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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 悪の秘密結社-06

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Elfriede

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悪の秘密結社 06


 診療所の入り口に立つヴィッキーの姿に、真っ先に反応したのは有羽だった
 胸ポケットから抜き出した如意棒・レプリカを棍のサイズに戻し、ぴたりとその眼前に突き付ける

「何の用だ」
「誘拐犯の手の者が来たんですよ? 身代金の要求に決まってるじゃないですか。まあお金じゃないですけど」

 殺意に満ちた気配を、むしろ心地良いといった顔で受け流し
 八百屋に来たからには野菜を買うのが当たり前、といった雰囲気でそう告げた

「このまま無事で帰られるとでも思ってるのか?」
「無事でなくても私は困りませんが?」

 さらりと告げてから、やや思い直したように小首を傾げる

「あ、でもやっぱり折角作ったものを壊されるとちょっとイラっとしますね。誰か手近な人に八つ当たりしちゃうかもしれません」

 その言葉に、有羽はぎりと奥歯を噛み締める

「この身体はただのメッセンジャーですよ? まあ伝える事を伝えられない場合は、交渉決裂という事になりますし……人質はどうなりますかね」
「……っ!」
「立ち話もなんですから入れてくれませんか? お届け物があるので」

 言葉を詰まらせる有羽の横をすり抜けて、大きめの手提げ袋からビデオテープを取り出す

「ビデオデッキあります? 無ければDVDも用意してますが」

―――

《はい、撮影始まりましたよー。沙々耶ちゃん笑顔をどうぞー》

 そこに映っているのは、椅子に拘束されぐったりとした沙々耶の姿
 長い銀髪が濡れそぼり、額や首筋に張り付いている

《笑顔って言ってるでしょう? 物覚えの悪い子ですね》
《……うっさい、黙れ》

 ぼそぼそと囁かれた沙々耶の言葉
 ヴィッキーには聞こえていないようだが、カメラのマイクは随分と高性能なのか、その全てをきっちりと拾っている

《まあいいです。ともあれこちらは人質を用意しました。要求したものをいただけない場合は、命の保障はいたしません》
《要求を受け入れたところで、どっちにしろ保障はされてないけどね》
《大体朝にはこの映像は届いているかと思われます。昼までにエルフリーデ・マイツェン女史の研究成果の一切合財をまとめ、そちらに派遣した私に持たせて下さいね》
《持ち逃げする気満々でしょ、それ》
《なお、こちらがそれを受け取り安全圏まで退避した後に、人質の居場所を教えます。それを伝えるためにエルフリーデ・マイツェン女史か、メイ・ゴスリング嬢のどちらか一名のみに同行していただきます》
《人質増やすつもりなだけでしょ?》
《無論、戦闘要員の同行が発覚した時点で交渉は決裂。非常に残念ながら私は撤退させていただきますのでご容赦下さい》
《元々交渉にすらなってないでしょうが、ばっかじゃないの》

 それまでフレームの外で喋っていたヴィッキーが、画面に映り込み沙々耶の元へつかつかと歩み寄る
 沙々耶の背後に掛けられていたカーテンの布ようなものをばさりと剥ぎ取ると、そこには巨大で奇妙な機械が鎮座していた
 それは、ガソリンスタンドで見かける洗車機のブラシを、金属の刃に付け替えたような物騒な代物

《交渉が成立しなかった場合、あなた達の元に美味しいハンバーグとソーセージが届けられる手筈になっていますので、楽しみにしていて下さいね》


 映像はそこであっさりと途切れ、画面には砂嵐だけが映されている

「まあ余計な雑音がいくらか紛れ込んでいましたが」

 ヴィッキーは笑顔で映像を見ていた一同を振り返る

「彼女の命が大事ならお早めに決断を。別にどうでもいいなら、待ち時間が勿体無いのでやはり手早く決断を」
「……わざわざビデオレターかね。電話の一本も寄越せないような場所に居るのかね?」
「電話だと居場所を探知できるでしょう? 『エニグマ暗号機』のコンスタンツェ姉妹が」

 ドクターの言葉に、ヴィッキーは笑みを浮かべたまま首を傾げる

「そちらの手の内は大体把握していますから。下手な事は考えずに、研究成果を引き渡すかどうかだけ決めた方がいいですよ」

 ドクターは表情を変えず
 だが溢れ出す敵意を抑えようともせず
 ソファを立って、リビングを出て地下にある研究室へと降りていく
 助手という立場でもあるメアリーとミツキもまた、それに続いてリビングを出ていった

「話が早いようで助かります」

 残った面々に笑顔を向けるヴィッキーだが、向けられる表情は一様に敵意に満ち満ちている

「沙々耶を取り戻したら、どうなるか覚悟しておけ」
「望むところです。悪行に対する怒りが行動の原動力、実に素晴らしい、素敵、最高です」

 有羽の言葉に、高揚を通り越して恍惚とした表情を浮かべるヴィッキー
 その内心では、約束を違えて沙々耶を殺してしまったら彼らはどうなるか、そんな妄想が渦を巻いている

「あなた達『第三帝国』は組織力と軍事力こそあれど、『正義の味方』となるには程遠い。けれども……もしあなた達が、属する組織とは関係無く個として殻を打ち破り、我々の敵として足りえる存在になるのなら」

 じり、と迫る幼いヴィッキーの身体
 敵意と殺意は帯びたままではあるものの、その狂気じみた雰囲気に気圧される
 きしりとクッションの下のスプリングを軋ませて、覆い被さるようにその身体に触れてくる

「本当に、本当に大事なものを奪われた事がある、そういう目をしています。その目で射竦められるあなたの敵が、本当に羨ましい」
「黙れ」

 まだ交渉を済ませていない以上、下手に手を出すわけにもいかない
 拳や蹴りを叩き込みたくなる衝動を堪えて、幼いヴィッキーの身体を押し退ける

「俺を挑発して交渉を決裂させようとでもしてるのか?」
「いえ、ただの本音ですよ。あなたそのものを奪い取るのも面白そうではありますけど」

 そう言って、ちらりと視線を逸らす
 その先には、見た目の年齢的には自分に近い少女に迫られる有羽の姿に、どこか周囲とは違う敵意を発するコンスタンツェ

「ふふふ、色々と楽しみですよ、私は」
「お前の楽しみなんか知った事か……全てひっくり返して台無しにしてやる、覚悟しておけ」
「それはこちらの台詞ですよ……あなた達の都合も平穏も、知った事じゃありませんから。全てひっくり返して台無しにしてあげます、お楽しみに」

―――

「ドクター、これを渡してしまって大丈夫なのでしょうか」

 作業や閲覧の都合上、プリントアウトして残されていた資料をまとめながら、不安げにミツキが訊ねる

「どういう使い方をするかは想像もできないが……今は渡すしかあるまい」
「問題は、彼女が取引を守るかどうかですが」
「取引に応じても沙々耶が助かるかはわからない。だが、応じなければ確実に助からないという事だ」
「最悪の想定ですが、既に……その……」
「だとしても、現状では応じるしかない。それに……彼女を都市伝説に抗えないただの人間にしたのは、ボクだ」

 重苦しい雰囲気の中
 とたとたと軽い足音が階段から聞こえてくる
 ヴィッキーが踏み込んできたのかと警戒した一同だが、現れたのはメイ

「ドクター、お話、ある、です」

 長い髪のせいで表情は読めないが、その声からだけでも緊張で強張った雰囲気が伝わってくる

「沙々耶、取り戻す、わたし、行く、です」

 ヴィッキーが指定した同行者は、戦闘力が無いドクターかメイ
 ドクターは当然ながら自ら出向くつもりではいたのだが

「却下だ。君を危険な目に遭わせるわけにはいかない」
「ドクター、もっと、ダメ、です。たくさん、考える、できる、偉い人、お話、できる、残る、いい、です」

 例え沙々耶とメイに何かあったとしても、ドクターなら『第三帝国』の上層部や他の組織と連携が取れる
 救出の算段を立てるにしても、ヴィッキーの何らかの行動を阻止するにしても、その方が圧倒的に行動の幅が広いのだ

「上手く、やる、必要、です。子供、危険、関係ない、です。それに」

 ぶわり、と
 メイの自らの背丈ほどもある髪が、ざわめいたようにすら見えた

「沙々耶、友達、です。酷い事、する……許す、できない、です」

 その小さい手で、ドクターの手をきゅっと握り締め

「沙々耶、助ける、絶対、です。私、負けない、ですよ」

 目元を覆う前髪の隙間から覗いたその瞳は
 怨念か呪詛にも似た怒りの炎が揺らめいているようにも見えた


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