闇夜の凶人のように、闇の中をふらふらと歩いた。
何処に行こうとするのか、何をしようとするのか。
何処に行こうとするのか、何をしようとするのか。
目指すのは古手神社だ。
勿論、私が行っても何も変わるはずもない。
――――――未来はもう決まっているのでしょうか?
そう、決まっていたのだ、私の様な無能な人間では。
――――――――運命は受け入れなければいけないのでしょうか?
そう、受け入れなければいけない、私の様な無能な人間には。
――――――――――死にたくない。
ああ、御免よ、御免なさい、私の様な無能な人間には、君を救う事は出来なかったのだ。
あの時、あの娘(こ)の告白を聞いたのが私でなかったら、中禅寺や榎木津だったなら。
あの時、あの娘(こ)の告白を聞いたのが私でなかったら、中禅寺や榎木津だったなら。
「今から、雛見沢連続怪死事件事件の――いや、この村にある惨劇の真相を語ります」
そう云うと、少女いや彼女はゆっくりと息を吸った。
「雛見沢には、ある特別な病気があるのです。その病気の名前は、
仮なのか正式なのかはわかりませんが『雛見沢症候群』と呼ばれています」
仮なのか正式なのかはわかりませんが『雛見沢症候群』と呼ばれています」
雛見沢症候群?
「この雛見沢症候群と云う名称は古く、実は戦前くらいに名付けられたものです。
雛見沢近隣の出身者が遠方で患う重度の望郷症とそれに伴う精神不安定などの症状。
それにある医師が注目し、様々な文献に基づいて調査を行いました。
そしてその医師は、この特異な症状が雛見沢の特殊な文化性ではなく、
外因性によるものではないかと仮説を立てたのです」
雛見沢近隣の出身者が遠方で患う重度の望郷症とそれに伴う精神不安定などの症状。
それにある医師が注目し、様々な文献に基づいて調査を行いました。
そしてその医師は、この特異な症状が雛見沢の特殊な文化性ではなく、
外因性によるものではないかと仮説を立てたのです」
外因性による症状?
「この医師はさらに仮説を立てました。
雛見沢にはある種の風土病があり、その地から離れると分泌物の異常などを引き起こし、
過度の被害妄想を膨らませるのではないかと云うものです」
雛見沢にはある種の風土病があり、その地から離れると分泌物の異常などを引き起こし、
過度の被害妄想を膨らませるのではないかと云うものです」
過度の被害妄想?
「雛見沢のオヤシロ様信仰をその見知から見ると、明らかに古代鬼ヶ淵村の人々は
この風土病を理解している様に思われました。
自らが村を出ては生きられない事を理解し、また他所から人が来れば感染し、
2度と村から出られなくなるため、村に近づけまいとする土着の教義。
古代の人々はそれを病気と云う概念ではなく、祟りと云う概念で捉えたのです」
この風土病を理解している様に思われました。
自らが村を出ては生きられない事を理解し、また他所から人が来れば感染し、
2度と村から出られなくなるため、村に近づけまいとする土着の教義。
古代の人々はそれを病気と云う概念ではなく、祟りと云う概念で捉えたのです」
村から出られなくなる?
「そして、この病気の最大の特徴は、発症時の極端な被害妄想と、それに起因する過剰な攻撃思考。
それと、末期に至った際の自傷行為です。
この末期患者の異常行為は、鬼ヶ淵の村から鬼が湧き出して村人を襲った、と云う伝承の行を、
ガス災害と云う見方ではなく、何らかの感染症が突如大発生し、
急性発症した村人達が被害妄想を肥大させ、村人殺しに発展したと読み解けました」
それと、末期に至った際の自傷行為です。
この末期患者の異常行為は、鬼ヶ淵の村から鬼が湧き出して村人を襲った、と云う伝承の行を、
ガス災害と云う見方ではなく、何らかの感染症が突如大発生し、
急性発症した村人達が被害妄想を肥大させ、村人殺しに発展したと読み解けました」
発症時の極端な被害妄想?
「その感染症も長い時間の中で、非適合な人間がほぼ淘汰されると、
村人達は自分達の病気、祟りの法則を理解し始めました。
まず、この病気は一度罹患(りかん)すると治せない。
そのため、村を閉ざし余所者を近付けない教義が生まれた」
「その感染症も長い時間の中で、非適合な人間がほぼ淘汰されると、
村人達は自分達の病気、祟りの法則を理解し始めました。
まず、この病気は一度罹患(りかん)すると治せない。
そのため、村を閉ざし余所者を近付けない教義が生まれた」
罹患すると治せない?
「そして、この病気を発症させる要因、大きな条件は二つ。一つは疑心暗鬼。
人を疑る気持ちは被害妄想を膨らませ、自ら末期症状を引き起こしてしまう」
人を疑る気持ちは被害妄想を膨らませ、自ら末期症状を引き起こしてしまう」
疑心暗鬼?
「そしてもう一つは、こっちの方がわかりやすくて教義の根幹だけど。
それは雛見沢を離れると、距離、時間に比例して発症確率が高まると云うもの。
現代の村民達は長期旅行にいっても発症する事はほぼないけど、
当時の村民達にはとても顕著で、劇的だったそうよ」
それは雛見沢を離れると、距離、時間に比例して発症確率が高まると云うもの。
現代の村民達は長期旅行にいっても発症する事はほぼないけど、
当時の村民達にはとても顕著で、劇的だったそうよ」
雛見沢を離れると確率が高まる?
「この二つの発症要因を治める為にオヤシロ様には禁忌が生まれた。
まず、村人達は村社会への帰属意識を強くして、疑り合うことがない様にした。
最近は薄れてるけど、そもそも、オヤシロ様は縁結びや隣人愛の神様なの。
そして、雛見沢を離れてはいけないと云う禁忌。
それに伴い、これに逆らうと、オヤシロ様の祟りが起こると云う罰則」
まず、村人達は村社会への帰属意識を強くして、疑り合うことがない様にした。
最近は薄れてるけど、そもそも、オヤシロ様は縁結びや隣人愛の神様なの。
そして、雛見沢を離れてはいけないと云う禁忌。
それに伴い、これに逆らうと、オヤシロ様の祟りが起こると云う罰則」
オヤシロ様の祟りが起こる?
「オヤシロ様伝説の最初の、オヤシロ様が降臨し人と鬼を融和させた云う行は、
この二つの禁忌を守らせる為に、生まれたと云ってもいいかもしれない。
そして村に残る、残酷な儀式の風習はその禁忌を強固にする為の抑止力だったのでしょう」
この二つの禁忌を守らせる為に、生まれたと云ってもいいかもしれない。
そして村に残る、残酷な儀式の風習はその禁忌を強固にする為の抑止力だったのでしょう」
オヤシロ様の降臨?
彼女はそこで、長い話に一息ついた。
私は思わず大きな溜め息を一つした。
彼女はそこで、長い話に一息ついた。
私は思わず大きな溜め息を一つした。
「と・とても信じられない」
「私もそうよ、でも私が見てきた色んな世界でも、雛見沢症候群は発症している。
今年も、例えばレナが発症する世界もあった」
「私もそうよ、でも私が見てきた色んな世界でも、雛見沢症候群は発症している。
今年も、例えばレナが発症する世界もあった」
レナ、竜宮レナ――あのおかしな少女か。
「他にも、魅音の双子の妹、詩音が発病する世界」
魅音、園崎魅音――あの子に双子の妹がいたのか・・・そう云えばどこかで。
「後は、あの馬鹿叔父が戻ってきたせいで、沙都子が発症する世界」
沙都子、北条沙都子――鳥口が云っていた子か。
「他にも、転校生が発症する世界もあったわね」
転校生、流石にこれはわからない。
「そ・それじゃあ、その雛見沢症候群がこの連続怪死事件に関わっているの?」
「そう、1年目のダム工事の現場監督殺害事件、これは主犯の男が発症。
2年目の北条夫妻は沙都子が発症して突き落とした」
2年目の北条夫妻は沙都子が発症して突き落とした」
「さ・沙都子?、でもその子はまだ生きているじゃないか、発症しても生きているのか?」
「ああ、そうね――まだその事を話てなかったわ」
彼女も大きな溜め息を吐いた。
「さっき話した、最初にこの雛見沢症候群を発見した医師は、
これを何か有効利用出来ないかと当時の政府、軍部に主張した。
けれど当時は戦争の戦局が思わしくなく、そんな異常現象の研究に予算を割けなかった。
そうして、この雛見沢症候群を研究しようとする話は潰えるはずだった」
「さっき話した、最初にこの雛見沢症候群を発見した医師は、
これを何か有効利用出来ないかと当時の政府、軍部に主張した。
けれど当時は戦争の戦局が思わしくなく、そんな異常現象の研究に予算を割けなかった。
そうして、この雛見沢症候群を研究しようとする話は潰えるはずだった」
戦争――あの戦争か。
「そして、終戦。日本は新しい価値観を受け入れる、いや、受け入れざるおえなくなった。
けど、詳しくは説明しないけど、中にはもう1度日本の独立を願う有力者達がいたの。
そんな彼らは日本の復興にあわせて手に入れた、大きな資金力と政治力があった。
そこで戦時中に忘れ去られた雛見沢症候群に注目された。
雛見沢症候群が軍事的価値を持たないかどうかね」
けど、詳しくは説明しないけど、中にはもう1度日本の独立を願う有力者達がいたの。
そんな彼らは日本の復興にあわせて手に入れた、大きな資金力と政治力があった。
そこで戦時中に忘れ去られた雛見沢症候群に注目された。
雛見沢症候群が軍事的価値を持たないかどうかね」
馬鹿げている――だが、あの時は我々だって馬鹿げていたのだ。
「そこで、送り込まれたのが入江京介。関口も知っているかしら、雛見沢の診療所の所長よ」
そう云えば――あの診療所は異常に立派だった。
「他にも鷹野や富竹もその雛見沢症候群研究の関係者――これは知らないかもね」
そう云えば――鷹野三四もここの生まれではないと。
「彼らの目的は雛見沢症候群の研究及び管理。そして入江は優秀な研究者だった。
入江は雛見沢症候群の細菌の特定及び予防薬や治療薬の開発に成功したわ。
まあ、正確には治療薬と云うよりも抑制薬だけど・・・それで沙都子は生きながらえているの」
入江は雛見沢症候群の細菌の特定及び予防薬や治療薬の開発に成功したわ。
まあ、正確には治療薬と云うよりも抑制薬だけど・・・それで沙都子は生きながらえているの」
そう云えば――鳥口が少女はおかしな感じだと。
「で・でも、そ・そんな危険な病気が今まで発見されないなんて、お・おかしいよ・・」
私は尋ねた。
私は尋ねた。
「雛見沢症候群が軍事利用の優位性が高いとされたのはそこなの。
その原因である因子体が、宿主が生体でないと検出されないの。
――それもかなり非人道的な手法でなければね」
その原因である因子体が、宿主が生体でないと検出されないの。
――それもかなり非人道的な手法でなければね」
確かに筋は通っている・・・。
「で・でも、何で君がそんな事を知っているんだい、そ・その何度も生きてる中で調べたのかい?」
私は再び尋ねた。
私は再び尋ねた。
「私は入江達に実験材料にされているの――」
彼女は少し寂しそうな表情をして。
「私の、古手家の血筋にはオヤシロ様の血が流れている。
その伝承は正かった様で、私の体は彼らの格好の研究材料なの。
そして、その所為で両親は彼らに殺された」
その伝承は正かった様で、私の体は彼らの格好の研究材料なの。
そして、その所為で両親は彼らに殺された」
最後の方は呟く様だった。
彼女は再び溜め息を吐くと、
彼女は再び溜め息を吐くと、
「さて、話を戻しましょうか。どこまで話したっけ――
そう、2年目の祟りは沙都子が発症したの、3年目は入江達の仕業。
4年目は沙都子の兄の悟史が発症――これが雛見沢連続怪死事件の真相なの。
3年目以外は、本当に連続ではなく偶々(たまたま)同じ日に発症が起こっただけ」
そう、2年目の祟りは沙都子が発症したの、3年目は入江達の仕業。
4年目は沙都子の兄の悟史が発症――これが雛見沢連続怪死事件の真相なの。
3年目以外は、本当に連続ではなく偶々(たまたま)同じ日に発症が起こっただけ」
「で・では、1人消える。鬼隠しは?」
「それは、ほとんどが入江達の仕業。感染者の管理、隠蔽も仕事の内なの」
そこまで話すと彼女は月を見やり――いい月ね、と云った。
そこまで話すと彼女は月を見やり――いい月ね、と云った。
彼女の話は、矢張り筋は通っている。だが到底信じられない。
「ひ・一つ、き・聞いてもいいかな?」
私は聞いた。
「そ・その雛見沢症候群の感染経路は一体、何なんだい?」
「空気感染よ――もしかしたら関口も罹(かか)っているかも」
「ひ・一つ、き・聞いてもいいかな?」
私は聞いた。
「そ・その雛見沢症候群の感染経路は一体、何なんだい?」
「空気感染よ――もしかしたら関口も罹(かか)っているかも」
彼女は私を見ずに云った。
空気感染だと?――なら私も。
「さて、やっと話は本題に入るわ」
彼女は私に顔を向ける。
彼女は私に顔を向ける。
「その連続怪死事件とは関係なく、もう間もなく私が殺されるのです」
なら私も感染しているのか?――疑心暗鬼になる。
「それは、必ず、確実に、何度も起こります」
そう云えば、ここに来てから――発病要因は・・・。
「関口、聞いてますか?」
――何を聞いているのだ?
「あ・あ・ああ、で・でも到底・し・信じたくないよ」
私は答えた。
私は答えた。
「そうでしょうね、なら一つ予言しましょう」
そして最後に彼女は――
そして最後に彼女は――