【上田明也の協奏曲17~明也怪犬ヲ撃之事~】
アメリカでの事件から一週間後。
俺は学校町に帰ってきていた。
ちょうどこれから笛吹探偵事務所に帰り、明日真を驚かせてやるつもりなのだ。
二週間したら帰ると伝えてあるので予定より早く帰ってくればきっとあいつは驚くに違いない。
俺は学校町に帰ってきていた。
ちょうどこれから笛吹探偵事務所に帰り、明日真を驚かせてやるつもりなのだ。
二週間したら帰ると伝えてあるので予定より早く帰ってくればきっとあいつは驚くに違いない。
「なぁ委員長、本当に行くのか?」
「ああ、そうだ。今回はお前を連れて行かないと意味が無い。」
「ああ、そうだ。今回はお前を連れて行かないと意味が無い。」
俺の隣を歩く美人さんは明日晶。
この学校町を守る正義の味方明日真の姉である。
俺の友人だ。
この学校町を守る正義の味方明日真の姉である。
俺の友人だ。
「まったく、なんだって言うんだよ解らないなあ?
急に『一緒に来い!』って……いやまあ帰りは都市伝説で良いかもしれないけどさあ。
一体何を考えて居るんだ。」
「まあ来れば解るよ。それよりも二人で並んで歩いているとカップルに見えないか?」
「だからどうしたって言うのさ、まったくもう……。」
急に『一緒に来い!』って……いやまあ帰りは都市伝説で良いかもしれないけどさあ。
一体何を考えて居るんだ。」
「まあ来れば解るよ。それよりも二人で並んで歩いているとカップルに見えないか?」
「だからどうしたって言うのさ、まったくもう……。」
俺はこの縁薄い姉弟を偶には引き合わせてやろうかと思っていたのである。
お互い、急に会わされたらさぞかし驚くに違いない。
俺は悪い人間なので他人を驚かせたりするのが大好きなのだ。
赤く赤く西日に染まる学校町。
夕暮れの陽の光は俺と晶の間を吹き抜ける風さえも紅色に染め上げていくようだった。
お互い、急に会わされたらさぞかし驚くに違いない。
俺は悪い人間なので他人を驚かせたりするのが大好きなのだ。
赤く赤く西日に染まる学校町。
夕暮れの陽の光は俺と晶の間を吹き抜ける風さえも紅色に染め上げていくようだった。
「其処のお二人さん、赤いマントは欲しいかい?青いマントは欲しいかい?」
そんな美しい風景を楽しみながら歩いていると後ろから声をかけられた。
そんな美しい風景を楽しみながら歩いていると後ろから声をかけられた。
「どう思う、我が友、明日晶。」
「赤マントでしょ?良く居るじゃん、無視すれば良い。」
「そうだな、学校町じゃあ良くあることだ。」
「赤マントでしょ?良く居るじゃん、無視すれば良い。」
「そうだな、学校町じゃあ良くあることだ。」
まったく、風流に夕暮れを楽しむ男女に襲いかかる都市伝説だなんて無粋極まりない。
そんなのを相手にするくらいだったら、俺は目の前の友人との大切な時間を楽しみたい。
みんなそう思う筈だ。
そんなのを相手にするくらいだったら、俺は目の前の友人との大切な時間を楽しみたい。
みんなそう思う筈だ。
「そこのお二人さん、赤いマントは要らないのか?青いマントは要らないのか?」
「そういやお前の弟に誕生日プレゼントくれてやったぜ?」
「一時は殺そうとしていたのにずいぶん優しいねえ。」
「だって、お前の弟じゃん。皆勘違いしているが俺は身内には優しい。
いいや、優しいを通り越して甘いね。」
「さっすがイインチョー、俺の周りに居る人間は傷つけさせないってかい?
週刊少年ジャンプの主人公じゃないんだから。」
「そういやお前の弟に誕生日プレゼントくれてやったぜ?」
「一時は殺そうとしていたのにずいぶん優しいねえ。」
「だって、お前の弟じゃん。皆勘違いしているが俺は身内には優しい。
いいや、優しいを通り越して甘いね。」
「さっすがイインチョー、俺の周りに居る人間は傷つけさせないってかい?
週刊少年ジャンプの主人公じゃないんだから。」
明日はそう言うとキャラキャラと笑う。
ああ、そうだ。
やっぱりこいつは笑うと綺麗だ。
ああ、そうだ。
やっぱりこいつは笑うと綺麗だ。
「あんた達!マントは………!」
「ああ、そうだ、明日。」
「ん、どうした?」
「そういえばお前の誕生日も近かったな。誕生日プレゼントならくれてやるぜ?」
「そいつぁ良いや、委員長のセレクトするプレゼントは外れないからね。」
「ああ、そうだ、明日。」
「ん、どうした?」
「そういえばお前の誕生日も近かったな。誕生日プレゼントならくれてやるぜ?」
「そいつぁ良いや、委員長のセレクトするプレゼントは外れないからね。」
俺のプレゼントが外れないのではない。
相手が確実に使う物だけプレゼントすれば良いのだ。
例えば学生だったら高級文房具とか、社会人でも……まあ同じか。
ただし、相手が何かのプロって場合はその仕事で直接使わない物の方が良い。
仕事関係の物は誰だって自分で選びたいだろう?
あとは自分の趣味で選んだら駄目ってことかな?
以上、上田君の迷惑されないプレゼント講座。
相手が確実に使う物だけプレゼントすれば良いのだ。
例えば学生だったら高級文房具とか、社会人でも……まあ同じか。
ただし、相手が何かのプロって場合はその仕事で直接使わない物の方が良い。
仕事関係の物は誰だって自分で選びたいだろう?
あとは自分の趣味で選んだら駄目ってことかな?
以上、上田君の迷惑されないプレゼント講座。
「あの、本当に赤いマントは要らないのかなぁ……?」
「友達だからな。」
「あくまで友達か?こんな良い女捕まえておいて。」
「捕まえたらコレクションする趣味なの。」
「知ってる、悪趣味だよねー。ドン引きするわ。」
「そう言いながらも友達づきあいしてくれるのはお前だけだよ。」
「感謝したまえ。」
「こいつぅー!」
「友達だからな。」
「あくまで友達か?こんな良い女捕まえておいて。」
「捕まえたらコレクションする趣味なの。」
「知ってる、悪趣味だよねー。ドン引きするわ。」
「そう言いながらも友達づきあいしてくれるのはお前だけだよ。」
「感謝したまえ。」
「こいつぅー!」
そんな馬鹿なことを言って二人で笑い続ける。
まるで長年話していなかった時間をゆっくり埋めていくように。
まるで長年話していなかった時間をゆっくり埋めていくように。
「お、紳士・友美じゃねーか。」
「あ、紳士・笛吹。また新しい彼女か?」
「違うよ、小学校からの友達……違うな、中学校の時からの親友だ。
名前は明日晶。」
「……前ニュースでやっていたな、女性のプロレーサーだっけか。」
「そうそう。」
「こんにちわ、友美ちゃんっていうのかな?」
「あ、紳士・笛吹。また新しい彼女か?」
「違うよ、小学校からの友達……違うな、中学校の時からの親友だ。
名前は明日晶。」
「……前ニュースでやっていたな、女性のプロレーサーだっけか。」
「そうそう。」
「こんにちわ、友美ちゃんっていうのかな?」
どういう仲なんだ?
と小声で聞かれた。
決していやらしい仲じゃなくてそこには変態同士の純粋な魂の交流が在っただけである。
と、弁解した。
どうやら納得してくれたようだ。
と小声で聞かれた。
決していやらしい仲じゃなくてそこには変態同士の純粋な魂の交流が在っただけである。
と、弁解した。
どうやら納得してくれたようだ。
「ところで紳士・笛吹、君たちがさっきから連れている赤いマントの男は何者だ?」
「ああ、赤マント。野生なんだけど俺達に襲いかかろうとして居るみたい。」
「そいつぁ災難だったね。」
「どっちが?」
「さぁ?」
「ああ、赤マント。野生なんだけど俺達に襲いかかろうとして居るみたい。」
「そいつぁ災難だったね。」
「どっちが?」
「さぁ?」
やれやれ、俺みたいな人畜無害な好青年に襲いかかる赤マントは不幸なのか。
「友美ちゃん、笛吹って……?」
「あ、それ俺の偽名。」
「やっぱりそうか、笛吹さんの正体って何なんだろうなあ?」
「あ、それ俺の偽名。」
「やっぱりそうか、笛吹さんの正体って何なんだろうなあ?」
明日は狐に摘まれたような顔をしていた。
友美と分かれると探偵事務所はもうすぐそこだった。
「赤いマントは欲しいか?」
「ねー、どこまでも付いてくるよこいつ?」
先に明日が文句を言い出した。
まあ確かにこいつはうるさい。
「赤いマントは欲しいか?」
「ねー、どこまでも付いてくるよこいつ?」
先に明日が文句を言い出した。
まあ確かにこいつはうるさい。
「俺さ、実は最近、一つ欲しい物有るんだよね。」
「え、何々?」
「いや、こいつの命。」
「え、何々?」
「いや、こいつの命。」
「――――――――――――え?」
一瞬だけ甲高い金属音が響く。
赤マントが最後に見た風景が何だったのか俺は解らない。
殺人鬼というのは被害者にとっては常に意味不明の存在で居なければならない以上、
……お互い解り合えなくても良かったのだと思う。
食肉処理される豚の気持ちなんて誰も理解しようとしないだろ?
赤マントが最後に見た風景が何だったのか俺は解らない。
殺人鬼というのは被害者にとっては常に意味不明の存在で居なければならない以上、
……お互い解り合えなくても良かったのだと思う。
食肉処理される豚の気持ちなんて誰も理解しようとしないだろ?
「暴力は良くないよ!」
「ごめんごめん、五月蠅かったから。」
「まったく、その程度で殺すのかい。」
「だってお前……、夏場の蠅は五月蠅いだろう?だから殺す。」
「あれ?季節が合ってないよ?」
「五月ってのは旧暦だ。」
「ああ!それなら季節が合うね!」
「ちょっと賢くなっただろ?」
「ごめんごめん、五月蠅かったから。」
「まったく、その程度で殺すのかい。」
「だってお前……、夏場の蠅は五月蠅いだろう?だから殺す。」
「あれ?季節が合ってないよ?」
「五月ってのは旧暦だ。」
「ああ!それなら季節が合うね!」
「ちょっと賢くなっただろ?」
それからまたしばらく歩くとやっと探偵事務所の前に辿り着いた。
歩くと時間がかかってしょうがない。
歩くと時間がかかってしょうがない。
「俺の車使えば良かったなあ。」
「車?何使っているの?」
「フィアット500の初期型。ルパンザサードだぜ?」
「じゃあ私は次元かしら?」
「不二子ちゅわんじゃねえのか?」
「あら、私達友達じゃないのかい?」
「車?何使っているの?」
「フィアット500の初期型。ルパンザサードだぜ?」
「じゃあ私は次元かしら?」
「不二子ちゅわんじゃねえのか?」
「あら、私達友達じゃないのかい?」
やれやれだ。
そう思って天を仰ぐ。
すると視界の中に明らかな異常を見つける。
そう思って天を仰ぐ。
すると視界の中に明らかな異常を見つける。
「ありゃ、なんだ?」
「え?」
「え?」
黒い、尾のない犬。
「何も居ないじゃないか。」
「え?今確かに其処にいた……。」
「え?今確かに其処にいた……。」
確かにいつの間にか視界から居なくなっている。
これはおかしい。
その上あの犬は最近学校町で騒ぎを起こしているという悪魔の囁きに関連した犬じゃなかろうか。
これはおかしい。
その上あの犬は最近学校町で騒ぎを起こしているという悪魔の囁きに関連した犬じゃなかろうか。
「明日、俺ちょっと面白い事件見つけたかもしれない。
お前帰ってて!」
「帰っててぇ?事務所に?
…………ああ、そういうことね。
昔を思い出すよ。じゃあ先に行ってるぜ。」
お前帰ってて!」
「帰っててぇ?事務所に?
…………ああ、そういうことね。
昔を思い出すよ。じゃあ先に行ってるぜ。」
明日はやれやれと言った顔で探偵事務所のビルを登っていった。
俺と明日は中学生の頃、良く二人でつるんでいた。
お前帰ってて、というのはその時に遊びで作った符号だったりする。
ちなみに意味は【あとで迎えに来て】である。
懐かしいなあ、子供の頃の遊びが役に立つなんて。
俺はその尾無し犬を追いかけることに決めた。
俺と明日は中学生の頃、良く二人でつるんでいた。
お前帰ってて、というのはその時に遊びで作った符号だったりする。
ちなみに意味は【あとで迎えに来て】である。
懐かしいなあ、子供の頃の遊びが役に立つなんて。
俺はその尾無し犬を追いかけることに決めた。
「はっはっは、待て待てワンコロ!」
ほほえましく愛犬と戯れる青年の演技をしながら黒い尾無し犬を追いかける。
犬はまるで俺を誘うかのようにどんどんどんどん人気のない路地裏に入っていった。
そこにはどうも麻薬―――コークロア―――にやられたような顔をした男達がたむろしている。
男達、というのは不適切だ。
わりと老若男女である。
犬はまるで俺を誘うかのようにどんどんどんどん人気のない路地裏に入っていった。
そこにはどうも麻薬―――コークロア―――にやられたような顔をした男達がたむろしている。
男達、というのは不適切だ。
わりと老若男女である。
「なんだ?ワンコロの癖に俺を罠で嵌めようというのか?」
「ワン!」
「ワン!」
その尾無し犬は一声だけ吠えた。
次の瞬間だった。
そこら辺でゴロゴロしていた人々が急に目を輝かせて俺に襲いかかってきたのだ。
襲いかかってきたのだ……が。
そこら辺でゴロゴロしていた人々が急に目を輝かせて俺に襲いかかってきたのだ。
襲いかかってきたのだ……が。
「危ないじゃねえか。」
哀れなコークロア被害者の膝関節に向けて銃弾を撃ち込む。
幾ら麻薬で痛覚が麻痺していようとも間接を破壊されれば立つことすらままならない。
幾ら麻薬で痛覚が麻痺していようとも間接を破壊されれば立つことすらままならない。
「なんだよワンコロ、これで俺を殺そうとしていたのか?」
「わん!わん!」
黒い犬のそれにしては可愛らしい声が聞こえる。
「なんだ可愛いなお前、家で飼ってやろうかこんちくしょーめ。」
「わん!わん!」
黒い犬のそれにしては可愛らしい声が聞こえる。
「なんだ可愛いなお前、家で飼ってやろうかこんちくしょーめ。」
「わん!わんわん!」
「わぉーん!」
「ワワワワワッワン!」
「わぉーん!」
「ワワワワワッワン!」
あれ?いつの間にこれだけの数の犬が居たんだ?
基本的に狭い路地裏だ。
犬なんてそれ程沢山入ってこられる物でもない。
だが、その路地裏に犬たちが大量に集まり始めていた。
俺は犬の群に囲まれていた。
基本的に狭い路地裏だ。
犬なんてそれ程沢山入ってこられる物でもない。
だが、その路地裏に犬たちが大量に集まり始めていた。
俺は犬の群に囲まれていた。
「ふむ、クールトーというだけあって他の犬を操る能力はある訳か。」
説明しよう。
クールトーはハーメルンの笛吹きより少し後にヨーロッパに姿を現した都市伝説だ。
知名度は日本に於いてはそれ程ではないがフランスなどヨーロッパに於いてはそこそこである。
内容であるがこれは群を率いて人間に襲いかかりまくったというとても単純な物だ。
勿論それだけならば只の人食い狼だったのであろうが、
尾が半分切れているという外見的な特徴や、
当時のヨーロッパには銃なども無く、狼への対抗手段が無かったこと、
圧倒的なまでの数の狼を鮮やかに指揮してみせたことから、
魔王と呼ばれ都市伝説として扱われるようになったらしい。
クールトーはハーメルンの笛吹きより少し後にヨーロッパに姿を現した都市伝説だ。
知名度は日本に於いてはそれ程ではないがフランスなどヨーロッパに於いてはそこそこである。
内容であるがこれは群を率いて人間に襲いかかりまくったというとても単純な物だ。
勿論それだけならば只の人食い狼だったのであろうが、
尾が半分切れているという外見的な特徴や、
当時のヨーロッパには銃なども無く、狼への対抗手段が無かったこと、
圧倒的なまでの数の狼を鮮やかに指揮してみせたことから、
魔王と呼ばれ都市伝説として扱われるようになったらしい。
「来たまえよわんこ、魔王と呼ばれてたんだろう?
魔王なら悪魔の一人や二人、簡単に狩って、仲間の腹を満たしてやれ。」
魔王なら悪魔の一人や二人、簡単に狩って、仲間の腹を満たしてやれ。」
面白そうだ。
思わず挑発してしまった。
自分の口角がつり上がっているのが解る。
だが、クールトーは俺の予想しない動きを見せた。
思わず挑発してしまった。
自分の口角がつり上がっているのが解る。
だが、クールトーは俺の予想しない動きを見せた。
「――――――Bow!」
一声だけ高く吠えると犬たちが一斉にこちらへ駆け寄る。
しかし狙いは俺ではない。
俺が足を撃って動きを止めておいたコークロア中毒者たちだ。
「そいつらは関係無いだろうがよ。」
そう呟いたが聞いてくれる様子も道理もない。
俺の目の前で哀れな被害者は肉片に変えられていった。
しかし狙いは俺ではない。
俺が足を撃って動きを止めておいたコークロア中毒者たちだ。
「そいつらは関係無いだろうがよ。」
そう呟いたが聞いてくれる様子も道理もない。
俺の目の前で哀れな被害者は肉片に変えられていった。
「まったく、自分がやると大して気にならないのに他の奴がやっているのを見ると、
――――――――――――えっぐいねえ。」
――――――――――――えっぐいねえ。」
だが、狼の王は俺にそう言った感傷に浸る時間も与えてくれなかった。
その漆黒の巨体は軽々と空を駆けて、俺の元に突っ込んでくる。
その漆黒の巨体は軽々と空を駆けて、俺の元に突っ込んでくる。
「――――――迅い!」
ギリギリの所で蜻蛉切による迎撃を成功させるが、それは奴の攻撃の軌道を変えさせたに過ぎなかった。
そのおかげで攻撃は俺を外れたのだが……、今の一撃を躱すとは大した奴だ。
そのおかげで攻撃は俺を外れたのだが……、今の一撃を躱すとは大した奴だ。
「剣戟じゃあお前には届かないか。」
「だが、人間様の武器はそれだけじゃない。」
「だが、人間様の武器はそれだけじゃない。」
何時も着ている臙脂色のコートからショットガンを素早く取り出した。
クールトーの顔がそりゃあねえよ、と言っているように見える。
殺人鬼たるものありとあらゆる殺し方ができるように常に準備しておく物だ。
クールトーの顔がそりゃあねえよ、と言っているように見える。
殺人鬼たるものありとあらゆる殺し方ができるように常に準備しておく物だ。
「なぁわんころ、線や点を回避できるとして、面攻撃は回避できるか?」
BANG!BANG!BANG!
「キャインキャイン!」
他の犬たちに流れ弾が当たり、脅えて逃げ出していく。
まあちょっと痛い思いしただろうが俺は犬嫌いなのでむしろちょっと楽しい。
操作系の能力である以上、やはりこういう衝撃によって操作が解除されてしまうのだろう。
他の犬たちに流れ弾が当たり、脅えて逃げ出していく。
まあちょっと痛い思いしただろうが俺は犬嫌いなのでむしろちょっと楽しい。
操作系の能力である以上、やはりこういう衝撃によって操作が解除されてしまうのだろう。
「躱したか?」
俺はショットガンにリロードをしながらクールトーの方を見る。
俺はショットガンにリロードをしながらクールトーの方を見る。
グルル……、と低くうなり声をあげて俺の方向を睨む。
その四肢からは赤い血が流れていた。
その四肢からは赤い血が流れていた。
「なんだ、意外とやるじゃないか。」
クールトーはショットガンを耐えきっていた。
ちゃんと頭を狙いながらえぐい疵痕が残るように計算して撃ったのにかすり傷に抑えている。
ちゃんと頭を狙いながらえぐい疵痕が残るように計算して撃ったのにかすり傷に抑えている。
「まあその傷なら動けないだろ。
おれが止めを……。」
おれが止めを……。」
次の瞬間だった。
黒い影が走る。
服の袖に隠していたコンバットナイフでそれをなんとか切り払う。
黒い影が走る。
服の袖に隠していたコンバットナイフでそれをなんとか切り払う。
勝負は一瞬だった。
気付くと俺の首から真っ赤な血が流れ出ていた。
いつの間にかクールトーが―――なんとまだ息がある―――俺の後ろで崩れ落ちている。
心臓に大穴が開いているし、四肢もズタズタだ、もう駄目だろう。
気付くと俺の首から真っ赤な血が流れ出ていた。
いつの間にかクールトーが―――なんとまだ息がある―――俺の後ろで崩れ落ちている。
心臓に大穴が開いているし、四肢もズタズタだ、もう駄目だろう。
「あの傷で動きやがった!?」
サンジェルマンから貰った傷薬で素早く血を止める。
止めてもまだジワジワと流れ出てくる。
どうやら動脈をやられたらしい。
止めてもまだジワジワと流れ出てくる。
どうやら動脈をやられたらしい。
「ふむ、私の犬が世話になったようだな。」
ざわり、と悪寒が走る。
先程まであんなにも熱く火照っていた身体が今はこんなにも冷たい。
これが、人間が持てる気配なのか?こんなの人間の醸し出す雰囲気ではない。
先程まであんなにも熱く火照っていた身体が今はこんなにも冷たい。
これが、人間が持てる気配なのか?こんなの人間の醸し出す雰囲気ではない。
「誰だ?」
「私の名前は朝比奈、……まあこれ以上名乗る必要は無いか。」
「私の犬、……あんたがここの所の騒ぎの原因か。おかげで俺はお仕事大繁盛だ。
正直言ってお礼を言いたかった所だよ。」
「はっはっはっは、面白いことを言う。」
「私の名前は朝比奈、……まあこれ以上名乗る必要は無いか。」
「私の犬、……あんたがここの所の騒ぎの原因か。おかげで俺はお仕事大繁盛だ。
正直言ってお礼を言いたかった所だよ。」
「はっはっはっは、面白いことを言う。」
一瞬。
一瞬だけ奴の影に翼が見えた。
気のせいか?
そんな馬鹿なこと有ってはいけない。
一瞬だけ奴の影に翼が見えた。
気のせいか?
そんな馬鹿なこと有ってはいけない。
「笛吹丁、腕の良い探偵だそうだな。
副業で都市伝説狩りもやっているそうじゃないか。」
「ああ、お前の出した悪魔の囁きの哀れな被害者も大分……始末しました。」
「もっとハッキリ言えば良い。」
「ハッキリ言ったら情緒が無い。」
「ふん………。」
「ははは……。」
副業で都市伝説狩りもやっているそうじゃないか。」
「ああ、お前の出した悪魔の囁きの哀れな被害者も大分……始末しました。」
「もっとハッキリ言えば良い。」
「ハッキリ言ったら情緒が無い。」
「ふん………。」
「ははは……。」
一々、すごいプレッシャーだ。
気圧されないように戯れ言を繰るだけで精一杯というところか。
気圧されないように戯れ言を繰るだけで精一杯というところか。
「お前、私に雇われないか?」
「断る。」
「冗談だ、本気になるな。……だが理由は聞こう。」
「負ける方にはつかないのがプロの探偵だ。」
「私が、負ける?何にだ。」
「そりゃあ、あんた。あれですよ。この学校町に集う正義の心にですよ、……なんつって。」
「断る。」
「冗談だ、本気になるな。……だが理由は聞こう。」
「負ける方にはつかないのがプロの探偵だ。」
「私が、負ける?何にだ。」
「そりゃあ、あんた。あれですよ。この学校町に集う正義の心にですよ、……なんつって。」
「正義ね、お前のような人間が語るか?」
「俺だから語れるんだよ、俺にしか語れないんだよ。
あんた、負けるぜ。勝負しようとするから絶対負ける。」
「下らないな、『勝利して、支配する。』それで十分ではないか?」
「やだやだ、これだからお偉いさんってのは嫌なんだ。
偉くなろうが何しようが夕日と血の赤は変わらないぜ。」
「まあ良い、似た類の人間だと思っていたが見込み違いだった。
不要ならば――――――壊す。」
「俺だから語れるんだよ、俺にしか語れないんだよ。
あんた、負けるぜ。勝負しようとするから絶対負ける。」
「下らないな、『勝利して、支配する。』それで十分ではないか?」
「やだやだ、これだからお偉いさんってのは嫌なんだ。
偉くなろうが何しようが夕日と血の赤は変わらないぜ。」
「まあ良い、似た類の人間だと思っていたが見込み違いだった。
不要ならば――――――壊す。」
瞬間、一陣の烈風が互いの間を貫いた。
BANG!BANG!
先程尾無し犬を傷つけたショットガンを二発ほど発射する。
BANG!BANG!
先程尾無し犬を傷つけたショットガンを二発ほど発射する。
「この銃はレミントンM31という散弾銃だ。
1931年にレミントン社がM29の後継機として開発された物でポンプアクション方式となっている。
第二次世界大戦に於いてはアメリカ軍に採用されて活躍したが、1950年代にはその後継機であるM870に出番を奪われた。
日本に於いては1980年代のテレビドラマ『西部警察』で渡哲也が使用していたことで人気になった。
まあなんだ、とりあえず吹っ飛べ!」
1931年にレミントン社がM29の後継機として開発された物でポンプアクション方式となっている。
第二次世界大戦に於いてはアメリカ軍に採用されて活躍したが、1950年代にはその後継機であるM870に出番を奪われた。
日本に於いては1980年代のテレビドラマ『西部警察』で渡哲也が使用していたことで人気になった。
まあなんだ、とりあえず吹っ飛べ!」
鉄の雨は容赦無く朝比奈を襲う。
これで奴も少しはひるんで……居ない。
これで奴も少しはひるんで……居ない。
「ふむ、少し賢くなったよ。」
「傷一つ無い!?」
「傷一つ無い!?」
俺はショットガンを迷わず捨てると背中を向けて逃げ出す振りをして袖口から手榴弾を取り出す。
ピンを素早く外すと追いかけようとした朝比奈の進路にそれを置いた。
ピンを素早く外すと追いかけようとした朝比奈の進路にそれを置いた。
光と爆発の炎が辺りを包む。
一応そこそこに威力が有る物を使った筈だ。
一応そこそこに威力が有る物を使った筈だ。
「なんだ、今のは?
どこから出した?」
どこから出した?」
朝比奈、そう名乗った男は手榴弾の直撃を受けて尚無傷だった。
いや、爆風を喰らって少し蹌踉めいてはいたのだが、その熱では何のダメージも受けていないらしい。
いや、爆風を喰らって少し蹌踉めいてはいたのだが、その熱では何のダメージも受けていないらしい。
「企業秘密なので……お答えしかねますっと!」
身体の傷が癒えていないことを利用して付喪神を発動させる。
ナイフを一つ、勢い良く投げつけた。
だがそれも簡単に受け止められる。
ナイフを一つ、勢い良く投げつけた。
だがそれも簡単に受け止められる。
「またか。武器を召喚する類の都市伝説なのか?」
まさかである。
全部俺の服の内側に隠していただけだ。
全部俺の服の内側に隠していただけだ。
「これで玩具は終わりか?ならば私から行くぞ。」
地面を蹴って朝比奈は駆けだした。
異様に鋭利な爪が腹に突き刺さる。
あまりの勢いに俺の身体は簡単に吹き飛ばされてしまった。
あまりの勢いに俺の身体は簡単に吹き飛ばされてしまった。
「が……!なんつー速さだ!」
「ん?腹を貫いたつもりだったが……。」
「……わりと死ににくい都市伝説と契約していてね。」
「ふむ。」
「意外と似たタイプの都市伝説使いとお見受けする。」
「ん?腹を貫いたつもりだったが……。」
「……わりと死ににくい都市伝説と契約していてね。」
「ふむ。」
「意外と似たタイプの都市伝説使いとお見受けする。」
確かに、俺の腹は今の今程まで深く大きな穴が開いていた。
だがこちらもハーメルンの笛吹きという悪魔と契約しているのだ。
簡単な傷では致命傷にはなり得ない。
だがこちらもハーメルンの笛吹きという悪魔と契約しているのだ。
簡単な傷では致命傷にはなり得ない。
「小癪な奴だ。」
「小粋な奴と言って貰いたい物だ。」
「小粋な奴と言って貰いたい物だ。」
銃器も効かない。
爆発物も効かない。
都市伝説による攻撃も効かない。
異常な防御力、特に炎への耐性。
鋭利な爪。
一瞬影に映った翼。
爆発物も効かない。
都市伝説による攻撃も効かない。
異常な防御力、特に炎への耐性。
鋭利な爪。
一瞬影に映った翼。
「それよりも今のやりとりでお前の都市伝説解ったぜ。」
「解った所で何にもなるまい。」
「いいや、正体さえわかれば俺に勝ち目はある。そういうタイプの都市伝説なら尚のことだ。」
「解った所で何にもなるまい。」
「いいや、正体さえわかれば俺に勝ち目はある。そういうタイプの都市伝説なら尚のことだ。」
俺は腰に差した蜻蛉切を抜きはなって朝比奈に向けた。
「だからなんだ?お前の今の装備では俺には勝てない。」
「探偵(オレ)は勝つ。お前は負ける。探偵小説のセオリーだ。
謎を解明されたら犯人は負けを認めなきゃ駄目だぜい。」
「一生言っていろ。」
「探偵(オレ)は勝つ。お前は負ける。探偵小説のセオリーだ。
謎を解明されたら犯人は負けを認めなきゃ駄目だぜい。」
「一生言っていろ。」
朝比奈は息をゆっくりと吸い込む。
俺は刀を腰の鞘に収めて蜻蛉切の指示に身体を完全に任せた。
蜻蛉切―――村正妖刀は俺に最高の刀の使い方を伝えてくれる。
その中の一つに、最高の居合は最高の脱力から生まれるという物が有った。
集中の対岸。
緊張させるのではなく極限の弛緩。
その落差の大きさが大きければ大きいほどに爆発的な破壊力を刀は生み出す。
もっと力を抜け。
求められているのは箸ですら重いと感じるほどの脱力。
だが、今の俺にはそれですらまだ足りない。
俺は刀を腰の鞘に収めて蜻蛉切の指示に身体を完全に任せた。
蜻蛉切―――村正妖刀は俺に最高の刀の使い方を伝えてくれる。
その中の一つに、最高の居合は最高の脱力から生まれるという物が有った。
集中の対岸。
緊張させるのではなく極限の弛緩。
その落差の大きさが大きければ大きいほどに爆発的な破壊力を刀は生み出す。
もっと力を抜け。
求められているのは箸ですら重いと感じるほどの脱力。
だが、今の俺にはそれですらまだ足りない。
「村正、俺の身体と心を使って貰うぞ……!」
そう呟くと脳髄を握りしめられたような苦痛と全身の毛穴からの流血が始まる。
意識が遠のく。
だがそれで良い。
その状態に置いてこそ村正は最高の切れ味を発揮する。
そしてさらに意識が薄くなっていけば行くほどに付喪神は本来の力を発揮する。
神は無意識に宿る。
俺が意識を無くし、身体を痛めつけるごとに、村正には確りと付喪神が宿る。
意識が遠のく。
だがそれで良い。
その状態に置いてこそ村正は最高の切れ味を発揮する。
そしてさらに意識が薄くなっていけば行くほどに付喪神は本来の力を発揮する。
神は無意識に宿る。
俺が意識を無くし、身体を痛めつけるごとに、村正には確りと付喪神が宿る。
風がながれる。
空は静かだ。
命は短い。
一瞬は長い。
アスファルトは冷たい。
血潮は熱い。
大気が乱れる。
あの男が近くで何か言っているようだ
炎が目の前で揺れる。
一度振るえば焔が割れる。
二度振るえば大地が割れる。
三度振るえば――――――――――――――――――!
空は静かだ。
命は短い。
一瞬は長い。
アスファルトは冷たい。
血潮は熱い。
大気が乱れる。
あの男が近くで何か言っているようだ
炎が目の前で揺れる。
一度振るえば焔が割れる。
二度振るえば大地が割れる。
三度振るえば――――――――――――――――――!
「そうあれかしと叫んで切れば………。」
「――――――なっ!?」
「世界はスルリと片付き申す。」
「――――――なっ!?」
「世界はスルリと片付き申す。」
全身に走る激痛。
遠のいていく意識が一気に現実に引き戻される。
遠のいていく意識が一気に現実に引き戻される。
「私の身体を……斬った!」
「その傷、そう簡単に治ると思うなよ?」
「その傷、そう簡単に治ると思うなよ?」
「おのれ……!これで止めだ!」
傷ついた身体とそれに生えている鱗を露わにしながら朝比奈は哮る。
どうやら俺は止めを刺し損ねたようだ。
真っ赤な炎が俺を包んだ。
持っていた爆弾がそれに合わせて爆発を始めた。
傷ついた身体とそれに生えている鱗を露わにしながら朝比奈は哮る。
どうやら俺は止めを刺し損ねたようだ。
真っ赤な炎が俺を包んだ。
持っていた爆弾がそれに合わせて爆発を始めた。
「やったか、手こずらせたな……。」
そう呟いて朝比奈は二つに裂けた自らの服、そして肉体を見る。
この程度の傷、普段の彼ならばすぐに治るのだが……。
この程度の傷、普段の彼ならばすぐに治るのだが……。
「村正とか言っていたな。燃やしたのは失敗だったか。」
上田明也が持てる心の力を尽くして放った一撃は、
確かに朝比奈の都市伝説によって鋼よりも強靱となった身体を切り裂いた。
しかも村正の妖刀によるダメージは確かに彼の身体をむしばんでいたのだ。
確かに朝比奈の都市伝説によって鋼よりも強靱となった身体を切り裂いた。
しかも村正の妖刀によるダメージは確かに彼の身体をむしばんでいたのだ。
「ああいう物があるならば私が手に入れても良かったんだがな。」
そう言って朝比奈は傷ついた身体を癒す為にその場を離れた。
彼の去った後、上田明也が倒れた跡には青白く燃える炎が何時までも残っていた。
彼の去った後、上田明也が倒れた跡には青白く燃える炎が何時までも残っていた。
「だ……か……ら……!
どうして何時も無理するのさ!
馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!
心配したじゃない!」
起き抜けに晶から殴られた。
どうやら俺はまだ生きているようだった。
どうして何時も無理するのさ!
馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!
心配したじゃない!」
起き抜けに晶から殴られた。
どうやら俺はまだ生きているようだった。
「所長、やっとこさ目を覚ましましたか。
あの状況から明日さんと私でなんとか助け出したんですよ?」
「おお、そうだったのかメル。」
あの状況から明日さんと私でなんとか助け出したんですよ?」
「おお、そうだったのかメル。」
どうやらメルも晶も俺のことを看ていてくれたようだ。
「所長、あまり女の子泣かせちゃ駄目ですよ?」
「ふん、それでもピンチになったら助けてくれるのが良い女なんだよ。
そして俺みたいな良い男には絶対に良い女が居てくれる物さ。」
またも晶に殴られた。
私男でも女でも無いですけどね、とメルには呆れられた。
「所長、あまり女の子泣かせちゃ駄目ですよ?」
「ふん、それでもピンチになったら助けてくれるのが良い女なんだよ。
そして俺みたいな良い男には絶対に良い女が居てくれる物さ。」
またも晶に殴られた。
私男でも女でも無いですけどね、とメルには呆れられた。
どうやら、しばらく二人には頭が上がらなさそうだ。
そのうちデザートバイキングにでも連れて行ってやろう。
そう思って俺は笑った。
また晶に殴られた。
【上田明也の協奏曲17~明也怪犬ヲ撃之事~fin】
そのうちデザートバイキングにでも連れて行ってやろう。
そう思って俺は笑った。
また晶に殴られた。
【上田明也の協奏曲17~明也怪犬ヲ撃之事~fin】