「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-59m

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だれでも歓迎! 編集
 ----ばさり、と
 病院の駐車場に降り立ったのは、巨大な竜
 それでも、複数の「黄金伝説の竜」の力を使って巨大化した秀雄よりは、まだ小さいかもしれない

「でっか!?…つか、よく目立たずに飛んできたよな!?」
「なぁに、関係ない連中にゃ姿見えなくなってるからな。俺達も、こいつに乗れば、他者に気づかれずに飛んでいける」

 乗りやすいよう、気を使ってくれているのだろうか
 どすん、と腰をおろす竜
 だとしても、乗るのは大変そうな…

「へ?」

 しゅるりんっ
 舞の体に…否
 舞だけではなく、Tさんや恵の体にも、宏也の髪が、巻き付いて

「うおわっ!?」

 ぎゅんっ!!と
 ものすごい勢いで、引き上げられる!!!
 気づいた時には、竜の背中に乗せられていた

「できれば、一言合図くらいはほしかったものだが」
「悪いな。急ぐもんで」

 Tさんの苦言に悪びれた様子もない宏也
 きゅう、と目を回しかけている恵を軽く揺さぶってから……とんとんっ、と、軽く竜の背中を叩いた
 モールス信号か、それとも、竜に対する独特の合図なのか……ばさり、竜は宙へと浮かび上がる
 目的地も把握しているのだろう
 迷い無く……大空を、飛び始める

「スピード出させるからな。気をつけろよ」
「お、おうっ!?リカちゃん、鞄の中入ってろ!」
「はいなの~」

 もぞもぞ、鞄の中に避難するリカちゃん
 竜の背中に、座席やシートベルトがある訳でもない
 宏也が髪である程度固定してくれているとは言え、ゆれるものはゆれる
 思わず、隣にいたTさんに抱きついて……やや、舞は顔を赤くした
 そんな舞を軽く支えてやりつつ、Tさんは宏也を見据える

「…髪の伸びる黒服さん、まずは、「不死身の狂人」とやらについて、聞いてもいいだろうか」
「あぁ、もちろん」

 強風の中、しかし、不思議と互いの言葉は聞こえる
 宏也は、やや早口に、Tさんの問いかけに答える

「H-No.1、ハンニバル・ヘースティングス。契約ってか、飲み込まれた都市伝説は不明。ただ、上半身を吹き飛ばされても即、再生する再生力を持っている上、達人クラスの剣の腕前だ」
「再生…だから「不死身」か」
「その通り。ついでに言うと、「最強の目」なんてもんをもっていやがる」
「「最強の目」?」
「そうさ。通常見えないものを当たり前のように見てきやがるし、動体視力も軽く人間の限界以上。複数の「目」に関する都市伝説が総合されたもんだと思うが」
「……厄介だな」
「あぁ、まったくだ……立場上はHNo研究陣の、実質トップ…非人道な実験を、率先して行っていた野郎だ」

 故の、「狂人」
 辰也も宏也も、その実験の被害者と言う事になる

「…俺よりも、辰也の方が、連中への恨みは深いだろうよ。俺はなんだかんだで人間やめた程度で、「組織」に確保された後は、あの連中にはいじられずにすんでたからな」

 だが、辰也は
 生まれた瞬間から、連中の実験体だったのだ
 人間として当たり前の日常を奪われ、人間らしい扱いすらされず
 ……「組織」にいた、21年間の恨み
 それが、辰也の中に蓄積しているのだから

「他には?」
「そうだな……いつも、やけに立派な鞘に収めた剣を持ってるな。案外、あの剣が契約都市伝説なのかもしれない」

 剣か…と、なにやら考え込んでいるTさん
 竜は、どんどんスピードをあげ続けている

「…なぁ、黒服さん」
「うん?」
「辰也の兄ちゃん、モンスの天使の契約者を助けたんだって?その理由、わかるか?」

 舞の、その問いかけには
 宏也は、やや難しそうな表情で、答える

「さぁな。俺も、詳しい事情はわからねぇ。ただ、「組織」にいた頃から、どうにも天地の事は気にしていたからな…」
「それは、爆発する携帯電話の契約者からも聞いたが…そうか、あなたも知らなかったか」
「悪ぃ。天地は俺よりも先に辰也と知り合いだったからな」

 …何故、辰也が天地を気にしていたのか
 ……宏也は、完全には、その理由を把握できていない
 もう一人……穀雨 彼方だったか
 あの少年にも、こだわっていたと言うか……気にしていたような気がする
 天地と彼方
 あの二人の共通点は…ハンニバルの実験の被害者の、遺児だと言う事
 それを考えれば…辰也が天地を気にしていた理由は、ある程度は推察できる
 だが、そうなると……辰也が、あの「真実」に、気づいてしまっている可能性が…

(……いや)

 それはない、と宏也は考える
 多分、天地や彼方を気にしていたのは…辰也なりに、どこか直感的に気づいたからかもしれない
 最悪のあの「真実」には、恐らく到達してすらいまい

 それでいい
 それで、いいのだ
 ……知らないままの方が、ずっと幸せなのだから

「………?」
「あぁ、いや、何でもない」

 宏也の様子に首を傾げてきた恵に、宏也はごまかすようにそう答えた
 ……これは、ただの推測
 真実ではない
 これは…伝える必要は、ない情報だ

「モンスの天使の契約者…門条 天地は、捨て駒にされたと推測される…辰也が天地を気にかけていたというのなら」
「…あんたの推測が、多分当たりだ。辰也を刺激するのが狙いだろうよ」

 Tさんの言葉に、宏也はそう答えた
 わざわざ、捨て駒同然に天地を辰也にぶつけてきたのは、辰也を刺激する為、挑発する為だろう
 それも、マッドガッサー達を巻き込むように、ぶつけてきたのだ
 事実、辰也はそれを受けて、先走り始めてしまった

「門条 天地は…HNoに実験体として使われていた、門条 晴海の、子供なのだろうか?」
「おぉっと、その情報ももってたか……あぁ、そいつは確定さ」

 きっぱりと、その事実を認める
 …そして
 ヘンリエッタは口にできなかった…その、残酷な事実も
 宏也は、ややごまかしつつも、口にする

「…門条 晴海の子供、だからこそ。天地は、普通の人間とは、若干違う点がある…ただ、ハンニバルからしてみれば、期待とは程遠いもんだったんだろ。だから、捨て駒にされたんだ」
「………ひでぇ」

 思わず呟く舞
 …確かに、非道としか言いようがない
 ハンニバルは、そういう男なのだ
 あの男に、情と言うものなど……一切、存在はしない

「Tさん。あんたにゃ、辰也と恵を護ってほしいが……あんたらも、無茶するなよ。やばいと思ったら、とっとと逃げてくれ」

 ただ、それだけは告げておく
 …正直、たどり着くと同時に、Tさん達が辰也と恵を連れて逃げてくれるだけでもいいのだ


 そうすれば
 後は、自分がハンニバルと決着をつければいい
 辰也には悪いが……辰也とハンニバルを、戦わせる訳にはいかない
 辰也では、ハンニバルに勝てない
 …あの男を殺すのは、自分だ


 竜が、嘶く
 ……目的地に、たどり着いたようだ
 旋回しながら、地面へと降りて立っていく



 どうか、間に合ってくれよ?




 その祈りが、もはや届かぬ事を
 彼はまだ、気づかない






to be … ?




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