「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 我が願いに踊れ贄共・翡翠色の目の司祭-12e

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 悠司が、こちらの手を引いて何か言っている
 ……聞こえない

 カラミティが、必死にこちらに呼びかけている
 ………聞こえない

 ただ
 エイブラハム司祭長の声、だけが
 耳に、届いて


「貴方の姉の死を真相を、伝えましょう」


 その、言葉が
 まるで呪縛のように、この場所に足を縛りつけてくる

 ずっと、知りたかった
 だが、知ることができずにいた真実
 それを、ようやく知ることが、できる

 何故、今、この場で?と
 疑問を感じてもいる

 しかし
 それでもなお、その真実を知りたいと言う欲求が、足を地に縛り付ける

「彼女は、ね。飲まれたのですよ。契約に失敗して」
「…契約、に、失敗?」

 ------な

「そうです。契約できずに、飲まれて消滅しましたよ……ですから、あの棺桶の中に、あなたの姉の…マリア・ディーフェンベーカーの亡骸は存在しません」

 --------くな

「いいですか?カイン、あなたの姉は」

 -------聞くな

「あなたの姉が契約しようとして、失敗したのは……」

 -------、聞くな

「「奇跡を起こすサントニーニョ」」


「--ッカイン、それ以上聞くなっ!!」


 カラミティの叫ぶ言葉が、耳に届いた時には、すでに遅く

「今、あなたが契約している存在ですよ」

 その、真実が
 カインへと、告げられた

「………ぇ」

 かすかに、カインの体がふらつく

「ご存じでしたか?あなたが契約した、その奇跡を起こす存在は……契約のリスクが、大変と高い存在なのですよ」

 …知らない
 そんな事実、聞かされた事もなかった

「高い適正のある者でなければ、一瞬で飲み込まれ、消滅します……まぁ、正確には、その存在の一部となっているのでしょうけれどね。あれはそうやって、何人もの人間を飲み込んできたのですよ」

 知らない
 本体であるあの人形自体、一度もそんな事実を伝えてきた事は、なかった

「つまり…………あなたの姉も、それに飲み込まれたのですよ」

 ………飲まれた?
 飲み込んだ?
 自分が契約している存在が?

「つまり」

 それじゃあ
 自分は、何も、知らずに

「あなたは………自らの姉を殺した存在と、契約したのですよ」
「-------ぁ」


 知らない
 知らなかった

 自分が契約した存在は、ただ、誰かを癒す為の存在だと信じていた
 誰かを害するような存在だなどと、考えた事もなかった



 まさか
 姉が、唯一の家族が
 それに飲み込まれたなどと
 考えた事も、なかった


「-----ぁ、あ…………」


 まさか
 自分が、姉を飲み込んだ存在と
 この世から、消し去ってしまった存在と
 契約していたなどと

 知っていたはずも、なかった


 ぐらり、と
 大きく、カインの体がふらつく
 倒れそうになった体を、慌てて悠司は支えた

 ……悠司の位置から、カインの表情は、見えない
 ただ……その体が小さく震えているのが、伝わってくる

 き、と、悠司は、カインに言葉をかけた存在を睨み付けた
 真っ赤な鎖に全身を縛られ、その姿が見えない、それを

「--タマモ…」

 己が契約している存在の力を借りて
 悠司は、それを攻撃しようとした

 だが

「おや、どうしたのです?カイン司祭……知りたかったのでしょう?マリア・ディーフェンベーカーの死の真相を。良かったではないですか、知ることができて…」

 なおも、言葉を続けようとした、それを


「黙れ」


 先に
 カラミテxの言葉が貫いた

 どこから現れたのだろうか
 光り輝く槍が………真っ赤な鎖の塊に、突き刺さっている
 人体ならば、ちょうど、心臓辺りの位置だろうか

「黙れ」

 低い声
 カラミティが、杖を、鎖の塊に向けている

「----っそれ以上、喋るな!」

 叫びと同時、カラミティの頭上に、光り輝く槍が現れる
 鎖の塊に突き刺さっているのとは別なそれは、幾重にも別れながら鎖に向って飛んでいき、ざくざくと突き刺さる
 鎖の隙間から、どろり、と真っ赤な血が溢れ出した
 間違いなく、鎖によって束縛されている存在は、体中を光り輝く槍で串刺しにされているはずだ
 だと、言うのに

「何故です?私は、彼が知る事を望んだ真実を伝えたまでですよ」
「うるせぇ、黙れ、似非救世主、サタナエル、アンチ・クライストッ!!マリア・ディーフェンベーカーを殺したのはお前だ。契約しなければならない状況に持ち込んだのはお前だっ!!!」

 カラミティが叫ぶたび、彼の周囲に何かが生まれる
 光り輝く剣が生まれ、鎖の塊に突き刺さる
 闇を生み出しながら、しかし、同時にその闇を吸い込み続ける球体が生まれ、鎖の塊に飛んで行って、束縛された存在の骨を粉砕すべく叩きつけられる

 呪文の詠唱なしに、ただただ、憎悪だけを込めて、カラミティが魔法を使っている
 カラミティの持つ杖が、体中に身に着けている装飾具が、光り輝き続けている

「おや、人聞きの悪いことを、彼女は自ら望んで、「奇跡を起こすサントニーニョ」と契約したのですよ」
「……っそうさせたのは、お前だ!!後に引けぬ状況を作り出し、そうせざるを得ない状況を作り出した癖にっ!」

 ぴくり
 小さく、カインの体が跳ねた事に、悠司は気づいた
 ……声は、聞こえているようだ
 その体は震えている 握りしめられている拳は、血の気が失せているようにも見えた
 だが……茫然自失の状態には、辛うじて陥っていないらしい

「………本当に、人聞きが悪いですね」

 カラミティが、攻撃する事に意識をさいたせいだろうか
 鎖の束縛が緩んだのだろう、鎖が引きちぎれ、束縛されていた存在が姿を現す

 ---エイブラハム・ヴィシャス
 その男が、全身を光り輝く槍で、剣で串刺され、叩きつけられた球体によって顔の半分を破壊された状態で
 しかし、笑顔で立っていた
 こんな傷など、大したことはない
 そうとでも言うように、優雅に両腕を広げながら続ける

「彼女は、こう言ったのですよ。『自分ならば、契約できる。だから、契約させてほしい』と……ですから、私は彼女に、契約を実行させたまでです。実際は、失敗してしまいましたがね」
「--っそれは」

 ぎり、と
 カラミティが、杖をきつく、握りしめている

 ……そして
 己が口にする、事実が
 カインをさらに傷つけてしまうかもしれないと言う、リスク
 それを恐れながらも口にする

「それは………マリア・ディーフェンベーカーが、カインを護ろうとしたからだ」

 再び、カインの体が、跳ねる
 まだ、体は小さく震え続けている
 何か、口にしようとして……しかし、言葉を紡ぎだせずにいる

「お前は……マリア・ディーフェンベーカーに、「奇跡を起こすサントニーニョ』の契約リスクを説明したうえで、カインを、それと契約させる為に「教会」に引き取ると、そう告げたんだろ……マリア・ディーフェンベーカーを引き取りに来た、その日にっ!!」

 エイブラハムの頭上に、巨大なハンマーが現れた
 やけに握る柄の部分が短いそれが、エイブラハムに叩きつけられる
 びちゃびちゃと、血と肉片が辺りにまき散らされ、白い雪を真っ赤に染め上げていく

「…だから、マリア・ディーフェンベーカーは、自分が契約すると言ったんだよ。カインに、そのリスクを背負わせない為に」


 エイブラハムからカインに告げられた情報
 それは、覆しようのない真実
 神ですら否定できぬ絶対の事実

 今、カラミティが口にしている事も、また真実
 カインと友人になった後、姉の死の真相を知りたがるカインの為にカラミティが調べ……しかし、告げる事ができずにいた事実

 ただ、唯一の姉が、家族が
 自分を護る為に死んだのだとしたら
 カインが、どれだけ悲しむか
 それを知っていたが為に伝えられず、秘め続けた情報


 二人の口から語られる情報が、混ざり合い
 カインに、真なる事実を、真実を伝える

「…その際に、マリアはこう告げたはずだ。『自分が契約するから、弟には契約させないでほしい。そんなリスクを弟に背負わせないでほしい』と……お前が、それに了承したから、マリアは契約したんだよ。自分が失敗するだろうことを覚悟の上でな」

 エイブラハムを叩き潰したハンマーが消滅する
 残された、血飛沫と肉片

「----っその約束を、お前は破って、カインを引き取って契約させやがったんだ。神に約束したからマリアが信じた約束を破ってっ!」
「…そうですね」

 飛び散った、肉片が
 一か所に、集まっていく
 着ていた服すらも、完璧に
 エイブラハムは、傷ついた痕跡すら残さず、再生していく

「確かに、彼女にそう、約束しましたね」
「-----っ」

 ……カインの、震えが
 止まった
 俯き、握られていた拳が、とかれる

「ですが………何も、問題はありませんよ」

 エイブラハムは微笑んでいる
 気高く、しかし、高慢に
 目の前にいる存在全てを見下しているような、そんな表情で、笑う

「神である私が、決めた事なのですから。「奇跡を起こすサントニーニョ」の契約者には、カイン・ディーフェンベーカーがふさわしい。だから、契約すべきだ。私がそう決めたのですから………彼女との約束など、些細な事ですよ」
「ってめぇ…っ」

 再び、光り輝く槍が、剣が生まれ、エイブラハムを串刺しにしていく
 しかし、それらの傷は即座に再生していき……エイブラハムの言葉を止める事はできない

「……カイン司祭。つらいでしょうね?……自分の姉を消滅させた存在などと、たくさんの人間を消滅させてきた存在などと契約し……その力を借りていたなど。知りたくもなかったでしょうね」

 手が
 カインに向けて、伸ばされる
 まるで、手を差し伸べるように

 カラミティが、即座に魔法でその手を打ち砕く
 しかし、すぐにその手は再生し……カインに差し伸べられ続ける

「カイン・ディーフェンベーカーよ」


 神が
 否
 悪魔が、誘う


「救われたくはありませんか?」


 それは、完全なる、悪魔の囁き
 酷く誘惑的な響きを纏い、それは誘う


「マリア・ディーフェンベーカーを……私が、蘇らせてあげましょうか?」


 仕組まれた奇跡を演出しようと
 その手は、哀れな司祭へと、まっすぐに差しのべられた









to be … ?






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