【上田明也の協奏曲22~それはそれは可愛らしい~】
「お兄ちゃん!」
「はっはっは、待て待て妹よ~!」
「はっはっは、待て待て妹よ~!」
前略、お父様お母様。
何か解らないけど妹が出来ました。
正体不明なので困っているのですが可愛いので良しとしたいと思います。
何か解らないけど妹が出来ました。
正体不明なので困っているのですが可愛いので良しとしたいと思います。
―――――――さて、事の発端は三十分ほど前にさかのぼる。
俺は遊園地で迷子になっていた。
正確に言うと迷子を捜していたせいで仲間達とはぐれてしまっていた。
だから俺は悪くない、二手に分かれて探そうとしたのも決して失敗ではなかった。
正確に言うと迷子を捜していたせいで仲間達とはぐれてしまっていた。
だから俺は悪くない、二手に分かれて探そうとしたのも決して失敗ではなかった。
そう、そして困った俺が辺りを歩き回っていると額から血を流した女の子が寝ているのを発見したのだ。
俺は迷うことなく少女に声をかけた。
でまあ今に至る。
俺は迷うことなく少女に声をかけた。
でまあ今に至る。
「ところで純ちゃん。」
「純で良いよお兄ちゃん!」
「純で良いよお兄ちゃん!」
うわっ、可愛い。
なんだこの可愛い生き物は!
そんな純粋そうな瞳でこっちを見ないでくれ!
俺は汚れた大人なんだ!
なんだこの可愛い生き物は!
そんな純粋そうな瞳でこっちを見ないでくれ!
俺は汚れた大人なんだ!
「一人で遊園地に来てお父さんとかお母さんは心配してないの?」
「お母さんには友達と遊園地に行くって言っているから大丈夫だよ!
お父さんはそもそも単身赴任中だからカンケ―無いし。」
「そうか……。」
「お母さんには友達と遊園地に行くって言っているから大丈夫だよ!
お父さんはそもそも単身赴任中だからカンケ―無いし。」
「そうか……。」
ふむ、一人で遊園地に来て気絶していた少女。
しかも、“何故か契約前の俺の存在”を覚えている。
すなわち彼女も契約者なのだろう。
ならば聞くことは一つ。
しかも、“何故か契約前の俺の存在”を覚えている。
すなわち彼女も契約者なのだろう。
ならば聞くことは一つ。
「あと純ちゃん、君が契約している都市伝説の名前を教えてくれないか?」
「えっ……?」
「えっ……?」
何故自分が契約者だと解ったのか不思議でしょうがないようだ。
まあ「他人の持つ自分の記憶」というハーメルンの笛吹きの契約コストが特殊すぎるだけではあるが。
まあ「他人の持つ自分の記憶」というハーメルンの笛吹きの契約コストが特殊すぎるだけではあるが。
「『兄妹の間で隠し事は無し』だと思うんだけどどうかな?」
「…………はい、私の私の都市伝説は『丑の刻参り』です。」
「なるほど、どんな能力?」
「えっと、対象に釘を当てることで運を奪います。」
「奪った運は自分の物として使えるの?」
「……はい。」
「よし、良い子だ。えらいえらい。このことはお兄ちゃんと純の間の秘密だよ。」
「えへへ……。」
「…………はい、私の私の都市伝説は『丑の刻参り』です。」
「なるほど、どんな能力?」
「えっと、対象に釘を当てることで運を奪います。」
「奪った運は自分の物として使えるの?」
「……はい。」
「よし、良い子だ。えらいえらい。このことはお兄ちゃんと純の間の秘密だよ。」
「えへへ……。」
頭を撫でると顔をほころばせる。
この様子だとどうやら今までの人生で寂しい思いをしてきたらしい。
丑の刻参りなんて都市伝説が寄りつく人間だ。
それも当然と言えば当然か。
この様子だとどうやら今までの人生で寂しい思いをしてきたらしい。
丑の刻参りなんて都市伝説が寄りつく人間だ。
それも当然と言えば当然か。
「それじゃあお礼にお兄ちゃんの契約する都市伝説も教えてあげよう。
お兄ちゃんの持つ都市伝説は『ハーメルンの笛吹き』だ。能力は童話の通り。
これも秘密、良いね?」
お兄ちゃんの持つ都市伝説は『ハーメルンの笛吹き』だ。能力は童話の通り。
これも秘密、良いね?」
純は黙って頷く。
「ねえ、お兄ちゃんって前ニュースでやってた殺人事件の……?」
「ああ、そうだよ。俺がその事件の犯人だ。これも秘密、できるね?
もしその秘密を大事な妹である純にばらされたらお兄ちゃんは生きていけないんだ。
い い よ ね ?」
「ああ、そうだよ。俺がその事件の犯人だ。これも秘密、できるね?
もしその秘密を大事な妹である純にばらされたらお兄ちゃんは生きていけないんだ。
い い よ ね ?」
純は俺の真意を測りかねているように眼をぱちくりさせている。
「そんなこと私に私に言って良いの?」
「ああ、だって“隠し事は無し”だろ?」
「あうぅ……、でも私は私はまだお兄ちゃんと会って少ししか経って…………」
「時間は関係ない、俺は純を信用できる人間だと判断した。
他ならぬ俺が信じる人間だから信じる。単純明快。」
「私を私を信じてくれるの?なんでそんなに心を許してくれるの?」
「逆に聞こう、“妹を信じない兄”が居るかい?」
「お兄ちゃん…………!」
「ああ、だって“隠し事は無し”だろ?」
「あうぅ……、でも私は私はまだお兄ちゃんと会って少ししか経って…………」
「時間は関係ない、俺は純を信用できる人間だと判断した。
他ならぬ俺が信じる人間だから信じる。単純明快。」
「私を私を信じてくれるの?なんでそんなに心を許してくれるの?」
「逆に聞こう、“妹を信じない兄”が居るかい?」
「お兄ちゃん…………!」
純は思い切り俺に抱きついてくる。危険は無いと判断して良いだろう。
さて、しめっぽい話とか腹の探り合いはここでお終い。
俺は携帯を取り出すと明日に連絡をかけた。
さて、しめっぽい話とか腹の探り合いはここでお終い。
俺は携帯を取り出すと明日に連絡をかけた。
「おいアキラ、橙つれて先に帰っててくれ。」
「は、何言っているの!?」
「ちょっと用事ができた、帰るの朝になるかもね。」
「ちょ、待て!お前迷子になった上に何処で何を…………」
「は、何言っているの!?」
「ちょっと用事ができた、帰るの朝になるかもね。」
「ちょ、待て!お前迷子になった上に何処で何を…………」
プチッ
通話終了。
さて、面白いことになりそうだ。
通話終了。
さて、面白いことになりそうだ。
「ところで純、何か乗りたい物は有るか?」
「んー、観覧車!」
「ははっ、良いだろう。お兄ちゃんに任せておけ!」
「んー、観覧車!」
「ははっ、良いだろう。お兄ちゃんに任せておけ!」
俺たちはひとまず観覧車に乗り込むことにした。
色々犯罪の香りがする図式の筈なのだが、係員は俺たち二人に何の反応も見せない。
……おかしい。
先ほど、気絶していた彼女に誰も気付かなかったことと言い、今の出来事と言い、
色々と不自然だ。
まるで自分が映画のモブキャラか何かになったように感じる。
いやそもそもだ、彼女と手をつないでから誰の視線も感じられないのだ。
これはどういうことだ?
彼女は俺に対して攻撃する気も何も無いことはハッキリ解っている。
俺はすでに彼女の心を把握している。
だとすれば、彼女自身がそういう体質なのか?
俺の心を読んだりする特技と同じ性質の物なのか?
あとでサンジェルマンに聞いてみるとしよう。
まずは彼女自身から情報を引き出すのが先だ。
色々犯罪の香りがする図式の筈なのだが、係員は俺たち二人に何の反応も見せない。
……おかしい。
先ほど、気絶していた彼女に誰も気付かなかったことと言い、今の出来事と言い、
色々と不自然だ。
まるで自分が映画のモブキャラか何かになったように感じる。
いやそもそもだ、彼女と手をつないでから誰の視線も感じられないのだ。
これはどういうことだ?
彼女は俺に対して攻撃する気も何も無いことはハッキリ解っている。
俺はすでに彼女の心を把握している。
だとすれば、彼女自身がそういう体質なのか?
俺の心を読んだりする特技と同じ性質の物なのか?
あとでサンジェルマンに聞いてみるとしよう。
まずは彼女自身から情報を引き出すのが先だ。
「そういえば純って昔から変わっているとか言われたりしない?」
「へ?なんで?」
「いや、お兄ちゃんもそうだったからなあ。一生懸命隠してたけど。」
「うーん、……そういえば。」
「へ?なんで?」
「いや、お兄ちゃんもそうだったからなあ。一生懸命隠してたけど。」
「うーん、……そういえば。」
何か思い当たる節が有るらしい。
「よいしょ、……と。」
何故か膝の上に乗られた。
観覧車の外の風景を見ながら純は語り始める。
観覧車の外の風景を見ながら純は語り始める。
「そういえば、だけど。
私は私は昔から目立たない子供だったの、異常なくらい目立たなかった。
仲良く遊んでいた友達も学校を卒業したら私を忘れていたし、
先生に名前を覚えて貰うのも一番最後だった。
ああ、あとお片付けが早くて良く褒められたっけ。
まあ終わったことにすら気付かれないことの方が多かったけど。」
「ふぅん……。」
「だからお兄ちゃんが私を私を覚えているって言ってくれた時はすごく嬉しかったんだよ。」
「ああ、そりゃあだって……」
私は私は昔から目立たない子供だったの、異常なくらい目立たなかった。
仲良く遊んでいた友達も学校を卒業したら私を忘れていたし、
先生に名前を覚えて貰うのも一番最後だった。
ああ、あとお片付けが早くて良く褒められたっけ。
まあ終わったことにすら気付かれないことの方が多かったけど。」
「ふぅん……。」
「だからお兄ちゃんが私を私を覚えているって言ってくれた時はすごく嬉しかったんだよ。」
「ああ、そりゃあだって……」
可愛い女の子は一度見たら絶対忘れないぜ!
「純みたいな可愛い子は一度見たら絶対忘れないぜ!」
兄弟の間で隠し事は無しなので思い切って言ってみた。
恥ずかしかったらしく胸をポカポカ叩かれた。
恥ずかしかったらしく胸をポカポカ叩かれた。
なるほど、彼女には収納・隠蔽の才能が有るらしい。
それにしてもだ、“しまって隠す”才能なんてあってもしょうがなさすぎる。
制御しきれてないなら尚のことだ。
人生というのは矢張り人前で輝いてこそ楽しいものじゃないか。
彼女は相当孤独な人生を送ってきたのだろう。
そしてその結果が、自分を見続けてくれる人を求める性格の歪み。
更に言えば人とふれあえない事による精神の成長拒否。
幼すぎる容姿も精神が肉体に影響を与えているのかも知れない。
まあそんなこと気にする他人など今まで彼女の周りには居なかったのだろうが。
それにしてもだ、“しまって隠す”才能なんてあってもしょうがなさすぎる。
制御しきれてないなら尚のことだ。
人生というのは矢張り人前で輝いてこそ楽しいものじゃないか。
彼女は相当孤独な人生を送ってきたのだろう。
そしてその結果が、自分を見続けてくれる人を求める性格の歪み。
更に言えば人とふれあえない事による精神の成長拒否。
幼すぎる容姿も精神が肉体に影響を与えているのかも知れない。
まあそんなこと気にする他人など今まで彼女の周りには居なかったのだろうが。
「ところで純は何処の高校に通っているんだ?」
「中央高校だよ。」
「ほう、ということは向坂や明日が居るのか。」
「中央高校だよ。」
「ほう、ということは向坂や明日が居るのか。」
明日と聞いた瞬間に一瞬緊張する。
あいつみたいな正義の味方は彼女のような異常者を排除したがるに違いない。
恐らく彼女も彼のことが苦手なのだろう。
あいつみたいな正義の味方は彼女のような異常者を排除したがるに違いない。
恐らく彼女も彼のことが苦手なのだろう。
「向坂って知っているか?」
「え、あ……、友達。」
「え、あ……、友達。」
セカイって狭いな……。
「そうか友達か……、あいつ俺の所で助手やってるんだよね。
そうだ、純。お前も探偵事務所の助手やらない?」
「良いよ!」
「お兄ちゃん返事の良い子は大好きだぜぇ。」
「わぁい!」
そうだ、純。お前も探偵事務所の助手やらない?」
「良いよ!」
「お兄ちゃん返事の良い子は大好きだぜぇ。」
「わぁい!」
とりあえずまた頭を撫でる。
何だろう、この娘すごく子犬に似ている気がする。
何だろう、この娘すごく子犬に似ている気がする。
「お兄ちゃんって向坂ちゃんと仲良いの?」
「ん?まあ事務所手伝って貰ってるし仲良いけど……。」
「ちょっと焼き餅焼いちゃうなあ……」
「何言っているんだ?俺の妹は純だけだぜ?純は特別だよ。」
「ホント?」
「ああ、勿論だ。嘘は吐かない。」
「ん?まあ事務所手伝って貰ってるし仲良いけど……。」
「ちょっと焼き餅焼いちゃうなあ……」
「何言っているんだ?俺の妹は純だけだぜ?純は特別だよ。」
「ホント?」
「ああ、勿論だ。嘘は吐かない。」
というか、多分あまり意味ない。
彼女の隠す才能が俺に意味をなさなかったように、俺の言語による操作能力も彼女には大して意味を持たない。
まあまったく効かないってことはあり得ないが使用は控えておこう。
彼女の隠す才能が俺に意味をなさなかったように、俺の言語による操作能力も彼女には大して意味を持たない。
まあまったく効かないってことはあり得ないが使用は控えておこう。
「で、次何処に行くよ?」
「うーん、その前にね。ちょっとついてきて欲しいな。」
「うーん、その前にね。ちょっとついてきて欲しいな。」
俺たちは観覧車から降りると休憩がてら飲み物を飲んでいた。
何故か人気の少ない方に少ない方に走り出す純。
最近の子は進んでいると言うがまさかまさかなのだろうか?
流石にそこまで展開が早い子はお兄ちゃんとしてきっちりしからなくてはいけない。
まあお兄ちゃんが好きすぎてもうこの場で思いをぶちまけたいってのは解らないでもないが……、
でもやっぱり兄としてはもうちょっと丁寧に相手のことを見定めて……
何故か人気の少ない方に少ない方に走り出す純。
最近の子は進んでいると言うがまさかまさかなのだろうか?
流石にそこまで展開が早い子はお兄ちゃんとしてきっちりしからなくてはいけない。
まあお兄ちゃんが好きすぎてもうこの場で思いをぶちまけたいってのは解らないでもないが……、
でもやっぱり兄としてはもうちょっと丁寧に相手のことを見定めて……
「ここなら良いかな?」
うわっ、まさか本当にそうなのか?
辺りには人っ子一人居ない。
こんな小さくて可愛い女の子と誰もいないところで二人っきりなんて興奮してくるじゃないか。
落ち着け俺、まずはこの猛り狂う己の情欲に打ち克って……!
辺りには人っ子一人居ない。
こんな小さくて可愛い女の子と誰もいないところで二人っきりなんて興奮してくるじゃないか。
落ち着け俺、まずはこの猛り狂う己の情欲に打ち克って……!
「ヤァッ!」
俺の妄想ゲージが振り切れるその絶妙なタイミングで、拝戸純は俺に向けて釘を投げた。
否、俺の後ろに向けて釘を投げた。
否、俺の後ろに向けて釘を投げた。
ドゴォン!
釘が掠ったとおぼしき街路樹が大きな音と共に倒れる。
どうやら彼女の投げる釘には物理的な威力も有るらしい。
釘が掠ったとおぼしき街路樹が大きな音と共に倒れる。
どうやら彼女の投げる釘には物理的な威力も有るらしい。
「其処にいるのは誰?」
純は俺の影に隠れたまま、街路樹の影をジッと見つめる。
「うわあ……ばれた、か。」
「貴方は貴方はだぁれかな?お兄ちゃんと私の大切な時間を邪魔しないで。」
「いや俺はただそこの笛吹って人に興味が有っただけで……。」
「……明日の知り合いか?」
「その通り、俺の名前は坂本、中央高校の風紀委員長。」
「ふむ、となると明日の上司みたいなもんか。」
「その通りだよ、笛吹ヒノトさん。」
「貴方は貴方はだぁれかな?お兄ちゃんと私の大切な時間を邪魔しないで。」
「いや俺はただそこの笛吹って人に興味が有っただけで……。」
「……明日の知り合いか?」
「その通り、俺の名前は坂本、中央高校の風紀委員長。」
「ふむ、となると明日の上司みたいなもんか。」
「その通りだよ、笛吹ヒノトさん。」
一歩ずつ俺に近寄る坂本。
彼の足下に大量の釘が突き立てられる。
彼の足下に大量の釘が突き立てられる。
「お兄ちゃん、こいつ怪しい!」
「えっと、二年C組拝戸純か。こんな危ない奴だとは知らなかったぜ。
俺はお兄ちゃんとやらに興味があるだけだ。
君がここで何をしていようと俺の知るところじゃないよ。」
「ふむ、我が妹に向けて危ない奴発言か。良い根性してるじゃないか。」
「えっと、二年C組拝戸純か。こんな危ない奴だとは知らなかったぜ。
俺はお兄ちゃんとやらに興味があるだけだ。
君がここで何をしていようと俺の知るところじゃないよ。」
「ふむ、我が妹に向けて危ない奴発言か。良い根性してるじゃないか。」
とりあえず、この坂本という男が俺の敵だということは認識した。
「坂本とやら、なんで俺に興味を持った?」
「家の親父が警察関係者なんで。」
「嘘だな。明日から俺の話を聞いただけだろ。」
「はい、そうです。あいつの話を聞く限りでは貴方が危険に見えてしょうがない。」
「俺はもう殺人鬼は廃業したんだ。」
「でも、貴方の行動はそれ自体が人々を危険にさらす。
だって見知らぬ他人のことなんて何一つ考えないんだから。
明日真の居たクラブで起きた殺人事件もそうだ。
貴方には、生存者を救うことが可能だった筈だ。
この場合できなかったんじゃなく、やらなかったことが問題なんだ。」
「しーらね。」
「……人の命が転がっていたら、救おうとは思わないのか?」
「俺が助けたいと思ったら助ける。逆もまたしかりだよ。」
「そうですか。矢張り度し難い人だな。人は誰しも誰かを見殺しにして生きているけど、
それを自覚的にやる人間ってのは出来る人間ってのは異常じゃないか。
そういうものが、俺たちみたいな普通の人間には怖い。
自分がとてつもなく卑小な、最低な生き物のような気がしてくる。」
「だったらどうする?人々の心の安寧の為に俺を亡き者にするかい?」
「いいや、それは無理だ。あんたが小悪党ならそれも考えたけど……」
「家の親父が警察関係者なんで。」
「嘘だな。明日から俺の話を聞いただけだろ。」
「はい、そうです。あいつの話を聞く限りでは貴方が危険に見えてしょうがない。」
「俺はもう殺人鬼は廃業したんだ。」
「でも、貴方の行動はそれ自体が人々を危険にさらす。
だって見知らぬ他人のことなんて何一つ考えないんだから。
明日真の居たクラブで起きた殺人事件もそうだ。
貴方には、生存者を救うことが可能だった筈だ。
この場合できなかったんじゃなく、やらなかったことが問題なんだ。」
「しーらね。」
「……人の命が転がっていたら、救おうとは思わないのか?」
「俺が助けたいと思ったら助ける。逆もまたしかりだよ。」
「そうですか。矢張り度し難い人だな。人は誰しも誰かを見殺しにして生きているけど、
それを自覚的にやる人間ってのは出来る人間ってのは異常じゃないか。
そういうものが、俺たちみたいな普通の人間には怖い。
自分がとてつもなく卑小な、最低な生き物のような気がしてくる。」
「だったらどうする?人々の心の安寧の為に俺を亡き者にするかい?」
「いいや、それは無理だ。あんたが小悪党ならそれも考えたけど……」
ダッ!
坂本とやらは思い切り逃げ出した。
坂本とやらは思い切り逃げ出した。
「あんたみたいなのは全力で警戒してできるだけ関わり合いにならないのが最善だ!じゃあな!」
「でもでも貴方は逃がさないんだからっ!」
「でもでも貴方は逃がさないんだからっ!」
ドスンドスンドスン!
五寸釘が何本も坂本の背に突き刺さる。
だが血は流れていない。妙な能力だ。
五寸釘が何本も坂本の背に突き刺さる。
だが血は流れていない。妙な能力だ。
「お兄ちゃん、これであいつは逃げられないよ!」
「運を奪うだっけか?
確かに面白おかしい能力だけれど……。」
「運を奪うだっけか?
確かに面白おかしい能力だけれど……。」
坂本の背には確かに五寸釘が刺さっていた。
都市伝説は発動しているのだろう。
だが、坂本が不運になっている様子はまったく無かった。
都市伝説は発動しているのだろう。
だが、坂本が不運になっている様子はまったく無かった。
「えええぇぇえ!?なんでなんで!?」
「じゃあなお二人さん!」
「ふむ、都市伝説が効いていないのか?」
「じゃあなお二人さん!」
「ふむ、都市伝説が効いていないのか?」
俺はハーメルンの笛吹きの能力を使って坂本の動きを止めることを試みた。
すると、まるで軍隊か何かのように坂本の身体が見事に気をつけの姿勢になった。
都市伝説が効かない訳じゃないらしい。
すると、まるで軍隊か何かのように坂本の身体が見事に気をつけの姿勢になった。
都市伝説が効かない訳じゃないらしい。
「なるほど、都市伝説が効かない訳じゃないのね。
となると……運勢か。
運を奪われても普通に動けるレベルの幸運の持ち主ってところかな?
どうなのよ、坂本君、人が来る前に素直に話してくれると嬉しいな。」
「……確かに俺は運が良いよ。
今の騒ぎでもうすぐ人も来るだろうしね。」
「まったくだ、俺から逃げ切るだなんて中々面白いじゃないか。
良いぜ、その命はくれてやる。」
「高校生相手でも殺る気だったの……?」
「勿論!」
となると……運勢か。
運を奪われても普通に動けるレベルの幸運の持ち主ってところかな?
どうなのよ、坂本君、人が来る前に素直に話してくれると嬉しいな。」
「……確かに俺は運が良いよ。
今の騒ぎでもうすぐ人も来るだろうしね。」
「まったくだ、俺から逃げ切るだなんて中々面白いじゃないか。
良いぜ、その命はくれてやる。」
「高校生相手でも殺る気だったの……?」
「勿論!」
それ以外の選択肢が有っただろうか?いや、無い。
「お兄ちゃん駄目だよ!こいつはここで確実に……。」
「うんにゃ、もうダメだ。南から二人、西から三人。
この騒ぎを聞きつけて近づいてきている奴が居る。
ここに来るのも時間の問題だよ。
ここから離れよう、純。」
「うんにゃ、もうダメだ。南から二人、西から三人。
この騒ぎを聞きつけて近づいてきている奴が居る。
ここに来るのも時間の問題だよ。
ここから離れよう、純。」
内一名は都市伝説契約者。
移動速度からして明日姉か?
何故俺を捜しているのか解らないがまあ逃げておくに越したことない。
ハーメルンの笛吹きとの契約で身についた探知能力が役に立ったようだ。
俺達は動けない坂本の額に肉と油性ペンで書いてからそそくさとその場を後にした。
移動速度からして明日姉か?
何故俺を捜しているのか解らないがまあ逃げておくに越したことない。
ハーメルンの笛吹きとの契約で身についた探知能力が役に立ったようだ。
俺達は動けない坂本の額に肉と油性ペンで書いてからそそくさとその場を後にした。
「さて、これから何処に行く?時間もアレだし時間が許すなら夕食でも……」
「あいつ殺す、絶対殺す、そもそも丑の刻参りが効かないってどんな能力なの?
毎日毎日少しずつ撃ち込んでいけば呪いだってきっとかかる筈だもの。
明日もそうよ、お兄ちゃんの知り合いのくせにお兄ちゃんの名前をあんな奴に教えるなんて。
私が私があいつら二人とも完膚無きまでに殺して殺して殺し尽くしてやる。
私のチカラだったらそれくらい造作もないことだもの。」
「純、女の子がそんな言葉使っちゃいけないよ。
純はあんな奴気にする必要は無い。
あいつは俺に用があるんだ。
あいつが純に何かちょっかいをかけてきた時はお兄ちゃんが出るから、
だから、“純はあいつには関わっちゃ駄目”。」
「あいつ殺す、絶対殺す、そもそも丑の刻参りが効かないってどんな能力なの?
毎日毎日少しずつ撃ち込んでいけば呪いだってきっとかかる筈だもの。
明日もそうよ、お兄ちゃんの知り合いのくせにお兄ちゃんの名前をあんな奴に教えるなんて。
私が私があいつら二人とも完膚無きまでに殺して殺して殺し尽くしてやる。
私のチカラだったらそれくらい造作もないことだもの。」
「純、女の子がそんな言葉使っちゃいけないよ。
純はあんな奴気にする必要は無い。
あいつは俺に用があるんだ。
あいつが純に何かちょっかいをかけてきた時はお兄ちゃんが出るから、
だから、“純はあいつには関わっちゃ駄目”。」
だって相性が悪すぎる。
呪いなんてチカラ、何時自身に返ってくるか解らないのに、
それを多用せざるを得ない状況なんて彼女が自爆するだけじゃないか。
だから俺は彼女に関わるな、と強く言い聞かせる。
呪いなんてチカラ、何時自身に返ってくるか解らないのに、
それを多用せざるを得ない状況なんて彼女が自爆するだけじゃないか。
だから俺は彼女に関わるな、と強く言い聞かせる。
「嫌だ!」
……え?
俺の言葉に反抗した?
都市伝説の能力+暗示で命令したのにそれを無視?
俺の言葉に反抗した?
都市伝説の能力+暗示で命令したのにそれを無視?
「お兄ちゃんを危ない目に遭わせたくないもん!」
「そうか、解ったよ。
それじゃあ二人で安全確実にあの坂本とか言う奴を始末しよう。
それで良いね?それまで勝手に動かないってことは約束できるかい?」
「解ったよ!」
「そうか、解ったよ。
それじゃあ二人で安全確実にあの坂本とか言う奴を始末しよう。
それで良いね?それまで勝手に動かないってことは約束できるかい?」
「解ったよ!」
……なんとか言うことは聞いてくれそうだ。
「よし、それじゃあお兄ちゃんの行きつけの洋食屋さんにでも行こうか。
純はオムライスは好きかい?」
「うん、大好きだよ!」
「じゃあそこに決定だね。さあ、行こうか。」
純はオムライスは好きかい?」
「うん、大好きだよ!」
「じゃあそこに決定だね。さあ、行こうか。」
さて、今夜は家に帰れるのだろうか?
そもそも明日は祝日なので朝帰りしようとも問題ないが。
ビバ☆自由業
そもそも明日は祝日なので朝帰りしようとも問題ないが。
ビバ☆自由業
俺は家に帰ってから事務所の女性陣等にドヤされるのを覚悟しながらも、
とりあえずこの子の気が済むまでデートに付き合おうと思ったのであった。
とりあえずこの子の気が済むまでデートに付き合おうと思ったのであった。
~一方そのころ~
「笛吹丁に拝戸純、揃いも揃って異常じゃないか……、しかも契約者。
何がどうなってあいつらが兄妹になっていたのかは知らないが、
普通人代表として、あれをあのままにしておく訳にはいかないなあ……。
でも俺弱いし、一般人だし、契約者じゃないし。」
何がどうなってあいつらが兄妹になっていたのかは知らないが、
普通人代表として、あれをあのままにしておく訳にはいかないなあ……。
でも俺弱いし、一般人だし、契約者じゃないし。」
顔を一生懸命洗いながらボソボソと独り言を呟き続ける男。
中央高校風紀委員長である。
中央高校風紀委員長である。
「普通の人々が普通に暮らして行くには、ああいう存在は危険すぎる。
普通の人が、普通に暮らしていけるセカイ、
どんな理由でも俺の周りにそれを否定するような奴は居ちゃいけない。
俺はそれを排除するチカラなんて持ってないけどね。」
普通の人が、普通に暮らしていけるセカイ、
どんな理由でも俺の周りにそれを否定するような奴は居ちゃいけない。
俺はそれを排除するチカラなんて持ってないけどね。」
深く息を吸う。
「でもこれだけは解る。異常な人間の方が、都市伝説よりずっとずっと恐ろしい。」
その言葉は、決して彼一人だけのものではないように思われた。
【上田明也の協奏曲22~それはそれは可愛らしい~fin】