「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 赤い靴・DNo-17c

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匿名ユーザー

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 …熱が、荒れ狂う
 長年押さえ込み続けた本能が、暴れ出そうとする

「…駄目、駄目…!」

 それを、ディランは必死に押さえ込む
 淫魔としての本能は、長年の飢餓に飢えに飢えきっていて
 目の前の少女を襲えと、そう誘惑してくる

「先生、苦しいなら我慢とかしなくていいから。あんたの起こす面倒事なんて慣れてるんだからね、私は」

 ディランの正体を、事情を知らない、繰のその言葉が
 荒れ狂う本能を、煽ってくる

 ふるふると、ディランは小さく首を左右に振った

 駄目だ
 この少女を、襲ってはいけない

「だ、め………そんな、事を、したら…………僕は、きっと……君を、殺してしまう、から」

 荒い呼吸の合間、何とか言葉を搾り出すディラン
 殺してしまう、という物騒な言葉に、繰が眉をひそめたのが見えた

「何よ、それ……どう言う事?」
「……僕、は」

 ………それを、答える事が、恐ろしい
 それは、自分の正体を、この繰に知らせる事になるから
 知らせることによって、拒絶されてしまうかもしれない
 …自分などに、親切にしてくれた、繰に拒絶されるかもしれないという、確定に近いであろう仮定が……ディラは、酷く恐ろしかった

 だが、自分の正体を知らせなければ、今の自分がいかに危険な存在であるか、繰に伝える事ができない
 繰を殺したくないと言う思いからディランは己の本能を押さえつけながら、ゆっくりと続ける

「…僕は………淫魔、だから」
「……いんま?」
「夢魔の、一種…………人の、精を喰らう、悪魔…………それが、僕、だから」

 ディランの言葉に、繰は小さく首をかしげる
 「組織」所属の契約者と言っても、都市伝説自体にあまり詳しくない繰
 淫魔、夢魔、などと言われても、ピンと来ないのだ

「何……あんた、都市伝説、だったの?じゃ、その角とか翼生えた姿が、本来の姿?」
「…そう………だから、駄目。僕が、君を襲ってしまう、前に………殺してしまう、前に。橋本さんを、連れて………できる、限り。僕から…………逃げて」

 淫魔の、インキュバスの本能が、雌を求める
 本能を押さえ込む事ができなくなってしまえば、この少女達を襲ってしまう
 殺してしまう

 それだけは、嫌だ
 もう、自分は人間を襲いたくない
 人間を………殺したくない
 自分のせいで誰かが死ぬなど、もう、二度と御免だ

 しかし
 ディランの訴えを聞いても、なお……繰は、ディランから離れない
 その指先が頬に触れてきて、ディランは小さく体を跳ねらせた
 触れられた箇所から、じわり、甘い熱が広がる錯覚

「…く、くる、ちゃ………駄目、僕から…離れ、ないと……」
「………あのね」

 そっと、両頬に、繰の手が触れてきて
 ぐい!と強引に、繰と視線が合う状況に持ち込まれた
 淫魔としての、血の様に真っ赤な瞳に臆する様子なく、繰は真正面から、間近から、ディランを見つめてくる

「…精を喰らう、とか。それで人が死ぬとか、よくわからないけど」

 繰の頬が、赤い
 かすかに体温が上がっていて、呼吸も乱れているのが伝わってくる
 女郎蜘蛛の毒にやられ、正体を現してしまった瞬間、一瞬、制御が聞かなくなってしまった誘淫の芳香の影響が、繰にも現れてしまっている事に、ディランは気付いた
 しかし、気付いても、自分にはどうしようもない 
 自分はただ人を惑わせる力しかなく、それを解除できる能力はない
 解除方法は、知っているが…それは、彼女の精を喰らうという行為に直結してしまう

「でも、とりあえず、言っておく……私は、あんたなんかに殺される程、弱くないから」

 まっすぐな、まっすぐな、眼差し
 かつて、ただ性的な意味でディランを求めてきた女性達とは、違う眼差し
 ……その、眼差しは
 学園祭の日、ディランに思いを告げてきた、未冬の眼差しに、似て

「……だから。我慢なんて、しなくて大丈夫だから……このままじゃ、先生の方が死にそうじゃない」

 違う
 自分は、この毒では死なない
 危険なのは、本能に押し負けた自分に襲われる可能性が高い、繰と未冬だ
 特に、ここまで間近に近づいてきている繰
 彼女を押し倒し、そのままその体を貪りたいという欲望を、ディランは必死に押さえつけ続ける

「で……も」
「でもも何もないの!何、それとも、私が信用できない!?」
「…ち…違う、け、ど…」

 違う
 繰の事が信用できない訳ではない
 しかし、繰は未だに、今、ディランと言う淫魔に接触している事がどれだけ危険な事なのか、正確に把握できていないのだ
 ならば、なおさら……彼女を求める訳には、いかないのだ

「……違う、なら」

 繰の、顔が
 さらに、ディランに近づく

「…我慢するのを、やめなさいよ」

 駄目だ
 本能に押し負けてはいけない
 目の前の繰を、襲ってはいけない

 目前の甘美な誘惑から逃れようと、目を閉じる
 だが

「………先生」

 囁かれ、耳にかかる吐息に体が震える

 駄目だ
 このまま、では、本能を抑えきれなくなって…
 せめて、自分から、繰から離れようとしたディラン
 女郎蜘蛛の毒に侵された体を、何とか動かそうとした…

 ……その時

 ぐにゃり、と
 教室内の空間が…一部、歪んで
 そこから、人影が飛び出す

「ディランちゃん!毒喰らったって聞いたから、ドリスから「癒しの土」を預かって……きて……」

 ………
 …………

 空間の歪みから姿を現したのは、一人の青年
 長い白髪に銀色の瞳、眼鏡をかけ、白いスーツを身に纏った姿の、青年だった
 その青年は、ディランと繰の姿を
 その様子を見て、固まって

 そして
 突然の乱入者に、繰が気付かない訳もなく


 数秒後
 普段の数十倍は速い速度で髪を伸ばし、束ね
 それによって、繰は乱入者である白髪の青年を、手加減なしに思い切り殴り飛ばしてしまった訳だが

 世間では、これを「間が悪い」と呼ぶのであって
 繰には何の罪もなかったのである





続くかどうか不明になってきた





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