バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

崩れてゆく、音も立てずに

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kyogokurowa

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「早苗ちゃん、次なんだっけ!」

「止血した後って、えーっと……あ、ビニールで密封するべきだったかも!」

「ビニールってどういうの!?」

「え!? と、とりあえず、密封できることを前提としましょう!
 輪ゴムとかで縛れば多分大丈夫、だと思いたいですけど!」

 北宇治高等学校では少年少女がベッドで眠る霊夢を前にてんやわんやの状態だ。
 指が切断された人間の適切な応急処置など日常には使わないので覚えてるわけがない。
 だからと言って余り長時間放置すればよくない状態なのも分かっている。
 保健室の中を右往左往したりして、二人は若干パニックになりかけていた。

(まさか、霊夢さんが……)

 早苗にとっての霊夢とは嘗て自分を打ち負かし、
 幻想郷に起きた数々の異変を解決をする、荒事のプロとも言える巫女。
 吸血鬼、幽霊、鬼、月の姫、神と幾多の神秘を抱え込む自由で不自由な世界を、
 最終的に統括するとも言える幻想郷における最終防衛システム……とは少し誇張が過ぎるが、
 どのような存在であっても彼女は特に気にせず挑んで、最終的には解決へと導いてしまう。
 だから憧憬とまでは行かずとも異変解決の先輩、或いは同じ同業者としての対抗意識。
 そう言ったものがあるので、当然のことながら霊夢の実力を認めている。
 (対抗意識は霊夢の方が強かったりするが、その辺は割愛させていただこう。)

 故に。
 殺し合いならば霊夢は更に頼れる存在と何処かで思っていた。
 制限時間を付けなければ絶対に突破できないスペルカードがある彼女から、
 スペルカードを撤廃してしまえばどうなるか。弾幕ルールすら縛られない巫女の完成だ。
 だから此処では輝かしい戦績を出して、解決に向かってるのとばかり思っていた。
 でもそうじゃない。彼女もまたこの世界のルールに縛られている一参加者に過ぎない。
 魔理沙や妖夢が斃れるのもあり、早苗にとっては霊夢が一番の希望とも言える存在だ。
 その彼女がこうなっている。此処までまともに戦いらしい戦いをしていないので、
 どこか暢気にしていた……と言われてしまうと、完全に否定はできなかった。
 彼女が此処までやったことと言えば、参加者との情報交換とゲッターロボの操縦だけ。
 短時間で十数名が命を奪われる環境下に於いてこれでは……なんて自虐もしたくなるものだ。
 彼女を此処まで傷を負わせた相手は一体誰なのか。自分が戦って勝てるのか。
 未知の存在に怖気が走りながらも、早苗はできる限りの応急処置を終える。

「こういうのを、峠を越えたって言うんでしょうか。」

「多分それ違うと思うけど、まあ一先ずはこれでいいんじゃあないかな。」

 応急処置を終えてみれば、
 二人そろってそのベッドへ顔を横に置いてぐったりとしていた。
 放送とは違った意味でのパニックだが今回は早急な行動も必要であり、
 肉体的疲労の意味では此方の方が消耗していた。

「ブチャラティさん。霊夢さんの傷を回復できたりするものってありませんか?」

 早苗の支給品は残るは一つだけだが、それはこの状況の改善には至らない。
 考えれば、彼の支給品を使ったところを見てないのもあって其方へと縋る。

「僕の方だと……これがあるけど、ちょっと駄目だと思う。」

 出てきたのは一見すれば彼女にも馴染みのある菓子の類だ。
 外の世界ではよく見たものの、幻想郷では余り見ないグミに分類されるもの。

「これで回復はできるみたいだけど、指は流石に治らないよね。」

「ですよねー……」

 あり得ない治癒力を発揮できる代物ではあるが、あくまで回復。
 指を接合と言ったことまで発揮できる代物であるとは言い難い。
 そう都合よく身近にいた人から彼女の状態を何とかできるなんて、
 奇跡の力も弱まってるのかな……などと内心で軽く自嘲する。

「オシュトルさん達はどの辺なんだろね。」

「無事だといいんですが……」

「僕よりはずっと強いから、大丈夫だと思うよ。」

 オシュトルもヴァイオレットも、
 どちらも戦いにおいての経験がある二人だ。
 早々にやられる、なんてことはないとは思いたい。
 ただ、早苗には目の前の霊夢から余り思えなくなってしまったのはある。

(気まずい。)

 沈黙が続いて二人揃って何とも言えぬ表情だ。
 会話の内容はいずれも正解とは言い難い回答なのもあるが、
 それと同時に先程のドッピオのキレ方にも僅かながら不安もあった。
 大人しい人ほどキレると怖いのは、人里で教師をする人物から割と身近だ。
 余り気にするべきではないことだとなるべく割り切っていくことにする。
 ただそのせいで、どちらも会話が続かないまま時間が流れていく。

「……何やってんのアンタら?」

「ひゅいっ!?」

 沈黙が何分か続いていると、
 突然聞き慣れた声に早苗は変な声が出る。
 応急処置された左手を眺めつつ、気まずい二人の状況にジト目で霊夢が返す。

「れ、霊夢さん!? 無事で──」

「早苗、あんたね~~~!!」

「いひゃい、いひゃいれふ!!」

 意識を取り戻したことに安堵するも、
 起きた勢いで両頬をつねらられてじたばたと暴れ出す。
 理由は言わずもがな、彼女の行動の内容である。

「この忙しいときに何やらかしてるのよ!
 もうかなり時間が流れちゃってるじゃない!」

 壁にかけられた時計を見れば、前に見た時よりもかなり時間が過ぎている。
 此処まで時間が過ぎる原因は、当然ながら目の前のこの巫女である。
 場所から北宇治高校なのは分かるし、此方で応急処置だけでも済ませようとは霊夢自身も思った。
 しかし、長時間の滞在などする気はなかったのに時間が過ぎた原因は彼女の突進からの気絶以外にない。
 ただでさえ見失ってたのに、これではシドーを追うどころか足取りすらまともにつかめないではないか。
 指も持っていかれるし、来た道を逆走したうえで時間を失うわで、軽く八つ当たり気味な行動に出ていた。

「と、とりあえず落ち着いてください! 忙しいって言うならこっちも説明したほうが……」

「まあ、それもそうね。」

 引っ張っていた頬を手放して、その衝撃に早苗が軽く悲鳴を上げる。
 頬をさする彼女を余所に、すぐさま冷静になって対応してきて少し戸惑う。

「やり取りを見てのとおりこいつの知り合い。以上。」

「あの、大雑把すぎるような。」

 そこからくる超がつくほどざっくりした説明。
 続けざまの内容にドッピオも若干引きつり気味だ。

「こっちは話す時間ぐらい惜しい事態だったのよ。
 そえとも、今更私が信用できない人間と早苗は言ってるわけ?」

 早苗と余り変わらない少女の睨みだが、
 文句なんて言わせねえぞと言わんばかりの凄味のある睨み。
 そんなこと言ってないですと言わんばかりに二人は首をぶんぶんと横に振る。

「よろしい。それはそうと応急処置については助かったわ、ありがと。
 それと単刀直入に聞くんだけど、角みたいな髪型の子供見なかった?」

 当然二人は見てないので再度首を横に振る。
 状況の説明を求められると、霊夢は簡易的に事のあらましを説明する。
 防御が不可な斬撃に不可視とかいう初見殺しの二重苦であったとはいえ、
 霊夢が対応に遅れた相手を有無を言わさず殺せるだけの強さを持った相手。
 場所や時間帯からすれば、ニアミスで遭遇してた可能性だってある。
 互いに血の気が引いて引きつった表情で、感想は聞くまでもない。

「あれは早苗でも無理とは言わないけど、
 戦う際は気を付けなさいよ。暴走してるからと言って、
 手を抜いて勝てるほど甘い状況でもなくなってるかもだし。」

 時間が経ってれば冷静になってるかもしれないし、
 逆により暴走状態が悪化している可能性だってある。
 口伝だけの強さとは限らないと軽く釘をさしておく。

「じゃ、私は───って、千客万来のようね。」

 早急に学校から去ろうと保健室の窓から外へと出てみれば、
 白バイに乗った男性二人もやってきて状況は進展しなさそうだ。
 タイミングがいいのか悪いのか、なんて溜息を吐きながら思った。


 ◆ ◆ ◆


 オシュトル達と別れてから、
 竜馬は特に何事もなく進んでいた。
 このまま順調に行けば一切問題なく北宇治高校到着する予定だったが、

「ん?」

 少し遠いが森の方で鳥がざわつくように飛んでいた。
 犬もいるので鳥がいたところで別におかしくはなかったが、
 ざわつかせるだけのことが起きた、となれば竜馬の目がギラつく。

「晴明の野郎がいるかもしれねえしな。」

 安倍晴明か、或いはそれに匹敵するような厄介な奴。
 であればどうするかなど決まっている。ぶっ飛ばすに限る。
 オシュトルの言ってた二組がどのような移動手段で移動してるかは知らないが、
 全員集合にはまだ時間もかかるだろうと判断し、少し寄り道としてバイクを走らせる。
 此方の移動も特に何事もなく進んでいたが、目的の途中でカナメと遭遇することになった。

「おい、アンタ大丈夫かよ?」

 膝をつきながらもなお立ち上がろうとしていたカナメを見つけ、白バイから降りて対応する。
 素性はまだわからないので少なからず警戒はしているものの、正直殆どシロに近かった。
 森の奥は静かであり、既に戦いが終わっている。鞭を打って動く理由は基本的には二つで、
 一つは敵に追われてる場合。戦いが終わってるならばそれはないので残るは一つ、
 やらなきゃいけないことの為に無理にでも動いているのだと。
 敵ならもっと目立たない場所に隠れるべきだし、
 相手はそれを利用した油断を誘う輩とも思えない。
 まあ、竜馬は余り難しく考えてはいないのだが。

「アンタは……」

「俺は流竜馬だ。敵じゃねえってんなら、
 話は後にして乗ってくか? 向こうの学校で人が集まる予定になってんだけどよ。」

「悪い、乗せてくれると助かる。」

 あれから軽く折原臨也のことを探しては見たものの、
 結局は見つからずじまいで体力を消耗しただけに終わった。
 元々望みは薄かったので、見つからなくても仕方ないとは思うが。
 これ以上時間を無為に消費するわけにも、休むなら情報も仕入れたい。
 名前を出して反応がないことから、フレンダとは会ってない参加者だとも分かったので、
 特に何かあったわけでもないままことは進んでいき、二人乗りで向かうことになる。
 ただカナメの疲労は相当だ。飛ばすわけにはいかないので戻る際は安全運転で行くことを選んだ。
 お陰でやや想定よりも時間を食ったが、本当に何事もないまま無事学校へと到着して今に至る。

「お、いたいた。オシュトルの知り合いってのはアンタか?」

 疲れきったカナメに肩を貸しながら、竜馬と霊夢は相対する。
 お互いに初対面で知人から情報を得てもないので完全な初対面であり、
 睨むような視線で火花を散らしてるようにも見えるが、これは二人にとっては別に普通だ。
 霊夢の場合は若干けだるげ、と言った印象も何処かあるが。

「私じゃなくて保健室にいる二人でしょうね。
 後悪いけど私追わなきゃいけない奴がいるから、もういい?」

「ならその前に二つ程聞きてえんだが、
 レインと静雄って名前に心当たりはねえか?」

「レインと会ってたなら先に言ってくれ!」

「あ、さっき名前聞いてなかったがおめーカナメだったのか……確かに普通だな。」

「おい、アイツ俺の事どんな風に説明したんだよ。」

「リュージは軍服だけどカナメは普通の恰好としか言ってなかったな。」

「否定できねえ。」

 カナメは日本の一般男性からさほど逸脱した恰好ではなく、
 身体的特徴も特別ないので説明するのは難しく、容姿等は伝えてない。
 特にカナメはリュージやシュカと違い普段着でゲームに参加にしてたので、
 服装で伝えると言うのもできなかったりするので、ある意味仕方がなかったりはする。

「それともう一つは?」

「ああ、その前に待ってくれ。その恰好……魔理沙の言ってた博麗霊夢だよな?」

「───ああ、もう。本当に面倒くさいことになったわね。」

 カナメの言葉に反応せざるを得ない。
 正直聞かなければよかったと少しだけ思ってしまった。
 早急に去りたかったのにその名を聞かされてしまっては、
 彼女の名を聞いて、聞かないでおくと言うのはどうにもできない。
 霊夢はドライな性格ではあるものの、薄情とは違う。
 何度目か忘れたため息と共に霊夢保健室へと戻って、事の顛末を聞くことにする。


 ◆ ◆ ◆


 事の顛末を聞くついでともあって、
 五人は現状関わってきた参加者との情報を纏めることにする。
 五人の話全てが終わってみれば、何とも言えない表情の方が多い。

(複雑な気分ね。)

 霊夢が得たのは何とも言えぬ脱力感だ。
 魔理沙の仇討ち……と言った程感情的なことは考えてはいないが、
 その仇となるウィキッドは、既にカナメがなんとかしてしまっている。
 口伝なので確信はないが、マリアの情報と一致するジオルドも敵となっていて、
 シドーも追うに追えず時間を食ったどん詰まり。明るくなった空を仰ぐしかなかった。

(魔理沙さん……)

 早苗も似たようなものではあるがどちらかと言えば無力感。
 彼女が出会った参加者の知人は聞く限りは存在しなかった。
 だから他の人達の知り合いと言う連鎖的なものはさほどない。
 一方でこの中で最も人の道徳を持ち合わせてるのもまた彼女だ。
 知り合いであろうとなかろうと、人の死を憂うことには変わらない。
 彼女がはしゃいだゲッターのパイロットがすぐそこにいることについても、
 色々聞ける状態ではなかった。

(クソッ……)

 カナメは虚無感だけが残る。
 追い続けた仇は、あっさりと殺されていた。
 少なくともアイツにはお似合いの惨たらしい結末ではあるようだが、
 断片的な情報しか得てない、どこかの誰かがやってしまったのは変わらない。
 シュカの仇は未だに分からず、シノヅカの仇はシドーの手で倒されている。
 一応、レインの情報が舞い込んだことについては数少ない救いではあった。
 そっちは頼れる人材がいたようなので、急ぐ心配は余りなさそうだが。

(こういう空気は苦手なんだよな。)

 ある意味、一番思うところがないのが竜馬だ。
 周囲の知り合いの死を気の毒とは思うし、仇がどっかで死んでたら変な気分にもなる。
 ただそこで俯いて動けなくなると言ったことは彼の性分ではないし、彼はそのまま突き進むだろう。
 もっとも、晴明がどっかでくたばってくれていたら面倒ごとは減るので、それは願ったり叶ったりではあるが。
 この辺りは彼自身の価値観や、自分の周りが殺しても死にそうにないような連中だからと言う、
 そういう連中なのと同時にくる信頼感によるものではあるか。

(ブチャラティは東にはいないってことか。)

 一番何も思わないのがドッピオ……かと言えばそういうわけではなかった。
 ある意味スタンスを考えれば、誰がどう移動したかの情報が一番アドバンテージに繋がる。
 竜馬が北から、カナメが南西から、霊夢がどちらかと言えば南東寄りから来てるとなれば、
 他の三人の道のルートを照らし合わると、おのずとブチャラティは東にはいないことが分かった。
 竜馬の情報からまだ東には参加者がいるのもあり、まだ偽名は十分に通用するのだと。

「で、全員こっからどうすんだ?」

 重苦しい空気を壊す目的と同時に、
 此処でじっとしてるのも性に合わないので竜馬が尋ねる。
 元々此処に来るのは面通しが理由なので余り留まるつもりはない。

「霊夢さんは病院に行ってみてはどうですか?
 うろ覚えの応急処置なので、ちゃんとした手当が必要かと。
 それに、運が良ければただの病院ではないかもしれませんし。」

 ゲッターのようなオーバーテクノロジーなのも存在するし、
 オシュトルから聞いた話も自分の知る文明の進み方とも違うようだ。
 それらから、此処は幻想郷以上に常識に囚われてはいけないところもある。
 となれば、SFめいた施設である病院の可能性だって十分にあるはずだから。

「どーだろなぁ。殺し合い進めたい奴が、
 指もくっついちまうほどの治療させるかぁ?
 ブチャラティに体力が回復できるもんが渡されてるなら、
 余計にそういうのを施設で期待はできない気がするしな。
 どっちかっつーと、参加者の支給品を調べる方が早いだろうぜ。」

「うっ……ま、まあ、もしかしたら程度ですよ。
 それに、霊夢さんはムーンブルク城の予定がそのままであれば途中で寄れますし。」

 竜馬から至極真っ当なことを言われて、
 図星ではあるもののちゃんとした理由はあった。
 霊夢を心配してる意味合いは確かに含まれるものの、
 あくまでついでであり、合理的に見ても間違いではないだろう。

「シドーが行きそうな場所がそこしかないから、目的地は変わらないわ。」

「なら、俺もそれについて行っていいか?」

「……それは、贖罪が理由?」

 ベッドで横になっていたカナメが起き上がりながら手を挙げ、霊夢は見やる。
 別に、霊夢はカナメのことを魔理沙を死なせた存在と敵視することはしない。
 火にロボットとかなり切迫した状況ではあったのは十分に伝わってきたし、
 ウィキッドが本性を隠し続けた狡猾な奴であり、一枚上手だっただけだ。
 正直なところ『もうちょっとなんとかできたんじゃないのか』とは思うが、
 それを言ったらシドーを逃がしてしまった自分も人のことは言えない。
 カナメの場合は戦いに身を置いてそう長い時間は経ってないのもある。
 何度も異変解決した自分と、同じ尺度で図るべきことでもないだろう。

「一応それもあるが、レインがいるなら移動の方角が合ってる。」

 此方も一応合理的な理由がある。
 竜馬が彼女と別れてから時間は大分経ってるので明確な位置は不明でも、
 足取りが不明なリュージを探すよりは安定してるのでカナメとしては合流したい。
 レインはチームの中で頭が回る。既に首輪や何かしらの打開策も考えてるはずだ。
 竜馬と別れる前にそういうのを言ってなかったところを見るに、まだこれと言った手段はないが、
 合流までに時間がかかることも考えれば、それまでに何かしらの進展はあると判断していた。

「んでそっちは居残りか?」

 早苗達は此処へ向かってる義勇と麗奈の二人に合流してから、
 オシュトルの言う遺跡の方へと向かうことになっている。
 なので学校から移動するにはしばらく待つ必要がある。

「竜馬、ついでで頼むことになるんだが、西に行ってもらえないか?」

「ん? なんでだ?」

「望みは薄いが、折原が生きてるかもしれない。
 移動のついででもし生きてたら『見つけられなくてすまなかった』と伝えてくれ。」

「構わねえけど、多分そいつと会ったらろくなころにならねーぞ?」

 一応レインから細かいことは聞いてないし敵でもなさそうだが、
 彼は静雄とは余り相性が良くなさそうな相手だとは言われている。
 どちらかと言えば彼は自分と似たようなところがある気質の人間で、
 つまり彼が相性の良くない相手なら、高確率で竜馬とも相性は良くない。
 だからあんまり出会いたいかと言うと、正直なところ嫌だと言いたくもある。
 とは言え頼まれたことではあるし、邪魔をしないなら別にいいとも思うが。

「あのー、だったら僕も同行していいですか?」

 早苗は待機するつもりではあったものの、
 以外にもドッピオが彼との同行を提案する。

「竜馬さん、フレンダって人を抜きにしても誤解招いてるんで、
 誰かついて行って仲介したほうが、面倒ごとも少ないんじゃないかなって。」

「あー……まあ、ありっちゃありか。」

 彩声のときも静雄の時も、先に誤解を解くと言うことはしなかったが、
 解く相手がいた方が何かと都合のいい場面もあるとは少しばかり思ってはいる。
 普段だったら別に誤解されたところで構わないつもいではあるものの、
 今回は彩声に対して誤解ぐらいは解いておきたい、と言う自覚はある。
 フレンダが西の方で余計な情報をばらまいていたなら彼がいた方が都合もいい。
 危険な奴と吹聴されてる存在が、二人でいるなんてこと早々にないのだから。

「それに西なら遺跡もあるから、途中でオシュトルさんに合流できるので。
 冨岡さんや高坂さんにあったら、早苗ちゃんはそのこと伝えてもらえるかな?」

「あ、はい。分かりました。」

 彼の荒々しい言動は確かに威圧的で、
 人にあらぬ誤解を招くのが容易に想像もつく。
 彼も荒事には慣れてそうだし、彼を任せるのも問題はないと早苗も判断する。

「俺は守りながら戦う気はねーから、
 テメエの身はテメエ自身でなんとかできるならいいぜ。」

「な、なるべく善処しておきます。」

 ギラついた瞳は人を殺したそれだ、
 と言われたら素直に首を縦に振りたくなる。
 普通に恐怖でしかなく、引きつり気味の表情で頷いた。
 まあ、彼は鬼に変容した人間ではあるが何人殺したかについては、
 わかったものではないので概ね事実はあったりする。

「んじゃ、こいつ借りてくぜ。」

「わ、ちょ!」

 片手でひょいと彼を持ち上げて、
 竜馬とブチャラティは保健室を出ていく。
 軽々と運んでいく姿に少しばかり唖然とする三人だが、

「さて、と。私達も行くけど十分に休めた?」

「ああ、動く分には問題はない。」

 二人を見送った後、霊夢とカナメもベッドから降りる。
 色々行く場所が多いので、話も終わったなら早急に動きたかった。

「念の為、指を回収してから動くことになるからちょっとだけ寄り道するわよ。」

 もし病院が早苗の希望的観測通りであった場合、
 『指がなかったので治せません』で戻ることになることについてはもう勘弁してほしい。
 既にスタート地点に戻ってしまっているのだから、これ以上巻き戻しなどあってたまるか。

「あ、私も手伝いますね。」

 すぐに合流とは限らないだろうし、
 学校でやることもないので早苗は指の回収だけは手伝うことにする。





 何故、ドッピオが竜馬との同行を提案したのか。
 東にブチャラティがいた様子がないと言うことは、
 即ち西ではブチャラティが関係を築いてる可能性は高い。
 今は安全でも後々厄介になってくるし、場合によっては此方と敵対する可能性もある。
 元より偽名を使った時点でそうなることは避けられないことでは分かっていたことだ。
 今のうちに本物を知るブチャラティの関係者を始末していくことで味方を減らしていきたい。

 どれだけ過程が真実であろうと、結局のところ人間とは多数派の結果を正しいものとしがちだ。
 ブチャラティがどれだけ叛逆しようとも証明できる人物がいない、或いは少なければ此方が有利だ。
 ロクロウ、オシュトルとヴァイオレット、霊夢とカナメ、そして学校に集まる予定の麗奈、義勇、早苗。
 全員がそのまま生存するかは不明としても、東側はかなりの人数が既に此方が関わっている。
 特に此方は(早苗に対してキレたりはしたが)基本的に不審な行動は取っていない。
 どちらを信用するかの基準は今まで行ってきた『過程』ではなく、
 人数と言う『結果』だけがこの殺し合いでの判断材料だろう。










 なんてことを考えてるが。
 時期に安寧が崩れるかもしれない危機は迫る。
 何故か? 霊夢とカナメが向かってる場所は───





 本物のブローノ・ブチャラティが向かう病院であるのだから。
 フレンダと言う不安材料を抱えてるので『かもしれない』ではある。
 もっとも、たとえそれがなくとも遺跡には正体を知った無惨も向かうことだ。
 安寧の園の反転まで、そう遠くはないだろう。



【E-7/北宇治高等学校/昼】

【博麗霊夢@東方Project】
[状態]:左手の指二本欠損(応急処置済)、脱力感、頭痛(物理)
[服装]:巫女服
[装備]:竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、高坂麗奈のトランペット@響け! ユーフォニアム、セルティ・ストゥルルソンのヘルメット@デュラララ! マリアが作ったクッキー@現地調達
[思考]
基本:この『異変』を止める
1:シドーを見失ったし、一先ずカナメと一緒に病院へ北上。その前に念の為指を拾いに行く。
2:最終的にムーンブルク城でシドーを待ちぶせしてみる。
3:マリアや幻想郷の仲間の死などによる喪失感。あー、いやになるわ……
[備考]
※緋想天辺りからの参戦です
※シドー、マリアと知り合いについて情報交換を行いました。
※早苗、ブチャラティ(ドッピオ)、カナメ、竜馬と情報交換してます。

【カナメ@ダーウィンズゲーム】
[状態]:疲労(特大)、王とウィキッドへの怒り、全身打撲(小)、肋骨粉砕骨折(処置済み)、全身火傷(治療済み) (シュカの喪失による悔しさ)、虚無感
[服装]:いつもの服装
[装備]:白楼剣@東方Project
[道具]:白楼剣(複製)、機関銃(複製)、拳銃(複製)、基本支給品一式、不明支給品2つ、救急箱(現地調達)、魔理沙の首輪、Storkの首輪、Storkの支給品(0~3)
[思考]
基本:主催は必ず倒す
0:霊夢と一緒に病院に北上する。
1:回収した首輪については技術者に解析させたい。
2:【サンセットレーベンズ】のメンバー(レイン、リュージ)を探す。足取りが分かるレイン優先か。
3:王の奴は死んだのか……そうか……
4:ウィキッドのような殺し合いに乗った人間には容赦はしない。
5:ジオルドを警戒
6:折原の安否が気がかり。ウィキッドの口ぶりからすると望みは薄いか……。
[備考]
※シノヅカ死亡を知った直後からの参戦です
※早苗、ブチャラティ(ドッピオ)、霊夢、竜馬と情報交換してます。

【東風谷早苗@東方Project】
[状態]:疲労(中)、霊夢に会えたことの安心感と同時に不安
[服装]:いつもの服装
[装備]:早苗のお祓い棒@東方Project
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1、早苗の手紙
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。この『異変』を止める
1:霊夢の指を回収した後、冨岡義勇(無惨)との合流の為北宇治高等学校で待機。
2:豹変したドッピオに驚き。何か隠してるんじゃ…… 
3:幻想郷の知り合いをはじめ、殺し合い脱出のための仲間を探す
4:ゲッターロボ、非常に堪能いたしました。
5:ロクロウとオシュトルに不信感。兄弟で殺し合いなんて……
6:シミュレータにちょっぴり心残り。でも死ぬリスクを背負ってまでは...
7:魔理沙さん、妖夢さん……。
[備考]
※ 参戦時期は少なくとも東方風神録以降となります。
※ヴァイオレットに諏訪子と神奈子宛の手紙を代筆してもらいました。
※オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。 
※霊夢、カナメ、竜馬と情報交換してます。

【ドッピオ(ディアボロ)@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
[状態]:健康、ドッピオの人格が表
[服装]:普段の服装
[装備]:小型小銃@現地調達品 王の首輪@オリジナル
[道具]:不明支給品0~2、アップルグミ×3@テイルズオブベルセリア
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない。
1 :竜馬と共に西へ向かい、ブチャラティの関係者を始末していく。
2 :その途中で『大いなる父の遺跡』へと向かう
3 :無力な一般人を装いつつ、参加者を利用していく
4 :オシュトルへの首輪提供のため、参加者を殺害してのサンプル回収も視野に入れる
5 :『月彦』を警戒。再合流後も用心は怠らない。
6 :ブチャラティ、ジョルノ、リゾットは確実に始末する。チョコラータも始末しておきたい。
7 :なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
8 :自分の正体を知ろうとする者は排除する。
9 :ゲッターロボ、もしもあのままランクを上げ続けてたら...ゾオ~ッ
10:グミは複数あるけど内緒にしておこう。
[備考]
※参戦時期はアバッキオ殺害後です。
※偽名として『ブローノ・ブチャラティ』を名乗っています。
※オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※アップルグミの回復は健在ですが欠損や毒などは回復しません。
 また3つあることは伝えていません。
※早苗、霊夢、カナメ、竜馬と情報交換してます。

【流竜馬@新ゲッターロボ】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、出血(小~中、処置済み)、身体に軽い火傷(処置済み)
[服装]:
[装備]:悲鳴嶼行冥の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、彩声の食料品、白バイ@現地調達品
[思考]
基本方針:主催をブッ殺す。(皆殺しでの優勝は目指していない)
1:研究所からは遠のくが、ブチャラティ(ドッピオ)と西へ行って参加者と接触。
2:そのついでで折原臨也を探すが、あんまり会いたくない。
3:粘着野郎(晴明)を今度こそぶっ殺す。
4:戦う気のない奴に手を出すつもりはない。
5:弁慶と隼人は、まあ放っておいても死にゃしねえだろう。
6:煉獄があいつに殺されたとは思えないが、これ以上好き勝手やるつもりならあの金髪チビ(フレンダ)は殺す。
7:面倒だが彩声と会ったら誤解を解く。
8:レインや静雄の知り合いに遭ったら一応伝えておいてやる。
[備考]
※少なくとも晴明を倒した後からの参戦。
※早苗、ブチャラティ(ドッピオ)、カナメ、霊夢と情報交換してます。

前話 次話
最後に笑うは 投下順 例えようのない、この想いは

前話 キャラクター 次話
再会 博麗霊夢 英雄の唄 ー序章 introductionー
再会 東風谷早苗 英雄の唄 ー序章 introductionー
絶対絶望少女 カナメ 英雄の唄 ー序章 introductionー
再会 ディアボロ 龍は吼え、影は潜む
ささやかな揺らめき 流竜馬 龍は吼え、影は潜む
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