2回線目
序(女の子編
カーテンを開ける音と、目に入る光で目が覚める。
「お目覚めですか、お嬢様」
声をかけてきた執事は、窓の方を向きながら話す。
耳に付いている複数のピアスが、太陽に反射して輝いている。
執事は、執事と言うには、ちょっとがっちりしていて剃りこみのはいった頭の、厳つい兄貴だった。
赤いシャツとグレーのエプロンが、激しく似合っていない。
「…。明深(ミンミ)」
「はい」
「冴(サエ)でいい」
佐竹山 冴(サタケヤマ サエ)が、ベッドから体を起こすと明深は、部屋を出て行った。
無音に戻るハズの部屋は、光の早さで騒々しくなった。
青くなった明深の腕には、ヴァイオリンケースがしっかりと抱えられている。
「冴様!式神を使ったんですか!?」
冴は、気だるい頭を抱た。
朝から、この音量はキツイ。
「…、使った…」
「どこで!?どんな!?嗚呼、拓磨(タクマ)が知ったら!!!」
兄の名前を出してまで、まくし立てていた明深の顔が、なぜだか一気に高揚する。
より高速に、明深は、深くふかーく頭を下げて出ていった。
「し、失礼しました!」
冴は、明深の行動をぼんやりと眺めていた。
徐々にクリアになってくる頭が、くしゃくしゃのシャツから肌に通る風を教えてくれる。
「!!」
昨日、逃げた宮下 武を追っかけてって。
そのまま疲れ果てて、ベッドまで這っていって寝ちゃって…。
冴は、頭から布団を被っていたい衝動に駆られた。
が。そういうわけにも行かない。起床時間というのは、一刻も無駄に出来ない時間との勝負。
負けは、遅刻を意味する。
が。
恥ずかしい!恥ずかしすぎる!!
「兄さんに、言いつけるからね!」
嘘でも、そう叫んでおく。
「…あ、アイツの所為よ!!」
冴のカッカした頭を、昨日の少年がよぎる。
顔は余り、確認できなかった。変貌する前も、後も。
わかっている記憶を、出来る限り繋ぎ合わせる。
「お目覚めですか、お嬢様」
声をかけてきた執事は、窓の方を向きながら話す。
耳に付いている複数のピアスが、太陽に反射して輝いている。
執事は、執事と言うには、ちょっとがっちりしていて剃りこみのはいった頭の、厳つい兄貴だった。
赤いシャツとグレーのエプロンが、激しく似合っていない。
「…。明深(ミンミ)」
「はい」
「冴(サエ)でいい」
佐竹山 冴(サタケヤマ サエ)が、ベッドから体を起こすと明深は、部屋を出て行った。
無音に戻るハズの部屋は、光の早さで騒々しくなった。
青くなった明深の腕には、ヴァイオリンケースがしっかりと抱えられている。
「冴様!式神を使ったんですか!?」
冴は、気だるい頭を抱た。
朝から、この音量はキツイ。
「…、使った…」
「どこで!?どんな!?嗚呼、拓磨(タクマ)が知ったら!!!」
兄の名前を出してまで、まくし立てていた明深の顔が、なぜだか一気に高揚する。
より高速に、明深は、深くふかーく頭を下げて出ていった。
「し、失礼しました!」
冴は、明深の行動をぼんやりと眺めていた。
徐々にクリアになってくる頭が、くしゃくしゃのシャツから肌に通る風を教えてくれる。
「!!」
昨日、逃げた宮下 武を追っかけてって。
そのまま疲れ果てて、ベッドまで這っていって寝ちゃって…。
冴は、頭から布団を被っていたい衝動に駆られた。
が。そういうわけにも行かない。起床時間というのは、一刻も無駄に出来ない時間との勝負。
負けは、遅刻を意味する。
が。
恥ずかしい!恥ずかしすぎる!!
「兄さんに、言いつけるからね!」
嘘でも、そう叫んでおく。
「…あ、アイツの所為よ!!」
冴のカッカした頭を、昨日の少年がよぎる。
顔は余り、確認できなかった。変貌する前も、後も。
わかっている記憶を、出来る限り繋ぎ合わせる。
- 白い服の少年は、宮下 武と名乗った。
- 彼は、都市伝説と契約者のことを知っている
- 昨日の動きからしては、身体能力は高い
- スプーンを凶器に変える何か特殊な能力を持っている
- 「お前は違う」と言ったのは、宮下?
「いえ、…別の何か。彼の中に入って消えたもの…」
冴は、彼の発した殺気を思い出す。
オーラ何て生暖かなものでなく、人気、霊気、神気でもない。
「ん?でも、あの気は、どっかで見たことあるような…?」
冴は、首を傾げる。少し古い記憶だろう、どうにも思い出せない。
「いいわ。今日中に探し出して、締め上げてやるから」
冴が立ち上がると、首元のネックレスがキラリと光った。
冴は、彼の発した殺気を思い出す。
オーラ何て生暖かなものでなく、人気、霊気、神気でもない。
「ん?でも、あの気は、どっかで見たことあるような…?」
冴は、首を傾げる。少し古い記憶だろう、どうにも思い出せない。
「いいわ。今日中に探し出して、締め上げてやるから」
冴が立ち上がると、首元のネックレスがキラリと光った。
序(男の子編
「頭が重い・・・」
宮下 武は、自分の布団の上で寝返りを打った。
遠くから、母親の声が聞こえる。
もう朝か、起きないと。
宮下 武は、自分の布団の上で寝返りを打った。
遠くから、母親の声が聞こえる。
もう朝か、起きないと。
「武、あんたまた朝から陰鬱な顔してるね」
母よ、息子に向かってそりゃないだろ。
寝不足のまま口をもごもご、武は悪態をついた。
大人の対応ってやつだ。いや、聞こえてると、今日も弁当に納豆を詰められる気がするからだ。
「朝シャンしていい?」
「十分で出てきな。お湯がもったいない」
スカーレットの髪を、カチューシャで留めた母親は、キッチンでせこせこ動くのをちらっと見た。
朝から元気だ。羨ましい。
母よ、息子に向かってそりゃないだろ。
寝不足のまま口をもごもご、武は悪態をついた。
大人の対応ってやつだ。いや、聞こえてると、今日も弁当に納豆を詰められる気がするからだ。
「朝シャンしていい?」
「十分で出てきな。お湯がもったいない」
スカーレットの髪を、カチューシャで留めた母親は、キッチンでせこせこ動くのをちらっと見た。
朝から元気だ。羨ましい。
武は洗面所までいくと、鏡の中の自分がもう一つの顔を見せる。
頭痛の原因、ムサシだ。
自分の同じ顔をしながら、ギラつく目は赤目で、髪は金色をしている。
そして毎回、この顔を見ると思う。
「ムサシは、本当に二次元に出てきそうな人だねー」
「うるせえ!死ね!消えろ!!」
「僕が死んだら、ムサシもいなくなるよ」
「言われなくたって、わかっとるわ!!」
ちなみに、僕の髪は黒いし、あんなにツンツンしてないし、黒目だ。
いったいどこをどう分解すれば、ムサシが出来るのか不思議でたまらなく思う。
うるさいので、鏡に背を向けて、脱衣所に立つと、更に呼びかけられた。
「武よ。昨日のおなごのこと、なんだが」
ムサシは、歴史オタクだ。というか、中二病だ。実際はもっと、質が悪いかも知れないけど。
自分も侍になりたいと、常々言っている。
なので、変な言葉遣いは無視した。
「あれが契約した都市伝説は、大したことないが、連れてるものは相当ヤバいぞ」
「ヤバいって、どういう意味? 僕は何も感じなかったよ」
「頭の回転が遅いぞ。つまり、オレがわかってオマエがわからないのは、霊的なものってわけだ」
言い訳がましく言っておくが、この言葉遣いの悪さもムサシにあって、僕にはない。
ムサシになくて、僕にあるものもある。例えば、対人の記憶力とか。
「して。何で昨日、あの後逃げた?」
「昨日の人、同じ学校の人だよ」
武は見てしまった、鏡越しの自分が目を爛々と輝かせている。
やっ、やってしまった…。
「果たし状だ!巌流島の決闘だ!!」
「絶対いやです」
「はい、時間切れ!!さっさと学校いきな!!」
母親がリビングから、声を張り上げていた。
頭痛の原因、ムサシだ。
自分の同じ顔をしながら、ギラつく目は赤目で、髪は金色をしている。
そして毎回、この顔を見ると思う。
「ムサシは、本当に二次元に出てきそうな人だねー」
「うるせえ!死ね!消えろ!!」
「僕が死んだら、ムサシもいなくなるよ」
「言われなくたって、わかっとるわ!!」
ちなみに、僕の髪は黒いし、あんなにツンツンしてないし、黒目だ。
いったいどこをどう分解すれば、ムサシが出来るのか不思議でたまらなく思う。
うるさいので、鏡に背を向けて、脱衣所に立つと、更に呼びかけられた。
「武よ。昨日のおなごのこと、なんだが」
ムサシは、歴史オタクだ。というか、中二病だ。実際はもっと、質が悪いかも知れないけど。
自分も侍になりたいと、常々言っている。
なので、変な言葉遣いは無視した。
「あれが契約した都市伝説は、大したことないが、連れてるものは相当ヤバいぞ」
「ヤバいって、どういう意味? 僕は何も感じなかったよ」
「頭の回転が遅いぞ。つまり、オレがわかってオマエがわからないのは、霊的なものってわけだ」
言い訳がましく言っておくが、この言葉遣いの悪さもムサシにあって、僕にはない。
ムサシになくて、僕にあるものもある。例えば、対人の記憶力とか。
「して。何で昨日、あの後逃げた?」
「昨日の人、同じ学校の人だよ」
武は見てしまった、鏡越しの自分が目を爛々と輝かせている。
やっ、やってしまった…。
「果たし状だ!巌流島の決闘だ!!」
「絶対いやです」
「はい、時間切れ!!さっさと学校いきな!!」
母親がリビングから、声を張り上げていた。