「ふふ……パーティか、それも、良いのぅ」
てとてとと、エーテルに近づいてくる
その顔には、疲労の色が浮かんでいた
その顔には、疲労の色が浮かんでいた
…それは、そうだろう
先ほどまで、瀕死の状態に陥っていた広瀬 宏也の応急処置をしていたのだ
連続の戦闘での疲労もたまっているし、ただでさえ、弱っているヘンリエッタには辛いはずだ
先ほどまで、瀕死の状態に陥っていた広瀬 宏也の応急処置をしていたのだ
連続の戦闘での疲労もたまっているし、ただでさえ、弱っているヘンリエッタには辛いはずだ
「お嬢さん、疲れてるだろ?少し休めよ」
「なぁに、このくらい平気じゃ。それに、データの選別は妾も手伝った方が良いだろう?」
「なぁに、このくらい平気じゃ。それに、データの選別は妾も手伝った方が良いだろう?」
それも、その通りである
都市伝説を人間に戻す研究に必要なデータかどうか、見極めるにはヘンリエッタの知識が必要になる
休むつもりのなさそうなヘンリエッタの様子に、エーテルは困ったように笑って見せた
都市伝説を人間に戻す研究に必要なデータかどうか、見極めるにはヘンリエッタの知識が必要になる
休むつもりのなさそうなヘンリエッタの様子に、エーテルは困ったように笑って見せた
……と、そうやって話していると
ずるり、空間が歪んで…ひょこ、とダレンが顔を出した
ずるり、空間が歪んで…ひょこ、とダレンが顔を出した
「エーテル、僕にも手伝える事、ある?」
と、こちら側に、出てきた
「あ、ダ、ダレン、ちょっと待って…」
慌てて、その後を追いかけてディランも出てくる
……相変わらず、苦労しているな
エーテルはこっそりと苦笑した
……相変わらず、苦労しているな
エーテルはこっそりと苦笑した
「ダレン、お前は隠れていたほうがいいんだろ?」
「大丈夫だよ、今、この部屋にエーテル達以外に「組織」の人はいないから」
「大丈夫だよ、今、この部屋にエーテル達以外に「組織」の人はいないから」
……それは、そうではあるが
いつ、どこから見られているかわからないのだ
もっと、警戒すべきだろうに
その点を、ダレンに伝えようとした、その時
いつ、どこから見られているかわからないのだ
もっと、警戒すべきだろうに
その点を、ダレンに伝えようとした、その時
携帯の着信音が、鳴り響いた
「…?俺の……?」
「組織」管轄の病院から研究所に向かう際に、渡された携帯
そこにかかってきた、電話
やや警戒しつつ、エーテルは懐から携帯を取り出して
そこにかかってきた、電話
やや警戒しつつ、エーテルは懐から携帯を取り出して
ディスプレイに表示された番号に
思わず、固まった
思わず、固まった
「…?エーテル…?」
「どうしたのじゃ?」
「どうしたのじゃ?」
マクスウェルとヘンリエッタの言葉に、答えるよりも、前に
通話が、勝手に繋がった
スピーカーモードで、声が流れる
通話が、勝手に繋がった
スピーカーモードで、声が流れる
『ご苦労様でした、エーテル・エリオット。ヘンリエッタ・ホークウッド』
「-------っ!!」
「A-No.0……!」
「A-No.0……!」
流れ出た、その声に
マクスウェルとヘンリエッタが、身を硬くする
マクスウェルとヘンリエッタが、身を硬くする
ディスプレイに表示されたのは、特殊な電話番号
A-No.0が、「組織」幹部への連絡に使う番号だった
そして、流れ出た声は
間違いなく……A-No.0のもの
A-No.0が、「組織」幹部への連絡に使う番号だった
そして、流れ出た声は
間違いなく……A-No.0のもの
A-No.0
実質上の、「組織」のトップ
「組織」が生まれた瞬間から存在し、首領がいた頃ですら、「組織」を牛耳る存在に等しかった者
その姿を見た者は誰もおらず、常にこうやって声でのみ、指示を出してくる
実質上の、「組織」のトップ
「組織」が生まれた瞬間から存在し、首領がいた頃ですら、「組織」を牛耳る存在に等しかった者
その姿を見た者は誰もおらず、常にこうやって声でのみ、指示を出してくる
年齢不明・性別不明・正体不明
契約都市伝説すらわからぬ、「組織」でもっとも、謎に包まれている存在だ
その、A-No.0が、今、電話をかけてきた
つまり
こちらの状況が、筒抜けになっている……!
ダレンの生存も、知られている
つまり
こちらの状況が、筒抜けになっている……!
ダレンの生存も、知られている
「オール?オールなの?」
A-No.0の声に
一人だけ…どこか、懐かしそうな表情を浮かべたダレン
その声に、電話の向こうのA-No.0が反応する
一人だけ…どこか、懐かしそうな表情を浮かべたダレン
その声に、電話の向こうのA-No.0が反応する
『……ダレン・ディーフェンベーカー………生きていたのですね』
「うん。ごめんね。オール。君にも連絡が取れなくて」
「おい、ダレン……」
「うん。ごめんね。オール。君にも連絡が取れなくて」
「おい、ダレン……」
A-No.0に生存を知られても、ダレンは慌てる様子もない
…一切、警戒していないのだ
ダレンは、A-No.0を、一切疑っていない
A-No.0もまた……ダレンを殺そうとした存在かもしれない可能性は、0ではないというのに
…一切、警戒していないのだ
ダレンは、A-No.0を、一切疑っていない
A-No.0もまた……ダレンを殺そうとした存在かもしれない可能性は、0ではないというのに
『……構いません。私は、強行派と過激派の多いANoのトップ。あなたが警戒する事も、当然でしょう』
「?そんな事、ないよ。だって、オールはいつだって、「組織」の事を考えて行動しているんだから」
「?そんな事、ないよ。だって、オールはいつだって、「組織」の事を考えて行動しているんだから」
あっさりと、ダレンはそう言い切った
そして、続ける
そして、続ける
「オールは、僕とザンを「組織」に誘った時、言ってたから。「アメリカ政府の陰謀論」の一部だった頃とは違う、本当に、人間と都市伝説の調和を保つ「組織」でありたい、って。その為に、「組織」を保ち続けたい、って。だから、君はいつだって、「組織」の為に一生懸命なだけなんだから。そんな君を疑ったりしないよ」
『…………』
『…………』
受話器の向こう、しばしの沈黙
緊迫した空気が、この場に流れて
緊迫した空気が、この場に流れて
…やがて
小さく、ため息が聞こえてきた
小さく、ため息が聞こえてきた
『……あなたは、相変わらずですね、ダレン・ディーフェンベーカー…あんな体験をしたというのに………本当に、変わらない』
感情を感じさせないはずの、A-No.0の声
しかし、この瞬間……ほんの少し、感情が垣間見えたようにも、感じられた
しかし、この瞬間……ほんの少し、感情が垣間見えたようにも、感じられた
「…なぁ、A-No.0.ダレンの事だが…」
『………「組織」には、ダレン・ディーフェンベーカーを討伐する意思も、束縛する権利もありません。彼に「組織」に戻る意思がなければ、私には手出しできない』
『………「組織」には、ダレン・ディーフェンベーカーを討伐する意思も、束縛する権利もありません。彼に「組織」に戻る意思がなければ、私には手出しできない』
エーテルの言葉に、そう答えるA-No.0
嘘偽りは、感じられない
ほっと、エーテルは息を吐いた
嘘偽りは、感じられない
ほっと、エーテルは息を吐いた
『「組織」内でも、ダレン・ディーフェンベーカーの生存を報告するつもりはありません。あなた方も、報告する必要はありません』
「そう、か」
「ありがとう、オール…迷惑かけて、ごめんね」
「そう、か」
「ありがとう、オール…迷惑かけて、ごめんね」
電話の向こうの、A-No.0に謝罪するダレン
…しばしの、沈黙の後
A-No.0が、言葉を続けた
…しばしの、沈黙の後
A-No.0が、言葉を続けた
『……あなたが、「組織」から抜けざるを得ない状況を許してしまったのは……私の、「組織」の最大のミスです。あなたが「組織」から抜けた事で、「組織」は弱体化するキッカケを作ってしまった』
「……A-No.0?」
「……A-No.0?」
…A-No.0の言葉に…ヘンリエッタが首をかしげた
A-No.0が、己の非を、「組織」の非を認めた?
A-No.0が、己の非を、「組織」の非を認めた?
『だからこそ……我々は二度と、同じ過ちを繰り返しては、ならない。今、「組織」は、決して手放してはならぬ人材を抱えていますから』
「…何故、それを俺達に聞かせるんだ?」
「…何故、それを俺達に聞かせるんだ?」
エーテルの、疑問に
A-No,0が、即答する
A-No,0が、即答する
『……あなた方にも、それを把握していて欲しいからです………彼を、D-No.962………大門 大樹を、「組織」は決して、手放してはならない』
はっきりと、そう言い切るA-No.0
そこには、強い意志が感じられた
そこには、強い意志が感じられた
『…彼を、手放してしまったならば……彼が、「組織」を見捨てたならば。それは、「組織」にとっての、世界の終わりですから』
「どう言う事じゃ?確かに、あの男が「組織」を見捨てるようであれば、もはや「組織」は建て直しすら叶わぬ状況と見てよいかもしれんが…」
『……詳しい説明は、後日。他にも伝えるべき幹部がいますので、彼らも加えた時に、説明します』
「どう言う事じゃ?確かに、あの男が「組織」を見捨てるようであれば、もはや「組織」は建て直しすら叶わぬ状況と見てよいかもしれんが…」
『……詳しい説明は、後日。他にも伝えるべき幹部がいますので、彼らも加えた時に、説明します』
ヘンリエッタの疑問に、そう答えたA-No.0
冗談のようには感じられない…いや、そもそも、冗談を言うような存在では、ない
冗談のようには感じられない…いや、そもそも、冗談を言うような存在では、ない
『………今は、そのハンニバル・ヘースティングスの研究所の、後始末を頼みます…………その点に関しては、報告もするように』
「…了解」
『それでは、これで』
「…了解」
『それでは、これで』
ぶつんっ、と
一方的に切られる電話
はぁ、とエーテルはため息をついた
一方的に切られる電話
はぁ、とエーテルはため息をついた
「相変わらず、一方的な…」
「うん、オールも、元気そうで良かった」
「…ダレン、おぬしという男は…」
「うん、オールも、元気そうで良かった」
「…ダレン、おぬしという男は…」
緊迫感のないダレンの様子に、ヘンリエッタがため息をつく
唯一、A-No.0を、使われる機会もないのに用意されている人間としての名前で呼ぶダレン
「組織」にとって絶対的である存在であるはずのA-No.0相手ですら、区別せず差別せず接しているダレンの、その肝と度量の大きさに
エーテルは、やれやれと、深くため息をついたのだった
唯一、A-No.0を、使われる機会もないのに用意されている人間としての名前で呼ぶダレン
「組織」にとって絶対的である存在であるはずのA-No.0相手ですら、区別せず差別せず接しているダレンの、その肝と度量の大きさに
エーテルは、やれやれと、深くため息をついたのだった
to be … ?