「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 怪奇チャンネル-二回線破

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匿名ユーザー

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武が学校に着くとすぐ、昨日の少女と目が合う。
向こうは、同じ高校の学生だと知らなかったのだろう。目を丸くしてこちらを見ている。
どうやら、神様はムサシの味方で、武の味方はしてくれないらしい。
武は、覚悟を決めて、少女に向き合った。
「き、昨日はどうも」
自分から名乗って置いて、素っ頓狂な言葉である。
少女がこちらに歩いてくる。
ああ、本当に駄目かも知れない。と、武は思った。
明るい朝の光に、黒髪がやわらかな光沢を放っている。整った顔に立ちに内巻きの髪は、同じ制服を着ているクラスの女子とは大違いだ。
可愛いという言葉が、よく似合う女の子だった。
ぱっちりした大きな目が、すぅと細まる。
「アンタ、今日帰り付き合いなさいよ。逃げても無駄だから」
小さな口から、ドスの利いた声で言われて、色々萎縮した。
前言撤回。
駄目だ。やっぱ、女はすげー怖い。
心の底でムサシが「睨み返せ、ヘタレめ」と言ってきたが、聞いてないことにした。
よく言われる言葉で、蛇に睨まれた蛙という言葉があるけど。
今のは、正にそれ。
ということは、ナメクジがいるはず何だけど。
武が身体機能を落として考え事をしていると、後ろから小突かれた。
「え、何。今の。ツンデレ?ヤンデレ? どちらにせよ、デート?」
赤と白の一人紅白の頭が、視界に飛び込んできた。
「あ、ナメクジ」
「ほう、お前はナメクジと友達なんか?」
武が思わず言った一言が偉く気に入らなかったのか、一人紅白は長髪を振り乱し、攻撃してくる。
「鏡獅子。鏡獅子」
「うざいわー」
一人紅白のお陰で、テンションが戻った武だったが。やはり、さっきの女の子のことが気にかかる。
呼び出しを食らうようなことを、自分はしたのだろうか?
ムサシは、何もいってこない。
昨日、思わず名乗りはしたけど。普通だったら、オカシナ夢で終わらすか。こんな、不振人物に再度コンタクトを取ろうなんて思わないだろう。
「さっきの、佐竹山 冴?気になる?」
一人紅白が、振り乱した髪を撫でつけている。
「俺が知ってるのは、アイツの住所と。ヤバい感じの人が出入りしてるのと。アイツの兄ちゃん、国会議員だってことか」
「…よく、そこまで調べてるな。晃」
「ま。お前の助けになんならなー、多少の無理はするでよ」
「頼んでいないぞ。そんなこと」
晃が情報を持っているってことは、つまりは、彼女もオカルトの住人ってことだ。
武は、彼女の過ぎた廊下を見やる。
学生がちらほら行き来する、ごく普通の朝の風景。
この風景と同じように、穏便に話し合いで済めばいいんだけど。
武は、そうなることを願った。


* * * *




放課後になるのが早く感じるのは、考え事をしていた所為だろう。
冴は、昇降口で武が出てくるのを待っていた。
殆どの生徒が、帰るか、部活動かでげた箱の中は上履きになっている。
無人の昇降口で冴は、首から下げたネックレスを取り出す。
小豆くらいの大きさの黒目脳が付いた、フクロウのペンダントトップは、元はネクタイピンだったものだ。
「お父さん…」
オレンジ色に染まる校舎の中で、冴はそっとそれを握った。
「……」
だらしないドタドタ走りに、ビクリと肩が跳ねる。
ひょっこりと顔を見せた武に、躊躇わずイライラをぶつけた。
「何時間待たせるのよ、アンタ!」
「委員会に急に引っ張られて…。図書何だけど。ついでに、読みふけってて…」
言い訳をしながら、のろのろと靴を履き変える武の足元に目がいく。
あれ?
冴は、武の足首を指して聞いた。
「重りつけてるの?」
「え、…ああ。うん。ムサシが組んだトレーニングの一環だからね」
武が、戸惑った様子でもなく答えたのに、冴は不可思議な感覚を覚えた。
考え事をしていたのがわかったのか、武は冴を促し、校舎を出た。
「帰りながら話そうよ。暗くなるの早いし」
校庭には、まだ部活の片づけをしている生徒が、ちらほら見える。
武は、こちらを見ずに、さっさと歩いていく。
わざとらしく、長くなった二人の影が、横並びにならないよう歩いてるのが、冴は気に入らなかった。
なので。武の腕を思いっきり掴み。言ってやった。
「昨日、人を殺し掛けて置いて逃げるのかしら?武君?」
「え!?殺し!?」
いきなり腕を捕まれたのと、物騒なことを言われたのとで、目を白黒させる武に詰め寄る。
「何者なのよ?アンタ」
武にしてみれば、これだけでいろんな意味で、心拍数があがってくる事態である。
「あー、えと。何から話せばいいか…とりあえず離してもらっていい?」
「昨日みたいに、逃げない?」
武には、十七年間生きてきて、初めてフラグがたった気がした。
腕を放してもらい、周りを気にしていると、心の中でムサシが「キモい」と突っ込んでくれていた。
「…逃げない」
武は、はあ。と息を付き、深呼吸すると、告白を始めた。
「まず、都市伝説のことは…?」
冴が、僅かに怒りの表情を見せる。
そんなこと、言われるまでもないと。"カタカナのテ"と"漢字の手"を教えられるのと一緒のレベルに感じた。
「都市伝説も、この学校町で都市伝説と契約した能力者がいることも知ってるわ。アンタ、私のこと舐めてるの?」
どこをどう、湾曲するとそうなるのか。武は、慌てて謝った。
謝った上に、大告白をしてしまった。
「自分、AB型は二重人格と契約してます!」
と。
ムサシが、「バッキャヤロー!!」と責め立ててくる。
冴は、冷たい目で「それでムサシか」と、じろじろと見てくる。
正に、言葉通りの、板挟みって奴だ。
武は、目の前が暗くなるのを感じた。

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