「くだん!よげん!」
そう叫んで立ち上がると、センセイはどしどしと店の奥のテーブルへと突進していった。
今しがた人魚の話をしていた男は鯨になって酔っ払いの海を邁進していく。
俺がしぶしぶセンセイを追いかけると、俺と同年代の青年が困ったような顔をしてセンセイと話していた。
今しがた人魚の話をしていた男は鯨になって酔っ払いの海を邁進していく。
俺がしぶしぶセンセイを追いかけると、俺と同年代の青年が困ったような顔をしてセンセイと話していた。
「ですから、私たちは妖怪の話などしていないんですよ」
「しかしあなたが件だとか予言だとか言っているのを僕はこの耳でしかと聞いたんだッ」
「件の予言の少女ですが、と云っただけです」
「多々良さんに沼上さんじゃないの」
青年の向かいに座っていた男の声に顔を向けると、見覚えのある薄くなりかけた頭があった。
「ぬ」
別にセンセイは言葉を詰まらせて意味の無い音を漏らしたわけではない。
これは沼上の、ぬ、なのだ。
センセイは人の名前をろくすっぽ覚えない。
そこで適当に思い付いた名前を云う。
この場合横にいた僕の名前を呼びかけての──ぬ、なのだ。
これは沼上の、ぬ、なのだ。
センセイは人の名前をろくすっぽ覚えない。
そこで適当に思い付いた名前を云う。
この場合横にいた僕の名前を呼びかけての──ぬ、なのだ。
「里村さんじゃありませんか」
「そうそう里村さん。何してるんです?」
何してるんですはどう考えても向こうの台詞だろう。
里村は前にある事件で知り合った風変わりな医者である。
里村は前にある事件で知り合った風変わりな医者である。
「いやね、彼に───赤坂くんに相談を受けてたの。彼は大学の後輩で今は公安にいるんだけど───
そうだ赤坂くん、この多々良さんに相談したらいいよ。妖怪の研究家だから僕よりはいい助言がもらえると思うなあ」
そうだ赤坂くん、この多々良さんに相談したらいいよ。妖怪の研究家だから僕よりはいい助言がもらえると思うなあ」
その後、終始訝しげな面持ちで赤坂が話したことをまとめるとこうなる。
雛見沢という村を訪れた際、彼は一人の少女と出会った。
彼女は村の祭で人が死ぬこと、その数日後自分が殺されること、
そしてすぐに東京に戻らなければ赤坂にも不幸が訪れることを予言した。
普段の愛くるしい雰囲気から豹変した神憑りのような態度に赤坂は戦慄したのだという。
予言を信じたわけではないが、嫌な予感がして東京に帰った後も彼女の事が気掛かりになっていて
その事を里村に幾度か話していたということだった。
雛見沢という村を訪れた際、彼は一人の少女と出会った。
彼女は村の祭で人が死ぬこと、その数日後自分が殺されること、
そしてすぐに東京に戻らなければ赤坂にも不幸が訪れることを予言した。
普段の愛くるしい雰囲気から豹変した神憑りのような態度に赤坂は戦慄したのだという。
予言を信じたわけではないが、嫌な予感がして東京に帰った後も彼女の事が気掛かりになっていて
その事を里村に幾度か話していたということだった。
「噂をすればというやつだね、沼上さん」
「噂って──里村さんの噂なんかしてたっけ?」
「違うよッ、件!予言!僕らが話していたのは人魚だッ」
「件はわかるけど、人魚は予言と関係ないだろう」
「何云ってるんだ沼上さんは。アマビエがいるだろう。半人半魚の妖怪だよ」
「そのアマビエっていうのは予言をするんですか?」
「ぬ、赤坂さんその通りです。尼彦というのも予言をする半人半魚でアマビエと同一視される──
というか僕はアマビコが読み間違えられてアマビエになったと考えています。
僕は大陸の方が専門なんですが、予言をする半人半魚の妖怪は大陸も大陸
西洋の方まで辿ることができるんですよ。まあ辿ると云っても元が西洋であるとは限りませんがね。
それに件やアマビエと違って西洋の人魚は凶兆、悪い予言専門なんですね」
というか僕はアマビコが読み間違えられてアマビエになったと考えています。
僕は大陸の方が専門なんですが、予言をする半人半魚の妖怪は大陸も大陸
西洋の方まで辿ることができるんですよ。まあ辿ると云っても元が西洋であるとは限りませんがね。
それに件やアマビエと違って西洋の人魚は凶兆、悪い予言専門なんですね」
もう少し我慢してくれ、と赤坂と里村に目で合図を送る。
「中国には白澤というのがいます。
件と同じで牛の様な体をしています。
何故か予言をする妖怪は半人半獣なんですね。
さらに白澤と件の共通項としてその絵が幸せを呼ぶ、お守りになるという伝承があります。
このことから僕は白澤が件のモデルの一つであると考えています。
そうだ、その件の少女の絵──というか写真はありますか?
魚みたいな顔で牛みたいな体してたら面白いなあ」
件と同じで牛の様な体をしています。
何故か予言をする妖怪は半人半獣なんですね。
さらに白澤と件の共通項としてその絵が幸せを呼ぶ、お守りになるという伝承があります。
このことから僕は白澤が件のモデルの一つであると考えています。
そうだ、その件の少女の絵──というか写真はありますか?
魚みたいな顔で牛みたいな体してたら面白いなあ」
キヒヒヒと神経に障る笑い声が耳をつく。
ここに──と赤坂は写真を取り出した。
可愛い。
センセイと同じ人間だとは思えない。
ここに──と赤坂は写真を取り出した。
可愛い。
センセイと同じ人間だとは思えない。
「おおッ!」
「まさかロリコンてやつじゃないだろうねセンセイ」
「古手神社と書いてある」
「ええ、古手梨花は古手神社の娘ですが」
「オヤシロ様だッ」
「え、ええ、そんな名前を聞いた覚えがあります」
「気になってたんですよ、オヤシロ様。どうも古神道や神社神道にもそぐわない。
そうか、オヤシロ様が予言をね──半人半獣──」
そうか、オヤシロ様が予言をね──半人半獣──」
ぶつぶつと独白を続ける赤坂は困り顔で俺を見、里村はにやにやと3人を見回している。
「次の旅先が決まったね」
突然、喜色満面で振り向いたセンセイに俺は何故か腹が立った。
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