「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 無垢なる支配者と蜘蛛・C-No.0-06

最終更新:

guest01

- view
だれでも歓迎! 編集
「ふぅ…」

 吐き出す息が、ずいぶんと白い
 雪も降っているし、今夜はずいぶんと冷え込みそうだ

 教会のクリスマスのミサの手伝いをしていたカイン
 だが、申し訳ないが、早めに帰らせてもらう事にしたのだ

「あんまり遅いと、あいつがむくれそうだしな…」

 小さく苦笑するカイン
 今夜はクリスマスのミサを手伝うから帰りは遅くなる、と告げた時、カラミティはずいぶんとふてくされてしまっていた
 また、悪魔達に迷惑をかけていないといいのだが…

 雪の積もった道を、やや駆け足で進むカイン
 ふと、空を見上げて

「………え」

 光る何かで、体を貫かれ
 落下していく人影が、見えた



 背中と後頭部を、地面に強かに打ちつけてしまった
 かは、とセシリアは、口から大量の血を吐き出す

「く、ぅ……カラミティめ…!」

 K-No.0の騒動の時も、感じたことだが…カラミティは以前よりも一段と、魔法を使いこなせるようになっている
 魔法を完成させるのが…自分よりも、はるかに早い
 威力を加減した魔法とはいえ、こんなに早く…!

「……止め、なければ」

 だが
 実力差が開いていようと…自分が、カラミティを止めなければ
 いつもいつも、カラミティの好きにさせるわけにはいかない
 ……本当なら、殺してでも、止めるべきなのに
 自分が甘いから、いつも、カラミティの好きにさせてしまっている
 だが、これ以上は!

 とにかく、地面に縫い付けられた、この状態を脱出しないと…

「……ぅ、ん?」

 …と
 セシリアは、自分に近づいてくる気配に、気付いた
 カラミティの使い魔か何かだろうか
 やや、警戒すると

「……っうわ!?ミナワ、見るな!?」
「きゃっ!?」
「うわ、急所をピンポイントで直撃な上、縫いつけか。蝶の標本かよ」

 聞こえてきた、少年少女の声
 視線を動かすと…見覚えのある少年と少女、そして、見覚えのない都市伝説の姿が

「…黄昏…裂邪、だったか……ローゼ達が、やたらと執着している…」
「あれ?俺達のこと、知って……あ、覚えてたのか」

 どうやら、あちらも覚えていたようだ
 K-No.0の騒動の時、ちらりとだが顔をあわせているから

 己の惨状に吐き気を催しているらしい裂邪に、セシリアは申し訳なく笑う

「…すまん、嫌なものを見せたな」
「い、いや、そんな事より!今、ローゼちゃん達を呼ぶから、しっかり…」
「……あぁ、いや、その必要は、ない…彼女らに、手間はとらせんよ」

 目を閉じ、集中する
 …セシリアの体が、光に包み込まれた

 ひら
 ひらり
 その体は、銀の蝶となり、分解され
 再び、また一箇所に集まって…再構築された
 カラミティの放った槍から、解放されたのだ

「……ぐ、ぅ」

 だが
 その槍で作られた傷口は、そのままだ
 ぽたり、血が流れる

「大丈夫デハ、ナサソウダナ」
「っやぱり、ローゼちゃん達を呼んで…」
「いや…問題、ない、これくらいなら、治せる…」

 あぁ、もう
 自分はこんな子供に、なんて物を見せてしまっているのだろう
 セシリアは苦笑しながら、己の傷を治癒しようとした
 まずは、心臓からだ
 そこ以外は、どうとでもなる
 …心臓が、元通りに再生していく
 後は、傷跡を治して…

 だが

「!誰か、こっちに来やすぜ!」

 その集中は、裂邪の契約都市伝説の一体らしい火の玉の言葉で、途切れてしまった
 ミナワを抱きしめたままの裂邪も、そちらに警戒の視線を向けた

 現れたのは…一人の西洋人男性
 20代前半ほどだろうか、目つきが鋭く、その年頃の西洋人男性にしては、やや小柄だ
 特徴的なのは…その、翡翠色の瞳
 その瞳を、青年は驚きで見開いていた

「ッ怪我人か!?」

 駆け寄ってくる青年
 手を伸ばされ、セシリアは警戒を強めた

 直後
 かざされた手から、暖かな力を感じた

 治癒の力
 自分の魔法とは、本質的に違う
 暖かい、奇跡の力

「…光ってる…」
「…綺麗…」

 裂邪達の、ボウゼンとした声が、聞こえてくる
 傷口が……光に包まれ、再生していっている
 す、と青年が手をどけた頃には、傷跡一つ残っていなかった

「………痛みは、ないか?」

 心配そうに、そう声をかけてきた青年

 …恐らくは、都市伝説契約者
 それも、貴重な治癒の力の持ち主
 初対面の相手に、青年は惜しげもなくそれを使ってきたのだ

「…あ、あぁ……大丈夫、だが」
「誰だよ、兄ちゃん」

 治療してくれたとは言え、味方とは限らない
 どうやら、警戒されて居る事に、青年はいまさら気づいたようだった
 …警戒されて居る事に気づくよりも、セシリアの治癒を優先してきたのだ

「…怪しいものでは、ない。カイン・ディーフェンベーカーと言う者だ……先ほどの通り、治癒の力を扱える」
「……ディーフェンベーカー?」

 とある人物と同じ家名に、眉をひそめるセシリア
 …いや、偶然か
 あれには、子供などいなかったはずだから

「…治療していただき、感謝する……すまんが、私は急ぐのでな。まともな礼も言えず、申し訳な……!?」

 ゆら、と
 体を揺らめかせたセシリア
 …心臓を貫かれたダメージが、大きすぎたか

「いや、動くなよ!?あんだけの大怪我負った後ですぐ動くとか無茶だろ!?」
「あ、あの、お休みになられたほうが…」
「そうはいかん。私は、カラミティを止めねばならん」

 気遣ってくれた裂邪とミナワに、そう告げたセシリア
 その、セシリアの言葉に

「……カラミティ?」

 と、カインが反応を示した


 …一瞬
 辺りの空気が冷え込んだような錯覚を覚えたのは、気のせいか?


「…お前は、そちらの少女が言う通り、休んだ方がいい」
「っだが!」
「……カラミティ、と言ったな。そいつが何か迷惑をかけている、もしくは、迷惑をかけようとしているのなら、俺に任せて欲しい」

 はっきりと
 そう、告げてきた、カイン

 …気のせいか
 やや無表情に見えるが、背後に怒りのオーラが見えるのは

「…オ前、カラミティノ知リ合イカ?」
「友人だ」

 カインのその言葉に、セシリアは驚く
 カラミティが、美緒を友人と呼んだ時も驚いたが…
 …他者とのコミュニケーション能力がなかったはずのカラミティが、いつの間に、そんなものを

「カラミティを止める必要があるなら、俺が止めよう。俺なら、あの馬鹿を止められる」

 きっぱり、言い切ったカイン


 …その、言葉に
 表情に

 血を分けた存在でありながら、カラミティを止められない自分が
 酷く、酷く情けなく感じられて


(………あぁ、こんなふがいない姉だから……あの子は、私を捨てたのだろうな)

 と
 人知れず、こっそりと、自嘲の笑みを浮かべたのだった






to be … ?



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー