「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 怪奇チャンネル-プロローグ

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
(このお話で出てくる怪奇チャンネルの契約者は、読み切りの主人公ではありません)

吐く息が白く、凍り付く。
少女はドアを開け、外を見た。
満点とまではいかないが、綺麗な星が輝く夜空だった。
マンションの7階から見える、下半分の世界は少女からすると澱んで見えた。
澱みを一睨みすると少女は、近くにあったファーの付いたケープを羽織り、玄関から足を踏み出す。
「まったく、これじゃお嬢様と言わんばかりのコーディネートじゃない」
少女は玄関の鍵をかけ、ヴァイオリンケースを模した鞄に鍵をしまい込む。
「ま、いっか。こんな時間に出歩いてる人は、ある程度までは、同じような人よね」
夜は氷点下まで冷え込むと、普通のテレビのアナウンサーが言っていた。
普通じゃないアナウンサーは、こう言っていた。
『今夜は、冷や汗も凍る寒い夜になるでしょう』

少女は、スカートのポケットからケータイを取り出す。
ケータイでスカートが、ぽっこりでるのは女の子としてどうだろうとも思うが、いざって時に一番頼れるのがこれしかないので、仕方がない。
カチカチとケータイをいじりながら、夜の町の探索を始める。
ケータイのメニューを開き、ワンセグをクリックする。
普通じゃないアナウンサーの出る番組がもうすぐ始まる。
時刻は、1:59
少女のケータイがあり得ないテレビ局の電波を受信する。
N○Kが映るはずのチャンネルで、二時を知らせる時報が鳴る。
怪奇チャンネルの始まりだ。
○にも奇妙な物語を調子っぱずれにしたOPが流れる。
少女は、ケータイを見つめながら、周囲に神経を張り巡らせた 。
こんな夜中に女性が一人。
良くも、悪くも、人を寄せ付ける。
まぁ、系統的には弱ロリータファッションだが、今時珍しくもないだろう。と、思う。
少女が悶々と自身を変な自信で勇気づけている間に、番組は進行していく。
今日の内容は『人魚と魚人の違い』と『あの世ツアー地獄巡り三巡目』と、あとはちょっと覚えてられなかった。
「今日はハズレか。もう30分もたってるのに」
少女がいくら厚着しているとはいえ、とっくに体の芯まで冷えている。
「帰ろう、作戦の立て直しだわ」
『次は、学校町のピックアップ都市伝説&契約者です』
「待ってました!!」
食い入るようにケータイを見つめ、本体を握り直す。
画面の中の喪服のアナウンサーは淡々と抑揚のなく、まるでお悔やみを申し上げるように都市伝説と契約者の名前を告げていく。
「さあ、早くしないとあなたの名前が出るわ」
少女は、首から下げたネックレスを服の上から確認する。
少女の気持ちの高ぶりとは裏腹に、付近には物音一つしない。
街頭や、殆どの家から消されたはずのわずかな明かりだけが、世界からの文化的な息遣いだった。
『では、続いて次の~』
気が付けば、44分人の都市伝説と契約者の名前が垂れ流され、何事もなかったように次の番組に移行していた。
「・・・。ダメか」
少女はふう、と真白の青息吐息。
「実行してみただけ、良いよね。寒いし、帰ろう」
少女が踵を返そうとしたとき、足が止まった。
怪奇チャンネルが映し出していたのが、学校町。しかも、自分が今さっき通ってきた場所だったからだ。
画面が激しくブレている。カメラを持ったまま走っているところなのだろう。
脇のテロップを見る。ケータイの画面では、小さくて読めない。
『我々は今、ピックアップ都市伝説、ワーストランキングに入るだろう期待の新人を追っています』
ちょうど良く喪服のアナウンサーの説明が青白い顔と共に入り、画面外に消えていった。
ごくり。
少女は、生唾を飲んだ。
この、近くだ。怪奇チャンネルのクルーがこの近くまできている。
少女にとっての問題は勿論怪奇チャンネルのクルーではない。
「都市伝説・・・ワースト・・・」
少女が、身を強ばらせたときだった。
「動くな」
背後で男性の声がした。
声から多分、老けていないことはわかった。
それ以上にわかったことは、後ろの人間の尋常じゃない殺気と、背中に当たる尖ったものだった。
殺気に関しては、まだ。認識はしているが、理解はしていなかった。
こんな時間に出歩いているなんて、変質者か、犯罪者か、目的があって動いているやっぱしちょっと認識のはずれた人かしかいない。
平たく言えば、同族なんだろう。
都市伝説という言葉を吐いた、タイミングと言い。
思惑は、当初の作戦通り。
後ろをとられたことは、作戦のイメージ外だった。
少女は、今のところ"動くな"という命令に従っていた。
次に動きがあれば、打開策に打って出る。
少女が気合いを入れて、ヴァイオリンケースを握りしめたときだった。
「チッ、お前は違う」
背中に付いた、尖った感覚が離れていく。
後ろの人物が駆け出すのと、振り向いたのはほぼ同時。
まず目に入ったのは、ファー付きの白いダウンジャケット。
フードを被った頭は、顔は見えない。黒いズボンに、白いスニーカー。
少女は、今し方まで突きつけられていた、凶器の確認をする。
愕然とした。
思わず、言葉が口を付いて出た。
いや違う。言葉が常識、配慮、その言葉を吐いたことで陥る気まずい空気。何もかもをすっ飛ばして出てきた。
「・・・スプーン・・・」
少女の頭の中で、小さくなる白い服と、小学生の時に食べた給食の時の映像がダブる。
そう、給食で使った金属のスプーン。別名、すいかスプーン。
少女は、疑問を感じた。
何故自分はあれを、尖った凶器だと勘違いしたか?
どう考えてもあれは、尖った凶器にはなり得ない。
もう一つ。何故、あんなにハッキリとスプーンが、スプーンだと認識できたか?
街灯があるとはいえ、夜の闇の中。
去っていく人間を確認できたのも、白い服を着ていたからだった。
「・・・?、去って・・・。ああ!」
少女は、頭を抱えた。みすみす見逃したのだ。
向こうから現れた、都市伝説の契約者を!
見ず知らずの自分を狙ってくるあたり、無差別の犯罪者だ!
「あれ、でも・・・」
少女は頭の中でリピートする。
"お前は違う"という台詞。
「意味は何?誰なら、当たりなのよ?」
ひどく不鮮明になった頭とは逆に、ようやく昨日を思い出した五感は電気信号を脳に伝える。
聴覚が、流れっぱなしの怪奇チャンネルの音声を拾う。
ケータイを見た。
『今、この公園に潜んでいる模様です』
テレビクルーのライトだけが、当たりを照らしている。
昼間のうちに、学校町の地図は頭に叩き込んだ。
街灯が一つもない公園。あそこしかない!
少女はヴァイオリンケースを小脇に抱え、走り始めた。



プロローグ 終

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー