「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 赤い靴・DNo-11a

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 ---あの時の、あの男が何気なく発した、あの言葉が
 お嬢様の心に楔を打ち込み、未練を作った
 果たして、お嬢様自身に、その自覚があるかどうか
 それは、わからぬままだ



 …それは、まだ「組織」が完成する前
 まだ、それがゆっくりと、しかし、急速に形作られている最中のこと
 「東京の地下には巨大地か要塞が存在する」の中にて…


「…まったく、あのA-No.0とやら。この妾を呼び寄せておきながら、顔も見せぬとは何事なのじゃ」

 やや不機嫌に歩くヘンリエッタの後ろを、数歩離れた位置を保ちながらジェラルドはついていく
 ヘンリエッタの不満に、ジェラルドは答えない
 どんな答えを告げたとしても、彼女の機嫌が直らないことを知っているからだ

 もう何十年も、ヘンリエッタの笑顔など、見ていない
 彼女の心は疲れ果て、死にかけているから
 ……人間に戻る手段
 それを探し、数百年
 彼女の心は疲れ、人間に戻る手段を見つけるという目標すら、諦めかけ
 ゆっくりと、精神的な死へと向かっていっている
 …それも、ジェラルドは知っている
 しかし、彼には何も出来ない
 その事実を歯痒く思いながらも……ずっと、何も出来ぬままなのだ

 しばし、二人で歩いていると……前方に、人影が見えた
 確か、あれは…

「…あぁ、ヘンリエッタ。どうかしたの?」
「……D-No.0か」

 D-No.0と、X-No.0
 ヘンリエッタと同じく、No.0をふられた2人
 …ヘンリエッタよりも先に、A-No.0から誘いを受けて「組織」に入った者だったはず
 X-No.0が、ヘンリエッタの言葉に、ややむっとしたような表情を浮かべた

「お互い名前わかってるんだし、そのナンバー呼びやめようぜ?こいつには、ちゃんと…」
「いいよ、ザン。ヘンリエッタが呼びやすい呼び方で、呼んでくれればいいんだから」

 X-No.0…ザンに、そう告げるD-No.0
 ザンはやや不満そうな表情ではあるが、D-No.0の言葉に従う

 …その、D-No.0に…ヘンリエッタは、やや、苦々しい表情を浮かべた
 彼女は、D-No.0を、少々苦手としている
 助け舟を出すべきか
 そう判断し、ジェラルドは口を開いた

「………お嬢様、お時間が」
「む…わかっておる。妾は忙しいでな。貴様らの相手をしている暇などないのじゃ」

 D-No.0の問いかけに答えることなく、そっけなくそう口にしたヘンリエッタ
 やはり、ザンがむっとした表情を浮かべる

「お前な。こいつは、お前を心配して…」
「ザン、そんなに怒らないで」

 やはり、ザンのその怒りを、D-No.0が宥める
 …D-No.0は、ヘンリエッタに申し訳無さそうな表情を浮かべて見せた

「御免ね、ヘンリエッタ。君は、大事な研究で忙しいのに、足止めさせてしまって」

 その、D-No.0の謝罪に…ヘンリエッタは、表情を暗くした
 ヘンリエッタとて、D-No.0に非がない事はわかっているのだ
 だと言うのに…D-No.0は、まるで自分が悪いのだと言うように、こうやって謝罪してくるのだから
 ……それに
 「研究」
 その単語が、さらに、ヘンリエッタの心に、暗い影を落とす

「そ、その通りなのじゃ。妾は、研究で忙しいのじゃ!」

 その暗い影を必死に表に出さないよう、己の中に閉じ込め、ややきつめの声でそう告げるヘンリエッタ
 足早に、この場を立ち去ろうとして

 ……しかし

「本当、ヘンリエッタは、強いね」

 ………D-No.0の言葉に
 思わず、脚を止めてしまう

「君は、人間に戻る為に、研究を続けている………そんな幼い頃に、都市伝説に飲み込まれてしまって、それでもなお、人の心を保ち続けて………元に戻ろうと、努力を続けている。本当に、偉いね」
「------っ」
「大丈夫。君が努力を続ければ……必ず、元に戻る方法は、見つける事ができるはずだから。だって、君は都市伝説に飲み込まれてしまった今でも……どれだけ、その状態で長い時間を過ごしても、まだ、人間の心を、保てているのだから」


 …言葉の、一つ一つが
 ヘンリエッタの、心にしみこむ
 疲れ果て、諦めようとしていた、彼女の心に
 未練が、生まれる
 未練と言う楔が、打ち込まれる


「……ふん……都市伝説に飲まれれば、それは化け物にすぎぬだろうよ……妾は、ただ、あがいているだけ。さぞや、無様に見えるだろうな」
「そんな事ないよ」

 ヘンリエッタの、その自虐的な言葉を
 D-No.0は、即座に否定する

「ヘンリエッタは、人間だよ。君は、ちゃんと人間の心を保てていて……」

 まるで
 ヘンリエッタの心を、見透かしたかのような言葉が、続く

「…そして、都市伝説に飲まれてしまっているその現状を、悲しみ続けているのだから」

 …かすかに
 ヘンリエッタの体が震え出した事を、ジェラルドは見逃さなかった

 D-No.0の優しさに
 彼女の心が……耐えられない

「っう、煩い煩い煩い!!!百年も生きておらぬ小童が!!妾の心をわかった気になるな!!!」

 癇癪を起こしたように叫び、走り去るヘンリエッタ
 …ジェラルドは、すぐにはその後を追わず……D-No.0とザンに向き直り

 ……小さく、頭を下げた

「………お許しを。お嬢様は、今、少々気が立っておられますので」
「あ…ううん、いいんだよ。僕が悪いんだから」
「お前な…」

 D-No.0の言葉に、あきれた表情を浮かべているザン
 ……本当に、D-No.0は人が良すぎる
 これが、いつか悪い結果を招かなければ良いのだが
 そう考えながら…ジェラルドは、静かに告げた

「…………お嬢様を、人間として認めていただき……ありがとう、ございました」
「………え?」

 D-No.0の、どこかきょとんとした声に、答える事はなく
 ジェラルドは、足早にヘンリエッタの後を追い始めた


 俯いているヘンリエッタ
 彼女は、己に割り当てられている部屋に辿り着くまで、顔をあげる事はなかった

 ……その苦悩を、全て知りながら
 しかし、ジェラルドは何もできず
 ただ、見守る事しかできぬ己を、卑下し続けるのだった



to be … ?




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