「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 赤い靴・XNo-10

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 Tさん達を、送り届けた、後
 ザンは、ハンニバルと戦った研究所近くまで戻ってきていた
 「組織」構成員が来ているようなので、完全には近寄らない
 少し離れたところから、ぼんやりと研究所を眺める

「………あー………」

 空を見上げる
 夜があけ、明るくなってきた、空

 ………しかし、ザンにはそれが、灰色の空に思えた

 親友のダレンを失って、以来
 彼の世界は、灰色だった
 色を、輝きを、失ってしまっていた
 ダレンが、生きていると知って、ほんの少し、輝きを取り戻したけれど
 しかし、世界はいまだ、ザンにとって灰色のままだ

 一番の、親友だった
 都市伝説に飲み込まれた際、人間であった頃の友人を、全て失ってしまったザン
 自暴自棄になっていた彼に、手を差し伸べてくれたのがダレンだった
 …ザンも、また、ダレンに手を差し出した
 互いに、互いの手を取り合う事で、二人はかけがえのない親友になった

 ………その、親友を失う事は
 ザンにとって、世界の終わりに、等しく
 輝きを失った世界は、いまだ、輝きを取り戻せず、灰色のまま

 ハンニバルを殺しても、なお
 心にぽっかりとあいた穴は……まだ、埋まらない

 ぽつり
 一滴の雨が、ザンに降り注ぐ
 直後……スコールが発生し、ザンの体をずぶぬれにした
 無意識に、「マリー・セレスト号」の「スコール説」の能力を発動させたのだ
 痛いほどの雨を浴びて、しかし、ザンは微動だにしない
 血で染まった赤いスーツが、雨でさらに濡れていく

 灰色の世界
 その世界において……この激しい雨は、ザンにとって、唯一の慰めでもあった
 うまく悲しみを表せないザンの、涙の変わりのように振り続けるスコール
 それにずぶぬれになることで、少しずつ、ザンは自身の心を整理しようとする

「…………ダレン」

 どこに、いるのだ
 いまだ見つからぬ親友の名を、ぽつりと口にする
 返事など返ってこぬと、わかっていながら

 しかし


「……………ザン?」


 帰ってきた、返事
 はっと、顔をあげると……スコールが降りしきる中、一人、ザンに駆け寄ってくる姿が、見えた
 黒い髪、黒い瞳、ザンよりも高い背の、青年
 ……覚えている
 あの顔を、忘れるはずが、ない


「ザン…?………ッザン、どうしたの!?血塗れで………怪我をしているの?」

 慌てて、駆け寄ってくる、その姿
 どくん、と全身の血が、脈打つ

「……ダ、レン?」
「うん、僕だよ…………ザン?大丈夫?どこか、痛いの?」

 濡れる事も構わず、駆け寄ってきたダレン
 心配そうに、ザンの顔を覗き込んでくる


 まさか
 あんなに捜して、見つからなかったと、言うのに
 ……こんなに、あっさり?


「ザン、怪我してるなら、ヘンリエッタに、見てもらおうよ?ヘンリエッタやエーテルが、傍にいるから……」
「…………はは」
「…?ザン?」

 突然、笑い出したザンの様子に、首をかしげるダレン
 …ぼすん、とザンは、ダレンにもたれかかり………笑い続ける

「…あんなに、探して見つからなかったのに………今まで、どこに行っていやがった。世界中、探したんだぞ」
「ザン…………ごめんね」

 ザンを、ねぎらうように…そっと、抱きしめられた
 優しい手、優しい腕
 …あぁ、変わらない
 全てを受け入れ、受け止める、優しい男
 世界全て、この世の全てを許容してしまう、優しすぎる男

 間違いない
 こいつは、ダレンだ
 俺の親友だ
 この優しさを、俺が間違えるはずがない

「……いいさ、謝らなくても………代わりに、二度と、俺の知らない場所に姿くらますんじゃねぇ」
「うん、わかった。約束するよ」
「…………必ず、だぞ」

 …気がつけば、スコールは止んでいた
 空を覆っていた雲が晴れ、朝日が差し込む


 ザンの、灰色の世界に
 ようやく、光が、輝きが戻ってきて
 視界に飛び込んできた青空に、ザンは小さく、笑ったのだった





fin



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