「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

Bloody Mary

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匿名ユーザー

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初めて訪れたこの街の夜は、酷く空虚だった。
車内に好みの音楽でも流していなければ、とうの昔に無音と寒気に嬲り殺されていただろう――と、独り嗤って。
シートを倒して見上げる空は――確認するまでもなく、つまらない天井だ。
当然だ。スポーツカーなんて大層なモン持ってる位だったら、こんな街で一人子犬の様に縮こまって過ごす必要は全く無いのだから。

今回の仕事は――武器の調達だ。
いつも通りのパシリだが、慣れっこだから特に問題は無い。
……が、今回はちと状況が違う。お得意さんが何だかやらかした所為で、別の所から貰う必要が出てきたわけだ。
俺たちの拠点としている街から目的地まで2日掛かる。
其れで、今回めでたくこの面白くない街に泊まる事となった訳だ。

どうやらこの街には娯楽も無ければ、ホテルさえ無い。――間違いだな、無いのは俺の金だ。
毎度毎度危険を冒しても、貰える〝お零れ〟はちっぽけな物。
……コレばかりは諦めるしかない。自分は運が無かった、そういう星の下に産まれちまった、其れだけだ。
先にスポーツカーなんて単語を出したが、そんなのを持ってる奴等、所謂金持ちに人差し指を立てる心算は更々無い。
そんな事してるよりも手を開いて上向けて待ってた方が、まだ金が何処かから降って来る可能性もあるしな。
セコイ?誇りが無い?そんな今更なセリフを言われても、な。

……話が逸れたな。
そんな訳で今夜一晩――或いはこれから長らく――お世話になるこの街だが。
一つ――ぞっとしない話を聞いた。

「この街の何処かに車を泊めると、〝血塗れ女〟を見るハメになる」

……だとさ。
〝何処か〟なのがミソで、其の所為で唯でさえ寒いこの夜が南極で過ごす一夜にさえ思えてくる訳だ。
いつ何時ヘンな女が飛んできて俺の首をチョン切るか分かった物じゃないというのだから素晴らしい。
だがまあ――よくよく考えてみればこれは〝都市伝説〟だ。
有り得る訳も無いし、そもそも〝血塗れ女〟って何だよ。……むしろ出血多量で向こうが死に掛けてるんじゃねーか?

そんなこんなで、唯一のライフラインである酒に手を出そうとした時。


こん、こん――――……とかいう音が、車に響いた。


正直に言おう。寿命が縮まったね。
嗚呼とうとう俺の人生は訳の分からん伝説に呑まれるのか、調子こいてすみませんでした死ぬのは怖いなーなんて考えちゃった訳だ。
だから……車の外に居た奴を見たときは、安心した。

有り体に言えば、幼女だ。
クセのある肩までの銀髪に、紅い瞳……アルビノか?
そして、何処か現実の物じゃないような――そう、人形だ。そう呼ぶに相応しい……可愛らしさだ。
間違ってもらっては困るが、俺はロリコンじゃないぞ。単純にこのチビっ子が可愛いと思っただけだ。何が悪い。

車のドアを開けて話を聞けば、コイツは親に捨てられた子らしい。素直に可哀想にと思えた俺の人間性に今は感謝しよう。
其れで、食べ物が無くて困っているんだとか。ほうほう……当然だ。捨て子だからな。
――まあ、此処まで来れば次の言葉は予想できる。「食べ物ちょうだい」だ。

……残念だが、今の俺は食い物はおろか金さえも持っていない。
かといって、このチビを見捨てるのは、何だか酷な事のようにも感じられた。
普段なら、クソ食らえの一言で済ませるはずなのに。
俺は光の当たる場所に居る人間でないのに――いや、だからこそか。
不思議な事にこのチビを、助けてやろうと思ってしまった訳だ。

……ところでこのチビ、如何して俺の手元の酒をじーっと見てるんだ?
手前もしかして酒が飲めるのか、と。ふざけ半分で聞いてみると。

「――うん、飲める。」

は?
……いやまあ道徳とか法律とか蹴飛ばしてる俺が言うのも何だが、其れは無いぞ。
まあ、どんな飲み方をするのか気にはなったから、ビンを渡してみた。
そして俺は「酔って吐いても助けてやらねーぞ」なんて笑って、目を離した。
――そう、其れがいけなかったんだ。


激痛と共に、歪んで逆転する視界。


「な……ッ、てめぇ――……!!」

「……ふふ、おじちゃんが騙されるのがいけないんだよ……?」

「ッチ、最初から其れが狙い、……なんつうガキだ!」

「――知ってる?おじちゃん。」

「……あん?」

「〝街の何処かに車を止めると〟……。」

「……、!!」

「私の名前は、マリー。……今夜は、良いお酒が飲めそうね。」

「な、やめ、―――――――……!!」


そうして俺の意識は、永遠に醒める事は無くなった。

――夜の街。其処に満つるは凍える様な月下の憐憫。
今、この街の路地裏には、数え切れぬ程の〝捨て子〟が居るらしい。

そして――其の子供たちを纏める、狂気の少女が居るらしい。

其れは飽く迄噂でしかない。
或いは、そうあって欲しくないと願う人々の同情が、現実に靄を掛けているだけなのかもしれない。
噂は噂を呼び――理想は現実を隠し――こうして、都市伝説は歪み、広がってゆく。

頽廃と云う名の美酒は、斯くも容易く人を酔わせる物か。

少女は名乗った。
――――〝ブラッディ・マリー<血酒の悪意>〟と。

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