黒服Hと呪われた歌の契約者 22
(ドクター(バイト青年)より)
「あー、面倒くせぇ…」
人気のない道を歩く、黒服の男
…まったく、外回りの仕事と言うのは面倒だ
己の契約都市伝説の性質上、彼は元々書類事務と……裏の仕事が多かった
よって、こんな外回りの仕事なんぞ、普通は回ってこないはずなのだ
……しかし、だ
「組織」の黒服の数は、いまだ足りていない
よって、彼のような黒服でも、現場に借り出されているのである
正直、この黒服のような存在を外に出すのは、「組織」としても苦渋の決断であろうが仕方ないことだ
…まったく、外回りの仕事と言うのは面倒だ
己の契約都市伝説の性質上、彼は元々書類事務と……裏の仕事が多かった
よって、こんな外回りの仕事なんぞ、普通は回ってこないはずなのだ
……しかし、だ
「組織」の黒服の数は、いまだ足りていない
よって、彼のような黒服でも、現場に借り出されているのである
正直、この黒服のような存在を外に出すのは、「組織」としても苦渋の決断であろうが仕方ないことだ
「ヨーロッパから入り込んだ都市伝説…については、ゲデの野郎にでも後で聞くとして、だ……あいつと「爆発する携帯電話」が接触、なぁ。あいつら接点なんぞあったか…?」
考え込みつつ、歩いていると
「………うん?」
…しゅるんっ
思わず、髪を伸ばす
視界の隅に、男物の服を着た、なかなか美人な姉ちゃんが
うん、あれは良い
男物の服を着た女性と言うやつはそれはそれでなかなか良い
場合によっては露出の多い服を着ているよりもエロくて良いぞ、良いぞ
思わず、髪を伸ばす
視界の隅に、男物の服を着た、なかなか美人な姉ちゃんが
うん、あれは良い
男物の服を着た女性と言うやつはそれはそれでなかなか良い
場合によっては露出の多い服を着ているよりもエロくて良いぞ、良いぞ
「……んー?待てよ?」
……あれ?
あのねーちゃん、どっかで見た事あるような?
女性の顔なんぞ、確実に忘れるはずがない
覚えているはずである
だと言うのに、記憶が曖昧となると……
あのねーちゃん、どっかで見た事あるような?
女性の顔なんぞ、確実に忘れるはずがない
覚えているはずである
だと言うのに、記憶が曖昧となると……
「……まさかなぁ」
ひとまず、うっかり伸び放題だった髪を抑えつつ、彼はそちらに近づいた
「あー、そこの姉ちゃん」
「っ!?」
「俺と、面識がある覚えはあるか?」
「っ!?」
「俺と、面識がある覚えはあるか?」
しゅるり
ほんの僅か、一瞬だけ髪を伸ばしつつ、そう女性に尋ねる
すると
ほんの僅か、一瞬だけ髪を伸ばしつつ、そう女性に尋ねる
すると
「……あの時の、黒服?」
「おー、やっぱ面識あったか」
「おー、やっぱ面識あったか」
面識ある女性
しかし、記憶がはっきりしない
……つまり、彼女は本来「彼女」ではない
男に関する事に関しては覚えが悪いが、それでも何とか記憶から引っ張り出す
しかし、記憶がはっきりしない
……つまり、彼女は本来「彼女」ではない
男に関する事に関しては覚えが悪いが、それでも何とか記憶から引っ張り出す
「……あー、思い出した。「第三帝国」のにいちゃんか」
「…わかるんですか?」
「あぁ。色々と総合した結果、そうだな、と」
「…わかるんですか?」
「あぁ。色々と総合した結果、そうだな、と」
なるほど、こいつは女になるとこんな感じか
うん、良いぞ、良いぞ
うん、良いぞ、良いぞ
「…とりあえず、人目がありそうな場所で髪を伸ばすのは危険かと」
「あぁ、俺もそう思う。だから、ちょっとこっち来い」
「あぁ、俺もそう思う。だから、ちょっとこっち来い」
ちょいちょい、と手招きしてみせる
別に、路地裏に連れ込んでいかがわしい事をしようってんじゃない
まぁ、それもちょっとはしたいなー、と思うが、相手は「第三帝国」の人間だ、我慢、我慢だ
別に、路地裏に連れ込んでいかがわしい事をしようってんじゃない
まぁ、それもちょっとはしたいなー、と思うが、相手は「第三帝国」の人間だ、我慢、我慢だ
「…何か、不埒な思考を抱かれたような」
「気のせいだ」
「気のせいだ」
髪を伸ばしつつ、そう言うと、女性はやや不審な表情を浮かべてきたが
それでも、付いてきてくれた
何年前だかに殺人事件があったとかで、空家になってそのまま、と言う廃墟までやってくる
それでも、付いてきてくれた
何年前だかに殺人事件があったとかで、空家になってそのまま、と言う廃墟までやってくる
「…で。「第三帝国」のバイトの兄ちゃんで間違いないんだな?」
「はい」
「はい」
やはりか、と黒服は考える
男が女になった
ざっと考えられるパターンはいくつかあるが…
男が女になった
ざっと考えられるパターンはいくつかあるが…
「性転換手術でもしたか?」
「今、ちょっと殺意が沸きました」
「OK、落ち着け。その物騒な棒を閉まってくれ」
「今、ちょっと殺意が沸きました」
「OK、落ち着け。その物騒な棒を閉まってくれ」
っち、冗談の通じない
「ガスマスク被った奴から、ピンク色の甘ったるいガスでも喰らったんだろ?」
「…知っているんですか?」
「あぁ、同僚が被害にあったことあるんでな。あの乳は素晴らしかった」
「…知っているんですか?」
「あぁ、同僚が被害にあったことあるんでな。あの乳は素晴らしかった」
しゅるりん
髪を伸ばしつつ、あの見事なEカップを思い出す
この青年が女になっている以上、原因であるあれが、また学校町に来ているのだろう
…また、あの過労死候補の同僚が女にならないかな
そんな期待を抱いて見る
髪を伸ばしつつ、あの見事なEカップを思い出す
この青年が女になっている以上、原因であるあれが、また学校町に来ているのだろう
…また、あの過労死候補の同僚が女にならないかな
そんな期待を抱いて見る
「マッドガッサー、って知ってるか?」
「あぁ、アメリカの都市伝説の?」
「知ってるなら、話は早い。お前を女に変えたのは、その変異体だ。男を女に変える特殊な毒ガスを使ってくる」
「何ですか、その嫌な方向に進化した都市伝説は」
「個人的にはナイスな能力の都市伝説だと思うんだがなぁ」
「あぁ、アメリカの都市伝説の?」
「知ってるなら、話は早い。お前を女に変えたのは、その変異体だ。男を女に変える特殊な毒ガスを使ってくる」
「何ですか、その嫌な方向に進化した都市伝説は」
「個人的にはナイスな能力の都市伝説だと思うんだがなぁ」
目的はよくわからんが、まぁ、無差別にそのガスをばら撒いているようだ
「夢の国」の騒動中は学校町を出ていたようだが…帰ってきたか
「夢の国」の騒動中は学校町を出ていたようだが…帰ってきたか
「…あの」
「うん?」
「…元に戻る方法、ご存知ないですか?」
「うん?」
「…元に戻る方法、ご存知ないですか?」
じ、と
向けられる期待の眼差し
あぁ、と黒服は答える
向けられる期待の眼差し
あぁ、と黒服は答える
「結局、毒ガスの効果である事に変わりはないからな。解毒すりゃあ戻るはずだな」
「解毒…」
「有名どころだと「ユニコーンの角の粉末」とか、その辺だろ。他にも解毒能力持つ都市伝説は色々といるだろうが…」
「…その「ユニコーンの角の粉末」ですが」
「俺は持ってないぞ」
「解毒…」
「有名どころだと「ユニコーンの角の粉末」とか、その辺だろ。他にも解毒能力持つ都市伝説は色々といるだろうが…」
「…その「ユニコーンの角の粉末」ですが」
「俺は持ってないぞ」
きっぱりと、即答する
疑いの眼差しを向けられて、肩をすくめて見せた
疑いの眼差しを向けられて、肩をすくめて見せた
「そんな目をされても、ないもんはねぇよ。あの手の霊薬を持ち出せるのは、「組織」の黒服でもごく一部だ。前まではそれなりに知り合いの同僚が持ち出せていたが…今、その権利を取り上げられていてな」
よって、自分は「ユニコーンの角の粉末」は持ち合わせていない
この青年を元に戻す事はできないのだ
この青年を元に戻す事はできないのだ
「…何とか持ち出せません?」
「無理。俺、あっちの管理してる上層部と仲悪いから」
「無理。俺、あっちの管理してる上層部と仲悪いから」
さらりと言い切る
本来は、ちょっと頑張れば持ち出せなくもないが…
はっきり、言おう
折角、女体化なんて素晴らしい状態なのだ
この状態で放置してみたい
本来は、ちょっと頑張れば持ち出せなくもないが…
はっきり、言おう
折角、女体化なんて素晴らしい状態なのだ
この状態で放置してみたい
「まぁ、都市伝説なら、一週間くらいで自然と解毒されるみたいだけどな。都市伝説特有の自然治癒力って奴で」
「なんだ、自然にも戻……って、都市伝説、なら?」
「なんだ、自然にも戻……って、都市伝説、なら?」
…よし、いい勘だ
嫌な予感、という奴がするんだろう、きっと
嫌な予感、という奴がするんだろう、きっと
「ぶっちゃけ、都市伝説以外が吸った場合、自然に戻るかどうかはさっぱりわからん。何せ、サンプルがいなかったからな。都市伝説との契約によって身体能力が強化されてい場合は、ちったぁ期待できるが…」
「…そうじゃなかったら?」
「それこそ、何かの解毒系都市伝説で何とかしないと無理じゃね?」
「…そうじゃなかったら?」
「それこそ、何かの解毒系都市伝説で何とかしないと無理じゃね?」
……もしくは
「…そのマッドガッサーを、倒すか?」
「そう言うこったな」
「そう言うこったな」
個人的には、マッドガッサーは倒さず、生け捕りにしたいところだが
元に戻る手段といったら、それくらいだろう
もしかしたら他に手段があるかもしれないが……まぁ、提案しても100%J断られるのは目に見えているし、やめておこう
元に戻る手段といったら、それくらいだろう
もしかしたら他に手段があるかもしれないが……まぁ、提案しても100%J断られるのは目に見えているし、やめておこう
「で、どうすんだ?」
「え?」
「その格好で、行く当てとかあんのか?」
「え?」
「その格好で、行く当てとかあんのか?」
う、と押し黙る美少女
…さて、どうしようか
相手の、頭の天辺からつま先まで、じっくり見つめて考える
…さて、どうしようか
相手の、頭の天辺からつま先まで、じっくり見つめて考える
「…何なら。俺が寝床用意してやろうか?」
「……は?」
「着替えとか、その辺も用意してやるぜ?」
「……は?」
「着替えとか、その辺も用意してやるぜ?」
ニヤリ、笑ってそう言ってやると
…にじりにじり、警戒するように下がられた
何故だ
28%くらい善意だと言うのに
それ以外は、下心だが
…にじりにじり、警戒するように下がられた
何故だ
28%くらい善意だと言うのに
それ以外は、下心だが
警戒するような視線を向けてくる美少女を前に、黒服は髪を不気味に伸ばしつつ、笑うのだった