Fast-growing Hierarchy

 順序数を用いて定義された巨大数の物差しの一つ。本来は巨大関数の物差しという意味合いの方が強いが、巨大数のおおよその大きさを見積もる事も可能である。
 ふぃっしゅ氏は「急成長階層」という訳語を与えている。略してFGHと表記される事もしばしばである。

 順序数自体の解説については、とりあえず『巨大数論』に譲りましょう。こちらでは下記定義中の解りにくい部分を解説します。

定義

f_0(n)=n+1
f_{\alpha+1}(n)=f^n_\alpha(n)
=\underbrace{f_\alpha(f_\alpha(\dots(f_\alpha}_{n}(n))\dots))
f_\alpha(n) = f_{\alpha[n]}(n) αが極限順序数のとき


↑で、α[n]って何ぞや!?という話なんですが、これは極限順序数αに収束する収束列を表します。といってもピンと来ないかもしれないですね。

解りやすく言い換えると、α[n]は「極限順序数記号(ω等)を含む(ただし含んでなくても良い)何らかの数式」、
つまり関数の順序数バージョン“順序関数”なるものを表す記号と考えて良いと思います。

例えば、

\alpha[n] = \omega+n  とか、
\alpha[n] = \omega^n  とか、
\alpha[n] = \omega^{\omega\times n}  とか、
\alpha[n] = \omega\uparrow\uparrow n  とか、

数学的に厳密でないとは思いますが、
おおよそこんなイメージで捉えて頂ければ良いんじゃないかと。

これを3つ目の定義に当てはめて述べていきます。例えば、

f_{\omega+1}(n),f_{\omega+2}(n)f_{\omega+3}(n),\dots,f_{\omega+m}(n),\dots

としていって関数を大きくしていきますよね。
nを大きくすれば数をどんどん大きくできるけど、それよりもmを増やしたほうが増大率は大きくなる。
じゃあもしmに焦点を置いたより大きな関数f'(m)を用意すればどうだろう、
という考え方が出発点です。

ここではまだmはnとは違う別の変数なので何も起きませんが、
もしm=nとして両者を一致させると、表記が一つシフトします。
mだった部分がωに変わり、(n)だった部分が(m)に変わります。

\text{If }m=n,\quad f_{\omega+m}(n)=f_{\omega+\omega}(m)

つまり、先ほどのf'(m)に相当する関数こそ、このf_{\omega+\omega}(m) という訳なんです。

これをより完結に述べれば、

f_{\omega+n}(n)=f_{\omega+\omega}(n)

より一般的には、

f_{\alpha[n]}(n)=f_{\alpha[\omega]}(n)=f_\alpha(n)

となるのです。


ただ、実はこれだけでは問題が生じます。
ある極限順序数に対応する基本列は1通りでは無いからです。
例えば巨大数論にあったように、ω一つをとっても、
1,2,3,4,…,n,…,ω
2,4,6,8,…,2n,…,ω
どちらもωに収束します。

これをFGHの式に当てはめて考えると、

f_1(n),f_2(n),f_3(n),f_4(n),\dots f_n(n)=f_\omega(n)
f_2(n),f_4(n),f_6(n),f_8(n),\dots f_{2n}(n)=f_{2\omega}(n)=f_\omega(n)

となり、どちらも同じ式になってしまいました。両者は違うのに。
つまり、ωや他の極限順序数に対する基本列を1通りに規定しない限り、
f_\omega(n)は不明確な関数のまま、ということになってしまいます。

Wainer Hierarchy

これを回避するための方法論の一つが、おそらく次のWainer Hierarchyの適用なんだと思います。
Wainer Hierarchyは\varepsilon_0(=\omega\uparrow\uparrow\omega)までの範囲で有効だそうですが、それ以上の極限順序数に対しても拡張が可能なのだそうです。
ただ、自分はその定義(下記の意味する所)がまだ掴めていないので、ここでは定義そのものの紹介に留めておきます。
でも多分、例えば先ほどのωに対する収束列を、1,2,3,4,…のみに限定するとか、
\omega^2に対する収束列をω,ω2,ω3,ω4,…のみに限定するとか、
そういう主旨のものじゃないかなと思っています。

\omega[n] = n
\omega^{\alpha + 1}[n] = \omega^\alpha n
\omega^{\alpha}[n] = \omega^{\alpha[n]} if and only if α が極限順序数
(\omega^{\alpha_1} + \omega^{\alpha_2} + \cdots + \omega^{\alpha_{k - 1}} + \omega^{\alpha_k})[n] = \omega^{\alpha_1} + \omega^{\alpha_2} + \cdots + \omega^{\alpha_{k - 1}} + \omega^{\alpha_k}[n]
    ただし\alpha_1 \geq \alpha_2 \geq \cdots \geq \alpha_{k - 1} \geq \alpha_kとしたとき
\varepsilon_0[0] = 0\text{ or }1 かつ \varepsilon_0[n + 1] = \omega^{\varepsilon_0[n]}

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最終更新:2013年12月14日 10:36