための媒体―――つまりはサーバが必要となる。そして、そのサーバは誰が用意したとなると、それはもちろんこのゲームの運営側となる。
旧世界で凄腕ハッカーとして手腕を振るっていたハクは、このホームページを提供するサーバを通じて運営サイドのシステムに潜り込み、解除コードに関する情報がないか調べ上げようとしているのである。
幸いなことに、この部屋にある端末は大いなる父の世界で、普及
されていたものばかり。
ハクにとっても、使い慣れた道具で作業を行う事は造作もなかったのだ。
旧世界で凄腕ハッカーとして手腕を振るっていたハクは、このホームページを提供するサーバを通じて運営サイドのシステムに潜り込み、解除コードに関する情報がないか調べ上げようとしているのである。
幸いなことに、この部屋にある端末は大いなる父の世界で、普及
されていたものばかり。
ハクにとっても、使い慣れた道具で作業を行う事は造作もなかったのだ。
(よし、最初の防壁は突破できそうだな……)
ホームページを提供するサーバシステム内への経路を見出し、その最初の関門たる防壁を難無く突破する。
セキュリティは二重三重に施されているようにも見受けられるので、まだまだ油断はできないものの、この分だと全てのセキュリティ突破まで、そう時間は掛からないだろう。後はお目当ての情報が見つかるかどうかなのだが……
セキュリティは二重三重に施されているようにも見受けられるので、まだまだ油断はできないものの、この分だと全てのセキュリティ突破まで、そう時間は掛からないだろう。後はお目当ての情報が見つかるかどうかなのだが……
(だが、待て……)
ふとハクの中に違和感が生じた。
現在のところ、ハッキングは何の問題もなく進んでいるように見えるのだが、何か妙な引っ掛かりを覚えるのだ。
現在のところ、ハッキングは何の問題もなく進んでいるように見えるのだが、何か妙な引っ掛かりを覚えるのだ。
(―――いくらなんでも、杜撰すぎやしないか?)
セキュリティの脆弱性を指摘したいわけではない。
しかし、あまりにもセキュリティの突破が容易で、あっさりし過ぎているのだ。
しかし、あまりにもセキュリティの突破が容易で、あっさりし過ぎているのだ。
それに主催者が参加者の一挙手一投足監視しているとすれば、ハクが行おうとしている行為は明らかに看過できないはず。
にも関わらず、今の今まで妨害してくる気配すらないというのはどうにも不自然だった。
にも関わらず、今の今まで妨害してくる気配すらないというのはどうにも不自然だった。
アリアが解析した首輪の件についても、同じことが言える。
わざわざ説明文まで刻み込んで、ご丁寧に解除コードという存在を仄めかしたのは何か意図があってのことだろうか。
わざわざ説明文まで刻み込んで、ご丁寧に解除コードという存在を仄めかしたのは何か意図があってのことだろうか。
まるでこちらの行動を全て把握した上で泳がせているかのように---。
予め用意されたシナリオをなぞっているような---。
予め用意されたシナリオをなぞっているような---。
どことなく不気味な違和感を抱きつつも、ハクは作業を進めて、傍に佇むアリアは固唾を飲んで、これを見守るのであった。
【E-4/大いなる父の遺跡・コンピュータルーム/昼/一日目】
【神崎・H・アリア@緋弾のアリアAA】
[状態]:疲労(中)
[服装]:武偵高の制服
[装備]:竜馬の武器だらけマント@新ゲッターロボ
[道具]:不明支給品0~2、キースの首輪(分解済み)、キースの支給品(不明支給品0~2)、カタリナの布団@乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 北宇治高等学校職員室の鍵
[思考]
基本:武偵としてこの事件を解決する。
0:オシュトルのハッキングの結果を待つ
1:首輪解除に向けて、首輪の緊急解除コードを探る
2:遺跡探索の後、静雄との合流を目指して北上。最終的には池袋駅でブチャラティ達と合流する。
3:あかり、高千穂、志乃、ジョルノ、カナメ、シュカ、レイン、キースの知り合いを探す。
4:佐々木志乃が気がかり……何やってんのよ……。
5:流竜馬、仮面の剣士(ミカヅチ)を警戒
6:フレンダに合流したら、問い詰める
7:『ブチャラティ』が二人……?
[備考]
※ 参戦時期は少なくとも高千穂リゾート経験後です。
※ 九郎、新羅と知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。
※ 新羅から罪歌についての概要を知りました。
※ オシュトル、ヴァイオレットと知り合いの情報を交換をしました。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読みましたが、「自分たちが作られた存在」という部分については懐疑的です。
【神崎・H・アリア@緋弾のアリアAA】
[状態]:疲労(中)
[服装]:武偵高の制服
[装備]:竜馬の武器だらけマント@新ゲッターロボ
[道具]:不明支給品0~2、キースの首輪(分解済み)、キースの支給品(不明支給品0~2)、カタリナの布団@乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 北宇治高等学校職員室の鍵
[思考]
基本:武偵としてこの事件を解決する。
0:オシュトルのハッキングの結果を待つ
1:首輪解除に向けて、首輪の緊急解除コードを探る
2:遺跡探索の後、静雄との合流を目指して北上。最終的には池袋駅でブチャラティ達と合流する。
3:あかり、高千穂、志乃、ジョルノ、カナメ、シュカ、レイン、キースの知り合いを探す。
4:佐々木志乃が気がかり……何やってんのよ……。
5:流竜馬、仮面の剣士(ミカヅチ)を警戒
6:フレンダに合流したら、問い詰める
7:『ブチャラティ』が二人……?
[備考]
※ 参戦時期は少なくとも高千穂リゾート経験後です。
※ 九郎、新羅と知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。
※ 新羅から罪歌についての概要を知りました。
※ オシュトル、ヴァイオレットと知り合いの情報を交換をしました。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読みましたが、「自分たちが作られた存在」という部分については懐疑的です。
【オシュトル@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:健康、疲労(小)、強い覚悟
[服装]:普段の服装
[装備]:オシュトルの仮面@うたわれるもの 二人の白皇、童磨の双扇@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1、工具一式(現地調達)
[思考]
基本:『オシュトル』として行動し、主催者に接触。力づくでもアンジュを蘇生させ、帰還する
0:主催者側のシステムにハッキングを行い、首輪の解除コードに関連する情報がないか調べる
1:首輪解除に向けて、首輪の緊急解除コードを探る
2:クオン、ムネチカとも合流しておきたい
3:ミカヅチ、マロロ、ヴライを警戒
4:ゲッターロボのシミュレータについては、対応保留。流竜馬とその仲間を筆頭に適性がありそうな参加者も探しておきたい。
5:殺し合いに乗るのはあくまでも最終手段。しかし、必要であれば殺人も辞さない
6:『ブチャラティ』を名乗るものが二人いるが、果たして……。
7:誰かに伝えたい『想い』か……。
[備考]
※ 帝都決戦前からの参戦となります
※ アリア、新羅と知り合いの情報を交換をしました。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読みましたが、「自分たちが作られた存在」という部分については懐疑的です。
[状態]:健康、疲労(小)、強い覚悟
[服装]:普段の服装
[装備]:オシュトルの仮面@うたわれるもの 二人の白皇、童磨の双扇@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1、工具一式(現地調達)
[思考]
基本:『オシュトル』として行動し、主催者に接触。力づくでもアンジュを蘇生させ、帰還する
0:主催者側のシステムにハッキングを行い、首輪の解除コードに関連する情報がないか調べる
1:首輪解除に向けて、首輪の緊急解除コードを探る
2:クオン、ムネチカとも合流しておきたい
3:ミカヅチ、マロロ、ヴライを警戒
4:ゲッターロボのシミュレータについては、対応保留。流竜馬とその仲間を筆頭に適性がありそうな参加者も探しておきたい。
5:殺し合いに乗るのはあくまでも最終手段。しかし、必要であれば殺人も辞さない
6:『ブチャラティ』を名乗るものが二人いるが、果たして……。
7:誰かに伝えたい『想い』か……。
[備考]
※ 帝都決戦前からの参戦となります
※ アリア、新羅と知り合いの情報を交換をしました。
※ 首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。
※ 首輪の説明文を読みましたが、「自分たちが作られた存在」という部分については懐疑的です。
【会場内ギミック紹介】
【バトロワイアル公式ホームページ@オリジナル】
主催者が参加者に向けて公開しているホームページ。
会場内の端末からアクセス可能。造りは質素で、少なくとも、既に放送で発表されている死亡者情報の参照や、チャットルームが提供されている。
その他提供されているコンテンツがあるかについては、後続の書き手様にお任せいたします。
【バトロワイアル公式ホームページ@オリジナル】
主催者が参加者に向けて公開しているホームページ。
会場内の端末からアクセス可能。造りは質素で、少なくとも、既に放送で発表されている死亡者情報の参照や、チャットルームが提供されている。
その他提供されているコンテンツがあるかについては、後続の書き手様にお任せいたします。
前話 | 次話 | |
崩れてゆく、音も立てずに | 投下順 | いつしか双星はロッシュ限界へ |
前話 | キャラクター | 次話 |
ささやかな揺らめき | オシュトル | 奏でよ、狂騒曲 |
ささやかな揺らめき | ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン | 奏でよ、狂騒曲 |
フレンダちゃんのドキドキ⭐︎生存戦略! | 神崎・H・アリア | 奏でよ、狂騒曲 |
フレンダちゃんのドキドキ⭐︎生存戦略! | 岸谷新羅 | 奏でよ、狂騒曲 |