バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

フレンダちゃんのドキドキ⭐︎生存戦略!

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kyogokurowa

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殺し合いの会場に堂々と聳え立つ高層ホテル。
朝日に照らされるその外観は、周囲の緑を基調とした平原とは対照的に、現代チック且つ洒落たデザインとなっている。各部屋の窓からは眼下のエリアを見渡す事ができ、客室の内装は豪華な造りながらもシックで落ち着く空間となっている。

そんなホテルの一室にて、桜川九郎は、ベッドの上で仰向けになり、ぼんやりと無地の天井を見つめていた。

「……紗季さん……」

ぼそり呟くように亡き彼女の名前を呼ぶ。
返事が返ってくるわけもなく、しんみりとした静寂に包まれる室内を、空調の音のみが包む。

九郎自身は不老不死の身だ。
ちょっとやそっとじゃ死ぬこともなければ、直ぐに蘇ることが出来る。
しかし、琴子や紗季は違う。こと紗季に至っては、正真正銘の一般人だ。
魔法やスタンドなどという異能が飛び交うこの戦場においては、あまりにか弱く非力な存在であるがため、非常に危ういと憂慮はしていたのだが……。いざこうして、かつて結婚目前まで関係を深めた彼女と死に別れると、心にぽっかり穴が開いた気分である事に気付く。

『あなたも、あの娘とともに許さないのね』

『岩永さん、大事にしなさいよ』

『じゃあね』

彼女と最後に交わした会話が走馬灯のように脳内を巡り、九郎は天井に向けて手を翳す。

『俺達は生き残った。だったら、失った物ばかりに目を向けていても仕方がない。死んで行った者達の為にも。俺達は進まなければ。』

と同時に先程のブチャラティの言葉が蘇る。

(……そうだ、僕達はここで止まる訳にはいかない……そうだよな、岩永……)

今は隣にいない相棒に語り掛けるかのように。自分にそう言い聞かせて気持ちを奮い立たせ、ぎゅっと拳を握りしめ、思考を切り替えた。


(今の僕にとって武器になるのは『人魚の力』つまり不死性のみだ……だが、これもどこまで有効なのかが怪しい)

九郎は自身に宿る不死の能力に疑念を抱いている。それは、殺し合いをより公平に進めるために、主催者側が自分の不死性に何かしらの制約を課したのではないかというものだ。
勿論、これは憶測の範疇ではあるのだが、九郎がこの考えに至った理由は一つある。
それは、九郎には既に別の制限が課せられているからだ。

桜川九郎は不老不死の能力を得る人魚の肉だけではなく、未来を予知するという件の肉を食して、未来決定能力を得ている。
この未来決定能力は、九郎が死に瀕した際に、複数の未来の可能性の中から、自分が望む未来を掴むことができるというものである。
この能力と不死身の特性を組み合わせることで、あらゆる難局に対応することが出来るのだが―――。
彼は既にこの会場でジオルド・スティアートに二度殺されている。しかし、死に瀕したときに未来決定能力を発動させることは出来なかった。恐らく制約として課せられているものの一つなのだろうと踏んでいるが、こうなってくると、もう一つの不死性についても何らかの制約が掛けられているのではないかと思えてくる。

(となれば、不死性を過信して無闇矢鱈に死ぬのも危険だな……)

と、改めて自身に掛けられた制限について考察していると、コンコンとドアからノック音が鳴り響いた。
「はい」と答えつつ起き上がりドアを開くと、そこには新羅が立っていた。

「やぁ、桜川君」
「岸谷先生……?まだ集合までには時間があるはずですが……」

ホテルで会した一同は、各自休憩取って午前10時に再度ロビーに集合する手筈となっていたが、まだ一時間以上も猶予はある。にも関わらず新羅が現れたということは……。

「―――何かあったんですね?」
少し緊張を含んだトーンで問い掛ける九郎に対して、新羅はいつもの愛想笑いを顔に張り付けながら答える。

「正解。いやぁ〜またこのホテルに新しいお客さんが訪ねてきてさぁ。ブチャラティ君から再度招集が掛かったんだよ。だから、お休み中申し訳ないんだけど、一緒に来てくれるかな?」

新羅の言う「お客さん」とは他の参加者のことだろう。
新羅の面持ちと言葉に切迫した様子はないことから、いきなり襲撃を仕掛けてくるような輩ではないようだが。

「分かりました、行きましょう」

特に断る理由もないため、九郎は承諾し部屋を出る。新たな来訪者を見定めるため。
そして、あわよくばそれが岩永であることに期待を込めて。




「―――それで、その煉獄って人に助けられて、命からがらここまで逃げてきた…ということね」
「ええ…本当に死ぬかと思ったわけよ」
「流竜馬に、仮面を被った剣士か……。危険人物の情報を得られただけでも収穫ですね」

ホテルに流れ着いた少女の名前はフレンダ=セイヴェルン。背丈こそは九郎が探す岩永琴子と同様小柄であるものの、外見は金髪碧眼のお人形さんのような出立ちをしている。
ロビーにはブチャラティの招集に応じてアリア、新羅、九郎の三人が集まり、皆でフレンダから事情聴取していた。
元々ブチャラティと新羅はホテルエントランスにて休息を取っていたのだが、フレンダの来訪を機に、ブチャラティが新羅に、部屋で休む他の二人を呼び出すよう依頼し、新羅が九郎とアリアの順に引き連れて今に至る。

(ふぅ……どうにか、そこそこの規模の集団に潜り込みことができたってわけよ)

フレンダはブチャラティ達に、この会場で体験したことについて、嘘と真実を織り交ぜ、自分の都合の良い形に脚色しつつ話した。とりあえずはフレンダをつけ狙う流竜馬、それにフレンダに刃を向けた仮面の男、それに煉獄杏寿郎については話をした。しかし、それ以外の参加者―――彩声、静雄、レイン、メアリ、シグレのことについてはあえて伏せておいた。
馬鹿正直に話すわけにもいかないし、かと言って、自分が有利になるよう彼らの言動に脚色をつけるのであれば、このホテル組の中に彼らの知り合いがいた際に、ややこしい話になる可能性があるからだ。
そして捻じ曲げられた情報と引き換えに、フレンダもまた彼らがこれまでに見聞きした情報を得ることが出来た。

「……つまりは流竜馬や仮面の剣士の他にも、ジオルドっていう炎を使うヤバめな奴が殺し合いに乗って、この辺りを彷徨いているってこと!?」

彼らから齎された危険人物の情報に大袈裟に反応し、如何に自分がこの殺し合いに困惑して怯えているのかをアピールする。そこに、九郎が話を被せる。

「要注意人物ならもう一人いる……さっきフレンダさんにも話した佐々木志乃さん……」
「ええっと、確か『罪歌』っていう刀に乗っ取られている可能性があるんだっけ?」
「まぁ、憶測レベルだけどね。一応警戒するに越したことはないよね〜」

あっけらかんとした様子で語る新羅に、ピクリと反応するアリア。
むっとした様子で、新羅達の会話に食ってかかろうとする。
だが彼女が口を開く前に、ブチャラティはこれを制し、一同に告げる。

「あくまでも、可能性レベルでの話だ。アリア、前にも言った通り、彼女の件はお前に一任する、それで良いだろう?」
「―――分かったわよ……」

アリアは不満げな表情を浮かべつつも、渋々了承の意を示す。
アリアが一旦引き下がったのを見て、ブチャラティはやれやれと言った感じで溜息をつく。

「念のため、味方になりそうな参加者についても、整理しよう。俺達がこの会場で出会った、殺し合いに乗っていない側の人間はリュージ一人だけだ。
後は、皆の元の知り合いといったところか……フレンダ…再度確認したいのだが、今この会場に君の知人はいない……それで間違いないな?」
「正確には浜面と滝壺がそうだったんだけど……滝壺は最初の会場で、あのテミスに殺されて……浜面はさっきの放送で名前呼ばれちゃったから……」

目に涙を滲ませながら、唇を震わせ、悔しそうに語るフレンダ。
哀愁漂うその姿に、アリアと九郎は、気の毒そうな表情を浮かべる。
アリアはそんなフレンダの肩に手を置いて、彼女を労る。

「辛かったわよね、フレンダ……。でも、大丈夫よ。今は私達が付いてるから。安心して」
「……うん、ありがとう、アリア……」
「こんな事言うのは気休めにしかならないと思うけど、亡くなった人たちのためにも、僕達は前に進むしかない」
「――そうよね」

アリアと九郎の励ましの言葉に、涙をぬぐい、僅かながらの笑顔で応えるフレンダ。
少しだけ元気を取り戻した様に見えるフレンダに、一同は安堵する。

「話を続けるぞ…各々の知り合いについてだ。まずはアリアの知り合いだが、間宮あかり、佐々木志乃、高千穂麗の三人で、彼女達は殺し合いに乗る様な連中ではないということで良いか?」
「ええ、そうよ…三人とも、まだまだ未熟なところはあるけど、武偵の端くれよ。佐々木志乃も含めてね!」

少し語気を荒げるアリアをじっと見据えて、ブチャラティは短く「分かった」と呟き、彼女の隣に座る九郎に視線を移す。

「次に九郎。お前が探しているのは―――」
「岩永琴子、一応僕の彼女ってことになっています。あいつなら、秩序に反したこの殺し合いは絶対に否定するでしょうね」

九郎の返答にブチャラティはまた「そうか」とだけ答え、次は全員へと視線を配りながら話を続ける。

「俺の知人はジョルノ・ジョバァーナ唯一人だ。あいつも性格上、殺し合いに手を染めるような奴じゃない。俺が保証しよう。」
「そのジョルノって人も、あなたと同じ『スタンド能力者』ってことで、良いのかしら?」
「ああ、そうだ」
「スタンド……能力……?」

疑問符を浮かべるフレンダに、九郎が補足を加える。

「簡単に言えば、超能力みたいなものだよ、フレンダさん」
「超……能力…………?」
「アリアと九郎には既に見せたが……まあ、こればかりは口で説明するより、実際に見てもらった方が早いだろう。『スティッキィ・フィンガーズ』!」

ブチャラティが掛け声とともに手を掲げると、彼の周囲に半透明の人型の異形が浮遊し始める。

「これが、俺のスタンド『スティッキー・フィンガーズ』だ。」
「――ええっ!?何これ……!?」
「相変わらず、不思議な力ね」
「うわあ、ブチャラティ君、凄いね、これ!実に興味深い!ぜひ検査させて貰いたいところだ」

アリアと九郎は既に目の当たりにしていたため、大騒ぎすることはないが、初めてスタンドを目にするフレンダ、新羅は異なるそれぞれ異なる反応を示す。
驚愕に目を丸くするフレンダ。新羅は好奇心に目を輝かせて、はしゃいでいる。

「本来スタンドは、スタンド使いにしか視認することは出来ないのだが、この会場では何故だかお前達にも見えるようだ。これも主催者が課した制限とやらの影響かもしれんが……」

そう説明を加えたブチャラティは、スタンドを引っ込める。

「あっ……」

と、興味津々にスタンドに触れようとしていた新羅は、残念そうな声を上げる。
そんな新羅を横目で見つつ、ブチャラティは更に言葉を続ける。

「---俺が知りうる限り、少なくとも俺とジョルノの二人のスタンド使いがこの殺し合いに参加させられている。しかし俺達以外にも他のスタンド使いが参加している可能性も考慮すべきだな。」
「どうして、そう思うんですか?」
「先程も話したが、この場所では、スタンド能力が非スタンド使いの参加者も視認できるよう改竄されている……つまりこのゲームの運営とやらは、俺やジョルノがスタンド能力者であると把握した上で、そこに手を加えたことになる。
運営がわざわざ俺達スタンド使いをピックアップして、この殺し合いに参加させる理由は何だ?」

ブチャラティからの問いかけに、九郎は顎に手を当てて考え込む。

「恐らくは、そういった異能持ちがいる方が、殺し合いとして盛り上がるから……とかですかね?」
「そうだ。連中がこの殺し合いを一つの娯楽として取り扱っているのだとしたら、スタンド使いのような特殊な能力を持つ者達を参加させた方が、より面白い見世物になるからな。連中が『スタンド』の存在を認識しているのであれば、俺やジョルノ以外のスタンド使いも、この殺し合いに放り込んでいる可能性も憂慮すべきだ。」
「まぁスタンド使いじゃなくても、何らか他の異能持ちであることも十分に考えられるよね。桜川君のような不死者や、ジオルド君のような魔法使いを参加させていることを鑑みると、さ」
(……そうよね、現にこちとらレベル4の絹旗や、学園都市第4位のレベル5の麦野まで巻き込まれているわけだしね)

新羅の考察に、フレンダも心の内で同意する。
例え異能持ちでなくても、現にフレンダや浜面といった暗部のメンバーや、アリアが話す『武偵』といった訓練された人間が参加しており、果ては先程出会った仮面の男や煉獄、流竜馬や平和島静雄といった明らかに人間離れした戦力を目の当たりにしている。
そのように考えると、ますますフレンダ独力での優勝は至難の業であることを認識させられる。

(とりあえず、暫くはこいつらの元で腰を据えようかな。都合よく首輪も持ってるみたいだし。結局解除してくれたら、それはそれでラッキー!ってわけよ)

などと、フレンダが今後の戦略について思考を巡らせているのを他所に、ブチャラティが口を開いた。

「―――とまあ、少し話が逸れてしまったが……最後に新羅。お前が探しているのは首なしライダーのセルティ・ストゥルルソンとのことだが―――」
「うんうん、そう、セルティ!僕の愛しきセルティだ!ああ、勿論彼女はこんなゲーム認めることはないよ、何たって彼女はすごく優しいから―――」
「セルティ・ストゥルルソンが素晴らしい女性だというのは理解した。しかし、新羅……九郎の話によると、セルティの他にも知人もこのゲームに参加しているとのことだが?」

同居人の話題が振られた途端に饒舌に語り始めようとする新羅に、ブチャラティは強引に遮り話を戻す。
新羅はというとテンションを落としつつ、「あー」と言って頭を掻き、答える。

「まぁ、ね。一応友人の名前が二人、名簿にあったんだ。一人は折原臨也、もう一人は平和島静雄っていうんだけどね。まぁ二人とも殺し合いには乗らないと思うよ」
「どんな奴らなんだ?」
「そうだねぇ、まずは折原君だけど……彼を一言で表すと『反吐が出る』って感じかな?」
「……どういう意味よ?危ないやつって事?」

アリアが眉根を寄せて尋ねると、新羅は両手を広げて肩をすくめる。

「ああ、誤解しないで。褒め言葉だよ。彼とは中学生時代からの付き合いではあるけど、人殺しは決してしないよ……一応情報屋なんてやってるだけあって、頭もキレるし、今頃は主催者連中をどうやって一泡吹かせようか企んでるんじゃないかな?ちょっと癖のある変人の類ではあるから、周りには迷惑を掛けるかもしれないけどね。
まぁ『好奇心は猫を殺す』と言うけど、もし臨也がこの殺し合いで周りにちょっかいかけて殺されるようなことがあっても、それはそれで自業自得と言えるかもしれないよね」
「アンタ、自分の友達、何だと思っているのよ……」

呆れた様子でアリアは突っ込みを入れるが、新羅は気にすることなく、彼の変わった友人達について語り続ける。

「で、もう一人―――静雄の方は、一言で表すとすれば『火山』みたいな人間かな。これがまた沸点が低い上に、怒り出すと本当に手がつけられなくなるんだよ。
それこそ僕も、彼が暴れだしてその辺の自動販売機やガードレール投げ飛ばしたり、彼の怒りを買った人間が殴り飛ばされて星屑になったりするのを何度も見てきたよ」
「その平和島って人は、本当に人間なの……?」
「正真正銘の人間だよ。まぁ、曲がったことは大嫌いだから、殺し合いには絶対に乗らないだろうから安心してよいと思うよ。ただ、こんな殺し合いに呼ばれて機嫌は絶対に悪いだろうから、バーテン服を着た金髪の男を見掛けても、近づかない方が賢明かもしれないね」

あっけらかんとした口調で言い放つ新羅に対して、ブチャラティは「ふむ」と呟き、話を纏める。

「なるほど……一応お前の友人たちも要注意だということは分かった。これで粗方、全員の知人についての情報は整理できたな。ところで―――」

とブチャラティはここで周りをぐるりと見渡し、その視線をある少女へと定める。

「先程から気になっていたのだが、フレンダ……少し顔色が悪いようだが何か気になることでもあったか?」
「えっ……!?」

ブチャラティの指摘に、フレンダはぎくりと体を震わせる。
その場にいる全員の視線が、一斉に彼女へと集中する。

(えっ、ちょっと待って、何この状況……?)

困惑するフレンダ。ブチャラティの問い掛けは、こちらを気遣うという類のものではなく、明らかに猜疑心を孕んだ物であった。
思い当たる節としては、一つだけある。それは新羅の口から、彼の知り合いとして平和島静雄の名前が出て来たときである。
内心ドキリとしたが、それでも彼らには自分と静雄との接触情報は伝えてはいないし、静雄と新羅に交友関係が分かっても彼らが出会うことがなければ影響はなし―――と、平静を装って、表情には出さない様にしていたつもりだった。
しかし、どうやら彼女の意識の外にある微妙な変化を、ブチャラティは見逃さなかったのである。

(いやいやいや!まさか私とあいつが会っていたことを勘付かれたとか……?そんなはずは……)

心の内で焦燥感を募らせるフレンダだったが、ブチャラティは尚も言葉を続ける。

「もし何か俺達に打ち明けていないことが有るのなら、遠慮なく話してほしい。お互いのため、隠し事は無しにしよう」と。
言い方はマイルドだが、念押しをするように迫るブチャラティ。

(こ、こいつ……どこから疑っているわけ!?)

フレンダは動揺を抑えつつ、ブチャラティの目を見つめ返す。

「わ、私は―――」

―――どうする?こいつがどこまで知っているのか分からない以上、下手に誤魔化すのは逆効果になるんじゃあ……?
―――じゃあ、洗いざらい正直に話す?そんなことできるわけがない。
―――そもそも、こいつは確信を持って言っているわけじゃないはず。つまり、まだ疑惑の段階。
―――このまましらばっくれても、私の嘘を裏付ける証拠がなければ、こっちが不利になるわけじゃあ……。

脳裏を駆け巡る様々な思考に、フレンダは翻弄される。
だが、いつまで黙っていても状況は好転するわけもない。

「…………ッ!」

フレンダは意を決して、口を開きかけたが―――その時だった。

「ああ……もしかして、もしかするとだけど……フレンダちゃん……暴れ回る静雄に遭遇でもしちゃった……?」
「―――ッ!!!」

突然割り込んできた新羅の言葉が、フレンダの思考を停止させる。

「やれやれ…どうやら、図星のようだね……。過去にも静雄が暴れているところに巻き込まれて、トラウマになった人とか見たことあるから、フレンダちゃんも、もしかしたら…と思ったけど。まぁ、怪我しなかっただけでも御の字かな」
「……詳しく話を聞かせて貰おうか、フレンダ」

嘆息と共に、頭を抱える新羅を他所に、ブチャラティはフレンダに詰め寄った。

「えっ、えっと……」

その鋭い眼光の前にフレンダは、観念したかのように口を開くのであった。




「は、離してよー、アリアちゃん!何でわざわざ僕が、静雄に会いに行かなきゃいけないんだ!」
「黙りなさい、アンタの友達なんでしょ?暴れているんだったら、止めに行く義務があるわ」
「そんなの知らないよ!僕は静雄じゃなくて、セルティに会いたいんだ!」

新羅の首根っこを掴んで引きずるアリアと、ジタバタと抵抗する新羅。
その様子を見ながら、フレンダは思う。

(結局、新羅の話に乗っかっちゃったけど、あの場を切り抜けるには、こうするしかなかったってわけよ)

フレンダがブチャラティ達に話したシナリオはこうだ。
ゲーム開始して間もなく、彼女は暴走状態の平和島静雄に遭遇してしまった。
理不尽極まりないゲームに参加させられたためか、とにかく静雄は不機嫌全開で、目につくものを片っ端から破壊しながら暴れ回っていたのだという。幸い向こうからは、フレンダの姿は見えていなかったようで、フレンダは慌ててその場を後にしたと。
その後、流竜馬や仮面の剣士のような危険人物に明確に殺されかけ動転したため、当初の情報交換時には静雄との遭遇を伝えることを失念していた、というフォローも添えて。
一応、新羅から得た彼の人間性と自身で観察した彼の破天荒な部分を合わせて考えた結果、この程度の嘘であれば、一先ず話は通ると判断したのだ。

その結果、他の参加者に実害が及ぶ危険因子があるなら見過ごせないと、アリアは新羅を伴って、静雄の元へと向かうこととなった。
元々殺し合いに乗るような人物ではないとのことなので、友人を連れて行けば、宥めることも可能だろうという算段らしい。

「それじゃあ皆、私達は先に出発するわね」
「ええ、また後程池袋駅で……神崎さんも岸谷先生も気をつけて」
「すまないが、先程も言った通り、他の仲間の捜索と道中の探索も宜しく頼む」 
「分かったわ」

平和島静雄の抑制を言い出したアリアに対し、ブチャラティは特に止めることはなく、いくつか追加の注文を彼女に課した。
その結果、アリアと新羅は先んじて北上し、静雄を始めとした他の仲間の捜索及び、首輪解析の工具獲得のため、道中の施設での探索を行いつつ、池袋駅を目指すことになった。
これに対して、ホテル残留の三人は電車を経由して、高千穂リゾートまで向かい、ホテルで入手した鍵を試す意味でもリゾートと早乙女研究所内を探索の上、合流地点である池袋駅を目指す手筈となっている。
しかし、この決定に新羅は露骨に嫌そうな顔をしている。
新羅としては一刻も早く、セルティと合流したいのだが、この計画だと余計な寄り道をする羽目になるからだ。

「ちぇー何でまた僕が―――」
「ほらっ!つべこべ言わずに、さっさと、来なさい、新羅」
「痛たたたっ!?ちょっ、引っ張んないでアリアちゃん!分かった、行くよ!行きますよーだ!」

と、半ば強引にアリアに引き摺られるようにして、新羅はアリアと二人でホテルを後にする。
日に照らされつつ、小さくなっていく二人の背中を残された面々は、見送るのであった。

「……本当に大丈夫ですかね、あの二人」
「まぁ、アリアが付いているのであれば、問題はないだろう。それよりも――」

と、ブチャラティはフレンダの方に向き直ると、

「先程はすまなかったな。いきなり疑る様な真似をしてしまって」
「いやいや、全然構わないってわけ。色々動転しちゃって、ちゃんと情報伝達できなかった私が悪かったってわけよ」

フレンダは両手を振って答える。

「そうか……まぁこんな状況だ。そういったことも仕方あるまい。ちなみに、念のため、聞いておきたいのだが―――」

と、ブチャラティは真剣な顔つきで、フレンダに近づき小声で尋ねる。

「これ以上、他に俺達に隠していることはない…と考えて良いな?」

瞬間、フレンダは僅かに体を強張らせるが、平静を保ちつつ、コクリと頷いた。

「そ、そりゃあ勿論だってわけよ」
「そうか……それを聞いて安心した。」

ブチャラティはフレンダを見据えたまま、表情を変えることはない。
その瞳の奥には、疑念の色が見えたが、フレンダは視線を逸らし、気付かない振りをするのであった。



「どうやら此処が『大いなる父の遺跡』のようね」
「うん、如何にも『ザ・遺跡』って感じの趣のある場所だね」

ホテルを出発し、山を登ること小一時間。
アリアと新羅は、山中に佇む『大いなる父の遺跡』へと辿り着いていた。

二人を待ち構えるかのように聳える施設の入り口は、まるで来訪者を威圧するかのような重厚さを放っている。
周囲には岩肌を露出させた巨大な柱が幾つも乱立しており、苔生したそれらは歴史を感じさせる雰囲気を醸し出していた。

「どう見ても工具なんてありそうにないけど、本当に入るの、アリアちゃん?」
「当然よ、ブチャラティとも約束したし……工具はなくても、他に何か役に立つものがあるかもしれないわ。それに、アンタが持ってる『マスターキー』っていうのも、この施設と関係しているかもしれないでしょ?」

新羅に支給された『マスターキー』なる輪っか状の物体について、説明書には「使用者は『大いなる父』である必要があります」と記載されていた。
恐らくこの「大いなる父」とは、この施設の名前に利用されているものと同義だと思うが、それが何を意味するかは分からない。
自分達が保有する支給品の有用性を図る意味でも、この探索には意義があると、アリアは考えた。

「うーん、僕としては正直、こんな輪っかのことなんてどうでも良いんだけどなー」
「いいから黙って付いて来なさいッ!」
「はいはい…」

アリアに白衣を引っ張られ、新羅は渋々といった様子で歩き出す
新羅としては、手っ取り早くセルティと合流を果たしたいのだが、ここで無下に逆らってしょうがないと、諦めてアリアに従うことにした。

こうして、二人の男女は未開の地へと、足を踏み入れることとなる。
その闇の奥で、何が待ち構えているのかを知る由もなく―――。

【E-4/大いなる父の遺跡前/午前/一日目】
【神崎・H・アリア@緋弾のアリアAA】
[状態]:疲労(中)
[服装]:武偵高の制服
[装備]:竜馬の武器だらけマント@新ゲッターロボ
[道具]:不明支給品0~2、キースの支給品(不明支給品0~2)、カタリナの布団@乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 北宇治高等学校職員室の鍵、キース・クラエスの首輪
[思考]
基本:武偵としてこの事件を解決する。
0:まずは遺跡内を探索する
1:遺跡探索の後、静雄との合流を目指して北上。最終的には池袋駅でブチャラティ達と合流する。
2:あかり、高千穂、志乃、ジョルノ、カナメ、シュカ、レイン、キースの知り合いを探す。
3:佐々木志乃が気がかり……何やってんのよ……。
4:流竜馬、仮面の剣士(ミカヅチ)を警戒
[備考]
※ 参戦時期は少なくとも高千穂リゾート経験後です。
※ 九郎、新羅と知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。 
※ 新羅から罪歌についての概要を知りました。


【岸谷新羅@デュラララ!!】
[状態]:健康
[服装]:白衣
[装備]:まほうのたて@ドラゴンクエストビルダーズ2
[道具]:基本支給品一色、マスターキー@うたわれるもの 二人の白皇、不明支給品0~1
[思考]
基本:セルティと一緒に帰る
0:まずは遺跡内を探索する
1:遺跡探索の後、静雄との合流を目指して北上(不本意だけど)。最終的には池袋駅でセルティと合流する。
2:桜川君の人体とブチャラティの『スタンド』に興味。ちょっと検査してみたい
3:ジオルドを警戒。セルティに害を与えるかもしれないので、野放しにはしたくない
4:流竜馬、仮面の剣士(ミカヅチ)を警戒
[備考]
※ 九郎、ジオルドと知り合いの情報を交換しました。
※ アリア、ブチャラティと知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。 




「念のため、フレンダには気を付けろ、九郎」
「……えっ?……」

ブチャラティが九郎に警鐘を鳴らしたのは、フレンダが休息のため別室へと移動した後だった。

「それは……彼女がこの殺し合いに乗っている側の人間だということを言っていますか?」
「いいや、そこまでは断言できない……少なくとも今のところ俺たちに対して敵意は持っていないようだが、隠し事をしているのは間違いない」
「言い切りますね……それは平和島さんの情報を秘匿した件からくる疑いですか?」

九郎は腕を組みつつ、眉間にシワを寄せて尋ねる。

「―――俺はある程度観察をすれば、人が嘘を吐いているのかは見抜ける。組織で働いていたときに良く使った特技のようなものなんだが……皮膚に浮かぶ汗のテカり具合を見れば、大抵は分かるんだ。」
「……そこから、フレンダさんが、僕達に虚偽の申告をしていると?」
「ああ、そうだ。残念ながら、どこまでが嘘で、どこからが本当かまでは分からないがな。だが、少なくとも最後の俺の『他に俺達に隠していることはないか?』という質問には、嘘を吐いた。恐らく彼女にとって、不都合な事実がまだあるのだろうな。」
「……。」

ブチャラティの言葉を受け、九郎は沈黙する。
確かに、当初の情報交換で、平和島静雄との遭遇についての情報を提示しなかった点を鑑みるに、フレンダには不審な点はある。
だが、それも立て続けに殺し合いに乗った人物に遭遇して気が動転していた、と言われればそれまでであると、九郎は放念していた。
しかし、ブチャラティの意見を聞いて考えを改める必要が出てきたようだ。

「分かりました、一応彼女には注意を払っておきます」
「そうしてくれ。」

と、ここで、ブチャラティはロビーの壁に掛けられた時計を見やる。
時刻は午前9時を指していた。フレンダには、各自休息の後、午前10時にロビーに再集合するよう伝えている。
そこから、ホテル直結の駅へと向かう予定だ。

(くれぐれも妙な真似だけは、起こしてくれるなよ、フレンダ=セイヴェルン)

隠し事をしているとは言え、フレンダは年端もいかない少女だ。出来れば保護してやりたい。
だが、もし明確に悪意をもって、自分や仲間に危害を加えるようなことがあれば、無力化するのも致し方ないと考えている。
そうはならないようにと心で願いつつ、ブチャラティは九郎とともに、ロビーで待機するのであった。


【F-3/ホテルロビー/午前/一日目】
【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
[状態]:疲労(中)、フレンダへの疑念(中)
[服装]:普段の服装
[装備]:
[道具]:不明支給品1~3、スパリゾート高千穂の男性ロッカーNo.53の鍵) サーバーアクセスキー
[思考]
基本:殺し合いを止めて主催を倒す。
0:電車が来るまで、ロビーで休養
1:首輪の解析は後回しにして、仲間達との合流を目指すために池袋駅を目指す。
2:池袋駅への道中で高千穂リゾート、早乙女研究所を探索。
3:フレンダを警戒。彼女は何かを隠している。
4:あかり、高千穂、志乃、ジョルノ、カナメ、シュカ、レイン、キースの知り合いを探す。
5:カタリナ・クラエスがどのような人間なのか、興味
[備考]
※ 参戦時期はフーゴと別れた直後。身体は生身に戻っています。
※ 九郎、新羅と知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。 
※ 新羅から罪歌についての概要を知りました。

【桜川九郎@虚構推理】
[状態]:健康 静かに燃える決意
[服装]:ホテルの部屋着
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~3
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
0:電車が来るまで、ロビーで休養
1:一先ずはブチャラティ達と池袋駅を目指す
2:フレンダは、念のため警戒。
3:岩永を探す
4:ジオルドを始めとする人外、異能の参加者、流竜馬、仮面の剣士(ミカヅチ)を警戒
[備考]
※ 鋼人七瀬編解決後からの参戦となります
※ 新羅、ジオルドと知り合いの情報を交換しました。
※ アリア、ブチャラティと知り合いの情報を交換しました。
※ 画面越しの志乃のあかりちゃん行為を確認しました。 
※ 新羅から罪歌についての概要を知りました



「…………ふぅ」

ブチャラティと九郎と別れ、一人になったフレンダは、ホテルの一室でベッドに腰掛け、レストランの冷凍室から調達した鯖缶を開けて食べていた。

「さてと、これからどうするかってわけよ」

鯖の身をほぐしつつ、彼女は独りごちる。
とりあえず、静雄の件については上手く誤魔化せたと思う。
とはいえ、うまく御せそうと見ていた新羅とアリアがホテルから離脱してしまった。しかも、解析用の首輪を持ったまま。これは流石に手痛い損失だ。
それに無事に彼女らが静雄と出会うことあれば、自分の悪事がバレてしまう。
それを鑑みると、最終的にブチャラティ達と共に池袋駅に行くのは避けるべきである。

「まぁ、時間はまだあるし、焦らずじっくり考えるってわけよ」

と、呟きながら、フレンダは缶詰の汁を最後まで飲み干す。

「だけど、当面の問題は---」

空っぽの缶詰をゴミ箱に投げ捨てながら、フレンダはため息をつく。

「ブチャラティよね〜!!!」

九郎はともかくブチャラティは、明らかに自分に対して疑心を抱いている。
経験によるものなのか、直感的なものになるか定かではないが、ブチャラティの目敏さには今後も留意した方が良いだろう。
しかし、あくまでも疑惑レベルであるため、こちらを闇雲に攻撃してくるようなことはないだろうし、ホテルに危険な参加者が訪れることがあれば、彼らが防波堤になってくれることだろう。だから、こちらがボロを出さない限り、今は安全圏にいるとも言える。
しかし、彼らと同行して、池袋駅を目指すということであれば、今後ボロが明るみになるのは極めて高い。となれば、長く彼らと行動を共にするのは得策ではないかもしれない。

ブチャラティが疑念を抱くこの状況で、どのように立ち振る舞うべきか―――。

フレンダは頭を捻り、思案する。
全ては己が生存のために―――。


【F-3/ホテル一室/午前/一日目】
【フレンダ=セイヴェルン@とある魔術の禁書目録】
[状態]:全身にダメージ(小)、疲労(大)、右耳たぶ損傷、頬にかすり傷。衣服に凄まじい埃や汚れ。
[服装]:普段の服装(帽子なし)
[装備]:麻酔銃@新ゲッターロボ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、『アイテム』のアジトで回収できた人形爆弾×2他、諸々。レインの基本支給品一色、やくそう×2@ドラゴンクエストビルダーズ2、不明支給品1つ(確認済み)、鯖缶複数(現地調達)
[思考]
基本方針:とにかく生き残る。現状は首輪の解除を優先するが、優勝も視野には入れている
0:一先ずホテルで休憩しつつ、今後の行動方針を考える。
1:ブチャラティは要注意。ボロを出さないようにしないと。
2:煉獄の言う通りに竜馬と出会うことがあれば、謝る?
3:麦野たちと合流できればしたい...後々を考えると複雑な気分ではあるが。
4:あの化け物(ミカヅチ)から逃げる。絶対に関わり合いになりたくない。
5:彩声にちょっぴりの罪悪感。まあでも仕方ない、切り替えていこう
6:煉獄、死んじゃったんだ…
※フレンダの支給品の一つ、煙玉は使い切りました。

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From the edge -炎- 投下順 愛 want you! ~Scarlet Eyes~

前話 キャラクター 次話
方針決定 桜川九郎 Liber AL vel Legis -the point of no return-
方針決定 ブローノ・ブチャラティ Liber AL vel Legis -the point of no return-
方針決定 神崎・H・アリア 例えようのない、この想いは
方針決定 岸谷新羅 例えようのない、この想いは
Go frantic フレンダ=セイヴェルン Liber AL vel Legis -the point of no return-
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